共有名義でアパート経営を始めるメリット・デメリットは?注意点も

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アパートを購入する際、単独名義だけでなく共有名義にして所有することができます。投資規模の大きいアパートなどでは、家族間や特定の投資家同士で共有名義のアパートを所有するケースも見られます。その他、相続によって取得したアパートを複数人で所有している場合には、共有名義になっていることがあります。

しかし、共有名義で不動産を所有するには、メリットだけでなく注意したいデメリットも存在します。これらのデメリットに注意したうえで、購入検討することが大切です。

そこで今回のコラムでは、アパート経営を共有名義で行うメリットとデメリット、さらには注意点についても解説します。

目次

  1. 不動産の名義とは?
  2. アパート経営を共有名義にするメリット
    2-1.収入合算によりアパートローンの融資金額が多くなる
    2-2.管理業務の負担が軽減される
    2-3.複数人が携わることで帳簿上のミスにも気づきやすい
  3. アパート経営を共有名義にするデメリット
    3-1.方針を決める際に意見が食い違うこともある
    3-2.経理業務や確定申告が複雑になる
    3-3.アパートの所有権が複雑化する
  4. アパート経営を共有名義で行う場合の注意点
    4-1.持ち分は出資比率によって決まる
    4-2.共有名義人が経営から離れることもある
  5. まとめ

1 不動産の名義とは?

名義とは、権利者あるいは法律上の行為者と呼ばれる人のことです。

土地や建物などの不動産には所有する人としての名義人が必要です。不動産は法務局の登記簿で管理されており、登記簿には名義人が記載されています。

この不動産の名義人には、単独名義と共有名義の2つの種類があります。

  • 単独名義:不動産の費用を一人が出資して、不動産の登記をその人が行うこと
  • 共有名義:二人以上が出資して、その割合に応じた持ち分によって不動産の登記を行うこと

アパート経営を始める際は、土地や建物を取得した際に不動産の所有権移転登記の申請を行います。このときに、オーナーが一人であれば単独名義、複数いるケースは共有名義で申請することになります。

まずはこの単独名義と共有名義の違いを理解して、メリットについて見ていきましょう。

2 アパート経営を共有名義にするメリット

アパートの経営を共有名義で始める場合、夫婦で行うケースのほか、第三者と行うケースもあります。メリットを見てみましょう。

2-1 収入合算によりアパートローンの融資金額が多くなる

アパートを購入する際に自己資金ですべてまかなうことができなければ、金融機関から融資を受けることになります。その際、取得するアパートを共有名義にし、ローン審査の際に名義人の収入を合算すると、融資が受けやすく、また融資金額も多くなることが考えられます。

例えば、夫婦でアパート経営を始める場合を例にしてみましょう。夫の収入が800万円で妻の収入が600万円の場合、夫の単独名義であれば800万円をベースにして融資金額が算出されます。

これに対して、夫婦の共有名義でアパート経営を始めるとした場合、二人の収入を合算した1400万円をベースに融資金額や金利が算出されるということになります。そのため、より高額なアパートを購入できる可能性があるのです。

ただし、審査の基準は各金融機関によって異なるため、すべてのケースに当てはまるわけではない点に注意が必要です。共有名義にせずともローンの連帯保証人となることで、2者の収入を合算して評価してもらえるケースもあります。

2-2 管理業務の負担が軽減される

アパートを経営していくには、修繕工事や入居者募集、トラブル解決など経営判断を伴うシーンが多々あります。その際に一人で判断して決定するよりも、複数人で意見を出し合って決定した方がより良い対応ができる可能性があります。

また、帳簿への記帳や、領収書の保管、管理会社とのやりとりなど、オーナーとして細かな業務があります。こうした管理業務を複数の名義人で分担することで、負担を軽減できることもメリットの一つです。

主にアパートの管理業務は下記のものがあります。管理会社に委託する場合、細かな管理業務は管理会社が行いますが、最終的な判断はオーナーが行います。

管理業務 主な内容
入居者募集に関わる業務 入居者募集、入居者の選定、賃貸借契約の締結
トラブル対応に関わる業務 入居者間および近隣トラブルへの対応、設備や機器の故障などへの対応
家賃回収に関わる業務 家賃回収、滞納者への催促
契約更新および退去に関わる業務 契約更新および退去手続き、敷金の精算、室内クリーニングおよび原状回復工事
建物管理に関わる業務 定期的な清掃およびメンテナンス、法定点検、設備の修理・修繕、大規模修繕工事

2-3 複数人が携わることで帳簿上のミスにも気づきやすい

一人でアパートを経営をしていると、どんなに正確に行っているつもりでも領収書が1枚足りなかったり、帳簿の数字にミスがあったりすることがあります。しかし共有名義にして、複数の人が協力してアパートを経営していくと、そうしたミスや不具合に気づく機会が増えることが予想されます。

