相続した不動産を損せず売却する方法は?FPが解説する4つのポイント

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相続した不動産を売却する際、相続税などの税金や諸経費が発生します。

しかし、相続したばかりの不動産の売却を検討している方の中には「どれくらいの費用がかかるのか?」「売却して損はしないのか?」という不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか。

今回の記事では相続した不動産の売却にかかる税金や諸経費と共に、税金の特例制度や控除、不動産会社の選び方など、不動産を売却する前に確認しておきたい4つのポイントについてお伝えしていきます。

目次

  1. 不動産の相続と売却に課税される税金
    1-1.不動産を取得すると「登録免許税」が課税される
    1-2.不動産を売却すると「譲渡所得税」が課税される
    1-3.不動産の相続税と小規模宅地の特例
  2. 相続した不動産を売却する際にかかる費用
  3. 相続した不動産を売却する手順
    3-1.信頼できる不動産会社を選ぶ
    3-2.売却の時期を見極める
    3-3.契約内容をきちんと確認する
  4. 相続した不動産の売却前に土地活用を検討する
  5. まとめ

1.相続した不動産を売却する際にかかる税金

まずは相続した不動産を売却した時にかかる税金を見ていきましょう。

不動産を相続し、売却した時に課せられる税金は「登録免許税」「譲渡所得税」「相続税」の3種類となります。まず相続した不動産の名義を変更するため登記手続きを行う時にかかる税金が登録免許税です。

相続した時には相続税が発生し、売却した時に発生した利益に対する税金が譲渡所得税となります。それぞれの税金を詳しく見ていきましょう。

1-1.不動産を取得すると「登録免許税」が課税される

不動産を相続した場合、親から自分へ所有権を移転する手続きが必要となります。

登録免許税の計算方法は以下の通りです。

相続の場合 不動産の価額×4%
贈与の場合 不動産の価額×20%

*法務局「登録免許税の税額表」を参照(2020年2月時点)

しかし、相続によって発生した登録免許税は免除される場合もあります。

登録免許税が免除される土地

平成30年度の税制改正により免税措置が設けられ、以下の2つのケースでは令和3年3月31日まで土地の登録免許税が免除されます。

  • 相続で受け継いだ土地の所有者が相続登記をしないで亡くなったケース
  • 市街化区域外+法務大臣が指定する区域+不動産の価値が10万円以下の土地

*法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」を参照(2020年2月時点)

相続した土地が上記の2ケースに当てはまるかを確認してみましょう。

また、登録免許税の免税措置の適⽤を受けるためには,免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があります。(申請書のダウンロード

1-2.不動産を売却すると「譲渡所得税」が課税される

譲渡所得税は土地を売却した利益に課される税金です。売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた後、さらに特別控除額を引かれた金額が「譲渡所得」と呼ばれ税率を掛けて計算します。

譲渡所得税は土地の保有期間によって税率が変わり、5年を境に「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分類されます。

所有期間 所有期間
長期譲渡所得 譲渡した年の1/1に所有期間が5年を超える 課税長期譲渡所得金額×15%
短期譲渡所得 譲渡した年の1/1に所有期間が5年以下 課税短期譲渡所得金額×30%

通常、譲渡所得は5年を超える長期保有によって課税率が下がります。しかし、相続した不動産を売却する場合、短い期間の売却でも受けられる取得費加算の特例と、空き家を売却した時の3,000万円控除の特例があります。

不動産売却における取得費加算の特例

取得費加算の特例では、相続した土地に相続税が課される場合、相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡すると相続税額の一部を譲渡資産の取得費として加算する事が出来ます。

空き家を売却した時の3,000万円控除の特例

相続により空き家になった不動産を売却すると、一定の要件を満たした場合3,000万円までが非課税となります。

以下の9つの要件を満たしている事が条件です。

  1. 相続の開始直前において相続を受ける人(被相続人)が1人で住んでいた物件
  2. 昭和56年5月31日以前に建築された
  3. 事業、貸付、居住の用に供されたことがない
  4. 相続で家屋や土地を取得した被相続人が売却をした
  5. 譲渡の際に一定の耐震基準を満たす物件である
  6. 売却代金が1億円以下(共有の場合は合計で1億円以下)
  7. 譲渡の相手が親子や夫婦、内縁の家族、生計を共にする親族ではない
  8. 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
  9. 取得費の特例など他の特例の適用を受けてない

国税庁「マイホームを売ったときの特例」を参照(2020年2月時点)

適用期間は相続の開始日から3年後の年の12月31日までであること、特例の適用期間である2023年12月31日までの2点をクリアする必要があります。

1-3.相続税と小規模宅地の特例

相続税は相続や遺贈により取得した財産の合計額が基礎控除額を超える場合、超えた金額について課税されます。

不動産の相続税は建物と土地の評価額をもとに算出されますが、この建物部分の評価額を減額できるのが小規模宅地等の特例です。(*国税庁「小規模宅地等の特例」を参照)

小規模宅地等の特例が適用されると、被相続人(生計を共にしている親族も含む)と一緒に住んでいた土地や事業用の土地、第三者に貸していた土地に適用され、一定の要件を満たせば50~80%評価額を減らせる可能性があります。

適用される条件は5つのパターンに分かれ、それぞれ減額される割合も異なります。こちら「小規模宅地等の特例で相続税はいくらまで減額される?適用条件も解説」の記事で詳しく解説しているのでご参考ください。

