カーボンクレジットの事前購入券を売買できる「Solid World」は、カーボンオフセット市場の急拡大のきっかけとなる!?

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目次

  1. カーボンオフセットとは?
  2. Solid Worldとは?
  3. カーボンオフセット市場の転換点を作り出すか

カーボンオフセットとは?

Solid Worldは、ブロックチェーンを活用したカーボンクレジットの売買プラットフォームです。2021年にヨーロッパのエストニアで設立された会社で、多数の検証やパートナー探しを経て、間もなく正式リリースを迎える予定です。

ブロックチェーンを活用したカーボンオフセットの売買プラットフォームはここ最近盛り上がってきている領域の1つであります。その盛り上がりの理由は「カーボンオフセット市場の盛り上がり」と「ブロックチェーンの親和性の高さ」にあります。Solid Worldを理解する前に、まずはこの「カーボンオフセット市場」について解説します。

「カーボンオフセット」はその名の通り、カーボン(炭素)をオフセット(埋め合わせ)することです。現在、地球では地球温暖化を始めとした様々な環境問題に直面しており、その大きな原因の1つが二酸化炭素だと言われています。そこで、各国で協力して二酸化炭素の排出量を減らしていくことを決めました。そして、具体的な削減目標を定めたものが1997年に策定された「京都議定書」であり、2015年に策定された「パリ協定」です。

すごく噛み砕いて言えば「このまま二酸化炭素を排出し続けると地球がやばいから、各国で数値目標を定めて削減していこうね!」という取り決めです。

パリ協定における目標達成は義務ではありませんが、国家間の取り決めである以上、そこに注力しなければ示しがつきません。そして、ヨーロッパやアメリカの若者世代を中心として、環境に良い企業の商品やサービスを利用する動きが活発になってきています。それに伴い、環境に配慮した企業の躍進やそういった企業に投資するESG投資なども活発になってきています。つまり、これから数十年の世界的なメガトレンドとして「二酸化炭素の排出量の削減」が存在します。

しかし、現実的には、今までのビジネスモデルが存在する以上、急に二酸化炭素の排出を削減できる国家や企業は多くありません。そこで生まれたのが「カーボンオフセット」市場です。

自社や自国で削減できない部分をすでに削減に成功している企業や国家から購入することで目標達成を目指すやり方です。これは環境に配慮した企業や国家からすれば新しい収益源となり、目標達成ができない国家や企業からすれば、お金を払うことで貢献ができると言うお互いにとってメリットのある取引です。

このカーボンオフセット市場は急激に成長しており、2050年までに現在の15倍以上に拡大すると言われています。


しかし、このカーボンオフセット市場には幾つかの大きな課題が存在します。

その1つが「価格の正当性と取引の正当性の担保」です。要するに、二酸化炭素の排出量という目には見えないものを売買しているので、不正を働き、カーボンオフセットと偽って不当に販売して儲けたり、目標達成を誤魔化すために偽のデータを偽造してカーボンオフセットを購入していることにしているなど、取引の正確性を担保することが難しい問題がありました。

そしてもう一点が「取引の流動性の低さ」です。カーボンオフセット市場が盛り上がっているとはいえ、まだまだ参入している事業者が少ない以上、自社がカーボンオフセットを販売しようと思った時、逆に購入しようと思った時、そのマッチングが難しいという問題です。これは流動性が低い状態で、基本的に売買が成立しづらい流動性が低い資産は価格がつきづらく、盛り上がることはありません。ユーザー数が100人だけのメルカリをイメージしてみてください。売買が全く成立しないと、売る気もなくなるし、転売を見越して購入できていたモノがあったとしたら、それを購入する気もなくなるはずです。流動性が低いとこの問題が起こります。

この「取引の正当性の担保」と「流動性の提供」を一気に解決する手段がブロックチェーンです。ブロックチェーンを活用し、カーボンオフセットの取引をNFTを活用して実施すれば、取引の透明性もトランザクションの追跡も可能で、流動性が提供できます。
よって、ブロックチェーンによるカーボンオフセット市場は非常に盛り上がっているというわけです。

そして、今回紹介する「Solid World」はこのカーボンオフセット市場のプロダクトであり、上記で紹介した「取引の正当性の担保」と「流動性の提供」以外に存在している、もう一つのカーボンオフセット市場の大きな課題を解決します。

Solid Worldとは?

