日本で10人に3人の子どもが感じる孤独感(※1)。貧困、いじめ、虐待など、子どもを取り巻く社会問題の背景にあるのが「子どもの孤立」です。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、この問題はさらに深刻なものとなっており、ここ最近のニュースなどで目にしたという方も少なくないでしょう。
この「子どもの孤立」の問題に、直接の当事者だけでなく地域全体で取り組もうとしているのが認定NPO法人PIECES(ピーシーズ)です。この記事では、PIECESの団体概要や実績・評判などについて紹介しています。子どもの孤立の問題に関心がある方や、PIECESの活動などを詳しく知りたいという方は参考にしてください。
※1 “An overview of child well-being in rich countries”, UNICEF Innocenti Research Centre, 2003 より
目次
- 認定NPO法人PIECESとは
1-1.団体立ち上げのきっかけは、児童精神科医として診療の現場で感じた課題感
1-2.市民性醸成プログラム「Citizenship for Children(CforC)」を実施
1-3.1つの地域でCforCプログラムを実施するのに約500万円が必要
1-4.継続寄付者(PIECEメイト)になると寄付者コミュニティ(PforP)に参加できる - 認定NPO法人PIECESの口コミ・感想
- まとめ
1 認定NPO法人PIECESとは
PIECESは、子どもが孤立しない社会をつくることを目指して活動する認定NPO法人です。その中心事業として、「Citizenship for Children(CforC)」という市民性を醸成・エンパワメントするプログラムを実施しています。CforCでは、①子どもと関わる基礎を学ぶ「基礎知識コース」、②基礎知識コースの内容に加え、月1回のゼミとリフレクションを通じて子どもたちとの関わり方をより深めていく「探求コース」、③探求コースの修了生を対象に、新たなプロジェクトを立ち上げ、自分なりのアクションを探求する「プロジェクトコース」などを提供しています。
PIECESはCfroCプログラムを実施することにより、地域や社会の中に潜在する「自分にできることで地域や社会と関わりたい」「子どものためにも、自分のためにも何かしたい」という想いを持った方が、さまざまな背景を有する子どもたちに対して柔軟で主体的なアクションを起こしていける土壌づくりに取り組んでいます。
現在は、2022年7月31日まで「認定NPO法人PIECES(ピーシーズ) 6周年募金キャンペーン2022」を実施しています。今回のキャンペーンは、目標金額150万円としています。
組織名 | 認定NPO法人PIECES |
URL | https://www.pieces.tokyo/ |
法人種別 | NPO法人 |
本社所在地 | 東京都文京区本郷3-40-10 三翔ビル本郷7F 小野田高砂法律事務所内 social hive HONGO |
設立 | 2016年 |
代表理事 | 小澤いぶき
【代表経歴】 |
メンバー | 理事 5名 監事 2名 運営スタッフ 5名 プロボノ・インターン 13名(計25名) |
ビジョン | 子どもたちが孤立の中で生き続ける明日よりも、優しいつながりが溢れる未来を |
ミッション | 一人ひとりのマインドセットをアップデートし、社会に市民性を醸成する |
主な協働組織、関連団体 |
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国・企業との主な協働実績・協働事例 |
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受賞歴 |
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メディア掲載 |
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主な活動① 2020年度(2020年11月~2021年10月)の事業報告書より、以下同より、 | 市民が主体となり、子どもの育ちに多様な人が関わる生態系を生み出す事業 ①Citizenship for Childrenプログラム 子どもの日常にかかわる人たちの市民性の醸成・エンパワメントを通じて、様々な背景を有する子どもたちに対して柔軟で主体的なアクションが生みだすための育成プログラム。実践とゼミ形式のリフレクション、講座による学びを織り交ぜながら育成を進めている。 CforC2021ではプログラムの門戸を広げるためにコース編成の見直しを実施。昨年までは約6か月間で実施していたプログラムのエッセンシャル版として、約3か月のコースを設置したことで、昨年の2倍近い65名の方がプログラムに参加。今期は昨年までの修了生もプログラムの運営に関わる機会が増え、参加年度を越えて参加者同士の学び合い支え合いが生まれている。 地域型のクラスは昨年と同様に茨城県水戸地域と奈良県大和高田地域で実施。それぞれNPO法人セカンドリーグ茨城と認定NPO法人Living in Peaceとの共同運営で取組んだ。また、今期からは、プログラム運営のナレッジシェアにも本格的に着手し始めた。 |
