不動産の相続、共有名義にするメリット・デメリットは?他の方法との比較も

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不動産の相続では、共有名義の他に、現物・換価・代償という分割方法があります。相続した不動産を共有名義にすると、公平感のある相続ができ、売却時の利益(譲渡所得)が発生した際に税金の控除額が上がるなどのメリットがあります。

しかし、一方で所有者全員の許可が無いと売却できない、トラブルが起こりやすい等のデメリットが存在します。どの方法を選んだら良いのか、悩む方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、相続した不動産を共有名義にするメリットとデメリットについて、他の分割方法と比較して解説していきます。

目次

  1. 相続した不動産を共有名義にするメリット・デメリット
    1-1.相続した不動産を共有名義にするメリット
    1-2.相続した不動産を共有名義にするデメリット
  2. 不動産には共有の他に3つの分割方法がある
    2-1.現物分割
    2-2.換価分割
    2-3.代償分割
  3. 相続における分割はどの方法が良い?
  4. まとめ

1.相続した不動産を共有名義にするメリット・デメリット

不動産の共有名義は、亡くなられた方(被相続人)の不動産の所有権を相続する複数人に設定し、全員で権利を共有します。1人あたりの割合は「持ち分」として、相続人全員で話し合い決定します。

共有名義にすることで、不動産の分割が共有名義に適しているケースでは有用性があり、売却時に利益が生じた際にかかる税金の控除を名義人の数だけ受けられるというメリットがあります。

ただし全員の合意がないと売却できない、相続が発生した時に所有者が増え複雑になるといったデメリットも存在します。メリット・デメリットを分けて詳しく見てきましょう。

1-1.相続した不動産を共有名義にするメリット

まず、共有名義による相続のメリットを見て行きましょう。ここでは下記2点のメリットを取り上げています。

  • 売却時の利益に対する税金の控除を、名義人の数だけ受ける事が出来る
  • 公平感のある相続が可能

売却時の利益に対する税金の控除を、名義人の数だけ受ける事が出来る

不動産を売却して利益が生じた時には「譲渡所得税」という税金を支払う義務があります。

居住用財産を売却した時には、譲渡所得(不動産の売却価格から諸費用を差し引いた金額)から最高3,000万円を控除できる3,000万円控除の特例があります。(※国税庁「マイホームを売ったときの特例を参照」)

共有名義の不動産を売却した際には、控除が1人あたり3,000万円となり、単独名義のケースより譲渡所得税を軽減することができます。

公平感のある相続が可能

不動産の相続では共有の他に、現物・代償・換価といった分割方法が存在します。4つの方法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、不動産の種類や形状、相続人の数・関係性等を総合的に判断し、適している方法を選ぶ事になります。

共有名義にすると、1つの物件をそれぞれの持分割合で所有することになり、公平感のある相続が可能です。例えば、元々4人で住んでいた家で所有者が亡くなり、残り3人が住み続ける場合には共有分割として名義を複数名にすることが検討できるでしょう。

共有名義による相続は、不動産から得られる利益だけでなく管理責任などの手間なども公平に負担できる関係性であれば、検討しやすい相続方法と言えます。

1-2.相続した不動産を共有名義にするデメリット

次に、共有名義にすることで想定されるデメリットについて解説します。主には下記の3点です。

  • 名義人全員の承諾なしに売却できない
  • 相続が発生すると、所有者が増え複雑になる
  • トラブルが起こりやすい

名義人全員の承諾なしに売却できない

共有名義の不動産は、名義人全員の同意が無いと売却する事が出来ません。戸建てなどで、建物は自身の持ち分だが土地は別の相続人の持ち分である等のパターンでは売却が困難となります。

ただし、自分の持ち分のみを売却する事は可能で、例えばマンション1棟のうち1室が持ち分である場合、土地のみを共有名義で保有しており、持ち分のみを売却できる形状であるケースでは売却を行う事が出来ます。

しかし、「持ち分だけを購入したい」という買い手が見つかるケースも稀であることから、共有名義の不動産は単独名義に比べて売却が難しい傾向にあります。名義人全員との関係性が良好でないと、現金化することや担保設定することもできなくなるため、活用の幅が狭くなる可能性もあります。

相続が発生すると、所有者が増え複雑になる

共有名義の不動産で、名義人の1人が亡くなり相続が発生した時にはさらに不動産の権利関係が複雑になります。

例えば、夫婦2人と成人した子供2人の4人家族では、法定相続分(法律上定められた遺産の取り分)が妻は1/2、子供は1人当たり1/4となります。

法定相続通りに分割した後、子供の1人が亡くなり1/4の不動産を孫の数人が相続する事になると、相続が発生するたびに所有者が増え、権利関係が細分化されていくことになります。

