静岡市では、地域経済の活性化を目指し、「しずトク商品券」という名称でプレミアム付きデジタル商品券を発行しています。この商品券は、スマートフォンを使って簡単に申し込みから利用までが完結するため、若年層を中心に利用が促進されています。特に、コロナ禍以降の非接触決済のニーズに対応する形で、デジタル商品券が活用されるようになりました。
2024年5月10日から利用が開始されたこの「しずトク商品券」は、SBIホールディングス、九州電力、筑邦銀行の合弁会社「まちのわ」が提供しています。プラットフォームには、SBI R3 Japanが販売およびサポートするブロックチェーン「Corda」が採用され、データの透明性と安全性が確保されています。
目次
静岡市プレミアム付きデジタル商品券の概要
「しずトク商品券」は、静岡市内の約3,500店舗で利用可能で、総額32億5,000万円分が発行されます。購入者は5,000円で6,250円分の商品券を得られ、25%のプレミアムが付いています。すべての手続きはスマートフォンアプリで完結し、ブロックチェーン技術を活用しています。これにより、発行や清算が効率化され、地域経済の活性化と利用者の利便性向上が期待されています。
1-1. 商品券の概要
- 発行元: 静岡県静岡市
- 発行総額: 32億50,000万円
- 購入額: 5,000円(額面6,250円)
- 利用期間: 2024年5月10日〜2024年11月30日
- 購入条件: 静岡市在住、または通勤・通学者
- 利用可能店舗: 静岡市内の約3,500店舗
2. 1次販売の結果と2次販売の実施
1次販売では申し込み数が予想を下回ったため、6月3日から2次販売が実施されました。総発行数52万口のうち、約6割にあたる31万口が申し込まれました。
静岡市長の難波氏は、申し込みが多かったにも関わらず周知が不足していたと述べています。静岡市商業労政課の藤原主査は、デジタル商品券の初の試みとして、アプリダウンロードなどの入口のハードルが高かったのではないかと分析しています。高齢者からは「スマホを持っていない」「難しい」といった声もあり、デジタルに抵抗がある層には利用が難しかったとされています。
3. デジタル商品券の利便性と課題
デジタル化による利便性の向上
- 簡便な手続き: スマートフォン一台で申し込みから購入、店舗での利用まで完結します。
- 効率的な精算: 店舗には専用のQRコードが設置されており、支払い時にスキャンするだけで済むため、精算がスムーズです。
- 自動集計: 店舗側は商品券の利用状況を自動で集計できるため、売上管理が容易になります。
デジタル化による課題
- 周知不足: 高齢者層への周知が不十分で、利用促進が難しかった。
- デジタルデバイド: スマートフォンを日常的に使用していない層には、情報が届きにくく、利用が困難。
- 宣伝の効果: SNSを活用した宣伝が効果的である可能性がありますが、どれだけ拡散されるかは事前告知とインセンティブ次第です。事前の告知や宣伝戦略が重要です。
4.まちのわ社とは:
株式会社まちのわは、九州電力株式会社、株式会社筑邦銀行、SBIホールディングス株式会社の3社が2021年5月に設立した合弁会社です。地域のデジタル化を推進し、プレミアム付き電子商品券や地域通貨の発行・運用を通じて地方創生と地域経済の活性化を図っています。
自治体がブロックチェーンを活用するメリット
- 不正防止: データの改ざんが難しく、高い安全性を提供。
- 業務効率化: 契約業務などの効率化が可能。
- コスト削減: 運用コストの削減が期待される。
ブロックチェーン技術は、分散型台帳技術として取引の記録を正確に保存する仕組みです。従来の中央集権的管理に比べて、データの改ざんや漏洩を防ぐ安全性があります。ブロックチェーンは食品や物流、製造ラインなどのトレーサビリティ分野でも活用されており、地方自治体のサービスにも期待されています。
4-1. まちのわ社の地域情報プラットフォームの特徴:
- 地域との接続: スマートフォンアプリを通じて、地域経済の活性化を支援。
- デジタル化: プレミアム付き商品券や地域通貨、ポイントを電子化し、地域の情報発信もサポート。
- 地域貢献: 消費を地域内で促進し、人とお金の循環を図る。
まちのわ社の事例:現地決済型ふるさと納税サービス
株式会社アコーディア・ゴルフは、まちのわ社と提携し、群馬県藤岡市および甘楽町に対して現地決済型ふるさと納税サービスを提供しています。このサービスにより、利用者はスマートフォンアプリで寄附手続きから返礼品の受領までを完結できるようになり、ゴルフ利用券が即時発行されます。これにより、自治体のコスト削減と利便性向上が実現されています。
5.まとめ
今回の「しずトク商品券」プロジェクトに見られるように、ブロックチェーンを活用した電子商品券は、単なる利便性向上に留まらず、地方自治体にとっては新たな地方創生の手段となり得ます。事務負担の軽減やコスト削減に加え、地域内での消費促進を通じて、地域経済を循環させるサステナブルな仕組みが構築されています。さらに、ReFiの観点から見ると、これらのデジタル技術は地域経済を持続的に再生するための重要なツールとなります。今後、NFTやDAOなどの技術も活用し、地域の資源を最大限に引き出す取り組みが期待されています。これにより、地方のサステナビリティと経済発展を同時に促進することが可能です。
地方自治体がこれからのデジタル社会に適応するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)とブロックチェーンの積極的な導入が欠かせません。電子商品券やふるさと納税の分野では、これらの技術がすでに成果を挙げており、今後の発展にも期待がかかります。
立花 佑
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