田中貴金属グループとJEPLAN、貴金属回収の脱炭素化で提携 CO2排出量9割削減へ

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田中貴金属グループ(東京都中央区)は7月31日、貴金属回収プロセスにおけるCO2排出削減と有機物の再資源化を目指し、ケミカルリサイクル技術を持つJEPLAN(神奈川県川崎市)と事業提携すると発表した。従来の焼成処理に代わるケミカルリサイクル処理の導入により、対象工程でのCO2排出量を約90%削減できる見込みだ。

田中貴金属は1885年の創業以来、希少資源である貴金属のリサイクルに取り組んできた。顧客から回収する工程廃棄物のうち、プラスチックなどの有機物を主成分とし貴金属が付着・吸着したものについては、これまで焼成処理により有機物を除去し、残った灰から貴金属を回収してきた。しかし、有機物の燃焼過程で発生するCO2の削減が脱炭素社会の実現に向けた課題となっていた。

今回の提携により、JEPLANが持つポリエチレンテレフタレート(PET)を対象とした独自のケミカルリサイクル技術を活用する。シリンジやウエスなどのプラスチック廃棄物を分子レベルに分解し、不純物を除去することで、貴金属の回収とプラスチックの再生を同時に実現する。この新プロセスでは、対象となる貴金属回収工程におけるCO2排出量を従来の約10%に抑制できるという。

サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行は、世界的な潮流となっている。EUでは2024年7月に「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」が発効し、製品のリサイクル性向上が義務化された。日本でも2024年8月に第五次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定され、循環経済への移行が国家戦略として位置づけられている。経済産業省の試算では、国内のサーキュラーエコノミー関連市場規模は2030年に80兆円、2050年には120兆円に達する見込みだ。

貴金属リサイクル分野では、電子機器の普及により都市鉱山からの回収需要が増加している。環境省によると、日本国内の都市鉱山に眠る金の量は約6,800トンと世界有数の埋蔵量を誇る。一方で、リサイクルプロセスにおける環境負荷の低減は業界全体の課題となっており、今回の取り組みは先進事例として注目される。

田中貴金属は2024年度の連結売上高8,469億円、従業員5,591人を擁する国内トップクラスの貴金属取扱企業。JEPLANは2007年設立で「あらゆるものを循環させる」をミッションに掲げ、独自のPETケミカルリサイクル技術で石油由来と同等品質の再生素材を生産している。両社の専門技術を組み合わせることで、貴金属とプラスチックの両分野で資源循環を実現し、脱炭素社会への貢献を目指す。

【参照記事】田中貴金属グループ、脱炭素・循環型社会実現に向けてJEPLANとの事業提携を発表

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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