確定申告の時期が迫る中、仮想通貨で投資デビューをした方の中には確定申告をしたことがないという方も多いのではないでしょうか。給与をもらっているサラリーマンであっても、原則として給与以外の所得が年間20万円を超える場合等には確定申告が必要となります。所得は収入とは異なる方法で計算されるため、経費がある場合には所得は変わってくるなど、経験がない方には難しい仕組みのように感じてしまうことも多いでしょう。
特に、仮想通貨投資の場合にはいまだ法規制・税制に解釈の余地が多いため、初心者が理解するには難解なものとなっています。そこで、ここでは仮想通貨の確定申告の際に投資家が注意するべき3つのポイントを解説していきます。
目次
- 2020年の確定申告で制定された2つの損益計算の方法
- 仮想通貨の所得区分は株式投資やFXとは異なる「雑所得」
- キャンペーンでもらったビットコインで確定申告が必要になるケースも
- 仮想通貨投資の確定申告はまだまだ初心者にはハードルが高い
1. 2020年の確定申告で制定された2つの損益計算の方法
仮想通貨の損益計算の方法は、実は毎年少しづつ更新されています。大きな部分で変わることはないのですが、仮想通貨では、通常の金融商品にはないような新しい取引形態がどんどん出てきており、それらに追いつくためにも国税庁が毎年指針という形で損益計算の方法を開示しています。
【参照】仮想通貨に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和元年12月)
2020年3月申告期限の確定申告に関係する新しいこととしては大きく2つあります。どちらもやや細かい話となりますので、難しければ読み飛ばしても結構です。重要なのは毎年こういった計算方法の追加等があっても、クリプタクトのようにそれに対応した自動サービスがあるので頭を悩ませる必要はないということです。
1つ目の新しい点として、信用取引、レバレッジ取引について現物とは別に損益を計算するという点です。当たり前のようにも聞こえますが、これまで現物そのものを売買する信用取引やレバレッジ取引について、簿価を同一として計算するのか、信用取引だけ切り取って別に計算していいのか、あるいはすべきなのかはっきり決められていませんでした。例えば、現物のビットコインを1枚50万円で購入し、同じ取引所で信用売りで55万円でビットコインを1枚売却したとします。簿価を同一とする場合は、ここで5万円の利益が計上されます。一方で、現物取引と信用取引を別に損益計算する場合、50万円が簿価であるビットコインを1枚保有し、同時に55万円が簿価の信用売りのポジション、の2つを同時に持つことになります。2019年に出た指針によって、後者のように別に分けて計算するという指針が示されたたため、信用取引やレバレッジ取引についての計算方法が明らかとなりました。
2つ目の点は、仮想通貨の売却時に売却価格の5%を取得簿価として損益計算しても構わない、という点です。これは要するに、例えばビットコインを1枚100万円で売却したとして、この時の簿価を5万円としてみなして、95万円の利益として損益計算してもいい、というようなことを意味します。「なんでそんなことしたい人がいるの?」と感じられるかもしれませんが、おそらく背景としては、仮想通貨の取得簿価がわからなくなった、あるいはそもそもどういう経路で今仮想通貨を持っていたか全くわからないまま売却してしまった、といった場合に、それでも損益計算を行う必要があることから何らかの簿価を設定する必要があり、それが売却代金の5%ということで決められたものかと思います。
以上の2つが2020年3月での新しい話となります。しかしご覧の通り、そもそも細かい話で分かりにくいかと思います。クリプタクトのような自動サービスであれば、履歴をアップするだけで自動計算して結果がすぐにわかるので、計算方法を理解して、そのアップデートを細かく追いかける必要もないかと思います。
2.仮想通貨の所得区分は株式投資やFXとは異なる「雑所得」
仮想通貨投資を行う上で、税金についてはとても気になりますよね。損益計算自体の複雑さは自動計算サービスで解決できても、発生した税務上の損益に対して、どの程度の税率がかかかるのかは気になると思います。そこで、この税率と課税の仕組みについて解説したいと思います。
