米アップル(ティッカーシンボル:AAPL)は4月11日、二酸化炭素(CO2)削減を目指す森林プロジェクトに直接投資するために立ち上げたファンド「Restore Fund(再生基金)」の規模を従来から倍増となる最大4億ドル(約540億円)に引き上げると発表した(*1)。これにより、高度で、スケーラブルな、自然を基盤とした炭素除去の取り組みを加速させる方針だ。
2021年4月、アップルとしては初となる森林再生ファンドを立ち上げた。米金融大手のゴールドマン・サックス(GS)や環境NGOのコンサベーション・インターナショナルも出資する。アップルは再生基金を通じ、極めて重要な生態系を保護・回復し、自然に根ざした炭素除去ソリューションの拡大を図る。この取り組みは、既存のテクノロジーでは削減もしくは回避することができない残余排出への対応に寄与する。アップルは、30年までに全排出量の75%を削減し、残りは高度な炭素除去で解決する方針を示している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などが指摘しているように、気候変動に対処して世界的な気候目標を達成するには、炭素除去が非常に重要なツールとなる。
森林再生ファンドの拡大の一環として、HSBCアセットマネジメントと英投資顧問会社ポリネーションの合弁会社クライメート・アセット・マネジメントが管理する新しい基金に、追加で最大2億ドルを投資する。新たな投資ポートフォリオを構築し、財務的リターンを生み出すと共に、ピーク時に年間100万トンのCO2を削減することを目指す。
アップルとクライメート・アセット・マネジメントは、持続可能な方法で管理された農業活動から収入を得る自然農法プロジェクトと、大気から炭素を除去・貯留して極めて重要な生態系を保全・再生するプロジェクトという、2つの異なる種類の投資を行う。再生基金を通じて行われる全ての投資に、社会および環境に関する厳格な基準が適用する。
再生基金プロジェクトのインパクトを正確にモニタリングおよび測定するため、アップルは、Space Intelligenec社のCarbon and Habitat MapperやUpstream Tech社のLensプラットフォーム、Maxar社の高解像度衛星画像など、革新的なリモートセンシング技術を活用し、プロジェクト地域における生育地および森林炭素地図を作成する。これらの詳細なマップにより、投資を実行する前に、プロジェクトがアップルの高い水準を満たしていることを確認し、長期にわたってプロジェクトの炭素除去の影響を数値化および検証できるようにする。また、地上でのモニタリング機能を向上すべく、iPhoneでLiDARスキャナを使用することも模索する。
アップルは革新的な製品・サービスを提供し、世界中で多くのユーザーに選好されている。業績拡大に加えて株主還元にも積極的であり、時価総額は世界最大を誇る。IT業界で世界をリードする同社は、気候変動分野でも先進的な取り組みを推進する。30年までに同社製品の脱炭素化を目指す中、23年4月には、250社以上のサプライヤーが、30年までにアップル製品の製造の全てにおいて再生エネルギーを使用することにコミットしていると発表した。また、25年までに全電池に再生コバルトを使用し、責任ある原材料と再生素材の調達を推進する。
【参照記事】*1 アップル「Apple expands innovative Restore Fund for carbon removal」
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