新潟県十日町市「棚DAO」の取り組みとNFTデジタル会員権|地域創生におけるDAO活用事例

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地域創生の活動にあたりDAO(自律分散型組織)を使って、地元を盛り上げるプロジェクトが各地で行われています。新潟県十日町市には地域おこしの活動として「棚DAO(TANADAO)」があります。同活動に賛同し、NFTのデジタル会員権を保有している人なら、誰でに参加できるコミュニティです。棚DAOはノーコードWeb3プラットフォーム「Clubs」を活用し、棚DAOのメンバーを募集しています。

ここでは、棚DAOの特徴から、DAOを使った地域創生の実例を交えながら、地方がDAOを活用する理由について詳しく解説します。

目次

  1. 棚DAOとは
    1-1.棚DAOの目的と取り組んでいる事業
    1-2.棚DAOの活動歴
    1-3.目的を推進するための「棚田オーナー」制度
  2. 地域それぞれが残したい風景や文化を残すためのDAOの実例2つ
    2-1.「山古志DAO」が第一弾となったLocal DAOとは
    2-2.東京都青ヶ島の「DAOヶ島」プロジェクト
  3. 地域創生でDAOが活用される理由
  4. まとめ

①棚DAOとは

棚DAOは、新潟県十日町市の「特定非営利活動法人地域おこし」の活動に賛同する人なら、誰でも参加することができる棚田を中心としたコミュニティです。会員権をNFT(非代替トークン)でデジタル化し、会員同士がコミュニケーションをとり、池谷集落の発展に自発的に関わるコミュニティを築くとともに、仲間を増やしながら都会の方々と協力して新しい形の村づくりを進めていくことを目指しています。

そしてノーコードWeb3プラットフォーム「Clubs」を開発するフレームダブルオー株式会社は、新潟県十日町市池谷・入山集落を拠点に、棚田保全等の活動を行う特定非営利活動法人地域おこし(以下、地域おこし)に対して、 Clubs を活用した web3導入サポートを提供し、棚DAOメンバー募集を2023年11月20日より開始しました。

棚DAOがある新潟県十日町市は、2004年中越大震災被災後6世帯13人になった集落が、地域おこし活動に取組み、若い移住者を迎え、2016年9月には11世帯24人にまで増えた「奇跡の集落」といわれる集落です。美しい棚田の風景を今に残しています。DAOによって集落が抱えている集落存続問題を解決するためには、地元住民だけでなく、地域外の関係者も含めた新しい村作りを進めていくとしています。

1-1.棚DAOの目的と取り組んでいる事業

棚DAOの目的は、DAOの仕組みを活用し、地域おこしのコミュニティが抱える課題解決を支援する活動を行います。そして棚田を代表する日本の美しい風景を保つ地域を拠点にした、次世代が活躍できる新しい社会モデルを作ります。

地域おこしの活動は以下の4つです。

  • 都会との関係人口を増加、都会からの後継者の定住促進
  • 持続可能な集落モデルを自ら体現している地域を作る
  • 全国に情報発信する事を通じて、全国各地の過疎地の集落で農業の後継者を増やす
  • 持続可能な生活スタイルを実現

具体的に十日町市で行っている地域おこしの事業は主に以下2つです。

  • 池谷・入山モデル作り事業:棚田での稲作、魚沼産コシヒカリ「山清水米」の販売、棚田オーナー制度を中心とした都市部との交流
  • 地域おこし応援事業:池谷・入山集落の経験を活かし、他の地域おこし支援

1-2.棚DAOの活動歴

2023年7月から学会での発表や勉強会など、コミュニティ開始に向けて準備を進めてきました。以下が簡単な活動紹介です。

・棚田学会での発表
2023年8月26日 東京大学で開催された棚田学会大会シンポジウムで、地域おこし代表の多田さんにより発表されました。
・DAO内勉強会
DAO内では毎月1度オンラインミーティングが開催され、メンバー同士によるDAO自体の運営を考える勉強会や、池谷集落のアセットを起点とした特典の創出などが議論されています。
・お披露目会(12月)
本DAOの発足に合わせ、2023年12月15日には東京都内のコワーキングスペースにてお披露目会を実施しました。