仮想通貨による利益は、原則として、「雑所得」に分類されます。そしてこの雑所得は、「総合課税」と呼ばれる方法で課税されるのですが、総合課税によれば、他の総合課税となる所得と合算して、適用税率が決定されます。他の総合課税となる所得でもっともわかりやすいものは、会社から受け取る給与所得となります。
よって例えば給与所得と仮想通貨の所得の2つしかない場合は、これらを合算した金額によって税率が決まります。厳密には合算した金額から各種控除などを行った後の金額が課税所得となりますが、イメージとして給与所得と仮想通貨の所得の合計を下記の表でみると税率の大まかなイメージがつかめるかと思います。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
【出所】国税庁ホームページ 「 No.2260 所得税の税率 」
株やFXなどの金融商品では、分離課税とよばれる課税の方法が適用され、それらの利益に対して20.315%(2019年12月現在)の税率が適用されます。雑所得となる仮想通貨は不利、税率が高いと言われるのはまさにこの部分で、もちろん所得によるのですが330万円以上の所得が発生する場合は20%以上の所得税率に加えて、住民税10%が発生するため、不利となります。
なお、確定申告を行う必要がない人で、雑所得(この場合仮想通貨の所得)が20万円以下の場合は確定申告自体行う必要はない、という話は聞かれたことがあるかと思います。しかし、その他の理由、例えば医療費控除など、で確定申告を行う場合は、仮に仮想通貨の所得が20万円以下であったとしても申告義務があるのでご注意ください。
3. キャンペーンでもらったビットコインで確定申告が必要になるケースも
仮想通貨は自由に個人間でやり取りすることができるので、友人からビットコインをもらったという人も多いのではないでしょうか。あるいは企業等から様々なキャンペーンでビットコインをもらったことがある人も多いかと思います。
気をつけなければならないポイントして、少なくとも企業等法人から受け取ったビットコインは円に換金していなくても、もらった時点で所得として認識する必要があります。
たとえば0.01枚のビットコインをキャンペーン等でもらった場合、その時点の時価が100円であれば、100円の所得として認識されます。よってこういった付与が繰り返し行われてある程度の金額になってくると、思ったより所得が多い可能性があるので、換金していなかったとしても、その他仮想通貨の売買損益などと合算すると20万円超の利益となり確定申告を行う義務が発生している可能性があるのでご注意ください。
個人からもらった場合の取り扱いは、少しややこしいのですが、贈与税の対象となるかどうかという点と、もらった仮想通貨を売却したときの売却損益をどのような簿価で計算するか、といった問題が出てきます。後者については、仮想通貨をくれた人の取得簿価を引き継ぐ場合などもある一方で、そもそもチップや投げ銭など取得簿価の引継ぎ自体困難なケースなどあります。こういったケースでは取得簿価は1で紹介した売却価格の5%とする、といったような対応になることも想定されます。
いずれにせよ、ただ「もらう」、という行為自体にも税金が発生する可能性があることをご注意ください。
仮想通貨投資の確定申告はまだまだ初心者にはハードルが高い
仮想通貨の税制は他の投資商品の税制よりも複雑で、仮想通貨投資家からはその難解さが投資のハードルとなっていることが指摘され続けてきました。投資家にはなかなか税法の正確なキャッチアップが難しい投資商品ですが、仮想通貨取引の損益計算をサポートしてくれるサービスもリリースされています。大きな変更点はもちろん細かな変更までもサービス側も確認しているため、投資家の皆さんがご自身で損益計算を行う上で、利便性が大変高いことがこうしたサービスのメリットです。
クリプタクトでは、複雑なシステムを「シンプルで使いやすい」ツールを提供することで仮想通貨やブロックチェーンを身近なものにすることを目的とし、仮想通貨投資家を支える取り組みを行っています。今後もサービスを提供する中で得た知見をもとに、仮想通貨投資家の皆様に役立つトピックについて解説していきます。
- 仮想通貨・暗号資産の確定申告をサポート 「クリプタクト」
斎藤岳
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