環境に悪いとは言わせない、ビットコインマイニングの現状

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の村上和哉 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. コンセンサスアルゴリズムについて
  2. Bitcoinマイニング
    2-1. Gryphon Digital Mining
    2-2. FUELHASH
    2-3. Nodal Power
  3. まとめ

Web3やブロックチェーンに関わっている人は、一度はBitcoinは環境に悪いという意見を聞いたことがあると思います。実際に電気自動車などを販売するテスラ社は、一時期Bitcoinでの決済受付を可能にしていましたが、Bitcoinが環境に悪いという批判を受けて、決済受付を停止したこともあります。たしかにその時点においては環境に悪かったのかもしれませんが、現時点ではどうなっているのか、そしてなぜ環境に悪いとされているのかを本記事では紹介したいと思います。

コンセンサスアルゴリズムについて

引用:CCRI Indices

ブロックチェーンにおいて、チェーンにブロックを追加するルールのことをコンセンサスアルゴリズムといいます。有名なコンセンサスアルゴリズムとして、PoW(Proof of Work)とPoS(Proof of Stake)が挙げられます。

PoWはコンピュータで計算してブロックを生成するため、大量の電力を必要とします。そのためPoWにブロックチェーンのネットワークを維持するために大量のコンピュータの稼働が必要で、環境によくないという印象を持たれています。PoWの代表例としてBitcoinが挙げられます。

現在、多くのブロックチェーンでPoSというアルゴリズムが採用されており、PoWほど環境負荷がかかりません。このPoSの代表例としてEthereumが挙げられます。多くのDeFiプロトコルやNFTに使用されているEthereumは昨年2022年9月にPoWからPoSに移行しており、これまで環境に悪いという印象を持たれていたEthereumもThe Mergeによって環境負荷の少ないブロックチェーンとなりました。

PoSチェーンは、環境負荷が少なく、大企業がNFTの取り組みを行う際に採用されるユースケースが増えてきました。ネットワーク維持のための電力消費量を抑える以外に、カーボンオフセットを独自に行うなどの取り組みを行い、カーボンネガティブなチェーンも存在します。

Bitcoinマイニング

PoSではなくPoWを採用している主要なチェーンであるBitcoinのマイニング(ネットワーク維持)は環境に悪いという指摘がありますが、実情を見ていきましょう。

下図はBitcoin Minig Councilという団体の統計による、Bitcoinマイニングにおける2023年上半期の再生可能エネルギーの使用率です。Bitcoin Minig Councilにはgalaxy、MicroStorategy、argo、HUT8などの50社を超えるマイニング関連の事業者が参画しています。

レポートによると、すでにBitcoinマイニングの電力使用の過半数を超える59.9%がすでに再生可能エネルギーを使用してマイニングを実施しています。つまりマイニングファーム(データセンター)内で稼働しているマイニングマシーンやコンピュータの電力を、太陽光発電や風力発電で発電された電力を使用しているということです。本統計を行っているBitcoin Minig Council内ではすでに63.1%が再生可能エネルギーに置き換わっており、まだPoSに比べると環境負荷は高いかもしれませんが、全体の過半数以上が環境に優しい再生可能エネルギーを使用しているということは注目すべき点です。これはマイニングを行っているマイナー自身が、本来PoWが環境に悪いことを理解しており積極的に環境に優しい取り組みを行う意識が高いことの表れでもあります。

以下では、そのような具体的な取り組みを紹介していきます。

Gryphon Digital Mining

Gryphon Digital Miningは2021年に$14Mの調達を実施していたBitcoinのマイニング事業者です。化石燃料を使用せずに風力、水力、太陽光発電などで発電するエネルギーだけでマイニングを実施しています。同社のマインング効率は業界内でも高く、2022年には効率ベースで上位3社にランクインしており、年間で800 $BTC以上のマイニングの実績を誇っていました。また同社は大麻関連事業を行っていたAkerna社に合併されて、完全子会社となることが予定されています。

FUELHASH

国内マイニングスタートアップFUELHASH社は「再生可能エネルギー×マイニング」という事業で、カナダで水力発電を活用したマイニングファームを、国内では太陽光発電を活用したマイニング運用サービスを提供しています。またマイニングに使用される機器はBITFURY社製の製品を使うことが発表されている。FUELHASHの強みは個人でもマイニングに参加できることであり、最低1万円からのBitcoinマイニング投資に参加することが可能です。

Nodal Power

引用:Nodal Power

Nodal Power社はゴミの埋立地で発生するメタンガスを回収して、回収したメタンガスを元に発電した電力をデータセンターなどに供給することを目指しています。同社は2023年8月にシードラウンドで$13Mを調達したことを発表しており、すでに2つのサイトを運営しており、メタンガスから発電した電力をデータセンタと地域の電力会社に供給しています。メタンガスは温室効果ガスの一種で、二酸化炭素の約25倍温室効果があるという研究結果も出ています。よく問題視される牛のゲップから排出されるのもメタンガスです。

まとめ

ブロックチェーンは環境に悪いと印象が先行していますが、実際はPoSが採用されているチェーンが増えていることや、Bitcoinマインング関連で環境負荷を削減しようとしている動きが増えている現状を紹介しました。再生可能エネルギーを活用したマイニングは今後も増えていくことが予想されますし、来年2024年には半減期を迎えることになります。次の半減期前後では、Bitcoinマイニング事業が話題になるかと思いますので、マイニングの実情を理解しておくといいでしょう。

【参照記事】BTCマイニングベンチャーが1400万ドルを調達──再エネだけでマイニング
【参照記事】再生可能エネルギーを活用した個人向けマイニングプラットフォーム「FUELHASH MaaS」
【参照記事】Bitcoin Mining Startup Raises $13 Million to Turn Trash Into BTC
【参照記事】Bitcoin Mining Council
【参照記事】CCRI Crypto Sustainability Metrics

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。