東南アジアの国は日本よりも不動産価格が安く高い利回りを期待できることから、海外不動産投資の投資先として注目している方も多いのではないでしょうか。
平均年齢の若さや人口増加率、物件の安さなどから東南アジアの中でも特にフィリピンに着目している人も多いでしょう。
しかし、市場の将来性や期待利回りなどは、あくまでもフィリピン不動産投資の「良い側面」であり、実際に投資してみたところ、上手くいかなかった失敗例などもたくさんあります。
失敗例の多くは、いわゆる竣工リスクや保証賃料の不払いなど、事前の見極め不足に起因するものです。この記事では、フィリピン不動産投資の失敗例をご紹介するとともに、事前の対策について解説します。
目次
- フィリピン不動産投資、5つの失敗事例
1-1.投資先の物件(プレビルド)が完成しなかった
1-2.工事の出来が悪く、賃貸用不動産として運用できなかった
1-3.契約していた保証賃料を受け取れなかった
1-4.急に新興国内の通貨規制が変更された
1-5.為替の変動によって通貨が値下がりした - フィリピン不動産投資、3つのリスク対策
2-1.売主の竣工事例や物件の売れ行きを確認する
2-2.投資先物件の保証料率の妥当性を検討する
2-3.1つの国に資金を集中させず、他の国にも分散投資する - まとめ
1.フィリピン不動産投資、5つの失敗事例
投資のリスクを排除するもしくは小さくするためには、過去の失敗事例からあらかじめ対策を練っておくことが重要です。まずは、フィリピン不動産投資に関して過去の失敗事例や考えられる失敗などについてご紹介します。
1-1.投資先の物件(プレビルド)が完成しなかった
日本ではなかなか考えられないことですが、海外では完成前物件の工事が止まってしまった結果、工事が再開されずに放置されてしまうことがあります。フィリピンも例外ではなく、過去にコンドミニアムの工事が完了せずに凍結されてしまったプロジェクトがあります。
このような案件に一部でも資金を送金していたとすると、契約書に返金に関する規定がない限り支払い済みのお金が戻ってくる可能性は低いでしょう。
投資先のプロジェクトや仲介する不動産会社が本当に信頼できるのか、慎重に検討する必要があります。
1-2.工事の出来が悪く、賃貸用不動産として運用できなかった
工事が完了して無事引渡しを受けたとしても、工事の出来が悪く、賃貸に出せるような水準ではなかったということもあります。アフターサービスとして対応してもらえればよいのですが、引渡しを受けた後に売主の反応がなくなったケースも散見されます。
なお、結果的に施工の質が下がる原因として多いのは、下請けに別の東南アジアの会社などが入っていて、現場経験に乏しい職人が工事しているケースです。
海外の不動産は、日本と違って気軽に工事の状況を見に行けないので、現地の不動産エージェントに時々現場を確認してもらうとよいでしょう。
1-3.契約していた保証賃料を受け取れなかった
物件が完成しなかったという失敗以外に多いものとして、サブリース契約の保証賃料を受け取れなかったという失敗があります。
サブリース物件の保証賃料を支払う原資は、貸主が物件を運用して得た利益です。つまり、何らかの理由で賃貸付けがうまくいっていない場合に、こうした失敗が起こりやすくなります。
1-4.急に新興国内の通貨規制が変更された
新興国では、急な規制の変更によって物件を運用しづらくなることがあります。
例えばマレーシアでは、海外資本が大量に流入した結果、不動産の乱開発が進んで供給過剰が社会問題化しました。政府は乱開発を止めるために、外国人が買える不動産の最低額をRM100万(=約2,700万円)にする規制を敷きました。
規制が敷かれる前に投資していた人は、投資計画を見直さざるを得ない状況に追い込まれました。他国に目を向けると、同じようなことはオーストラリアでも起こっています。
フィリピンではまだ不動産価格が安く、今後海外資本が過剰に流入されてしまい、規制が厳しくなる可能性があると言えます。
1-5.為替の変動によって通貨が値下がりした
