EU、フランスの廃棄物分別表示規制を域内単一市場違反として提訴

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欧州委員会は7月17日、フランスが実施している廃棄物分別に関する表示義務が欧州連合(EU)の単一市場原則に違反しているとして、EU司法裁判所に提訴することを決定した。フランス独自の表示要件が、他のEU加盟国からの製品流通を妨げる貿易障壁になっているとの判断による。問題となっているのは、フランス国内で拡大生産者責任(EPR)制度の対象となる家庭用製品に義務付けられている「Trimanロゴ」と分別方法を示す「infotri」表示だ。

欧州委員会によると、フランスの表示規制は、他のEU加盟国で合法的に製造・販売されている製品に対して追加的な要件を課すものであり、EU機能条約第34条が禁じる「数量制限と同等の効果を持つ措置」に該当する。現在、廃棄物分別に関する消費者向け表示についてEU統一ルールが存在しない中、フランスは事業者に対して同国市場専用の表示調整を強いており、これが域内貿易の障壁となっているという。さらに、消費者への情報提供には、より貿易制限的でない代替手段が存在することから、現行規制は過度に厳格であると指摘している。

今回の提訴に至る経緯として、欧州委員会は2023年2月に正式通知書を送付し、2024年11月には理由付き意見書を発出していた。しかし、フランスが依然としてEU規則違反の状態にあると判断したため、司法裁判所への提訴を決定した。また、フランスは単一市場透明性指令(2015/1535)に基づく事前通知義務も怠っており、規制案の段階で欧州委員会への通知を行わなかったことも違反事項として挙げられている。

この問題は、EUが進める循環型経済への移行と単一市場の円滑な機能という2つの重要政策の間で生じた摩擦を浮き彫りにしている。新たな包装・包装廃棄物規則では、将来的に実施規則を通じて統一ルールが策定される予定だが、それまでの期間、各国独自の規制がもたらす市場の分断が課題となっている。欧州委員会は最近発表した政策文書「不確実な世界における欧州単一市場」でも、欧州企業が単一市場の恩恵を享受する上での障壁除去への強い決意を表明しており、今回の提訴もその一環として位置づけられる。

【参照記事】Commission refers FRANCE to the Court of Justice of the European Union regarding its labelling requirements for waste sorting

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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