不動産投資の利回り、「表面」だけを見ていませんか?

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投資を目的にマンションなどの不動産を購入する場合、その投資事業の成否を判断する1つの指標になるのが「利回り」です。不動産会社(マンションのディベロッパーや不動産仲介会社)を通して投資用マンションなどを見学するケースがほとんどですが、その際、不動産会社の営業担当者から提示される利回りにはいくつかの種類があることを、まず覚えておきましょう。

利回りの仕組みを理解し、それに伴ういくつかの投資リスクがあることを認識することで、失敗を避けながら取り組んでいくことができます。

記事目次

  • 1 不動産投資の利回りの仕組み
  • 2 あなたが最初に遭遇するのが「表面利回り」だ
  • 3-1 確実な投資の指標になる「実質利回り」
  • 3-2 どこまで必要経費に盛り込むかで、シビアさが違ってくる
  • 3-3 ローン返済額を計上すると危険水域が見えてくる
  • 4 投資利回りを大きく左右する6つの脅威

1.不動産投資の利回りの仕組み

マンションなどの不動産を購入して、それを賃貸住宅として運用する場合、年間合計賃料と購入金額の比率を計算して、他のマンションのケースと比較するのが一般的です。この時、主に用いられるのが「表面利回り」で、不動産会社の営業担当者が説明の際に使う投資利回りの多くが、これに当たります。

2.あなたが最初に遭遇するのが「表面利回り」だ

■表面利回りの計算式

年間合計賃料÷購入価格×100

例えば、築10年の中古マンション(1LDK)の購入価格が2000万円で、そのエリアの相場に見合った月額想定賃料が9万円だとすると、その表面利回りは「年間合計賃料108万円÷購入価格2000万円×100」の計算で、5.4%になります。

また、新築マンション(1LDK)の購入価格が2500万円で、月額想定賃料が10万円だとすると、その表面利回りは「年間合計賃料120万円÷購入価格2500万円×100」の計算で、4.8%になります。

このように新築か中古かを問わず、また立地やエリアを問わず、異なる条件の物件を投資効率だけで比較できるのが、表面利回り(不動産会社によっては「想定利回り」ともいいます)なのです。

しかしこの表面利回りは、あくまでも「購入時(投資時)の条件がそのまま続く」と想定したものであることを、忘れてはいけません。つまり不動産投資は20年~30年の長期間継続して行うものであり、その間には不動産価値の低下とそれに伴う賃料のダウンや、競合物件の増加に伴う空室の発生、さらに老朽化した投資物件の修繕費用の増加など、さまざまなリスクが予想されるのです。

こうした将来予想されるさまざまなリスクに対処するために、より現実性のある利回りとして注目されるのが、「実質利回り」です。

3-1.確実な投資の指標になる「実質利回り」

■実質利回りの計算式(A社の場合)

〔年間合計賃料-(管理費+修繕積立金+管理会社への管理委託料)〕÷購入価格×100

上で紹介しているのは、「実質利回り」の計算式の例です。

例えばA社の場合、必要経費として「管理費」や「修繕積立金」、さらに管理会社に支払う「管理委託料」を計上しています。この中で「管理費」は、入居者から徴収する管理費をそのまま充当させるケースがほとんどですから、年間合計賃料を「(月額賃料+管理費)×12カ月」で計算して、相殺することになります。

また「修繕積立金」は、将来予想される大規模修繕工事の費用として投資家(賃貸オーナー)が負担するものです。対して、管理会社に支払う「管理委託料」としては、入居者募集のための手数料や入居後の各種トラブルに対応してもらうための管理料などがあげられます。

例えば、新築マンションを購入する場合は、賃貸物件の入居者管理から退去時の立ち会いや修繕の手配、さらに賃料保証(空室や賃料の滞納があっても毎月一定額の賃料が保証されるというもの)までがセットになった「サブリースシステム」(一括借り上げシステム)を利用することが可能です。

また中古マンションでも、物件の状態や管理会社が必要だと考える修繕工事を施すことで、サブリースシステムが利用できるケースもあります。その際、管理会社に支払う管理料は月額賃料の10%~15%程度が目安になっています。

