今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の赤澤直樹 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- AIとNFTのシナジー
1-1. ユニークなデジタルコンテンツの生成
1-2. ゲーム内のパーソナライズド体験
1-3. 進化するマーケットプレイス
1-4. 信頼性と透明性の向上
1-5. 新しいビジネスモデルの創出 - 事例「Altered State Machine」
2-1. ASMの3つの主要コンポーネント
2-2. ASMプロトコルの応用例
2-3. ASMの展望 - まとめ
近年、テクノロジーの世界で2つの革命的なトピックが注目を集めています:AI(人工知能)とNFT(非代替性トークン)。それぞれが独自の領域で大きな影響を与えてきましたが、これら2つの技術が組み合わさることで、新しい可能性と革新が生まれています。
AIは、データ解析、自動化、予測などの多岐にわたるタスクを効率的に実行する能力を持っています。一方で、NFTはデジタルアセットの所有権を確認し、それをブロックチェーン上で取引する技術です。これにより、アート、音楽、ゲームアセットなどのデジタルコンテンツの所有と取引が革命的に変わりました。
これら2つの技術が交差すると、どのようなシナジーが生まれるのでしょうか?この記事では、AIとNFTの組み合わせがもたらす新しいチャンスについて解説し、理解を深めるための具体的な事例として「Altered State Machine」を紹介します。
AIとNFTのシナジー
AIとNFTの組み合わせは、デジタルアート、ゲーム、マーケットプレイスなど、さまざまな領域で新しい可能性を生み出しています。以下に、この組み合わせがもたらす主なメリットを解説します。
1. ユニークなデジタルコンテンツの生成
AIは、大量のデータを学習して独自のデジタルアートや音楽を生成する能力を持っています。このようなAIによって生成されたコンテンツをNFTとして取引することで、真にユニークで再現不可能なデジタルアセットを市場に供給することができます。これにより、アーティストやクリエイターは、従来の方法では考えられなかった新しい表現方法やビジネスモデルを探求することが可能となります。
2. ゲーム内のパーソナライズド体験
AI技術を利用することで、ゲーム内のキャラクターやアセットを動的に生成することができます。これらのアセットをNFTとして取引することで、プレイヤーは自分だけの独自のアイテムやキャラクターを所有することができ、ゲーム内での体験がよりパーソナライズドで豊かになります。
3. 進化するマーケットプレイス
AIは、ユーザーの好みや行動を分析し、それに基づいて最も関連性の高いNFTを推薦することができます。これによって、マーケットプレイスはより効率的でユーザーフレンドリーになり、アーティストやコレクターが自分の興味やニーズに合わせたNFTを簡単に見つけることができます。
4. 信頼性と透明性の向上
AIは、NFTの価格設定や認証のプロセスを支援することができます。例えば、過去の取引データや市場の動向を分析して、NFTの適切な価格を予測することなどが挙げられます。また、AI技術を使用してNFTのメタデータや履歴を分析することで、偽造や詐欺を検出することも可能となります。
5. 新しいビジネスモデルの創出
AIとNFTの組み合わせは、デジタルファッションやアセットの分割所有など、新しいビジネスモデルの創出を促進しています。また、多くのタスクが自動化され始めその分コスト削減に繋がっていきます。このように新しい付加価値の創出とコスト削減の両方を進めることができるたため、従来のビジネスモデルにとらわれない新しい価値提供や収益源を探求することができます。
事例「Altered State Machine」
Altered State Machine(ASM)は、ブロックチェーンと人工知能(AI)の交差点で革新的な動きを見せている分散型プロトコルです。このプロトコルでは、NFTを介して誰でも独自のAIエージェント(「Brain」と呼ばれる)を所有、訓練、取引できるように設計されています。
ASMの3つの主要コンポーネント
ASMは大きく3つのコンポーネントから構成されており、それぞれが連携し一つのシステムを成しています。
ASM Brains
