離婚の財産分与、不動産の譲渡所得税が課税されるケースは?特例も紹介

離婚の財産分与で家や土地を譲渡した時に、譲渡所得税が課されるケースがあります。譲渡所得税は所有期間によって税率が異なり、場合によっては譲り受けた側も税金を納付しなくてはいけません。

ただし家や土地を売却して現金化して資産を分ける事や、特例制度を利用する事で譲渡所得が控除され、税金を払う必要がなくなるケースも存在します。譲渡所得税は一体どのようなケースで課されるのでしょうか?

今回は、譲渡所得税の仕組みや計算方法、家を売却し現金化して分与した場合や譲渡所得が控除される特例制度などをご紹介します。

目次

  1. 離婚の財産分与と譲渡所得税
    1-1.譲渡所得税の仕組みと計算方法
    1-2.長期譲渡所得と短期譲渡所得
  2. 家や土地を譲り受ける側に課される可能性のある税金
  3. マイホームを譲渡・売却した際の特例制度2つ
    3-1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
    3-2.10年超所有の居住用物件の特例制度
  4. 家や土地を売却して財産分与した場合
  5. 財産分与の際の不動産の価値の決め方
  6. まとめ

1.離婚の財産分与と譲渡所得税

土地、建物、株式、ゴルフ会員権等の資産を譲渡する事によって発生した所得に課される税金を譲渡所得税と言います。

離婚時の財産分与では、家や土地等の不動産を譲った側に譲渡所得税が課されます。

「離婚でマイホームを失った上に税金まで取られるなんて」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、譲渡所得税は離婚時における土地や家の時価が取得価格を上回る場合にのみ課され、所有期間によっても税率が異なります。

譲渡所得税の仕組みや計算方法、所有期間の長さによる税率を見ていきましょう。

1-1.譲渡所得税の仕組みと計算方法

譲渡所得税は「譲渡所得」に一定の税率をかけて計算します。譲渡所得の計算式は以下の通りになります。

家や土地の時価-(取得費+譲渡費用+特別控除額)=譲渡所得

(*国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」を参照)
取得費は土地や建物の購入費や不動産会社へ支払う仲介手数料等の総額で、実際の取得費が時価の5%未満の場合は、5%相当額を取得費として計上する事ができます。

譲渡所得は時価から取得費用を差し引いて計算するため、家の経年劣化等により価値が下がり、時価が取得費を下回る際には譲渡所得税が課税されない仕組みとなっています。

一方で土地や建物を取得した際よりも、地価が上がった場合やリフォーム等により家の価値が上がった時には譲渡所得が発生し税金が課されます。

譲渡費用は家や土地の価値を鑑定するためにかかった費用、売却をしたケースでは売却のためにかかった仲介手数料等の費用、建物を取り壊して土地を売った場合の取壊し費用等です。

マイホームを売却した際に適用される特例に該当する時は、特別控除額が差し引かれます。
土地や建物を譲渡・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超で「長期譲渡所得」、5年未満では「短期譲渡所得」となり、それぞれ所得税と住民税の税率が異なります。

譲渡所得税が発生する場合には確定申告の必要があり、他に分与した資産や所得がある場合一緒に行うことになります。
続いて、長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いについて見ていきましょう。

1-2.長期譲渡所得と短期譲渡所得

長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いについては以下の通りです。

  • 長期譲渡所得:所得税15%・住民税5%
  • 短期譲渡所得:所得税30%・住民税9%

建物の所有期間が5年以下の場合には短期譲渡所得、5年超の場合には長期譲渡所得が適用されます。2037年までは上記所得税に復興特別所得税が加算されるため、短期譲渡所得は所得税と住民税を足して39.63%、長期譲渡所得は20.315%の税金が課されます。

所有期間の計算がやや複雑ですが、例えば2020年中に譲渡した場合は、土地や建物の取得が2014年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、2015年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります。

家や土地の所有期間が5年を超えた際は、譲渡所得税の負担が軽減される事を覚えておきましょう。

2.家や土地を譲り受ける側に課される可能性のある税金

基本的に離婚の財産分与により家や土地を譲り受ける場合、贈与税・不動産取得税が課税されないことがあります。財産分与の性質上、「贈与された」という意味合いより、「夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための権利で譲り受ける」と解釈されるためです。