主な活動② | 市民が主体となり、子どもの育ちに多様な人が関わる生態系を生み出す事業 ②Reframe Lab プロジェクト 児童精神科医監修の下、多種多様なアーティストやクリエイター・専門家・経験者とのネットワークを形成・活用した、レジリエンスプログラム。様々な背景を有する子どもたちと一緒に、時間や空間を超えて、この世界にいるさまざまな存在・生命と共に在ることへの想像力を広げていくプログラムを複数実施。今期は、助成財団や基金からの助成を受け、コロナ禍での子どもたちの心の不安に対する処方箋として、あそびや想像力をテーマとした絵本「もるめたも」の制作も行った。 |
主な活動③ | 研修・コンサルティング事業 Citizenship for Childrenプログラムで用いる研修やワークショップのコンテンツを切り出し、子どもの支援等を行う団体や組織に対して、研修や相談によるサポート行う事業。今年度は、主としてNPO等の非営利組織向けに研修事業を行った。 |
主な活動④ | 啓発・普及事業 取り組む社会課題の現状や実施する事業内容やその成果/課題について発信することを通して、啓発・普及を行う事業。今年度は、「子どもの孤立」や「市民性」をテーマに掲げた自主企画のイベントをはじめ、目指す世界観を共有する他団体との共催イベントなどを数多く実施。 |
経常収益 | 36,808,818円(2020年度:2020年11月~2021年10月、以下同) |
事業収益 | 9,707,605円 |
受取助成金・受取補助金等 | 9,210,774円 |
寄付金 | 17,890,261円 |
人件費 | 14,546,578円 |
寄付ページ | |
寄付額 | 1,000円~/月(PIECEメイト) 10,000円~/年(賛助会員) 1回のみの場合は、任意の金額 |
寄付でできること | Citizenship for Childrenプログラム 1地域実施:約500万円 |
PIECESに関するニュース
1-1 団体立ち上げのきっかけは、児童精神科医として診療の現場で感じた課題感
PIECESは、児童精神科医として10年以上医療・行政の現場に携わってきた小澤いぶきさんが、勤務医を辞めて、子どもたちや社会のwell-beingを目指して立ち上げた団体です。
小澤さんは医療の現場で、貧困・虐待・いじめなどの逆境体験や災害、身近な人の死などにより地域や家庭から孤立した子どもたちに出会う中で、「問題が起きた時に治療ケアをするだけではなく、問題が起きる前に社会全体で行動を起こしていくことが必要なのではないか」と感じて、子どもの孤立という社会課題に取り組むことを決意しました。
子どもの孤立の背景には、孤立に至る危機が起きる前や医療や福祉が必要な時に「子どもたちの身近に助けを求められるつながりがない」という課題があります。つまり、子どもの孤立という課題は、子どもの孤立を生み出してしまっている社会の構造が抱える課題であり、社会を形作る私たち一人ひとりが生み出している課題でもあります。
このような考えのもと、PIECESでは子どもを一方的に支援する対象として捉える(For)のではなく、子どもと一緒により良い社会や未来を創っていく(With)という「ForからWithへ」の考え方を大切にしています。
1-2 市民性醸成プログラム「Citizenship for Children(CforC)」実施
PIECESは、子どもの孤立が深まる前に、地域の中で子どもを見守り、子どもに寄り添う市民を増やすためのプログラム「Citizenship for Children(CforC)」を実施しています。
CforCでは、子どもの背景に目を向けて、目の前の子どもと向き合うことができる市民を増やし、市民によるアクションが子どもの日常の中に生まれ続けていくことを目指しています。
活動実績として、2020年度までの約5年間、毎年6ヶ月に渡るプログラムを東京、茨城、奈良などで実施し、地域・企業・行政向けへ研修、一般向けへワークショップや講座などを計3500名以上に届けています。
1-3 1地域でCforCプログラムを実施するのに約500万円が必要
PIECESは、子どものために地域の中で活動する市民を地域の100人に1人にあたる100万人にまで増やす目標を掲げていますが、Citizenship for Children(CforC)プログラムを1地域で実施するのに約500万円が必要となっています。
現在、約360人の継続寄付者の方々から年間約700万円の寄付(2022年1月時点)が寄せられていますが、助成金等に依存せずにプログラムを全国へと展開していくにはまだまだ活動資金のギャップがある状況です。
1-4 継続寄付者(PIECEメイト)になると寄付者限定コミュニティ(PforP)に参加できる
PIECESでは、2021年12月から継続寄付者(PIECEメイト)になると、寄付者限定のオンラインコミュニティ「Piece for Peace(PforP)」に参加することができるようになりました。
PfoPは、継続寄付者の方が「寄付による社会の変化を感じることができる」「自分の今の生活と社会の接点をみつける」「日々の習慣に、少しだけ市民性のエッセンスをいれる」といったことができることを目指して運営されています。PIECESのスタッフとのコミュニケーションはもちろん、同じ関心を持つ寄付者同士でも交流することができるため、寄付を通じて社会やコミュニティとつながっていきたい、実際に地域で活動をしてみたいと考えている方にとって、大きなメリットがあります。
PforPへの参加でできること | 詳細 |
---|---|
