離婚時には公平に財産分与を行う事が原則ですが、家や土地といった不動産は分与が難しい現物資産です。
財産分与の方法は売却・譲渡・どちらかが住み続けるという3つのパターンに分類され、離婚の原因、子供の有無、経済的事情や生活環境によりいずれかの方法を選択する事になります。
家や住宅ローンの名義・契約内容を確認した後、3つの財産分与の方法をご紹介していきます。売却・譲渡・住み続ける場合でも様々なパターンや注意点が存在しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 離婚後の家をどうするか決める前に確認したいポイント2つ
1-1.住宅ローンの契約者や残債、家の名義を確認する
1-2.家の売却価格と住宅ローンの残債を比較する - 離婚後、家を売却するケース
- 離婚後、家を譲渡するケース
- 離婚後、どちらかが家に住み続けるケース
4-1.家の所有者が住み続ける場合
4-2.家の所有権を持たない方が住み続ける場合 - まとめ
1.離婚後の家をどうするか決める前に確認したいポイント2つ
離婚が決まって家の財産分与について話し合う前に、まずは下記の2点について確認をしておきましょう。
- 住宅ローンの契約者や残債、家の名義を確認する
- 家の売却価格と住宅ローンの残債を比較する
それぞれ詳しく解説します。
1-1.住宅ローンの契約者や残債、家の名義を確認する
家の処分方法を決める前に、住宅ローンがどれくらい残っているか、住宅ローンの契約者や家の名義が誰になっているかを確認しましょう。
夫または妻が単独で住宅ローン契約をしている場合は比較的分与が容易ですが、夫婦どちらかが連帯保証または連帯債務となっている、ペアローン等の共同名義の場合は契約変更が必要となります。
また不動産の所有権を持っているのは誰か、住宅ローンの返済状況や住宅ローン控除を受けているか、団体信用生命保険(団信)の加入者を確認しておきましょう。
1-2.家の売却価格と住宅ローンの残債を比較する
住宅ローンの残債と不動産査定の価格を比較し、売却価格でローンを完済できるか試算しましょう。
不動産査定の結果、ローンの残債が不動産の売却価格を下回る「アンダーローン」の状態では売却しても大きな問題はありません。
一方、不動産を売却してもなおローンの残債が残る「オーバーローン」の場合は、売却後もローンの支払いが続く上に、譲渡後にもローン返済の配分を話し合う必要があります。また、オーバーローンの場合は財産分与の対象とならない点にも注意しましょう。
不動産の売却価格は複数の業者に不動産査定を依頼する事で、おおよその相場や売却までに必要な期間の目安が分かります。下記に無料で利用できる不動産一括査定サイトの一覧をまとめていますので、併せてご確認下さい。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
2.離婚後、家を売却するケース
離婚後に家を売却するパターンについて詳しく見て行きましょう。
売却する事でローンを完済できるケースでは、仲介・買取という2つの方法があります。価格を重視する場合は仲介、スピードを重視する場合は買取を選ぶと良いでしょう。
「仲介」は不動産会社に仲介を依頼し買い手を見つけてもらう売却方法で、3つのパターンの中で最も家を高く売る事ができます。ただし売却までに数ヶ月を要し、買取と違い内覧で自宅を見てもらうという手間が加わります。
「買取」の方法は「即時買取」と「買取保証」の2種があります。即時買取は不動産会社と買取価格を交渉した後すぐ買い取って貰う方法で、買取保証は一定期間売却活動を行った後買い手が見つからなかった場合に取り決めた額により買い取って貰う方法です。
即時買取の場合、仲介より価格は下がりますが、仲介手数料がかからずスピーディーに現金化できるというメリットがあります。「売却価格が下がっても家を早く売りたい」という方は即時買取を選ぶと良いでしょう。
買取保証による売却方法は、例えば「3ヶ月までは待てるが、以降はすぐ売ってしまいたい」という場合に検討しやすい方法と言えます。
また、完済できないオーバーローン状態の物件でも売却したい場合、任意売却という方法があります。しかし、任意売却は金融機関との交渉が必要となり、希望価格での売却に至らないケースも多く、離婚時にスムーズに売却を進めるにはやや難易度の高い方法と言えます。
【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も
離婚時に家の売却を進める際の注意点
不動産の売却活動は不動産会社との契約や内覧対応、引き渡し等やるべき事は多くありますが、離婚を伴う場合に注意しておきたい点は売り出し価格の決定です。
売り出し価格に対して夫婦で意見が合わない場合は後のトラブルの元となりやすいため、事前に話し合っておくことが大切です。すでに別居しており顔を合わせたくない際や折り合いがつかないときは「離婚協議書」を公証役場で公正証書として作成しておきましょう。
