フラット35や住宅ローンの不正利用問題、知っておくべき不動産投資ローンとの違い

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不動産投資は家賃収入を得ながら返済が期待できるため、ローンが組みやすい会社員・公務員の方から注目されている投資です。しかし、住宅ローンと比べて不動産投資ローンは金利が高いため、「金利が低いフラット35や住宅ローンで買った物件で、不動産投資を始めればいいのでは?」と思っている方もいるのではないでしょうか?

ただ、フラット35や住宅ローンで購入した物件で賃貸経営を始めてしまうと「自宅として住む」という住宅ローン本来の借入目的から外れてしまうため、金融機関からは「住宅ローンの不正利用をしている」とみなされてしまいます。今回は、このフラット35や住宅ローンの不正利用問題に関して、不動産投資ローンと住宅ローンの違いなどについて改めて考えてみたいと思います。

目次

  1. 住宅ローンと不動産投資ローンの違い
    1-1.借入目的
    1-2.返済原資
    1-3.融資金額の目安
    1-4.年齢制限
    1-5.返済期間
  2. 住宅ローンで不動産投資は原則認められない
    2-1.住宅ローンで不動産投資が認められるケース①
    2-2.住宅ローンで不動産投資が認められるケース②
  3. 住宅ローンで不動産投資をした場合のリスク
  4. まとめ

1 住宅ローンと不動産投資ローンの違い

物件を購入する際は購入額が大きくなるため、銀行から融資を受けるのが一般的です。その際の融資には、主に住宅ローンと不動産投資ローンの2種類がありますが、はたしてどのように違うのでしょうか?

両者の目安金利を比較すると、住宅ローンが年0.5~2.0%に対して、不動産投資ローンは1.5~4.5%であるため、不動産投資ローンよりも住宅ローンの方が金利は低くなっています。

仮に、返済期間35年・固定金利1.0%・元利均等返済の住宅ローンで5,000万円借りたとすると、返済総額は5,927万9,814円(利息分は927万9814円)、1ヶ月当たりの返済は14万1,142円となります。

一方、返済期間35年・固定金利3.0%・元利均等返済の不動産投資ローンで同額借りたとすると、返済総額は8,081万8,202円(利息分は3,081万8,202円)、1ヶ月当たりの返済は19万2,425円となります。

では、住宅ローンと不動産投資ローンにはなぜ金利に大きな違いが生じるのでしょうか?以下で両者の違いを見ていきましょう。

1-1 借入目的

住宅ローンの借入目的は、住宅ローンの契約者が居住する物件を購入するためです。一方、不動産投資ローンでは、他人に部屋を貸して家賃収入を得るなどのために物件を購入することが借入目的となります。

つまり、誰かに貸すことを主目的とした住宅ローンの借り入れはNGということになります。

1-2 返済原資

金融機関から融資を受ける際、住宅ローンでは契約者の毎月の給料やボーナス(所得)が返済原資と判断されます。一方、不動産投資ローンの返済原資は、借入者の給与収入に加えて不動産投資ローンで購入した物件から生じる毎月の家賃収入も判断材料とされます。

住宅ローンの融資審査では、個人の返済能力があるかが重要視されます。自営業者よりも企業に正社員として勤めているサラリーマンの方が安定した収入が期待できるため、融資審査に通りやすい傾向にあります。ただしサラリーマンであっても正社員ではなく非正規雇用の場合は、契約の終了や解雇が生じる可能性もあるため、融資審査が厳しくなります。

一方、不動産投資ローンの融資審査では、主な返済原資が家賃なので物件の収益性が重要視されます。資産価値が高いか・利回りが高いか・築年数が経過しすぎていないかなども判断材料ですが、空室が生じた場合には契約者の給料も返済原資となるため、個人の返済能力も考慮されます。

1-3 融資金額の目安

住宅ローンの融資金額の目安は、年収の5~8倍程度です。一方、不動産投資ローンの融資金額の目安は、年収の10~15倍程度です。不動産投資ローンは、家賃収入に会社の給料と返済原資が潤沢であるため、ケースによっては住宅ローンの約2倍の融資を受けることも可能です。

しかし、この融資金額はあくまでも目安です。勤務先企業が上場企業などで信頼度が高い、年収が少ない場合でも資産状況が良い場合などには、それぞれの要素を考慮された上で融資額や金利条件、返済期間なども異なってきます。融資審査で何が評価されるかは金融機関によっても異なりますので、不動産会社などにもヒアリングをしてみたほうが良いでしょう。

1-4 年齢制限

住宅ローンは65~70歳が融資を受けられる年齢の上限です。一方で、不動産投資ローンは条件次第では70歳以上でも借入可能です。住宅ローンの年齢制限が65~70歳までの理由は、返済原資が給料で判断されるという点です。

