住宅ローンでは「夫が契約者、妻が連帯保証人になっている」というケースが多く、離婚時にローンを完済していない時は連帯保証人から外れることが出来るかどうかでトラブルになるケースも少なくありません。
連帯保証人から外れるには、新たな連帯保証人を立てる、または別の財産を担保に入れる事を条件に金融機関に現在のローンを継続してもらう事を承諾してもらえる可能性があります。
その他、金融機関の許可が得られない場合には、別の金融機関でローンを借り換える、売却するといった方法があります。
本記事では、このような住宅ローンの連帯保証人から外れる方法や手順、注意点を解説します。まずは連帯保証人のローン契約における立ち位置、役割から見て行きましょう。
目次
- 連帯保証人とは?
- 連帯保証人を外れる方法4つ
2-1.新たな連帯保証人を立てる
2-2.住宅ローンを借り換える
2-3.別の財産を担保に入れる
2-4.家を売却する - 連帯債務者・ペアローンの場合はどうする?
- まとめ
1.連帯保証人とは?
住宅ローンを組む際は購入した不動産を「物的担保」として設定しますが、連帯保証人や保証人は「人的担保」となります。
債務者がローンの残債を返済しない場合又はできなくなった場合、金融機関から連帯保証人が債務を返済する事が求められます。
離婚をする際、連帯保証人から外れておくことで、「離婚後に元配偶者がローンを返済せず、連帯保証人になり返済を求められた」といった後のトラブルを回避する事ができます。
離婚後にローンで購入した家に住まない場合・住み続ける場合でも元配偶者がローンを支払うという約束をしているケースでは、元配偶者が返済しないと支払い義務が発生します。これを避けるためには、連帯保証人から外れる手続きする必要があります。
なお、保証人は連帯保証人ほど責任が重くなく、民法上で「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」という3つの権利が保証されています。一方、連帯保証人は3つの権利が認められません。
この3つの権利の詳細は以下の通りです。
①催告の抗弁権
先に主債務者(元配偶者)に債務の返済を求める事です。催告の抗弁権を持っていない場合、金融機関は主債務者と連帯保証人のどちらに対しても債務の返済を要求する事が可能で、順番は問われません。
連帯保証人は金融機関に「元配偶者に請求してください」といった要求をすることはできません。
②検索の抗弁権
主債務者に返済能力や返済できるだけの資産があり支払いがある時、主債務者が返済する事を請求できる権利です。
連帯保証人にはこの権利が無いため、たとえ元配偶者が容易に返済できるケースでも金融機関に返済を求められた時は応じなくてはいけません。
③分別の利益
保証人が複数いる場合には全員が債務の全額を保証人の人数で割って補償する事を指します。
例えばローンの残債が2000万円で保証人が2人の場合、金融機関は1人あたり1000万の債務を請求しますが、連帯保証人は複数いた時でも1人あたり2000万円を請求することができます。
連帯保証人は、金融機関にとっては大きな損失である融資の貸し倒れを防ぐために設定するため、債権者にとって有利な制度となっています。
主債務者の収入だけでは不安がある際に連帯保証人を設定しますので、借入時と同じ状況であれば連帯保証人を外れる事は難しいと言えるでしょう。
ただし、主債務者の収入や社会的信用度が契約時より上がっている場合は、金融機関からの評価が上がり、以下の方法で連帯保証人から外れられる可能性が高くなります。
2.連帯保証人を外れる方法4つ
連帯保証人を外れるためには、新たな連帯保証人を立てる、ローンの借り換え、別の財産を担保に入れる、売却という4つの選択肢があります。
新たな連帯保証人は妻と同程度の信用度がある人物が求められ、ローンの借り換えは連帯保証人が外れた場合審査が厳しくなる傾向があります。
有価証券や別の不動産といった担保となる財産がある場合には、金融機関に新たな担保として設定してもらう事と引き換えに連帯保証人から外れられる可能性があります。
ただし担保となる財産が無い場合、金融機関に認められないケースも多いため、最終的には売却という方法を取る方も少なくありません。3つの方法を検討したうえで金融機関に相談し、物件の維持が難しい場合は売却という流れで検討してみましょう。
以下、連帯保証人を外れる方法をそれぞれ解説します。
2-1.新たな連帯保証人を立てる
元配偶者の親戚や知人等、新たな保証人を立てる事で連帯保証人を外してもらえる可能性があります。
