仮想通貨をトレードするためにはまず、仮想通貨取引所の口座開設が必要となります。
FX(外国為替証拠金取引)であれば数十年の企業競争の中で、取扱通貨ペアやスプレッド、入出金手数料が比較的均一になっています。しかし、新興市場の仮想通貨取引所はスペックや性能の違いが大きいため、サービス選定に注意を払う必要があります。
また、投資家の目的によっても選択肢が変わってきます。短期トレードを目的とするトレーダーであれば現物取引である必要もないので、ハッキングリスクなどを考慮しても仮想通貨取引所の差金決済取引(レバレッジ取引)も適当な選択肢になります。
そこで今回は仮想通貨取引所の選び方とタイプ別の便利な取引所について解説します。
目次
- 仮想通貨の「取引所」と「販売所」について
- 国内・海外の仮想通貨取引所
2-1. 初心者が利用するなら日本の取引所 - 仮想通貨取引所の選び方
3-1. トレードスタイル別の選定
3-2. 目的別に仮想通貨取引所を使い分けるのも有効 - 日本の仮想通貨取引所の比較
4-1. 取扱通貨数の比較
4-2. 取引手数料の比較
4-3. 取引所スプレッドの比較
4-4. 提供サービスの比較 - 短期取引に向く仮想通貨取引所
5-1. 取扱通貨数が多く、コストが最も安く抑えられる取引所
5-2. レバレッジ取引ができる取引所 - 長期投資に向く仮想通貨の取引所
- まとめ
①仮想通貨の「取引所」と「販売所」について
まずは仮想通貨における様々な運用方法について整理してみましょう。仮想通貨取引所は、「販売所」と「取引所」の2つのタイプの交換サービスを設置するケースが増えています。
「販売所」とは仮想通貨取引所を運営する会社とユーザーが売買を行うところで、「取引所」はユーザー同士が売買を行うところ、という違いがあります。一般的に販売所はスプレッドが大きく(実質的な手数料を含めるため)、売買コストは高いことがネックとなります。その代わり、販売所ならば提示されている価格で即時に売買できるメリットがあります。取引所は運営会社に支払う手数料は比較的小さいものの、ユーザー数と流動性により注文の約定までに時間がかかる場合もあります。
②国内・海外の仮想通貨取引所
仮想通貨取引所の種類について、国内外を問わずどのような形態の取引所が存在しているのかという点について解説します。以下は仮想通貨の現物を売買する際に利用できる取引方法の一覧です。
【国内】
- 仮想通貨取引所(金融庁から暗号資産交換所として認可取得済:31社 ※2021年10月時点)
- 場外取引(OTC)
【海外】
- 仮想通貨取引所
- DEX(分散型取引所)
- オンラインバンクの一部
- OTC取引プラットホーム
仮想通貨を使用したデリバティブ商品を含めると証券会社なども含まれ、より広範囲の販売形態があります。
初心者が利用するなら日本の取引所
ツイッターやニュースなどで話題となる場面も多く見受けられますが、海外の仮想通貨取引所とはどのようなところなのでしょうか?
海外の仮想通貨取引所を利用するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
・国内の仮想通貨取引所よりも取扱い通貨や通貨ペアが多い ・仮想通貨デリバティブの選択肢も豊富 ・100倍のレバレッジが利用できるところもある ・流動性が高く取引手数料を安い ・仮想通貨同士の銘柄も多い |
・日本居住者へのサービスを停止している取引所も多い ・日本居住者はクレジットカード決済が基本的にできない ・日本語での説明がない ・日本円建ての口座がないため、外国為替の変動リスクを伴う ・カウンターパーティリスクが大きい ・カスタマーサポートが英語で、やりとりはメールのみ ・日本の金融庁から警告を受けている業者も多い ・税務申告の書類作成が煩雑となる |
海外の仮想通貨取引所の方がトレードの自由度が高く魅力的に感じるかもしれませんが、サポートや言語の問題が大きく、結論としては初心者の方には日本の仮想通貨取引所をおすすめします。
③仮想通貨取引所の選び方
次に仮想通貨取引所の選び方について解説します。
仮想通貨取引所を選ぶ際にまず重要になるのが、希望する仮想通貨を取り扱っているかどうかです。巷で話題になっているアルトコインが必ずしも国内の仮想通貨取引所で取り扱われているわけではありません。なぜなら日本の仮想通貨取引所で上場するためには金融庁の審査を通る必要があるからです。
取引所の選定基準(プロジェクト、流動性など)を通過して、金融庁のリスト(通称:ホワイトリスト)に掲載されている仮想通貨はこちらのページでみることができます。
ただし、ホワイトリストに載っているからといって、価格上昇が見込める訳ではありませんので注意が必要です。
トレードスタイル別の選定
トレードスタイルによっても仮想通貨取引所の選択肢は変わってきます。トレードスタイルは短期投資と長期投資に分かれ、さらに短期投資はスキャルピング・デイトレード・スイングトレードに分かれます。
短期投資において注意すべき点は、トレード頻度が高いほど取引手数料が嵩むことです。短期取引の場合、最初にご案内した「販売所」と「取引所」のうち後者を選ぶ必要があります。販売所の場合、取引手数料がスプレッドに含まれているからです。また、トレード頻度が高いほど銘柄毎の「流動性」が重要になります。より多くの注文数を、より小さな価格インパクトで、より早く取引可能な取引市場を選ぶことが肝心です。
