国が主導するブロックチェーンを活用した「J-クレジット」制度とは?カーボンクレジットの活用事例などを解説

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ブロックチェーン技術は仮想通貨や金融業界、物流業界に使われる技術ではなく、環境問題解決のためにもその活用が注目されています。ブロックチェーンは取引を明確にするだけでなく、ネットワークの参加者なら誰でもデータを追跡することができ、尚且つ情報を分散して共有することで、中央集権的に管理されるよりも安全に運用することが可能となっています。

ブロックチェーンの活用は国家でも実施・検討が進められており、温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度「J-クレジット」にも採用されています。ここではそのJ-クレジットの特徴からカーボンクレジットについて詳しく解説します。

目次

  1. カーボンクレジットとは?
  2. J-クレジット制度とは
    2-1. J-クレジット創出者のメリット
    2-2. J-クレジット購入者のメリット
  3. カーボンクレジットにブロックチェーンを活用する理由
  4. ブロックチェーンを活用したJ-クレジット取引市場「ezzmo(イツモ)」
    4-1. J-クレジット創出者の事例
    4-2. カーボンオフセット利用者の事例
  5. CO2排出/削減量を管理・環境価値化するデジタルプラットフォーム
  6. まとめ

①カーボンクレジットとは?

環境問題の解決というと温室効果ガスの排出量削減というイメージがあるかと思います。「脱炭素」という言葉をよく耳にしますが、これは「カーボンニュートラル」とも表現され、経済活動など大気中に排出される二酸化炭素などの温室効果ガスを削減し、地球温暖化を防ぐという気候変動対策の一環を指すものです。脱炭素化の取り組みとしては、再生可能エネルギーの活用、エネルギー効率の向上、省エネ技術の導入、カーボンクレジットの活用などがあります。

脱炭素社会に向けた取り組みとして昨今注目されているのがカーボンクレジットです。カーボンクレジットは、温室効果ガス削減量を排出権としてクレジット化し、企業間で排出削減量を売買できるようにする仕組みです。自社だけでは削減しきれない二酸化炭素排出であっても、カーボンクレジット購入によって排出量を削減したとみなすことができるというわけです。

一方、カーボンクレジットが広まる中で、削減実績より過大に発行されていたり、二重払いされているクレジットが存在するなどカーボンクレジットの信頼性が揺らぐ事態も起きてしまっています。

②J-クレジット制度とは

J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。J-クレジット制度で創出されたクレジットは、経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成やカーボンオフセットとして売却など、様々な用途に活用できます。

クレジット創出者はクレジットの売却益によって設備投資の費用の回収や排出量のさらなる削減に向けた取り組みを行うことができますし、購入者はクレジット購入を通して排出削減に取り組む企業を応援するだけでなく環境に貢献する企業としてPRし企業評価を向上させる効果を見込むことができます。

2-1.J-クレジット創出者のメリット

  • 省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるランニングコストの低減できる
  • 設備投資の費用の回収やさらなる省エネ投資の活用できる
  • 自主的な排出削減や温暖化対策を積極的におこなっている企業、団体としてPRできる
  • 省エネの取り組みが見える化し、組織内の意欲向上や意識改革につながる

2-2.J-クレジット購入者のメリット

  • クレジットの購入をとおして、環境貢献企業としてPRができる
  • クレジット購入をPRすることで企業評価につなげることができる
  • 製品にかかるCO2排出量をオフセットすることで、他社のサービスとの差別化ができる
  • クレジット購入を通じたネットワークの構築や新たなビジネス機会の獲得

③カーボンクレジットにブロックチェーンを活用する理由

環境持続性への配慮を企業活動に取り入れることは、今や必須のものとなっています。多くの企業がサステナビリティへの取り組みを進め、その一環として様々なプロジェクトを発表し、具体的な行動を起こしている企業もあります。

その一方で「サステナビリティ」という言葉を騙り、自分たちに都合のいい目標を設定し、実際の行動は表面的なものに留まっている企業も存在しています。これはカーボンクレジットの生成や取引過程における透明性の欠如などが原因となっています。こうした問題から、正しくサステナビリティに取り組んでいる企業であってもその取り組みや成果が消費者や顧客に伝わらなかったりするなど、透明性の欠如はカーボンクレジットの信頼性にまで影響を与えてしまうのです。

企業が行うサステナブルな取り組みの結果や成果が、消費者に適切に伝わっていないという状況は問題です。その結果、企業の活動は単に利益追求の一環で、本当に環境に配慮したものなのかという疑念が消費者の中に生まれてしまいます。こうした問題に対応していくため注目されているのがブロックチェーンです。