ラジオ配信&対話への参加 | PIECESのプログラムの卒業生や外部ゲストを交えて、子どものこと、わたしたちの日常における市民性についてざっくばらんに話すラジオと対話に参加できる。 |
チェックイン(月1) | 日常で感じるもやもやや、歪み、最近あった出来事。話したいことをなんでも共有できる。 |
各種イベントへの参加 | 読書会、対話、雑談会など学びや交流のイベントに参加できる。 |
寄付者やスタッフとのオンライン交流 | メッセージングアプリのslackを利用して、全国の仲間との情報交換や雑談、興味のあるテーマについて話をすることができる。 |
実践サポート | 活動していての困りごとがあれば、相談することもできます。メンバー同士で助け合ったり、スタッフに相談したりすることもできる。 |
同じ地域の仲間との助け合い | 住んでいるところが近い人同士では、モノを譲り合ったり活動を助け合ったりできる。 |
2 認定NPO法人PIECESの口コミ・評判
PIECESが実施した公開講座やCitizenship for Children(CforC)の参加者からは次のような声が寄せられています。
公開講座やCforCプログラム参加者の声
- 「質疑応答で、講師のみなさんが悩みながらも綺麗事ではない回答を返してくださる姿勢に、感銘を受けました。(会社員・55-64 歳)
- 「効果的なメソッドを使って、体験しながら理解できるように工夫がされていました。自分のような未経験者でも楽しく参加でき、たくさんの気づきが得られて良かったです。(自営業・65 歳以上)
- 「実践事例だけでなく、その背景にある考えや子どもへの視点を知り知識だけでなく自分になかった価値観を得られたのがとてもよかった。」(大学生・18-24 歳)
- 「自分の事例を紹介する際には、自分では気がつかなかった視点などに触れることができ、ものの見方の幅に気づかせていただきました。こんなにも1人のことを全員で一生懸命に想うことそのものへの優しさやあたたかさに、毎回感動していました。」(主婦・35-44歳)
- 「仕事柄、自分自身の気持ちなどを発表したりする機会がないなか、ゆっくり少しずつ自分の気持ちを話すことができたのは、このプログラムだったからだと思います。どんな人でも参加できて、クラスのみんなと一緒に学んでいくなかでいつの間にか自分のなかで何かが湧き上がってくる、とても素敵なプログラムでした。」(自営業・35-44 歳)
- 「スタッフの方々がとても丁寧な関わりをしてくださるなと感じました。人を大切に、優しい「間」が生まれるような関わりをしてくださっているんだなと感じる6ヶ月でした。」(大学生・18-24 歳)
また、以下はPIECESと出会って実際に変わり始めた子どもたちの声です。
PIECESと関わった子どもたちの声
- 「いっぱい話して、元気出た!」
- 「なんかムカムカしてたのどっか行ったや」
- 「学校は嫌いだったけど、ここはなんか好き」
- 「初めてこんなに人に話を聞いてもらった」
- 「今度、学校行ってみようかな」
- 「ちゃんと向き合ってくれる人がいて嬉しかった」
- 「お姉さんにしか言ってないんだけど、私やっぱり高校行きたいかも」
PIECESの寄付者からは、次のような応援メッセージも寄せられています。
末次 由紀さん(漫画家 『ちはやふる』作者)
子どもが犠牲になる事件にひどく心が傷ついても何もできずにいる人が私の周りにも多くいますし、私自身もその一人です。
でも「関わる人」を育てようとする活動があることを知りました。
どこにでもきっといる「誰にも相談できない子ども」に、一つでも多くの選択肢をあげたい。
そんな思いで私はPIECESを応援しています。
宮本 聡さん(認定NPO法人ACE理事 / 営業コンサルタント)
「子どもの孤立」という課題は、とても見えづらくて、一度そのループに入ってしまうと、そこから抜け出すのはとても難しい厄介なものです。
「子どもと寄り添う優しい大人」の育成は、孤立によって生まれた様々な課題をすぐに解決するものではないですが、こういった活動がきっと「孤立を生まない強い地域」を育てていくことでしょう。
紫原明子(エッセイスト)
PIECESの取組がなぜ社会に必要かというと、子育てに欠かせないこの「名もなきケア」を、困難を抱えた親たちと一緒になって担ってくれるからです。実は私自身も、PIECESの活動を通してこの「名もなきケア」の重要性を認識し、そしていかにこのサポートが得られにくいかに気付かされました。
一見豊かに見えるこの日本で、ひとり親家庭における子どもの貧困率は約50%ともいわれ、苦しい環境に置かれている子どもは、決して少なくないのです。だからこそ、今よりもっと子育ての協力が得やすい社会になるといいと思います。そしてそのためにも、PIECESの取り組みがより多くの人に知られ、広まっていくことを、強く願っています。
※上記はすべて個人の感想です。寄付先を選ぶ際には、ご自分でも情報収集をされた上で最終的にご判断下さい。
まとめ
子どもが孤立しなくてすむ優しく温かい社会をつくろうと日々活動するPIECES。その社会は、地域に住む一人ひとりの大人が子どもへと温かい眼差しを向けながら、自身も学び続け、問い続ける姿勢を持つ、大人にとっても居心地が良い成熟した社会となるはずです。
PIECESの活動に興味がある方は、寄付やプロボノ、プログラム参加者としての関わりを検討してみてはいかがでしょうか。
HEDGE GUIDE 編集部 寄付チーム
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