しかし、分与された財産が多すぎる場合や、贈与税・相続税を免れるために行われたと判断された際には贈与税が課されますのでご注意ください。

不動産取得税は自治体により対応が異なるため、まずは家や土地の所在地を管轄する自治体窓口へ相談してみましょう。

3.マイホームを譲渡・売却した際の特例制度2つ

居住用財産(マイホーム)を譲渡・売却する際は、一定の条件を満たすことで「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」、「10年超所有の居住用物件の特例制度」を受けることができます。

2つの特例制度の概要と適用条件について見ていきましょう。

3-1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除

居住用財産(マイホーム)を譲渡・売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。(*国税庁「マイホームを売ったときの特例」を参照)

この特例が適用できると、家や土地の時価から取得費や譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」から3000万円までを控除できます。譲渡所得が3000万円未満の場合、譲渡所得の金額が上限となり差し引かれ、税金を払う必要はありません。

なお適用の条件の1つに「売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと」が挙げられていますので、離婚届を提出し正式に離婚が成立してから譲渡を行いましょう。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用条件

3,000万円の特別控除の適用条件は以下の4点です。

  1. 自身が居住する家・土地・土地の権利を売却する。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する事。
  2. 既に居住していない際や家を取り壊した時は、家を取り壊した日から1年以内に契約を結び、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している。家を取り壊してから契約を結ぶまで、敷地を貸したり事業用に提供していない。
  3. マイホームの交換や買換え、収用等の場合の特別控除等、他の特例の適用を受けていない
  4. 売却・譲渡した年の2年前より、今回の3000万円の特別控除やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例を適用していない

適用を除外されるケース

特例を受けることだけを目的として入居した場合や、住み替えの際の仮住まい等一時的入居した家、別荘やコレクションを置くための建物等娯楽・趣味・保養の為の家屋に特例は適用されません。

3-2.10年超所有の居住用物件の特例制度

マイホームを譲渡または売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えており、一定の要件に当てはまる場合、通常よりも低い税率で税額を計算する特例を受けることができます。なお居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除と併用が可能です。

長期譲渡所得 の金額 所得税 住民税 復興特別所得税
6,000万円までの部分 10% 4% 2.1%
※2013~2037年までの所得に対し所得税と併せ申告・納付
6,000万円を超える部分 15% 5%

(*国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」)

所有期間が10年を超える方は、まず長期譲渡所得の金額を計算してみましょう。

4.家や土地を売却して財産分与した場合

家や土地を売却して現金として財産分与した場合には、住民票や固定資産評価証明書等の登記費用がかかりますが、「夫婦間の財産の清算」とみなされるために基本的に税金はかかりません。

ただし「家や土地を譲り受ける側に課される可能性のある税金」の項でも解説した通り、金額が大きすぎるや税金を免れるためと判断された場合には贈与税がかかる可能性があります。

住宅ローンが残っている家では、売却費用がローンの残債を下回るケース(オーバーローン)では売却してもローンが残ってしまいます。ローンの返済や財産分与に大きな影響を与えますので、売却は慎重に行いましょう。

5.財産分与の際の不動産の価値の決め方

不動産の価額は、路線価方式や固定資産税評価額、時価(市場価格)等により決まりますが、離婚の財産分与では時価で評価される方法が一般的です。一方、相手が離婚後に収入を見込めない場合や慰謝料として多めに渡す時、夫婦間でよく話し合い分与率を決めたケースもあります。

不動産の査定には、不動産会社による売却査定と不動産鑑定士による鑑定の2種類があります。不動産会社による売却査定は無料で行えるため、売却を視野に入れる場合は利用を検討してみましょう。

【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

不動産鑑定士へ査定を依頼する場合は査定費用が発生するため、費用負担をどちらが行うのかなどを話し合い、状況に応じて検討してみましょう。

また、財産分与の裁判では固定資産税評価証明書を評価資料として提出し、価値が異なると主張する時には査定書の提出を求められるケースがあります。

まとめ

家や土地の時価が取得費用と譲渡費用を合計した額よりも高い場合は、譲渡所得が発生します。譲渡所得が発生しそうな場合には、控除の適用可否を確認して特例制度が利用できるか検討してみましょう。

また家を売却して現金に換え分与した場合には、「夫婦間の財産の清算」と判断されますので、原則税金はかかりません。また不動産の価値の判断が相手と異なる場合には、適正な価格を算出する不動産鑑定士に鑑定を依頼することをおすすめします。

この記事を参考に譲渡所得税や特例制度を理解し、スムーズに財産分与を進めていきましょう。

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田中 あさみ

田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。