戸建てはアパートやマンションに比べ個別性が高く、価格の査定が難しい事例も少なくありません。
形状が真四角や長方形ではない「非整形地」と呼ばれる土地に建てられている物件、法律が改正となり現行では違反建築となってしまった物件など多種多様であり、不動産会社選びにも注意する必要があります。
戸建ての売却額の査定を依頼する際、気をつけておくべきポイントはあるのでしょうか?また、不動産会社は何を基準に選んだら良いのでしょうか?
本記事では戸建ての売却査定で気を付けたいポイント10個と、不動産会社の選び方について解説していきます。
目次
- 戸建てを売却する前におさえておきたいこと
1-1.土地・建物の価格相場を調べる
1-2.測量が必要な場合がある - 戸建ての売却査定で気を付けておきたいポイント
2-1.敷地の広さや形状、境界線
2-2.外装や屋根・内装、耐震基準など
2-3.屋内の採光・通風・騒音・臭気・水周り・雨漏りなど
2-4.給排水管やボイラーなど設備の維持管理
2-5.駐車スペースやガレージ・物置などの付属設備
2-6.建物状況調査(インスペクション) の実施有無
2-7.リフォーム・リノベーションの履歴
2-8.建築基準法・都市計画法など法令の遵守
2-9.周辺施設の利便性・治安・嫌悪施設の有無など
2-10.物件のローン完済 - 戸建ての売却に強い不動産会社の選び方とは
- まとめ
1.戸建てを売却する前におさえておきたいこと
戸建ての売却査定を依頼する前には、土地や建物の価格相場を事前に調べておくことで、スムーズな売却活動ができる確率が高くなります。
また隣地との境界が明確でない場合、登記上の面積と異なる土地は測量を行ったほうが良いケースがあります。
1-1.土地・建物のおおよその価格相場を調べる
物件の売却を決めた後は、査定の準備として売却価格の相場を把握しておきましょう。
国土交通省の「土地総合情報システム」やポータルサイトなどで周辺の物件で築年数や駅からの距離など条件が似た物件を選び、成立価格を調べることでおおよその相場を調査することが可能です。
1-2.測量が必要な場合がある
築年数が古い戸建ては、土地の境界が隣と明確でないケースがあります。また測量を行ったのが数十年前である場合、測量技術が古く登記上の地積(土地の面積)と一致しない事例もあります。
隣地との境界が明確でない土地や、登記上の地積と実際の地積が異なる場合、後のトラブルに繋がる可能性があります。あらかじめ測量事務所・土地家屋調査事務所に測量を依頼し、測量図・境界確認書を作成することも検討してみましょう。
ただし、測量には費用が掛かるため、事情によっては検討が難しい場合もあります。この場合、隣地と境界を明確にする覚書を締結しておくなどの対策も有効です。
2.戸建ての売却査定で気を付けておきたいポイント
戸建ての売却査定で気を付けておきたいポイントを見て行きましょう。
- 敷地の広さや形状、境界線
- 外壁や屋根・内装、耐震基準など
- 屋内の採光・通風・騒音・臭気・眺望などの確認
- 給排水管やボイラーなど設備の維持管理
- 駐車スペースやガレージ・物置など付属設備
- 建物状況調査(インスペクション) の実施有無
- リフォーム・リノベーションの履歴
- 建築基準法・都市計画法など法令の遵守
- 周辺施設の利便性・治安・嫌悪施設の有無など
- 物件のローン完済
2-1.敷地の広さや形状、境界線
敷地の広さや形状は査定のポイントの1つとなります。「整形地」と呼ばれる真四角又は長方形の土地は評価が高く、三角形、形が整っていない「非整形地」は評価が低い傾向にあります。
敷地が接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接しなければいけない決まり)を果たしているかという点も、法令順守の事項の1つとして不動産会社に確認されます。
加えて隣地・道路との境界線、出窓や室外機などが越境していないかなどをチェックします。
2-2.外装や屋根・内装、耐震基準など
屋根や外壁にひびや、塗装の剥がれ、破損などが無いかを目視で確認されます。「建物が現行の耐震基準を満たしているか」というポイントも査定に影響を及ぼし、1981年5月31日以前に建設された旧耐震基準 の建物は価格が下がる傾向にあります。
2-3.屋内の採光・通風・騒音・臭気・水周り・雨漏りなど
屋内の主要な窓からの日当たりや風通しを調査します。臭気は建物外や水回り設備からも臭いがないか確認します。
時間帯や季節によっても左右されやすい項目ですので、売主は不動産会社に「いつどこで雨漏りが起こるか」等をヒアリングされます。事前に調査を行い、把握しておきましょう。
