不動産を売却するときは、不動産会社に仲介を依頼するだけでなく、不動産会社を間に入れずに個人間で売買することも可能です。
しかし、個人売買は大きなデメリットやリスクもあります。これらの注意点を理解した上で行う必要があります。
そこでこの記事では、個人売買の概要やメリット・デメリット、および注意点を解説していくので、不動産の個人売買を検討している人はぜひご確認ください。
目次
- 不動産の個人売買とは?
1-1.不動産の個人売買を行う流れ
1-2.個人売買における法律上の問題 - 不動産を個人売買するメリット
- 不動産を個人売買するデメリット
3-1.不動産売買契約書に抜け漏れがある
3-2.契約不適合責任について交渉が必要
3-3.買主の住宅ローン審査が難航しやすい
3-4.書類作成などの手間がかかる - 個人売買を進める前に「より高く売る」ことを検討してみる
- まとめ
1.不動産の個人売買とは?
不動産の個人売買とは、不動産会社を間に挟まずに個人間で売買することです。不動産の売買には専門的な知識を必要とするため、個人売買について良く知らない人も多いでしょう。
そのため、まずは個人売買について以下を解説します。
- 個人売買の流れ
- 法律上の問題
それぞれ詳しくみていきましょう。
1-1.不動産の個人売買を行う流れ
個人売買の大まかな流れは以下の通りです。
- 売買物件の調査や確認
- 登記内容などの確認
- 売買金額や引き渡し時期などの確認
- 契約書や重要事項説明書の作成
- 売買契約の締結
- 引渡しと決済
それぞれ順番に解説します。
物件調査~登記内容の確認
売買物件の調査には、たとえば戸建ての売買なら隣地との境界や越境状況の確認が必要です。仮に「確定測量図」という資料がなければ、再度測量し直すケースもあります。個人売買だと、再測量するかどうかの判断や測量の手配なども自分で行う必要があります。
また、マンションなら共用部のルールや修繕計画の確認が必要でしょう。さらに、管理規約を確認したり、共用部をチェックしたりなどの調査が必要になってきます。
売買金額・引き渡し時期の確認
売買金額や引渡し時期の確認も売主・買主間で行います。売買金額を相場よりも著しく低い金額に設定した場合は、「贈与」に該当することがあるので注意しましょう。
ただし、宅建産業者ではない個人で相場を調べることはやや難易度が高いと言えるでしょう。相場は周辺の成約事例を基にしますが、個人は不動産売買における成約事例のデータベースであるREINSを閲覧できないからです。
個人売買なら、REISNよりも掲載数が少ないREINS Market Informationやスーモなどのポータルサイトを利用して相場を調べることになるでしょう。
売買契約~引渡し
売買価格や引き渡し時期を決めたら、契約書・重要事項説明書の作成をして売買契約を締結します。その後、引渡し日に売買代金を決済して引渡し(所有権移転登記など)をします。
このように個人売買は、不動産会社が仲介するときの売買と基本的な流れは変わりません。しかし、不動産会社の担当者がやることをすべて個人でやらなければいけないため、専門的な知識や多くの作業に手間を取られることとなります。
1-2.個人売買における法律上の問題
個人売買するときに、「不動産会社を間に入れないで法律上問題ないか?」と思う人もいるでしょう。結論からいうと、売買契約を個人間で結ぶこと自体に問題はありません。
宅地建物取引業の免許が必要な取引は、反復して継続的に不動産を売買する場合になります。そのため、マイホームの売却などは宅地建物取引業社でなくても問題なく行えるのです。
ただし、たとえば「保有する複数の不動産を繰り返し売買するとき」などは、宅地建物取引業の免許が必要なので注意しましょう。投資用不動産の売却で今後も繰り替えし売買する予定の場合は、不動産会社(建物取引業社)に仲介を依頼しましょう。
2.不動産を個人売買するメリット
次に不動産を個人売買するメリットについてみていきましょう。個人売買による大きなメリットの一つに仲介手数料がかからないという点が挙げられます。
不動産会社に仲介を依頼すると、以下のように仲介手数料(税込)がかかります。
売買価格 | 売却手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5.5% |
200万円超〜400万円以下 | 売買価格×4.4%+2.2万円 |
400万円超 | 売買価格×3.3%+6.6万円 |
たとえば、売買価格が2,200万円の不動産なら、2,200万円×3.3%+6.6万円=79.2万円(税込)が仲介手数料ということです。
ただし、上記で計算した仲介手数料は不動産会社が売主・買主に請求して良い「上限」になります。多くの不動産会社が上記の上限価格で設定していますが、中には手数料率を低くしている不動産会社もあります。
不動産価格が高額になるほど仲介手数料の上限も増額していきます。高額な売買価格となりやすい不動産において、仲介手数料がかからないという点は不動産を個人売買する大きなメリットと言えるでしょう。
3.不動産を個人売買するデメリット
不動産を個人売買するデメリットは以下の通りです。
- 不動産売買契約書に抜け漏れがある