例えば、確定申告の際に青色申告で行う場合は、次の6つの帳簿が必要です。

  • 現金出納帳:経費の支払いや収入が現金であった場合に記帳する帳簿
  • 預金出納帳:預金口座に入金や出金があった場合に記帳する帳簿
  • 収入帳:収入となる家賃や管理費、共益費などを得た際に記帳する帳簿
  • 経費帳:経費となる物やサービスを購入した際などに記帳する帳簿
  • 固定資産台帳:建物本体や付帯設備などの取得価額や減価償却費などを記帳する帳簿
  • 総勘定元帳:勘定科目に分けて、すべての取り引きを記帳する帳簿

これらの帳簿を一人でつけてチェックするよりも、複数人でチェックした方がより正確な帳簿になります。これも共有名義でアパート経営を行うメリットの一つです。

3 アパート経営を共有名義にするデメリット

共有名義は複数のオーナーがいることでメリットがありましたが、デメリットもあります。詳しく見てみましょう。

3-1 方針を決める際に意見が食い違うこともある

複数人で方針や方向性を決めていくため、意見が合わない場合は物事が進められなくなります。

例えば、多額の支出がある修繕工事です。外壁塗装、屋根塗装、設備更新、水道管工事など多岐に渡り、それぞれの項目で意見が合わないことも考えられます。

費用が大きくかかるだけに費用対効果に対する意見も様々で、費用をかけてでも空室を埋めるべきか、時間をかけてもいいから工事の費用を抑えるか、といった意見の調整が必要です。この場合、調整役となる人材やリーダーシップを取れる人材がいなければ、経営判断が遅れることも考えられます。

3-2 経理業務や確定申告が複雑になる

共有名義にすることで経理業務の負担が軽減されるというメリットを紹介しましたが、業務を分担することで複雑になることもあります。例えば、毎月得られる収入はどこの口座に振り込んでもらうのか、帳簿を誰がどうつけるのか、ということもあらかじめ決めておく必要があります。

共有名義の場合の帳簿の付け方にはいくつか方法があります。下記に代表的なものを紹介します。

取引ごとに分けて記帳

持分に合わせてそれぞれの帳簿に記帳していく方法です。二人の共有名義で持ち分が半分ずつであれば、家賃の収入が40万円に対して、それぞれが20万円ずつの家賃収入を得るという記帳を行います。同様に経費も半分ずつにして記帳していきます。

帳簿をまとめて決算時に分配

この方法はすべての記帳を一人が代表して行い、決算時に持ち分に合わせて配分する方法です。確定申告の際に決算書を共有者それぞれに分けて作成して申告をします。

3-3 アパートの所有権が複雑化する

共有名義の場合、アパートを売却するときの判断が難しくなります。すべての共有名義人が売却に合意しなければ物件すべてを売却することはできないためです。

売却の予定がない場合にも相続によって所有権が枝分かれし、さらに権利関係が複雑化してしまう可能性もあります。家族間での共有名義の場合であっても、売却や相続などの出口戦略についても事前に相談することが重要となります。

特に相続時点でアパートを共有名義にするか、単独名義とするか検討している場合は慎重に検討することが重要になります。下記の記事では不動産やアパートの相続方法について詳しく解説しているため、ご参考ください。

【関連記事】不動産の相続、共有名義にするメリット・デメリットは?他の方法との比較も
【関連記事】相続アパートの売却と経営、どう選ぶ?比較のポイントや注意点

4 アパート経営を共有名義で行う場合の注意点

アパート経営を共有名義で行う場合の注意点もみて行きましょう。

4-1 持ち分は出資比率によって決まる

共有名義でアパート経営を始めた場合、持ち分の割合は出資する金額で決まります。例えば、5,000万円のアパートを購入する場合、夫が3,000万円、妻が2,000万円を負担するケースでは、夫の持ち分は60%、妻の持ち分は40%となります。この持ち分に合わせて、家賃収入や経費なども配分されるのが原則です。

夫婦の場合に特に気をつけたいのが、この持ち分に一致しない金額のやりとりを行うことです。この場合、夫婦間であっても贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性があるので注意しましょう。

4-2 共有名義人が経営から離れることもある

共有名義人とあらかじめ業務の分担を取り決めていたとしても、一方が病気や事故などの突発的なトラブルによって経営から離脱する可能性もあります。

その場合、分担していた管理業務をすべて一人で行うことになるなど、経営に関する負担が極端に重くなることになることが予想されます。共有名義でのアパート経営は、業務を分担することができる分、何らかの要因で分担するのが難しい状況になることも想定しておきましょう。

まとめ

アパート経営を共有名義で始めると資金調達がしやすく、規模の大きいアパートの運営ができる可能性があります。

しかし一方で、売却に全員の同意が必要であったり、持分割合に則した収入の分配が必要になるなど、権利関係が複雑になるといったデメリットもあります。

共有名義でアパートを購入する際は、メリットだけでなくこのようなデメリットにも注意し、慎重に購入を検討してみましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。