離婚協議書は公的文書として法的な拘束力があります。離婚の財産分与の項に家の売却価格について明記しておくことで、後のトラブルを回避しやすくなるでしょう。
【関連記事】離婚後によく起きる「マンション売却」のトラブルは?5つの事例と対処法を解説
3.離婚後、家を譲渡するケース
財産分与は財産を公平に分配する事が原則ですが、離婚後の生活の保障や離婚の原因を作った事への慰謝料としてどちらかへ金額が上乗せされるケースがあります。
例えば「妻が専業主婦で離婚後の収入が見込めないため、家を譲りたい」「夫の不貞により離婚に至ったため妻が家を貰う」といった事例も存在します。
財産分与は夫婦間の協議で金額を決めるため、必ずしも公平に分配しなくてはならないわけではありません。
ただし譲渡する際は譲った側に譲渡所得税がかかるケースや、分与された財産の額が様々な事情を考慮してもなお多過ぎる場合は譲られた側に贈与税がかかる可能性があります。
【関連記事】離婚の財産分与、不動産の譲渡所得税が課税されるケースは?特例も紹介
譲渡物件がアンダーローンの場合の注意点
住宅ローンの残債が不動産の時価を下回るアンダーローンの場合は、資産を公平に分配するために「上回った金額の半分」を、家を譲った側が貰う権利があります。
例えば家と土地に1,000万円の価値があり、ローンの残債が500万円で妻が家に住み続けるケースでは、以下の計算式となります。
1,000万円-500万円=500万円÷2=250万円
このケースの場合、家を譲渡した方は250万円分の現金や相当する自動車といった資産を貰う権利が生じます。
4.離婚後、どちらかが家に住み続けるケース
家を売却せずにどちらかが住み続けることで、生活環境を変えずに済む、子供がいる場合転校の必要がない等のメリットがあります。
しかし、住宅ローンの返済状況や今後の支払い計画によっては、後のトラブルとなる可能性があるデメリットがあるため注意が必要です。
家の所有者が家に住み続けるケースと、所有権を持たない方が家に住み続けるケースを、家の名義や住宅ローンの契約変更・注意点と併せてご紹介します。
4-1.家の所有者が住み続ける場合
家の所有権を持ち住宅ローンを契約している所有者がそのまま住み続けるにあたって名義変更は必要なく、ローンの返済を夫婦で相談する事になります。
一方、所有権を持たない方が連帯債務者・連帯保証人になっている、またはペアローンを組んでいる際は変更手続きが必要となります。
連帯保証人には、ローンの返済が滞ってしまった場合に代理で返済義務が発生します。例えば夫が住宅ローンの返済をしなかった場合、連帯保証人である妻に対して返済が求められ、夫の返済能力に関わらず返済義務が生じます。
一方で「連帯債務者」とは夫と連帯してローンの返済責任があり、金融機関はいつでも夫と妻両方に返済を請求できます。
連帯保証人・連帯債務者を解除するためには原則ローンを完済しなければなりませんが、別の人を連帯保証人・連帯債務者にする、別の金融機関でローンを組む、別の不動産を担保とするという3つの方法で連帯保証人を解消できる可能性があります。
ペアローンは金融機関に相談しローンを一本化しなくてはいけませんが、単独の収入で審査を通過する必要があります。また住宅ローン控除対象が夫婦2人から1人になるため、税金の負担も重くなります。
団体信用生命保険(団信)は連帯保証人・連帯債務者の場合は契約者のみ、ペアローンでは二人とも加入できますので、加入状況を確認しておきましょう。場合によっては新たに生命保険や医療保険に加入する必要があります。
4-2.家の所有権を持たない方が住み続ける場合
所有者の家に所有権の無い方が住み続ける場合、ローンを完済している際は法務局で「所有権の移転」の手続きを行いましょう。
ローンが残っている場合は名義変更にあたって金融機関の許可が必要となりますので、金融機関に相談しましょう。連帯債務・連帯保証・ぺアローンといった共同名義となっている場合も金融機関への相談が必要です。
いずれのケースでも離婚時には家に住む側への名義変更や共同名義の解消を必ず行うようにしましょう。名義を変更することで、「片方のローンの返済が滞り、金融機関から連絡が来る」「連帯保証人として返済を要求された」といったトラブルを防ぐことができます。
まとめ
離婚時に家をどうするか決める際は売却価格とローンの残債の比較から始め、売却にかけられる期間や経済的事情等によってどのように対処するか決めると良いでしょう。
また、家の売却にあたっては3つの方法、譲渡は税金がかかる可能性、どちらかが家に住み続ける場合には家の名義やローンの契約変更に気を付け財産分与を進めていきましょう。
田中 あさみ
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