- 契約不適合責任について交渉が必要
- 買主の住宅ローン審査が難航しやすい
- 書類作成などの手間がかかる
それぞれ以下より詳しく解説していきます。
3-1.不動産売買契約書に抜け漏れがある
不動産の個人売買をするときには、売主・買主間で売買契約を結びます。買主は購入資金として住宅ローンを組むことが多く、金融機関に提出するための重要事項説明書も必要となります。
また、引渡し後のトラブルリスクを避けるためには、買主が現金購入する場合でも重要事項説明書は作成しておくべきでしょう。
これらの専門的な書類を経験のない個人が作成するのは極めて困難で、抜け・漏れなどの不備が発生するリスクも高まります。重要事項説明書や売買契約書などに不備があれば、売買契約後のトラブルにつながる可能性もあるでしょう。
重要事項説明書に不備があれば、引渡し後に買主から「聞いていなかった」「説明すべきでは?」などの指摘をされ、訴訟にも発展するケースも考えられます。この契約に関するトラブルリスクが、不動産の個人売買における大きなデメリットと言えるでしょう。
3-2.契約不適合責任について交渉が必要
個人売買は契約不適合責任に関する交渉も個人間で進める必要があります。
契約不適合責任とは、不動産の売買契約書で事前に記載されていなかった欠陥や不備(≒瑕疵)があったときに売主が補修などの責任を負うことです。
契約不適合責任は、民法上「買主が欠陥(瑕疵)を知ったときから1年間」と決まっています。契約不適合責任で記載されていない箇所については、売主からすると買主が指摘するまで契約不適合責任があり続けることとなります。
そのため中古不動産の売買なら、引渡し後から3ヶ月~2年程度の期間を瑕疵担保責任の期間に設定し、それ以降は売主の責任がなくなるという契約にするケースがあります。
しかし、契約不適合責任の対象箇所や期間の設定は売主と買主の利益が相反するため、両者の交渉が難しいポイントとなります。一方、不動産会社による仲介であれば、これらの契約不適合責任を負いそうな箇所についても調査し、売主と買主の利害を鑑みたうえで中立な期間設定を依頼することが可能です。
不動産会社へ仲介を依頼することにより、後の大きなトラブルとなりやすい契約不適合責任について中立な設定を依頼できる点は大きなメリットです。個人売買ではこれらの設定や交渉が難航してしまう点はデメリットと言えるでしょう。
【関連記事】売主が不利に?不動産売却の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を解説
3-3.買主の住宅ローン審査が難航しやすい
不動産の個人売買だと融資する金融機関が慎重になり、不動産会社が仲介に入るときよりも買主の住宅ローン審査が難航しやすい点にも注意が必要です。
たとえば、融資するためには売買物件の「契約書」や「重要事項説明書」を金融機関に提出します。個人売買の場合はこれらの書類を自分で作成することとなり、内容に不備があれば金融機関から再提出を求められることもあります。
3-4.書類作成などの手間がかかる
不動産売買契約書の作成、抵当権の抹消登記や移転登記を依頼する司法書士の選定など、個人間の売買における全ての作業を当事者が作業する必要が出てきます。
不動産会社に仲介を依頼すれば書類作成や調査などを任せることができますが、個人売買は全て自分で行う必要があり、大きな手間のかかる点はデメリットといえるでしょう。
4.個人売買を進める前に「より高く売る」ことを検討してみる
個人売買の大きなメリットとして、仲介手数料がかからない点について解説しました。しかし、仲介手数料がかからないメリットがある一方で、不動産の売却価格が低価格であればトータルの売却利益が少なくなってしまうケースも考えられます。
まずは複数の不動産会社へ査定を依頼し、おおよその売却価格や支払う経費について調査をしておきましょう。不動産会社の査定を受けておくことで、この記事でご紹介したような個人売買のメリットとデメリットを比較することが可能です。
複数の不動産会社に査定を依頼する際は、不動産一括査定サイトの利用を検討してみましょう。不動産一括査定サイトでは物件情報を一度登録するだけで、複数の不動産会社の査定を受けることができ、査定結果を比較することが可能です。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
不動産会社に査定を依頼することにより、個人売買を進めるよりも高い売却価格となる可能性があります。仲介手数料だけにこだわらず、トータルの売却益を増やす視点で再度検討してみましょう。
まとめ
不動産の個人売買は仲介手数料がかからないというメリットがあるものの、トラブルリスクが高くなるなどのデメリットもあります。
特に引渡し後のトラブルは双方の意見がすれ違うことで民事訴訟に発展するケースもあり、不動産会社へ支払う仲介手数料以上の損失を招くこともあります。
不動産の個人売買を進める際はこれらのデメリットやリスクについて確認し、不動産会社に仲介を依頼することも並行して検討しましょう。
中村 昌弘
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