2.相続した不動産を売却する際にかかる費用

税金の他にも不動産を相続、売却した場合は様々な費用がかかります。下記は不動産売却で発生する主な経費の例です。

  • 仲介手数料
  • 抵当権抹消登記費用
  • 住所変更登記費用
  • 測量費用
  • リフォーム費・ハウスクリーニング費

これらの経費の中でも、売却する不動産の価格によって大きな金額になりやすいのが不動産会社へ支払う仲介手数料です。下記の表から、仲介手数料がいくらになるのかおおよその目安を見ておきましょう。

仲介手数料の計算方法

売買価格 売却手数料の上限
200万円以下 売買価格×5%+消費税
200万円超〜400万円以下 売買価格×4%+2万円+消費税
400万円超 売買価格×3%+6万円+消費税

仮に、3,000万円の不動産を売却した際の仲介手数料の上限は105万6千円となります。

仲介手数料やその他の経費を差し引いた金額が手元に残ることになります。経費分をあらかじめ計算しておき、「どのくらいの価格で売却すべきか?」ということを逆算しておくことも重要になります。

3.相続した不動産を売却する手順

不動産を売却する際に大事なポイントは下記の3点です。

  1. 信頼できる不動産会社を選ぶ
  2. 売却の時期を見極める
  3. 契約内容をきちんと確認する

それぞれ詳しく見て行きましょう。

3-1.信頼できる不動産会社を選ぶ

不動産を売却する際は、信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。信頼できる不動産会社を選定するために、複数の不動産会社に見積もりを取り、査定価格や査定理由が他社と相違の無い業者を選ぶようにしましょう。

1社だけの査定価格や査定理由では他社との比較ができず、本当に査定額で売れる物件なのか、高値を提示して契約を獲得しようとしているのか、という判断が難しくなるためです。

不動産一括査定サービスなどを利用し、複数社へ査定依頼をするようにしましょう。

主な不動産一括査定サイト


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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

不動産一括査定サービスとは、不動産情報をサイト上に登録するだけで、複数社の不動産会社へ同時に査定依頼ができるサービスです。

手間なく複数の不動産会社の査定結果が得られるうえ、不動産売却のアドバイスを受けることも可能になります。

複数の不動産会社の中から信頼できる会社を選び、売却を依頼するようにしましょう。

3-2.売却の時期を見極める

不動産は時期によって売却できる価格が異なることがあります。周辺地域の賃貸需要や、金融機関の融資状況によって、売買される実勢価格に大きな影響があるためです。

売却時期によっては査定価格で売り出したものの、売却が長期化してしまうことがあります。売却が長引いた際は、価格の変更や売却時期の見直しなど、依頼した不動産会社へ相談してみましょう。

3-3.契約内容をきちんと確認する

不動産の売買契約をする際は、売買契約書をきちんと確認しましょう。契約書で見逃したポイントがあると、トラブルになった時の損害額も大きくなることがあります。

例えば、中古不動産の売却では瑕疵担保責任の条項が大きなトラブルになりやすいポイントです。瑕疵担保責任の条項とは、売却した不動産に隠れた瑕疵(かし)があった際に売主と買主のどちらに責任があるのか、その期間を定める条項のことです。

瑕疵担保責任の期間を取り決めていない場合、買主が瑕疵を発見してから1年間が売主の責任となるため、買主有利の契約となってしまいます。取引慣例上は3ヶ月とするケースが多くなりますので、必ず確認をしておきましょう。

このような重要な項目はきちんと確認し、双方が納得した上で契約書を締結するようにしましょう。

4.相続した不動産の売却前に土地活用を検討する

相続した土地の売却を検討する前に、他の事業へ活用できないか検討してみましょう。

駐車場経営や資材置き場経営、太陽光発電経営、アパート・マンション経営などの土地活用をすることで、長期的な収入を得られる可能性があります。

初期費用が少ない活用方法では資材置き場や駐車場経営、郊外の土地なら太陽光発電経営、賃貸需要の見込める地域であればアパート・マンション経営などが検討できます。

様々な土地活用の提案が受けられる「HOME4U」

HOME4U 土地活用HOME4Uは、NTTデータグループが提供するサービスで、マンション経営やアパート経営、駐車場経営、賃貸併用住宅、大規模施設などの収益性の高い土地活用や不動産投資について、最大10社の収益最大化プランを比較することができます。

古くなった物件を売り出しても、売却が長期化してしまったり、希望価格で売買が成立しないことがあります。売却以外の選択を得るためにも、どのような土地活用方法があるのか、事前に確認しておくと良いでしょう。

まとめ

不動産を売却する前に確認しておくべきポイントは税金や諸費用を把握し、特例制度などの利用、信頼できる不動産会社を調べる事です。

売却せずに不動産を活用すると、事業経営による収入を得られる可能性があります。事業経営や土地活用に興味のある方は、新たな可能性について調べ検討してみましょう。

不動産を売却する際は、信頼できる不動産会社を選び、高く売却できるライミングを見極めることも重要です。

いきなり不動産を相続すると戸惑ってしまいますが、不動産の知識を得る事で故人が遺してくれた財産の価値を知ることにもなります。

この記事に書かれていることを参考に、ぜひ納得の行く形で不動産売却を目指してみて下さい。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。