他には水回り設備の状態や雨漏りの有無、シロアリ被害、木造の場合は腐食部分が無いかを見られます。
2-4.給排水管やボイラーなど設備の維持管理
給排水管やボイラーなどの設備状況を確認します。修繕の予定がある場合には事前に伝えておきましょう。
2-5.駐車スペースやガレージ・物置などの付属設備
駐車場の有無や広さ、ガレージや物置など付属設備がある場合に調査を行います。
2-6.建物状況調査(インスペクション) の実施有無
建物状況調査(インスペクション)とは、建築士が既存の建物に対して基礎や外壁部分などにひび割れや雨漏り発生などの瑕疵(キズや欠陥)が無いか、給排水管の漏れや詰まりの有無などの調査を行う事です。
法律で義務化はされていませんが、インスペクションを行う事で購入希望者へのアピールとなり価格に影響を及ぼしたり、売主が負う契約不適合責任の期間を短く設定できる可能性があります。費用は5~10万円程度となります。
2-7.リフォーム・リノベーションの履歴
過去にリフォーム・リノベーションを行った場合は、いつどこでどのように行われたかを売主に確認します。履歴の分かる書類を準備しておきましょう。
2-8.建築基準法・都市計画法など法令の遵守
敷地の項でお伝えした接道義務を始め、建築基準法や都市計画法では建物の建ぺい率や容積率、高さ制限などの規定があります。建物や土地が現行の法律に沿っていない場合「違反建築」「既存不適格建築物」とみなされ価格が下がる可能性があります。
親から受け継いだ家などで築年数が古い物件では、旧法の基準で建設されており「建設当時は基準を満たしていたが今は違法物件となっている」という事例もあります。建築基準を満たしているか、確認をしておきましょう。
なお、接道義務を果たしていない場合、現在の建物を解体した後再建築を行う事が不可能となり、売却価格が下がる傾向があります。違反・既存不適格物件の可能性がある事を留意しましょう。
2-9.周辺施設の利便性・治安・嫌悪施設の有無など
戸建てを購入する方はファミリー層が多いため、保育園や小学校・中学校などの有無や治安の良さを重視する方も少なくありません。
また、駅からの距離が近い物件は利便性が高く価格が上がる傾向にあります。近隣にコンビニ・スーパー、病院や郵便局などの有無も利便性のポイントとなります。
嫌悪施設とは火葬場や墓地、下水処理場や風俗施設など避けられやすい施設を指します。事故物件として殺人事件や犯罪など、心理的瑕疵物件が近くにあった場合も影響を受ける可能性があります。
2-10.物件のローン完済
住宅ローンが残っている場合、物件の決済日にローンを一括返済することになります。ローンを完済できないと物件を売却できなくなってしまうため、査定の際に不動産会社が売主にローンについて尋ねるケースもあります。
ローンの返済予定表や残高証明書などを手元に準備しておきましょう。
3.戸建て売却に強い不動産会社の選び方とは
戸建て住宅はマンションやアパートなどに比べ、物件の個別性が高い特徴があります。マンションやアパートにはない庭や付属設備などがある物件も多く、査定時には物件の特徴を適切に価格に織り込む必要があります。
不動産会社にも得意分野と不得意分野があり、戸建てに強い会社を選ぶ事でより良い条件で売却できる可能性が高くなります。加えて、建物の調査実績がある会社に媒介を依頼することで、売却価格が高くなる可能性があります。
戸建の売却につよい不動産会社を探す際は複数の不動産会社へ査定を依頼し、査定結果や査定の根拠、担当者の対応力を比較してみましょう。複数社を比較することで、より良い条件で売却を進めてくれる不動産会社を探し出しやすくなります。
ただし、査定の結果を比較する時に価格だけで判断してしまわないように注意が必要です。不動産会社が提案する査定価格は物件の売出価格であり、案件の獲得を優先する不動産会社が相場よりも強気の価格を提示するケースがあるためです。
不動産会社の過去の実績や営業マンの提案力、売却戦略などを総合的に判断し、売却依頼をする不動産会社を慎重に検討してみましょう。
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まとめ
戸建て住宅はマンション・アパートと異なり、個別性が強く敷地も含むケースが多いため、査定で気をつけるポイントが多くなっています。
敷地の境界から建物の耐震基準や周辺環境、さらにはローン完済と確認しておくべき事項は多くありますが、不動産会社の協力も得ながら、一つずつ確認しておきましょう。
田中 あさみ
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