長期投資の場合は、単純に仮想通貨を保有するだけではなく、レンディングサービスやステーキングサービスの利用も同時に行うことで、年利で数パーセントの利益を狙う手段もあります。特にレンディングは、仮想通貨取引所で扱われているほとんどの通貨で利用可能になっている場合が多いです。
目的別に仮想通貨取引所を使い分けるのも有効
仮想通貨取引所の取扱い通貨や取引手数料、スプレッドには差があります。そこでトレードの目的別に仮想通貨取引所を使い分けると良いでしょう。例えば、短期取引には取扱通貨数が多く、スプレッドの狭い取引所を選択するのが賢明です。
ほとんどの仮想通貨取引所は口座開設や維持手数料が無料です。口座開設作業も簡単でスピーディーに完了するように設計されており、最短1日で仮想通貨投資を始められる企業が増えています。
④日本の仮想通貨取引所の比較
次に実際に仮想通貨取引所を選択するために重要な項目に関して、主要な仮想通貨取引所を比較してみます。
取扱通貨数の比較
まずは取扱通貨数の比較です。
仮想通貨取引所 | 取扱通貨数(販売所) | 取扱通貨数(取引所) | BTC建て |
GMOコイン | 14種類 | 8種類 | × |
コインチェック | 16種類 | 5種類 | 〇 |
DMM Bitcoin | 6種類 | *12種類(レバレッジ取引) | 〇 |
BITPoint | 8種類 | 7種類 | × |
bitbank | 9種類 | 11種類 | 〇(取引所) |
SBI VCトレード | 7種類 | 7種類 | × |
Zaif | 8種類 | 13種類 | 〇(取引所) |
ご覧のように販売所で取り扱われている通貨数と取引所で取り扱われている通貨数が必ずしも同じというわけではありません。
また、取引通貨ペアに関しては基本的には日本円と仮想通貨の通貨ペアとなりますが、一部の仮想通貨取引所ではビットコインと他の仮想通貨のペアなどがあるため、取扱い通貨数より取引通貨ペアの方が多い場合があります。
2021年10月時点で、販売所での取引通貨数が多いTOP3はコインチェック、GMOコイン、bitbankで、取引所での取引通貨数が多いTOP3はZaif、bitbank、GMOコインです。
取引手数料の比較
続いて取引所に関する手数料の比較です。
口座開設手数料はどの仮想通貨取引所を無料で、Zaifのみ口座維持手数料が必要です。取引手数料については、販売所での販売手数料はスプレッドに含まれ無料と表記されているため、ここでは取引所における取引手数料と出入金に関する比較をしていきます。
取引所取引においては、「成行注文」と「指値・逆指値」注文の2種類の注文方法により、手数料が異なります。手数料に「-」がついている場合は、その注文方式で約定した際に、ユーザーが手数料を報酬として受取れる事を意味します。
ちなみに、メイカーとは「流動性を提供する注文」で、その注文が取引板に並びます。テイカーとは「既に板に並んでいる注文を約定させる注文」の事を言います。
仮想通貨取引所 | メイカー | テイカー | 入金手数料 | 出金手数料 |
GMOコイン | -0.01% | 0.05% | 無料 | 無料 |
コインチェック | 無料 | 無料 | 無料~入金額×0.11% + 495 円(クイック入金50万円以上) | 407円 |
DMM Bitcoin | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
BITPoint | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
bitbank | -0.02% | 0.12% | 無料 | 550円/770円 |
SBI VCトレード | 無料 | 無料 | 無料 | 50円/160円/250円 |
Zaif | 無料 | 0.1%~0.3% | 495円/605円 | 385円/770円 |
取引手数料に関しては、最低が-0.02%で最大0.3%とかなりの差はあります。
入金手数料や出金手数料に関しては、GMOコイン、DMM Bitcoin、BITPointが無料で、Zaifはどちらも数百円の手数料が必要だということがわかります。
取引所スプレッドの比較
次に短期トレードに重要なスプレッドの比較です。ただし、この数字はあくまで概算と捉えてください。
というのもFXトレードにおいては公示されているスプレッドは、95%以上の時間に渡り守られていますが、仮想通貨取引の場合はスプレッドの公示がなく、同じ仮想通貨取引所でも秒単位で大きく変化するからです。
仮想通貨取引所 | BTC/JPY |
GMOコイン | 2,754円/0.05% |
コインチェック | 945円/0.02% |
DMM Bitcoin | 6,250円/0.13% |
BITPoint | 15,723円/0.31% |
bitbank | 1,253円/0.02% |
SBI VCトレード | 6,809円/0.14% |
Zaif | 4,635円/0.09% |
あくまで筆者計測時の瞬間的な数値ではありますが、比較的スプレッドが低い取引所としては、GMOコイン、コインチェック、bitbankと考えて良いでしょう。