1-3.目的を推進するための「棚田オーナー」制度

棚DAOでは「会員数を増やすこと」を一つの指標に定め、一つ目のアクションとして、既存の会員種別として募集していた「賛助会員」「棚田オーナー」の2種類のメンバーシップを、デジタル会員として募集を始めました。

「棚田オーナー制度」は、個人や団体が棚田の一部を「オーナー」として所有し、その土地の保全や活用に関わることができる仕組みです。オーナーは年間の会費を支払い、その代わりに棚田で収穫される米やその他の農産物を受け取る権利が与えられます。実際に「新潟県十日町市」では、棚田オーナー制度が地域の棚田保全と活性化に大きく貢献しています。

同地域では、多くの棚田が放棄される危機に直面してきましたが、棚田オーナー制度により、使われていなかった棚田が再び活用されるようになりました。「棚田 DAO」による棚田オーナー制度は、地域の地産地消だけに拘らず、地域外の人々に地元の魅力や価値を伝え、その地域が残していきたい風景や文化を後世に存続していくことができる仕組みだと言えるでしょう。

賛助会員にも特典が用意されており、ミュニティスペース内で棚DAOの運営自体に関わることができる事、それ自体が特典の一つであるとのことです。またDAOでは、それぞれができることを棚DAOの発展に貢献することができ、その対価として様々な特典が企画されるそうです。

「賛助会員」「棚田オーナー」のデジタル会員となるためのNFTは、棚田DAOの公式サイトで販売されています。


また購入したNFTを受け取るためには、メタマスクなどのWeb3ウォレットを用意しておく必要があります。そしてNFTは基本的に仮想通貨での購入になり、同NFTは、MATICか日本円のどちらかで決済ができるようになっています。

ウォレットの作り方はこちらの記事でも解説しています。https://hedge.guide/feature/opensea-metamask-bc202111.html

②地域それぞれが残したい風景や文化を残すためのDAOの実例2つ

2-1.「山古志DAO」が第一弾となったLocal DAOとは

Local DAOは、デジタル村民によって自律的に運営される共同体です。地域住民とデジタル村民が協力して、地域の課題解決や新たな価値創造に取り組むことで、持続可能な発展を目指します。現在、この取り組みは旧山古志村をモデル地域として推進されています。

Local DAOは、NFTと地域を組み合わせた新しい共同体の形として定義され、その概念の確立を目指しています。旧山古志村で始まったNishikigoi NFTプロジェクトが最初のLocal DAOであり、その開始から2年が経過しました。この期間に、Local DAOが地域コミュニティの新しい形として社会に定着するかが議論されてきました。

Local DAOはデジタル村民によって自律的に運営され、独自の自治圏を持つ共同体です。デジタル村民は現実空間に結びついた新たなアイデンティティを持ち、地域の未来を共に考え、活動資金を集めることができます。Local DAOは単なる「ファーストペンギン」的な試みではなく、日本や世界中のローカルコミュニティに応用可能なモデルとなることを目指しています。

Nishikigoi NFTと山古志DAOは密接な関係にあり、Local DAOへのパスポートとしての役割も担っています。Nishikigoi NFTを持つことで、各Local DAOに優先的にアクセスでき、Local DAO同士の協力も促進されます。また、山古志デジタル住民票としての機能もあり、多くの人々が山古志DAOを通じて多様な体験をすることができます。

さらに、2024年7月から新たなLocal DAO地域として「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」が加わります。今後は国内だけでなく、ヨーロッパやアジア諸国などにも活動を広げていく予定です。プレスリリースによると、既に海外からの問い合わせも来ているとのことです。

2-2.東京都青ヶ島の「DAOヶ島」プロジェクト

青ヶ島は東京都の南方に位置する伊豆諸島の一部で、人口わずか167人の小さな島です。この島は、日本全国で共通する過疎化と高齢化の課題に直面しています。JPYC株式会社の代表取締役である岡部典孝氏は、この課題に対する解決策として「青ヶ島DAO化計画」を提案しました。DAOという分散型自律組織の仕組みを活用し、島の資源を効果的に管理・運用することで、持続可能なコミュニティの実現を目指しています。

