クリプタクトの斎藤氏に聞く、コロナ不況などビットコイン価格に影響を与える要素とその影響の大きさとは?

今回は、コロナ不況などビットコイン価格に影響を与える要素とその影響の大きさについて、仮想通貨・暗号資産の確定申告などに関するサービスを提供する株式会社クリプタクト代表取締役 Co-CEOの斎藤岳氏(@Cryptact_gaku)にお話を伺いました。

目次

  1. ビットコイン価格に影響を与える要素
  2. 市場に影響を与える要因とその影響について
    2−1. ビットコインが「安全資産」とされる理由
    2−2. 金融政策がビットコインに与える影響
    2−3. 半減期やハッシュレートがビットコインに与える影響
  3. まとめ

皆さん、こんにちは。株式会社クリプタクトの斎藤です。これまでHEDGE GUIDEさんには仮想通貨の確定申告周りのお話を執筆していましたが、今回はがらりとかわってビットコイン市場の注目ポイントなどについてまとめてみました。

簡単に私の経歴を今更ながらご紹介させていただくと、2007年にゴールドマン・サックス証券に入社し、戦略投資部という自己勘定投資チームに配属され不良債権投資、プライベートエクイティ、不動産投資や船舶投資、また法的整理のおける企業再生投資などに従事しておりました。その後2010年に社内のヘッジファンドチームに転籍し、そこで運用担当者として上場株、債券、金利、CDS、各種デリバティブなど様々な流動性の高い資産に2019年まで投資を行っておりました。

今回の記事はビットコインの相場に関する内容ということで、これまでの確定申告から離れますが、むしろ私が経験してきたことに近い内容になるので、様々な見方の中の一意見としてご覧いただけると嬉しいです。

ビットコイン価格に影響を与える要素

個人的な見解となりますが、ビットコインは他の金融商品と比較して、圧倒的に需給要因によって価格形成がされている資産であると考えています。よく「ビットコインには価値の裏付けがない」といわれます。この「価値の裏付けがない」というのは現状正しくもあるのですが、いわゆるビットコイン否定派は「価値の裏付けがない=価値がない」としてビットコインの価格形成自体を否定されたりします。ただこれはやや短絡的な結論で、「価値の裏付けがない」理由は「仮に何らかの価値があったとしてもそれを評価して理論価格として導き出すようなモデルがまだ存在しない」ということにあります。

私は、ビットコインはデジタルコモディティとしてとらえております。法定通貨のような経済を支える通貨にはいくつかの理由からなり得ないと考えておりますが、同時に法定通貨以外での決済手段として史上初めて選択肢が社会に与えられたことによる何らかの価値は有すると考えています。ただ、それが理論価値としていくらなのかという部分が非常に評価しづらいポイントです。私も昨年ビットコインの理論価格を考察しました。ほかにも様々な価値をビットコインに見出し主張されている意見はありますが、いずれにせよそれらを経済的な価値として評価するには至っていないのが現状です。

やや話は長くなりましたが、長期的にはビットコインの使われ方やその価値の方向性が定まることで、いずれその価値評価のメソッドも固まっていくと考えておりますが、あくまで現時点ではそれらが定まっておらず結果的に「価値の裏付けがない」、そして価格形成は需給要因がほとんどであると考えています。

こういった需給要因で短期から中期は決まってくることを考えると、もちろんテクニカル面の分析もそうなのですが、「人々が何をビットコイン価格に織り込み期待しているか」という要素が非常に強くなってきます。そしてビットコインそのものの意義自体が固まっていないため、この「何を」という部分はその時々によって大きく変わってきます。そこで、現状の市場ではどういったことに注目されやすいか、私なりの意見となりますが次に纏めてみることにします。

市場に影響を与える要因とその影響について

ビットコイン独自の話から、マクロ経済によった話まで様々あるかと思いますが、短中期においては以下のポイントに注目しています。

    <マクロ経済>

  • (新型コロナウイルスによる影響下における)金融政策
  • <ビットコイン独自の要因>

  • 半減期とハッシュレート
  • <その他>

  • 危機からの逃避。資産特性による動きなど。

仮想通貨市場から離れ金融市場全般に視点を移すと、当然ながら新型コロナウイルス対策のための外出自粛等による影響が非常に大きい要因となります。不況や債務危機のリスク、あるいはそれらに対応するための財政拡大や金融政策などがその中心となってきます。これらも当然ビットコインを見るうえで無視できないイベントであり、ビットコインの視点からどういった影響があり得るのか考えてみたいと思います。

ビットコインが「安全資産」とされる理由

ビットコインはよくデジタルゴールドと呼ばれ、時に安全資産として不況や危機における逃避先として宣伝されることがあります。その理由は大きく分けて二つのポイントがあります。

  1. 発行枚数が決められていて、かつ特定の事業、組織、団体に関係していないこと
  2. 実体経済との結びつきが大きくないこと

金がいい例ですが、ビットコインは発行枚数に上限があり、またその発行スケジュールが定められているため、価値の希薄化が招きにくいと考えられています。金も無限にあるわけではなく、また採掘量含めて希少性が高いため、金を連想させるような特徴があります。