フィリピンの実例に基づく失敗事例ではありませんが、新興国の通貨は円やドルなどとは違って乱高下しやすい傾向があります。先進国と比較すると経済が確立していない部分も多く、外的な要因の影響を受けやすいことが原因の1つとなります。
新興国に限らず、海外へ資産を分散すると通貨の価格変動による為替リスクが生まれます。投資先の国の情勢や経済の状況を鑑みたうえで投資判断をする必要があるでしょう。
2.フィリピン不動産投資、3つのリスク対策
ここまでフィリピン不動産投資の失敗事例や考えられる失敗についてご紹介してきました。ここからは、ご紹介した失敗の可能性を減らすために取れる対策について解説します。
2-1.売主の竣工事例や物件の売れ行きを確認する
フィリピン不動産投資で未竣工による失敗を防ぐため重要なのは、売主と物件の見極めです。新興国では不動産会社も新しい会社が多く、日本で物件をプロモーションしているからといって信頼できる取引先かどうか判断ができません。
物件を選ぶときには、まずは売主の竣工事例を確認しましょう。竣工事例が多ければ、無理のない事業を進めている可能性が高くなります。
また竣工事例以外に、検討している物件の売り出し時期と売れ行きも確認しましょう。工事が途中で止まってしまう原因の多くに、プロジェクトの売れ行きが伸びなかった結果、資金繰りに行き詰ったというケースがあります。
東南アジアでの不動産建設には、完成前に物件を販売して得た資金をそのまま工事費に充当してしまう自転車操業のような状態のプロジェクトも見られます。販売開始から時間が経過しているにも関わらず全体の売れ行きが伸びていないプロジェクトは、途中で工事が止まってしまう可能性が高いと言えるでしょう。
プレビルドの物件(=完成前の物件)への投資を検討するときには、必ず売主の過去の実績と現在の物件の売れ行きについて確認するようにしましょう。
2-2.投資先物件の保証料率の妥当性を検討する
保証賃料を受け取れなかったという失敗の原因の一つに、無理な運用計画を見抜けなかったというポイントがあります。
売主は買主の興味を引くため、あえて高い保証料率を設定し、販売戸数を増やそうと考えることがあります。セールスのために無理のある保証料率を設定した結果、賃料保証が実現しなかったという例は少なくありません。
この失敗を未然に防ぐためには、立地エリアの賃貸需要・平均賃料・入居者の属性を見極めることが必要です。賃料保証付きの物件を検討するときには、以下のようなポイントを確認しましょう。
- どのような人を入居者ターゲットとしているのか
- 入居者ターゲットとなる人が周辺に多いと判断する根拠はどのようなものか
- 検討している物件と同タイプの周辺物件は賃料をいくらぐらいに設定しているのか
これらのポイントを確認する際は、フィリピンの不動産価格や賃料の相場を事前に調べておき、売主へ確認する前に知識を装着しておくことも重要です。
2-3.1つの国に資金を集中させず、他の国にも分散投資する
急な規制の変更や通貨の値下がりによる失敗などは、専門家でもあらかじめ予測することが困難と言えます。このため、失敗の可能性そのものを排除することは難しいでしょう。
為替リスクの対策の1つとして、フィリピン不動産へ投資資金を集中させずにその他の国にも分散投資しておくことが挙げられます。
日本の地方都市や他国の不動産のほか、不動産以外の資産などできる限り原資を分散させておくのが重要です。
まとめ
今回ご紹介した失敗事例に共通している点として、売主・物件・立地それぞれの見極めが不十分であったことに由来します。これらの見極めは、フィリピンであるかどうか、海外であるかどうかに関わらず、不動産投資において物件を検討するうえでも重要なポイントです。
新興国での投資では、売主や不動産会社の不備にも「新興国だから仕方ないか」などと考えてしまう方も少なくないでしょう。気を緩めずにしっかりとした判断を下すよう心がけることが大切です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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