これは独自のAIエージェントを表すNFTです。各Brainには、「Genome Matrix」と呼ばれる独自の属性セットがあり、これがそのBrainのDNAのようなものとして振る舞います。このGenome Matrixによって、強さ、速度、リスク許容度などの特性が割り当てられます。Brainsは「Gyms」と呼ばれる特定の場所で訓練を受けることができ、その訓練データは分散型ストレージであるIPFS上に「Memories」として保存されます。
ASM Avatars
Avatarは、Brainに視覚的な形と特定の能力を提供します。これらのAvatarsは、既存のNFTアートやカスタムビルドも可能です。BrainとAvatarがペアになることで、一つのAIエージェントを形成し、このエージェントは異なるメタバース(仮想世界)で活動することもできます。
ASM Gyms
Gymsは、BrainsのAI訓練アルゴリズムを実行するためのコンピューティングパワーを提供します。所有者は、ASTOトークンを使用してGymsに支払い、自分のBrainを訓練します。Gymsは、十分なコンピューティングパワーを持つ任意の人によって設置でき、新たな収益源となり得ることができます。
ASMプロトコルの応用例
Altered State Machine(ASM)は、特に、ゲーム業界、金融取引、AIアシスタント、デジタルファッション、メタバースといった分野でその有用性が注目されています。
ゲーム業界では、ASMを活用することで、AIFAのようなゲームにおいて競技するAIチームを作成し、訓練することができます。プレイヤーは自らのAIチームを育て、ゲーム内でのランキングを向上させることが可能になります。ゲーム体験がより深化し、エンゲージメントが高まるとして期待されています。
金融取引においても、ASMは過去のデータを基に取引判断を行うAIエージェントを訓練することができます。これにより、効率的な取引戦略を開発し、リスクを最小化することが可能となります。
また、ASMはAIアシスタントの開発にも利用できます。カスタマーサービスやオペレーションなど、多岐にわたる業務プロセスにおいて、AIが効率的なサポートを提供することで、全体の業務効率が向上する可能性があります。
デジタルファッションの世界でも、知能を持つアバターとペアになる独自のデジタル衣装を生成することができ、仮想世界でのファッション業界に新たな風を吹き込むことができます。さらに、仮想世界間を自由に移動できるAIキャラクターを構築することで、メタバース内での新しい体験やインタラクションが可能になります。
ASMの展望
ASMは「非代替性知能(Non-Fungible Intelligence)」という、世界初の新しいコンセプトを創出しました。このアプローチは、ゲーム、金融、ファッション、メタバースなど、多くの分野で新しい可能性を開くものであるのに加え、オープンソースで開発されており、開発者が自由に上に構築できるようになっています。現在は実証実験が完了し、コア部分の実装をしている最中というステータスですが、今後順調に開発が進めばベータ版として公開される予定です。
まとめ
AI(人工知能)とNFT(非代替性トークン)は、それぞれが独自の領域で革命を起こしていますが、これらが組み合わさることで新しい可能性が広がります。AIはデータ解析や自動化に優れ、NFTはデジタルアセットの所有権を確立します。AIとNFTの組み合わせがもたらすメリットは多岐にわたります。AIは独自のデジタルアートや音楽を生成でき、これをNFTで取引することで新しいビジネスモデルが生まれ、ゲーム内では、AIが動的にキャラクターやアセットを生成し、これをNFTとして取引することで、プレイヤーに独自の体験を提供します。また、AIはユーザーの好みに基づいてNFTを推薦することができ、マーケットプレイスを効率的にします。
この交差領域で「Altered State Machine(ASM)」というプロトコルが登場しチャレンジを続けています。ASMは、NFTを用いて独自のAIエージェント(「Brain」と呼ばれる)を所有、訓練、取引できるように設計されているものでした。昨今のLLMの台頭も相まって今後AIとNFTのシナジーを目指した多くのプロジェクトが生まれてくるかもしれません。要注目です。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
Fracton Ventures株式会社
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