以下では、先に紹介した、都心の新築マンション(1LDK)を例に、実質利回りを見ていくことにしましょう。

まず購入金額が2500万円で、月額想定賃料が10万円。また管理費が月額5000円、修繕積立金が月額5000円、そして管理会社へ支払う管理委託料が月額1万円だとすると、年間合計賃料は「10万円×12カ月」で、120万円になります。また必要経費の合計は「(5000円+5000円+1万円)×12カ月」で、24万円となり、その実質利回りは「(120万円-24万円)÷2500万円×100」の計算で、3.84%になります。

3-2.どこまで必要経費に盛り込むかで、シビアさが変わってくる

■実質利回りの計算式(B社の場合)

〔年間合計賃料-(管理費+修繕積立金+管理会社への管理委託料+税金+損害保険料)〕÷購入価格×100

次にB社が提示する実質利回りについて見ていくことにしましょう。
A社の計算式と異なるのは、必要経費として「税金(固定資産税と都市計画税)」や「損害保険料」を計上している点です。

まず固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の土地・建物の所有者に対してかかってくるものです。例えば固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」で計算されますが、面積200㎡以下の小規模な土地については6分の1に軽減される特例があります。これはマンションの場合も同じで、敷地全体の面積を住宅の戸数で割った面積が判定の基準になります。

また建物については、新築マンションの場合は当初5年間、固定資産税が2分の1に減額されます。軽減される条件としては、賃貸住宅の床面積(マンションの場合は専有面積)が40㎡以上280㎡以下であることです。ちなみに新築住宅の建物に関する固定資産税の軽減措置は、2018年度の税制改正で、2020年3月31日まで延長される見込みです。

次に都市計画税は「固定資産税評価額×最高0.3%」で計算されますが、固定資産税と同様に、面積200㎡以下の小規模な土地については3分の1に減額される特例があります。ただし建物についての軽減措置はありません。

一方、損害保険料としては火災保険料や地震保険料があげられます。建物の構造や用途、地域によって保険料率が0.05%~0.2%と異なりますが、不動産投資ローン(フリーローン)を利用する場合は、ローン契約時に損害保険会社から渡される「火災保険証書」などの金額がこれに当たります。

それでは、先に紹介した新築マンション(1LDK)を例に、B社の実質利回りを見ていくことにしましょう。

購入金額や月額想定賃料、管理費などの条件は同じですが、新たに固定資産税と都市計画税の合計税額2万と、損害保険料1万5000円を計上するとして、その必要経費の合計は「24万円+2万円+1万円」で27万円になります。
また実質利回りは「(120万円-27万円)÷2500万円×100」の計算で、3.72%になります。

3-3.ローン返済額を計上すると危険水域が見えてくる

■実質利回りの計算式(C社の場合)

〔年間合計賃料-(管理費+修繕積立金+管理会社への管理委託料+税金+損害保険料+ローン返済額)〕÷購入価格×100

不動産会社によっては、ローン返済の年間合計額を必要経費に計上して、実質利回りを計算するケースもあります。

例えば自己資金0円で、返済期間35年、年2.3%(変動金利)、ボーナス時返済なしの条件で不動産投資ローンを2500万円のフルローンを借り入れた場合、毎月の返済額は7万6310円、年間の返済額合計は91万5720円になります。

これを先のケースに当てはめると、必要経費の合計は「27万円+91万5720円」で118万5720円。また実質利回りは「(120万円-118万5720円)÷2500万円×100」の計算で、0.05%にまで大きく落ち込むことが分かります。

つまりこの実質利回りでは、「年間の賃料収入」と「必要経費の金額」がほぼ同額で、入居者が退去した際に発生する修繕費用を支払うことができないばかりか、変動金利が少しでも上昇すると赤字に転落してしまいかねないのです。