従来は年金が60歳から支給され、定年も60歳となっていました。しかし、現在は年金の支給が65歳に引き上げられたため、定年も60から65歳に引き上げる企業も増えており、その影響で住宅ローンも65~70歳が上限となっています。一方、不動産投資ローンは、返済原資が給料ではなく家賃が主であるため、退職を迎えた70歳以上でも借り入れ可能なケースがあります。

1-5 返済期間

住宅ローンの返済期間目安は、25~35年です。一方で、不動産投資ローンの返済期間も25~35年と変わりありません。住宅ローンは、返済期間の上限である35年が適用されるケースが比較的多いものの、不動産投資ローンでは上限が適用されるケースは少ないと言えます。

その理由は、不動産投資ローンの返済期間の算出に物件の耐用年数が関係するためです。例えば、耐用年数が比較的長い(鉄筋コンクリート造で47年)マンションを築10年で購入する際には、残存年数が37年あるため、上限の35年で融資を受けられる可能性が高いと言えます。

しかし、耐用年数が短い木造アパートや築年数の経過している物件の場合には、残存年数に合わせて返済期間が短くなり、1回当たりの返済額が多くなるので注意しましょう。

2 住宅ローンで不動産投資は原則認められない

住宅ローンは、借入目的が自己所有の物件を購入することに限られているため、原則投資用物件の購入には利用することができません。しかし、特例として認められているケースもあります。

どのような場合なら、住宅ローンで買った物件で不動産投資を始められるのでしょうか?2つのケースについて見ていきましょう。

2-1 住宅ローンで不動産投資が認められるケース①

住宅ローンで不動産投資が認められるケースの1つ目は、最初は自己の居住用物件として買ったものの、転勤などで居住できなくなったケースです。例えば、住宅ローンを契約して念願のマイホームを買ったにもかかわらず、買って数年で転勤になった場合です。

一時的な転勤で数年後に戻ってくることが分かっている場合には、家族だけマイホームに残して自分だけ単身赴任という選択肢があります。しかし、いつ戻ってくるかが分からない、転勤先が遠く離れている場合などには家族全員で引越すことになるため、せっかく買ったマイホームをどうすべきか困ってしまいます。

売却して現金化するという選択肢もありますが、いつ買い手が見つかるか分からないほか、売り急ぐと二束三文で買い取られる可能性もあります。また、自分が気に入って建てた注文住宅だと、手放すことに抵抗がありますが、持ち続けると住宅ローンの返済に加え、転勤先の住居費も発生するため、負担が大きく事実上困難です。

そのような場合には、住宅ローンを契約している銀行に相談すると、回収不能を防ぐために住宅ローン返済目的の不動産投資を認めてくれる可能性があります。ただし金融機関の許可を得ずに不動産投資を始めてしまった場合は、契約違反で一括返済を求められてしまうこともありますので、必ず金融機関に相談するようにしましょう。

2-2 住宅ローンで不動産投資が認められるケース②

住宅ローンで不動産投資が認められるケースの2つ目は、賃貸併用住宅を建てることです。この方法は自己の居住用住宅を持っていない方に限られますが、賃貸併用住宅の場合には住宅ローンで買った物件で不動産投資を始められます。

例えば、1階部分を自己の居住用として2階部分を賃貸用として貸し出す、または上階から他の家族が住んでいる気配を感じるのが嫌という方は、1階部分を賃貸用として貸し出して2階部分を自己の居住用とするなどです。

「それだったら1階部分を自己の居住用として、2階・3階部分を賃貸用として貸し出せばより多くの家賃が得られるのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか?実は、賃貸併用住宅であれば住宅ローンを利用できると言いましたが、「床面積の2分の1以上(金融機関によっては2分の1超)が自己の居住用である」というルールが決まっているのです。

賃貸併用住宅は住宅ローンが使えて金利が安いといっても、建物の半分以下しか賃貸用に使えないのであれば投資としては非効率です。自宅は自宅、投資用は投資用と切り分けて考え、物件を購入するという選択肢も視野に入れたほうが良いでしょう。

3 まとめ

住宅ローンは自己の居住用物件を購入する目的でしか契約できないため、最初から投資用物件と決まっている場合には住宅ローンを利用できません。

居住用として購入したものの転勤などが生じたという特別な理由がある場合には、銀行から賃貸用として貸し出すことの許可が出る可能性がありますし、床面積の半分以上を居住用として、半分以下を賃貸用として建築する場合は住宅ローンが利用可能です。

しかし、あくまでも住宅ローンは自宅として住むためのもの。「このケースなら問題ない」と自己判断で自宅を賃貸したことが原因で、金融機関からは不正利用とみなされ一括返済が求められる可能性があります。「お金を借りている」ということを忘れずに、誠実に返済していくことが大切です。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。