このように、最初の相続では問題が無かった権利関係が、所有者が増える事で、売却・処分の際に意見がまとまらない可能性が高くなってしまいます。

トラブルが起こりやすい

共有名義にする大きなデメリットとして、トラブルが起こりやすいという点が挙げられます。

前述したように、共有名義の不動産は名義人全員の合意が無いと売却が不可能となっています。また、賃貸借契約においても基本的に全員の同意があり、代表者が他の所有者から委任状を受け取ることで、契約を行えます。

そのため、「売却したい」「貸し出したい」という意見があった時に、話がまとまらないと名義人同士でトラブルが起こる可能性があります。

2.不動産には共有の他に3つの分割方法がある

相続において不動産には共有の他に現物・換価・代償という3つの分割方法が存在します。

実際に現物の土地を分ける現物分割、不動産を売却し代金を分ける換価分割、1人が不動産を相続し、他の相続人は不動産の持ち分相当にあたる現金、別の財産を貰う代償分割をご紹介していきます。

2-1.現物分割

現物分割とは、実際の土地を分けてそれぞれの相続人に割当て、登記を行い分割する方法です。ただし、更地ではなく戸建などの建物付きの場合は、厳格に分割することが難しいため、現物分割は適さないと言えるでしょう。

更地においても土地の形状によっては分割が難しいケースがあります。

建物を建てる土地は建築基準法で、幅4m以上の道路に接している部分が最低2m必要である「接道義務」が存在します。

接道義務のある不動産の現物分割※図:「接道義務のある不動産の現物分割」筆者作成

道路に面していない土地は接道義務を満たしていないため、新しい建物を建てる事が出来ず、土地としての価値が下がってしまい公平な価額で分割する事が出来なくなってしまいます。

このように、現物分割は土地の形状によっては公平感の相続が難しくなるデメリットがあります。不動産の形状や相続人の希望にあわせて、慎重に検討することが重要です。

2-2.換価分割

換価分割は不動産を売却してお金に換え、分割する方法です。分割が難しい不動産を現金化する事により、公平でスムーズな分与を行う事が出来ます。

ただし、相続人が不動産に思い入れがある場合は、売却することに抵抗感を感じてしまうこともあります。当事者同士でよく話し合った上で決定しましょう。

2-3.代償分割

代償分割は相続人のうち1人が不動産を相続し、他の相続人には不動産の持ち分相当となる財産が分与されます。

不動産が単独名義となることから、他の相続人に同意を必要とせずに売却や処分を行う事ができるため、不動産の有効活用がしやすくなるメリットがあります。

なお、公平に分割する事が難しいケースでは、一方に代償金を支払います。その他の相続財産が不動産の持分よりも少ない場合には、相続人は自己資金の持ち出しが発生するケースがあります。

例えば、2人で財産を分割する際に、不動産の価額が3,000万円であり、その他の財産が2,500万円相当しか無い時には不動産を相続した方が500万円の代償金を相手に支払います。

換価分割・代償分割の注意点

換価分割・代償分割では、正確な査定が難しい不動産の評価を、相続人同士で納得する形で進めることが重要となります。不動産会社に査定を依頼する際は、1社だけでなく複数社の査定を参考にし、特定の人に有利な価格とならないように配慮するなど、工夫をしてみましょう。

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3.相続における分割はどの方法が良い?

相続が発生した際、後のトラブルを避けるためにも、相続人同士の関係性や不動産の分けやすさ、相続人の遺産に対しての価値観等により一番適したケースで分割することが重要になります。

例えば、相続人全員で「売却して公平に分与したい」という意見でまとまった時には換価分割となりますが、「公平に分与したいが売却したくない」というケースでは現物や共有、代償となります。この時、不動産の形状によって現物分割が難しいケースでは代償、または共有が検討できるでしょう。

相続人が遠方に住んでいる場合は意思疎通が取りにくく、意見がまとまるまで時間がかかるケースがあります。また、場合によっては相続人同士で意見が分かれてしまう可能性もあります。

話し合いでまとまらない時には、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てを行うという方法があります。

第三者である裁判官が当事者双方から事情を聴く、遺産について鑑定を行う等の方法で事情を把握し、相続人全員の意向を聴きながら合意を目指し話合いが進められます。

それでも話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が様々な事情を考慮して審判を行います。

まとめ

不動産を相続した際の共有名義におけるメリット・デメリット、他の分割方法や4つの分割方法の選び方を解説しました。

共有名義での相続は、公平感のある相続が可能である反面、後のトラブルや所有権が複雑になるデメリットがあります。それぞれの状況に合わせて、慎重に検討することが大切です。

なお、換価分割、代償分割では、相続不動産の資産価値の判断が分かれた場合に公平感のある相続が難しくなります。複数の不動産会社の査定を受けるなど、それぞれが納得できる査定額を算出することが、後のトラブルのリスクを低減させることに繋がります。

それぞれの方法でメリット・デメリットが存在しますので、相続人同士でよく話し合った上で分割方法を決定しましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。