今回は、音楽の分野でNFTを活用した新しいファンとのコミュニケーションの模索を図るプロジェクトを行うFracton Venturesから寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- NFTとは何か
1-1. NFTはほぼ全て共通規格ベースに則って作られる
1-2. NFTはイーサリアムまたはイーサリアムと互換性/類似した機能をもったブロックチェーンで発行されることが多い - NFTは高級なもの?バブル?
- NFTの面白さとは
NFT、最近よく耳にする読者も多いのではないでしょうか。Non-Fungible Tokenの略語で、簡単に言えばブロックチェーンを使って作られた一点モノのトークンといった意味です。一点モノのトークン?なるものがなぜ最近ブロックチェーン業界で話題になってきているのでしょうか。
今回はそんなNFTの文化・面白さ・手軽さを取り上げてみたいと思います。読んでいただいた方が、NFTは遠いブロックチェーンの分野でおきている”ナニカ”から、自分も買ったり・作ったり・売ったりできるそんな分野であるとの理解に至れば、とても嬉しいです。
1. NFTとは何か
さっそくNFTについて深堀をしていきましょう。いくつかNFTにおける重要な点をご紹介します。
NFTはほぼ全て共通規格ベースに則って作られる
イーサリアムにはERC-721と呼ばれる主要規格があり、多くのNFTはこの規格、または派生系のERC-1155のような規格に則って作られています。NFTとはたった一つのシリアルナンバーのついたようなイメージを持てる、固有のトークンを指します。アイデア次第でさまざまなデータを特別な固有のデジタルトークン形式で発行でき、ほぼその規格は統一化されています。
現在確認できている中では以下のようなタイプがあります。
NFTで表現できるコンテンツ | 内容・事例 |
NFTアート | イラストや写真データと紐づけたNFT。下記のBeepleなどもこのタイプ。 |
NFTソング | MP3などの音楽データと紐づけたNFT。 |
NFTビデオ | アートとソングをの掛け合わせなどが多いショートビデオをNFT形式にしたもの |
NFTゲームアイテム | ブロックチェーンゲームのゲーム内アセットやキャラクターをセカンダリー市場で売買したり、他のゲームで遊べたりする為トークン化しているもの(例:Axie Infinityなど) |
NFTバッジ | NFT形式のバッジ(例:Fractonの配布NFT、CoinGeckoのイベント限定配布NFT、イーサリアムカンファレンスDevcon限定のNFT等) |
NFTチケット | NFTを所有していることで、コンサートなどにアクセスできる鍵として使うアイデア。 |
イーサリアムまたはイーサリアムと互換性/類似した機能をもったブロックチェーンで発行されることが多い
NFT最大のマーケットプレイス(中古品市場におけるメルカリのようなもの)はOpenSeというウェブサイト・サービスで、NFTの発行(プライマリー)、NFTの再販売(セカンダリー)双方が行えるウェブサイトです。定額の出品の他、オークション形式を採用することもできる点、また何より長年この分野に取り組んできた先駆者である点が評価され、多くのユーザーに利用されています。
2. NFTは高級なもの?バブル?
いやいや、NFTは高級なものでは決してありません。確かに先日ニュースになったBeepleのNFTアート「The First 5000 Days」は約70億円相当で落札をされました。でもNFTは必ずしも高い価値や資産性を持つものに限りません。
この記事を書いている弊社Fracton(フラクトン)では、2021年2月にこんな実験的な試みを行いました。
- 自社のプレスリリース配信と共にNFTバッジを発行し、配布する
- NFT自体は共通規格であるERC-721で発行する
- NFTバッジデザインはCrypto Artist(クリプトアーティスト)のMera Takeru(メラ・タケル)氏とのコラボレーションによるデザインとして発行する
- NFT発行は大手ブロックチェーンカンファレンスDevconなどでも使用されているPOAPと呼ばれるサービスを用いて配布を行う
これにより以下のようなデザインのNFTバッジが発行されました。
このバッジの発行意図は何だったでしょうか。今まで明かして来ませんでしたがこちらの記事でその意図を初めて明かしてみます。
- NFT発行・受け取りをどのくらいの方が行えるのかデータを取る為の社会実験
- NFTをお渡しすることで、2021年2月にFractonの活動に関心を持っていた100名のウォレットアドレスを追跡可能な形で”マーキング”すること
この2つでした。
無料のNFTというと、ティッシュ配りを受け取るような意味合いで気軽に受け取れますし、実際FractonのNFTも受け取り手は一切手数料等かからないようにした上で発行・配布されました。このようなある種のサンプリングに近い配布は非常に面白く、単に売れそうだからNFTやそのアーティストの作品を青田買いしておこうというものとは違い、せっかくなら貰っておこうというとても純粋な動機を持って配ることが可能です。
3. NFTの面白さとは
ここまで読んで私もNFTを発行してみたい、そんな気がしてきましたでしょうか。どのレベルのNFTを作ってみるかに関わりますが、とても簡単なもので良いのであれば、基本的に誰でもNFTが発行できるようになってきました。例えば国内でも、NFT簡単発行ツールが登場したり、少しずつですが自分の絵・画像をNFT化してみる、そんな方も増えてきました。
ただし注意点として、今はイーサリアムのガス代(手数料)が高い為、1つのNFTを発行するのに数万円程度〜のガス代などを払う必要が出てくる可能性があり、テストで1つNFTを用いてみる、そんな場合にはイーサリアムのテストネットと呼ばれる場所や、イーサリアムと互換性を持った他のネットワークで作ってみるのがお勧めです。
ちなみに著者のFractonの鈴木は個人として実験的にNFT発行もしており、例えばNFTチケットの例に近い使い方として、ラーメンのガイドを行ってあげる権利を付与しているNFTを発行していたりします。これはブロックチェーン上で所有者が確認できる利点を活かしつつも、Raribleという海外の大手NFT発行サービスのユニークな機能である、Rarible経由でしか見ることのできない購入者限定の隠しメッセージを埋め込む機能を実装しているNFTです。
購入するとどんな挙動が起きるかというと、この場合では、私が事前に埋め込んでいるある方法で、私に連絡を行ってくださいと示された情報が購入者のみに見れる隠しメッセージとして埋め込まれており、NFTを持っている間は1度ラーメンガイドをしますよといったサービス提供を行うとのものです。
このようにNFTは何も凄いデジタルアートばかりではなく、また完全にバブルのアートや投機分野でもなく、誰でもアーティストになる可能性を秘めたとても面白い分野なのです。NFTを用いて新しい試みや、今ある仕組みをデジタル化簡単にできるとしたら、あなただったらどんなNFTを発行しますか。
ぜひNFT、単に高値のニュースを見るだけではなく、さまざまな種類などを知りながら、自分だったらどんなNFTを出してみたいだろうかと考えてみて下さい。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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