同時にビットコインは特定の政府や企業、あるいは集団に属した通貨ではありません。そのためその価値の源泉がこういった特定の何かに依存しているわけではないため、逆にある社会や組織の危機時においても無縁の存在であります。加えて、これがいいことかどうかはさておき、ビットコインは実体経済に深く結びついているは現状言い難く、逆に言えば経済が悪化する局面においてもビットコインの現状の価値とは無関係であると言えます。

私はこれらの理由でコロナ不況によってビットコインが買われるか?というと、そこは懐疑的ではいます。逃避先としてビットコインが買われるような危機、というのは戦争のような国が消滅するような危機を指し、経済的な危機については売られる理由にはならないものの強く買われる理由にはならないだろうと考えているためです。ただこの少なくとも売られる理由にはならなさそうだ、というのは意味のある特徴と考えています。

金融政策がビットコインに与える影響

金融政策についてはどうでしょうか。コロナ不況・危機に対応するため、大胆な経済政策や金融政策が行われています。特に財政拡大に伴う通貨供給が意識され、いわゆる資産価格の上昇を招いています。当然ですがビットコインもその流れの恩恵を受けるでしょうし、申し上げた通り需給要因の強い資産であることから、こういった思惑が特に効いてくる資産だと考えます。またビットコインは他の金融資産にはない特徴として、過度な経済政策や通貨供給のツケを意識しても有利な点があります。借金で行う経済政策について、将来的な増税リスクやさらなる借金で借金を返済していくシナリオ等がより想定されやすくなります。

仮定の話ですが、増税が資産課税に波及する可能性等に意識されると、ビットコインという資産の中では比較的補足しにくいアセットクラスは注目される可能性があります。借金を借金で返済するシナリオについては、さらなる財政拡大が意識されることで、資産価格の上昇がさらに起きやすくなると想定されます。世界中の国でこういった傾向が強まるというのが今回のコロナ不況と資産、ひいてはビットコインにおける注目点かと思います。

半減期やハッシュレートがビットコインに与える影響

最後に半減期についても触れたいと思います。半減期とはマイニングによるブロック報酬が半分になるタイミングのことを指しますが、ビットコインでは過去2回半減期(2012年と2016年)が到来しており、3回目が2020年5月に起きる予定です。このマイナーが得る報酬が半分になることから、マイナーによるビットコイン換金による売り圧力が半減することで価格上昇しやすい、と一般的に言われております。

実際のところ、過去はともかく、現在のビットコインの取引高で見ればマイナーによる売却枚数の半減によるインパクトはほぼないと言って差し支えないでしょう。そういう意味では、実際の需給面による効果は非常に限定的と思われます。しかし、過去2回において半減前後での価格上昇などの実績から、実際の影響はともかくとして思惑としては強く働く可能性のあるイベントです。

《参考》過去二回の半減期前後のBTC価格推移

図表1:最初の半減期から前後3カ月のビットコイン価格(クリプタクト調べ)
図表2:2回目の半減期から前後3カ月のビットコイン価格(クリプタクト調べ)

すでにビットコインは直近価格が上がってきており、必ずしも半減期要因であるとは思いませんが、結果的にこういった動きになると半減期到来後での一時的な調整は意識したほうがいいと考えています。

また半減期以降のビットコイン価格次第では、マイナーの採算性は悪化によるマイニング撤退や新規参入の減少が生じる可能性があります。その結果、ハッシュレートが下がり、傾向としてハッシュレートの低下は価格の下げを誘発しやすいため、それがまたさらなるハッシュレート減少に繋がる可能性があります。

もっとも、ハッシュレート減少による難易度調整も行われるため、どこかの時点ではコストとリターンのバランスがとれて、ハッシュレートや価格は落ち着くだろうと思います。ビットコインそのものについて懸念を持つ必要はないのですが、この間のハッシュレート減少によるブロックチェーンセキュリティの影響や、そもそも価格の動向は正直に言って非常に読みづらいです。

まとめ

現状私が考えていることは、短期的には半減期前後によるいったんの材料出尽くし、直近の上昇の反動を警戒。中期的にはハッシュレートの動向やコロナ不況によるさらなる金融緩和の有無などに注目し、機動的に方向性を変えることを意識。長期的には、ビットコインそのものの使われ方であったり、財政拡大のツケの議論がどういう方向に進んでいくか見つつ、価格上昇目線のスタンスを維持をすることです。

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斎藤岳

斎藤岳

株式会社クリプタクト代表取締役 Co-CEO。新卒でゴールドマン・サックスに入社してから計12年間、株、債券、為替など流動性のある資産から、不良債権、船舶、不動産など、幅広く投資・運用を経験。クリプタクトは投資支援プラットフォームであるCryptactを運営。仮想通貨の自動損益計算サービスを皮切りに、投資において役立つITツール開発に注力。前職での投資経験を活かして、レポートやコラムも多数執筆。Twitter:@Cryptact_gaku