このようなケースでは、①投資先物件を見直し、より広いエリアから好立地で低価格の物件を探す、②新築にこだわらず中古物件にも目を向ける、③不動産投資ローンの借り入れ条件を見直し、より条件の良いローンを探す、④サブリースではなく、入居者管理や賃料徴収など管理の一部を委託する・・・などの対策を講じ、実質利回りが数%確保できるように、投資計画そのものの組み直す必要があるでしょう。

4.投資利回りを大きく左右する6つのリスク

不動産投資事業は購入後20年~30年程度継続する長期のビジネスで、購入時(投資時)には予想もしなかったさまざまなリスクが発生する可能性があります。そこで将来予想されるいくつかのリスクについて見ていくことにしましょう。

①ローン金利の上昇

2018年現在、不動産投資ローン(フリーローン)の金利は低い水準で推移しています。しかし景気の動向によっては、ローン金利が上昇し、ローンの返済計画そのものが破綻する危険性があります。想定する賃料収入で、ローンをきちんと返済していくことはできるのか、金利上昇にどこまで耐えられるかをシミュレーションする必要があるでしょう。

②建設費・人件費の上昇

これから新築マンションなどを購入しようとする場合に注意したいのが、建設費や人件費の動向です。特に首都圏では、東京オリンピック・パラリンピックなどのビッグプロジェクトが進行中で、建設資材費や建設労働者の人件費が上昇傾向にあります。

これらの動向は、投資用物件を含めた新築マンション市況に大きな影響を与えるとともに、工期の遅れなどにもつながりかねません。特に、竣工時期が遅れて消費税率の改正時期と重なる場合は、注意が必要です。購入契約を結ぶ時期にもよりますが、購入価格が上昇するとともに、仲介手数料や管理委託料等がアップするなど、さまざまな影響が出てくることが予想されます。

③管理コストの上昇

建設費の上昇や消費税率の改正に伴い、管理コストも上昇傾向にあります。その結果、マンションなどの管理費や修繕積立金の見直しが行われる、さらにはサブリースなどの管理委託料の増額を求められる・・・などのケースも出てくることでしょう。

④入居率の低下

賃貸住宅は築年数が増すごとに、入居率は低下していきます。つまり、新築当時はすぐに入居者が決まったのに、築10年を境になかなか入居者が見つからないといった「空室期間」が長期化する傾向にあるのです。そのため、築1年~築10年目の入居率を95%、築11年~15年目の入居率を90%というように、入居率を調整して利回りを計算する方法が有効です。

⑤賃貸住宅の魅力の低下

老朽化や陳腐化が進むと、賃貸住宅の魅力が低下し、それが④の入居率の低下に直結することになります。これを防ぐためには、内装をフルリフォームする、あるいは設備機器を最新のものに交換するなどの「再投資」が必要になります。

そして再投資の原資になるのが、賃料収入のストックです。設定した投資利回りが低すぎると、ローン返済に追われて再投資に必要なストックができないといったことにもなりかねません。投資開始から10年目、20年目でいくらの賃料ストックが得られるのか、一度計算するといいでしょう。

⑥競合する物件の増加

投資しようとする物件のエリア内に競合物件はいくつあるのか、さらに将来的に競合物件は増加する傾向にあるのかどうか・・・これを見極める必要があります。つまり、競合物件が増加すると「借り手市場」となり、賃料の低下や空室期間の長期化につながる危険性があるからです。

もっとも、エリア内で再開発計画や大学などの移転計画、さらには新線・新駅計画や交通アクセスの改善計画(複々線化などによる混雑率の緩和)などが進行中の場合は、今後とも入居希望者の増加が予想されますから、「借り手市場」にはならない可能性があります。その場合、所有する物件の魅力をいかに高めていくかが、不動産投資に成功するポイントだといえます。

まとめ

先にも紹介しましたが、不動産投資を行う場合、投資利回りが投資事業の成否を判断する1つの指標になります。例えば、投資先の物件を広くリサーチする場合に「表面利回り」を用いて比較検討し、次に「実質利回り」で物件を絞り込むというやり方が有効です。さらに、ローン返済額まで盛り込んだシビアな「実質利回り」で、投資事業の健全性を計ってみるといいでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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