④ブロックチェーンを活用したJ-クレジット取引市場「ezzmo(イツモ)」

環境省では、ブロックチェーンを活用したJ-クレジット取引市場の創出支援を計画しています。「ezzmo(イツモ)」と呼ばれるこのJ-クレジット取引市場では、中小企業や家庭などでもカーボンクレジットの取引が可能なシステム構築を目指しているとしています。

引用:環境省

4-1.J-クレジット創出者の事例

温室効果ガスの排出削減または、吸収量の増加につながる事業を実施する地方自治体や企業、森林保有者などを、J-クレジット“創出者”と言いますが、創出者の事例として以下があります。

出典:ふくみつ華山温泉

富山県南砺市の株式会社ふくみつ華山温泉では、源泉を温めるために使用する重油ボイラーを高効率ヒートポンプに切り替え、省エネの取組みを始めました。高効率のヒートポンプを導入した結果、ボイラーを使用していた時に比べてエネルギーコストは20~30%削減するに成功しました。CO2排出量は年間およそ20t削減できる見込みです。このCO2削減量をJ-クレジットとして申請し、中部経済産業局が「中部産CO2クレジット」として取りまとめて流通されます。

出典:伊賀の里モクモク手作りファーム

三重県伊賀市の株式会社伊賀の里モクモク手作りファームでは、新設のトマトとイチゴの温室ハウスの暖房に、環境負荷が少なく、コストにも優れた木質バイオマス燃料の加温機を導入し、クレジットを創出しました。見学者を対象に環境学習を行い、環境保全への取組みをPRしています。さらに、カーボンオフセット商品の提供も検討し、クレジット活用の可能性を広げています。

4-2.カーボンオフセット利用者の事例

株式会社NAKAMICHIFARMは、北海道砂川市において、親子3代の100年以上に渡り美味しいこだわりの米づくりと野菜作りを専業として、6次産業化の未来に向けての独自の加工食品の生産販売にも取り組んでいます。この取組は、稲作・野菜の生産工程で、農機具等から排出するCO2を、北海道道有林と石狩市有林のオフセット・クレジット「J-VER」を活用(購入)して、気候変動対策と道内の環境保全に貢献するカーボンオフセットです。

出典:ヤベホーム

長崎県諫早市のヤベホーム株式会社では、CO2に配慮された「カーボンオフセット住宅」があります。創出元は、長崎市で木材の販売をしている真樹販売株式会社で、同社の「長崎県の日本伝統建築を支える森のCO2吸収事業」で行われる森の整備によって発行されたクレジットを活用しています。CO2の推計量は、1棟で年間6t。16棟を対象としているため、96tをオフセットしており、家が建つごとに森林に還元されていく仕組みです。

また対象となっているヤベホームの木造住宅は、CO2の排出にも配慮されており、例えば、断熱材に木質繊維系のセルロースファイバーを使うことで石油製品使用をおさえた上でエアコンの使用を減少させることができます。CO2排出量削減のために工夫さえれた機能が備わっており、その結果、一般住宅と比べるとCO2の排出量は約半分まで抑えられています。

⑤CO2排出/削減量を管理・環境価値化するデジタルプラットフォーム

日本の三大重工として知られるIHIでは、ezzmoの実装を見据え、脱社会の実現に向けた環境価値管理プラットフォームを開発しています。このプラットフォームでは、これまで蓄積された製品・装置の稼働データから自動でCO2排出量や削減量を計算することが可能で、その基盤システムとしてブロックチェーンが活用されています。また、スマートコントラクトによってトークンを外部へ連携・流通させることも可能になっています。

IHIは、カーボンクレジットの仕組みはデータの収集から取引に至るまでアナログで煩雑な手続きが多いため、同プラットフォームによって脱炭素社会実現に向けた活動を加速していきたいとしています。

⑥まとめ

ブロックチェーン技術は、その分散型の特性と改ざん防止の能力により、多くの産業で有用性が認められています。本稿で紹介した取り組みは、社会全体が環境問題に対する意識を高め、積極的にその解決に取り組もうとする姿勢を示す一例です。環境問題は地球規模での課題であり、その解決にはすべての個人や企業が一丸となった取り組みが求められます。ブロックチェーン技術を駆使したこうした新たな挑戦は、その解決に向けた大きな一歩を踏み出すための重要なツールとなるでしょう。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。