例えば夫が主債務者で妻が連帯保証人の場合、夫の親戚にお願いする事が考えられますが、金融機関にとっては不払いのリスクによる損失を避けるために、妻と同等かそれ以上に返済能力のある連帯保証人を求める傾向があります。
与信評価の基準としては、年齢、年収、貯蓄額、勤め先企業の勤続年数・業績・企業規模などが該当します。主債務者の親が高齢である場合は、年齢の近い兄弟へ依頼するなど工夫をしてみましょう。
2-2.住宅ローンを借り換える
現在契約しているローンを一旦解約し別の金融機関で新たにローンを借り換え、単独名義または別の連帯保証人を立てることで連帯保証人から外れる事が可能です。
ただし手数料や印紙税等の諸費用がかかり、年収や物件の条件によっては借り換えが厳しいケースも存在します。連帯保証人を付けない場合は、返済期間の短縮や、金利の上昇など融資条件が悪くなる可能性もあります。
2-3.別の財産を担保に入れる
主債務者が所有する有価証券や別の不動産を担保として入れることで、連帯保証人を外れられる可能性があります。
ただし金融機関に「担保として十分である」とみなされる財産でなくてはいけません。
【関連記事】離婚の財産分与、土地や家を売却せずに持ち続ける場合の注意点は?
2-4.家を売却する
連帯保証人を外れるには、新たな保証人を立てる、借り換える、別の不動産を担保にするといった方法が検討できますが、これらの条件をクリアすることは簡単ではありません。担保となる別の財産や新たな保証人が見つからない方もいらっしゃることでしょう。
ローンを組みなおす際は、離婚により世帯年収が低くなっているケースもあり再度ローンの審査を通る事が困難であるケースもあります。このような場合、離婚時には家を売却する方も少なくありません。
ローンの残債が家の売却代金を下回る(アンダーローン)の際は、残ったお金(売却代金-ローンの残債)を分与する事になります。アンダーローンの場合は、物件の引き渡しと同時に抵当権が抹消できるため、不動産会社に仲介を依頼し売却することが可能です。
しかし、ローンの残債が家の売却代金より多い(オーバーローン)の場合、「任意売却」という手段で売却を進めることになります。任意売却は、金融機関の承諾した代金で家の抵当権を外し、売却代金で賄えなかったローンの残債は金融機関と相談して返済していく方法です。
物件がオーバーローン・アンダーローンどちらの状態であるかは、財産分与で必要な情報となります。まずは不動産会社へ査定を依頼し、どのような価格で売却が可能であるか調査をしておきましょう。
【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も
また、不動産会社へ査定を依頼する際は1社だけでなく、複数の不動産会社へ依頼し、それぞれの査定価格や査定根拠を比較しましょう。不動産会社の中には、あえて高い査定価格を提示して売却を促したり、低い価格を提示して売却差益を狙ったりするなど、悪質な業者が紛れている可能性があるためです。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
3.連帯債務者・ペアローンの場合はどうする?
連帯保証人と同じく共同名義である、連帯債務者である場合やペアローンのケースではどうすればよいのでしょうか?
連帯債務者は主債務者と同じ責任を負うため、家を維持するのであれば連帯保証人と同様に別の連帯債務者を立てる、ローンを借り換える、別の財産を担保に入れるといった方法を試し、不可能である際は売却するという流れになります。
ペアローンは夫婦それぞれの収入でローンを組むため、共働きの夫婦が「夫の収入だけでは融資に通らないから妻の収入を合算する」という背景のある方が多いでしょう。
そのため、借入時から年収が大幅に上がっていたり、地価上昇などにより不動産の担保価値が上がっていない限り、ローンの借り換え審査に通る事は非常に難しいと言えます。
4.まとめ
連帯保証人を外れるには上記3つの方法を検討し、不可能である場合は売却する形となります。ただし、ローン契約時から主債務者の収入や職業が変わっていない場合には、連帯保証人を外れる事は難しいでしょう。
また、物件を売却する・しないに関わらず物件のローン残債と売却価格は比較しておき、アンダーローンかオーバーローンであるかどうか把握しておくことも大切です。ローンの残債は金融機関へ問い合わせ、物件の査定は複数の不動産会社へ査定依頼をしましょう。
田中 あさみ
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