青ヶ島DAO化計画の具体的な取り組み

・ふるさと納税とNFTの導入
青ヶ島DAO化計画では、ふるさと納税の返礼品にNFT(非代替性トークン)を導入することが計画されています。これにより、全国からの寄付を集め、その資金を島の発展に活用することが可能になります。例えば、寄付によって得られた資金は、観光客向けの宿泊施設の整備や、漁業や農業の支援など、島の多様なニーズに応じたプロジェクトに使われる予定です。

・DAO法人の設立
将来的には、ふるさと納税の受け皿としてDAO法人を設立することも視野に入れています。DAO法人が成立すれば、寄付金の使い道を島民全体で決定することができ、透明性の高い資金運用が実現します。また、外部からの寄付者や青ヶ島出身者の意見も反映されやすくなるため、より多様なニーズに対応できる自治体運営が期待されます。

青ヶ島DAO化プロジェクトの未来

岡部氏は、青ヶ島を新たなビジネスモデルの実験場として位置付けています。例えば、グリーンカーボンクレジットの海版であるブルーカーボンクレジットの取引をJPYCで行うことや、青ヶ島の漁業協同組合や水産加工業協同組合を金融機関として、ステーブルコインを発行するなど、さまざまなアイデアが浮上しています。これらの取り組みが成功すれば、青ヶ島はスタートアップ企業にとってのシンガポールのような存在になる可能性があると話しています。

③地域創生でDAOが活用される理由

新潟県十日町市の棚田同様、新たにLocal DAOとして加わった「長野県天龍峡」と「宮崎県椎葉村」は、どちらも自然と文化が豊かな魅力的な地域です。しかし、どちらも人口減少の課題に直面しており、村の存続が懸念されています。

こうした地域が日本各地に存在し、文化を伝えて残すためには地域と関わりたいと思う人を増やすことが重要です。しかし、移住はハードルが高く、すぐに問題解決には至りません。そこで地方創生業界では「関係人口」の創出が注目されています。関係人口とは、その地域に住んではいないが関わりを持つ人々のことです。

移住は難しいが地域と関わりたい、地域創生の取り組みに参加したいという人々に、デジタル村民の証やDAOの会員証としてNFTの活用が広がっています。これらのNFTは、村を存続させるための活動に参加できる会員証やデジタル村民証として機能します。

NFTを保有することで、棚田DAOのようにDAO内で会議に参加したり、山古志DAOのように村のガバナンスに参加することが可能となります。各DAOに特有の特典や特徴を持たせることで、村の魅力を深く伝えることができ、村を盛り上げる一員として地域貢献の場を提供します。

このように、DAOは地域創生の新しい手法として、地域と関わりたい人々を集め、持続可能なコミュニティの形成に役立っています。

④まとめ

NFTが利便性が注目されてるようになってから、デジタル会員証やデジタル証明書としての活用が実例として出てきました。そしてNFTと連携させて運用することができるDAOの登場により、地方創生においてDAOの活用が進んできました。これまで地方を盛り上げるためには、旅行に来てもらったり、ふるさと納税をしてもらうことがベターでした。

旅行で地方に足を運んだり、ふるさと納税は今後も大切なことですが、一時的な応援や支援で止まってしまいます。しかし、従来の取り組みに加えて、NFTやDAOを組み合わせることで、継続的な応援や支援に繋げることが可能です。

ただ地方自治体にDAOを取り入れるにはハードがまだまだあります。ブロックチェーン技術の導入に伴う初期コストや、インフラの整備が挙げられます。また自治体側のIT教育やトレーニングプログラムの支援、住民へDAOのサービス提供する際の啓蒙活動など数年かけて基盤の構築が必要になります。

ただ棚田DAOやLocal DAOのように、地域創生のためにDAOを取り入れる地方自治体は今後も登場してくる可能性はあるので、気になる方は既に取り組まれているプロジェクトについて調べてみるのがよいでしょう。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。