また、販売所のスプレッドに関しては数十倍となる場合が多いです。
提供サービスの比較
最後に、 レバレッジ取引やレンディングサービスの可否などについての比較です。
仮想通貨取引所 | レバレッジ取引 | レンディング | ステーキング | 積立投資 | NFT |
GMOコイン | 暗号資産FX 取引所(レバレッジ取引) |
〇 | 〇 | 〇 | ※〇(Adam byGMO) |
コインチェック | サービス停止中 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
DMM Bitcoin | 〇 | × | × | × | × |
BITPoint | 〇(新規受付停止中) | 〇 | × | × | × |
bitbank | × | 〇 | × | × | × |
SBI VCトレード | × | 〇 | × | × | × |
Zaif | × | × | × | 〇 | × |
新規ユーザーでもレバレッジ取引が利用できる仮想通貨取引所は、「GMOコイン」、「DMM Bitcoin」の2ヵ所となります。
また、 レンディングサービスは7ヵ所中、5ヵ所で利用することができますが、ステーキングと仮想通貨積立が可能な仮想通貨取引所は少なくなっています。
⑤短期取引に向く仮想通貨取引所
次に短期取引に向く仮想通貨取引所について解説します。
取扱通貨数が多く、コストが最も安く抑えられる取引所
短期取引において取扱通貨数の多さはトレードチャンスの多さにつながります。比較した仮想通貨取引所の中で短期取引の舞台となる「取引所」の取扱通貨数の上位3つを選ぶと以下の順となります。
- コインチェック
- Zaif
- DMM Bitcoin
次にスプレッドが安く抑えられる取引所として上位三つを選ぶと以下の順となります。
- コインチェック
- bitbank
- GMOコイン
この二つの観点と取引手数料・出金手数料を総合して判断すると、以下の順でお勧めできます。
この3つの仮想通貨取引所は短期取引において最もコストが大きくなるスプレッドが小さく、短期取引を行う取引所としておすすめできる仮想通貨取引所です。
しかし、スプレッドは実際には秒単位で変化があるため、3社の中からトレードする度に最もスプレッドが小さくなっている取引所を選ぶという使い方をすると良いでしょう。
レバレッジ取引ができる取引所
仮想通貨に関してはボラティリティが大きいためレバレッジ取引は必ずしも必要ありませんが、リスクを覚悟の上で少ない資金で急速に投資資金を増やしたい際の選択肢としては最適です。
仮想通貨のレバレッジ取引は現在停止中の仮想通貨取引所が多く、レバレッジ取引ができる仮想通貨取引所は非常に少ない現状となっています。今回比較した仮想通貨取引所の中では以下の取引所が候補となるでしょう。
レバレッジ取引を検討している方は、どちらも口座開設をすることをお勧めします。スプレッドに関しては、GMOコインの方が狭いですが、取扱通貨数がDMM Bitcoinの方が多いです。そのためGMOコインで取り扱ってる通貨に関してはGMOコインで取引し、それ以外の通貨に関してはDMM Bitcoinで取引するのが良いでしょう。
⑥長期投資に向く仮想通貨の取引所
最後に長期投資に向け仮想通貨取引所についておすすめを紹介します。
長期投資をする上で是非とも検討したい投資方法としてレンディング・ステーキング・積立またNFTへの投資があります。これらすべての運用方法が利用できる仮想通貨取引所はGMOコインとコインチェックの2ヵ所です。どちらも全ての取り扱い通貨においてレンディングサービスを行っています。
長期保有目的で仮想通貨に投資する場合は、長い投資期間の間に仮想通貨を貸し出しすることでキャピタルゲイン以上の利益が期待できます。ステーキングに比べて料率は低いですが、国債や定期預金よりもはるかに高い利回りであるため是非とも利用したいサービスです。ステーキング可能な通貨として、GMOコインはテゾス(XTZ)、コインチェックはリスク(LSK)に対応していることを抑えておきましょう。
仮想通貨積立に関してはどちらの取引所でも、少額から自分で決めた間隔で定期的に積立を行うことができます。
NFT投資は直接仮想通貨を取引するのではなく、NFT銘柄を購入してキャピタルゲインを狙う投資方法です。コインチェックは2021年3月に仮想通貨取引所として初めてNFTマーケットプレイスをオープンしました。GMOコインは直接NFTマーケットプレイスを提供しているわけではありませんが、GMOインターネットグループが2021年8月に「Adam byGMO」をオープンさせています。
⑦まとめ
仮想通貨の取引所を検討する際は、いくつかの取引所に口座開設をしてみて実際の使い勝手やサービスの良し悪しで使い続ける仮想通貨取引所を選択する方法がおすすめです。
ほとんどの仮想通貨取引所において口座維持手数料は必要ではないため、気軽に口座開設してみると良いと思います。
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中島 翔

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