あらためて、Solid Worldはブロックチェーンを活用したカーボンクレジットの売買プラットフォームです。その最大の特徴は「カーボンクレジットの事前購入を可能にする点」です。どういうことか。ここにもカーボンオフセット市場(カーボンクレジットの売買)に眠る大きな課題が存在します。

それは、カーボンクレジットを販売する事業者が資金を調達すること、持続可能なカーボンクレジットの販売事業を行うことが難しいということです。簡単に言えば、カーボンクレジットの販売には時間がかかります。たとえば、農家が土壌を改善したり、土地所有者が木を植えたりした場合、カーボンクレジットの販売が確認されるまでに最大5年かかることがあります。販売できるまで1円の売上にもならず、むしろ維持費や活動費だけがかかり続けていく活動を5年間続けていくことは、事業的に難しいでしょう。また、販売前の期間を耐えぬくための資金を調達する必要もあります。(※)そうなると、カーボンクレジットの販売に事業者として参加するインセンティブが少なくなり、結果的にカーボンオフセット市場が縮小し、二酸化炭素の削減目標の達成が遠ざかります。

※編集部注釈:カーボンクレジット事業は、現在の事業や保有している資産に工夫を加えてクレジット化し商品として販売するなど、本業のサブ的な位置づけで運営されるケースが一般的です。対して、Solid Worldはカーボンクレジット事業自体をメイン事業にできるようにすることまでをも視野に入れた野心的なプロジェクトとも言えます。

Solid Worldではこうした問題を解決します。カーボンクレジットの事前購入を可能にし、カーボンクレジット事業者(例えば農家)が事業を開始する段階で将来的なカーボンクレジットの販売価格を予想し、事前購入券として販売することが可能になります。これによって、事業者側は先んじて資金調達に成功し、事業を運営していくことが可能になります。

実は現在も「先渡取引」という名前で「将来のある地点で特定の価格で購入できる権利の取引」は存在しますが、これは非常に流動性が低く、あまり活用されていません。例えば、A農家のカーボンクレジットの販売権を先渡取引で購入したとしても、A農家が倒産する確率もあるわけです。しかも、リターンが帰ってくるのは5年後以降となると、あまりにもリスクが高く購入するのを躊躇います。

Solid Worldはカーボンクレジットの事前購入券を売買できる(先渡取引)と同時に、その事前購入券の売買も可能にします。また、支払い保証も付随しており、購入したカーボンクレジット事業者から支払いがされなかったとしても、購入者は同等またはそれ以上の品質の代替クレジットが提供されます。つまり、購入者は事前購入したとしても、途中でNFTとして売却することも可能で、万が一の時のリスクヘッジもされているということです。この仕組みによって、カーボンクレジットの事前購入権を安心して購入する人が増え、事業者側は先んじて資金調達をした上で運営に望めるので事業モデル的にも安定します。これらの仕組みを通じて、カーボンオフセット市場を拡大させていくことを目的としています。

カーボンオフセット市場の転換点を作り出すか

ここまでカーボンオフセット市場について、そしてその中で注目されている具体的なプロジェクト「Solid World」について解説してきました。Solid Worldは非常に注目されており、mastercardなどのパートナー企業も続々と発表されています。執筆時点の2023年4月では、もうすぐプロダクトがローンチされることが発表されています。

引用:Solid World

Solid Worldが優れている点は、全ステークホルダーのインセンティブをしっかりと考え抜いて、調整している点にあります。環境問題の解決、その中でも二酸化炭素排出量の削減は、世界的に叫ばれている内容ですし、世論も高まってきています。

しかし、その動きが一部の環境問題への意識が高い人のボランティアや善意で行われているうちは、本当の意味で社会を変える動きにはなり得ません。なぜなら、事業として成立しない領域では流れてくる資金の量が桁違いだからです。端的に言えば、儲かる仕組みがないとその業界に大きなお金が流れることはありません。善意や想いで社会を変えることはできません。残酷なようにも見えますが、これは決して悪いことではありません。企業にも抱えている社員がおり、その社員には家族がおり生活があります。利益にならないことにお金を使い、その社員に不利益を被る活動をすることは健全ではありません。

Solid Worldは壮大な大義を持ったプロジェクトでありながら、この問題に真摯に向き合っています。カーボンオフセット市場をいかにビジネスとして魅力的な市場にするかという観点で、ブロックチェーンを活用してその仕組みを作り上げようとしています。事業者には先んじて資金調達を可能にし、購入者(投資家や企業)には最大限の流動性と保証を提供することで投資商材としての魅力を高めています。

大前提、カーボンオフセット市場は急成長している市場であるため、事業者も投資家も参入したい想いはあったはずです。しかし、双方にとってあまりにリスクが大きすぎるために参入が躊躇されていました。これは、株式会社・VC・エクイティファイナンスという仕組みを作り、スタートアップに挑戦するハードルを劇的に下げた行為に近いかもしれません。資金調達のハードルを下げ、全ステークホルダーのインセンティブを設計することで、参入者が増え、結果として市場が拡大します。

Solid Worldはまさにカーボンオフセット市場のビジネスモデルを転換させることを目指したプロジェクトです。今はまだ一市場の小さなプロジェクトかもしれませんが、この先さらに環境問題やカーボンオフセット市場が注目されていく中で、業界を作ったと言われるプロジェクトになっていくかもしれません。

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