人生100年時代と言われ、いくつになっても趣味に仕事に充実した日々を送ろうと各メディアからさまざまな提案がなされています。しかし一方で、“長生きするリスク”が高まることも認識しなければなりません。ファイナンシャルプランの側面から考えると、長生きするほど、生活費や医療費がかさみ経済的負担が大きくなります。
老後でも働けるうちはまだ良いですが、病気などでカラダも弱り働けなくなったとき、年金だけで暮らしていけるのでしょうか? 行き着く先は老後破産…ということも十分ありえます。それを回避する手段の一つに、「働かなくても収入が得られる」という特性を持つ不動産投資が挙げられます。
本記事では、老後破産にそなえた資産として収益不動産を取得する方法をわかりやすく解説します。
- そもそも不動産投資って何?
- サラリーマン大家と地主大家の違い
- 「人口減少」「空室増加」「家賃下落」……不動産投資のリスクとは
- サラリーマン大家に潜むリスク 〜シェアハウス投資の例〜
- 不動産投資は若いうちに始めたほうがいい理由
- 不動産投資のいろいろ 「ワンルーム投資」と「アパート一棟投資」
- 投資用ワンルームマンション
- アパート一棟経営
- 不動産投資の実践とポイント
- 情報を集め、物件を探す
- 不動産会社に行って相談
- さらに現地調査を繰り返す
- 契約の交渉
- アパート経営開始
- 採算シミュレーションをどう見極めるかで成否が決まる
1.そもそも不動産投資って何?
一口に不動産投資といってもさまざまです。投資手法として「物件を購入する直接投資」のほかに、「Jリート(不動産投資信託)」「不動産会社の株式に投資する間接投資」などがあります。また、プレイヤー(投資家)によって目的や手法が変わってくるのも不動産投資の特徴です。不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンと言われ、リスクが極端に大きいわけではありませんが、大きな資金を運用しますので、リスク管理も十分に行わなければなりません。
1-1.サラリーマン大家と地主大家の違い
不動産投資は他の投資商品と違って、プレイヤーの違いで目的が変わってきます。プレイヤーは大きく「サラリーマン大家」「地主大家」の2つに分けることができます。
サラリーマン大家
不動産を投資商品として購入し、アパート経営による家賃収入で資産を形成しようとするプレイヤーです。一般のサラリーマンが普通に働いて1億以上の大きな資産を形成するのは簡単ではありません。しかし、不動産投資ではそれも可能です。このような理由もあり
不動産投資は、株式投資・FX・仮想通貨などと同様に人気商品となっています。
不動産投資が他の投資商品と違う点は、「アパート経営が事業」ということです。大家は、「事業者であり経営者でもある」ことを自覚する必要があります。
地主大家
地主大家は都市部などに土地を持っていて、そこにアパートやビルを建てて家賃収入を得ています。アパート経営という点ではサラリーマン大家と同じですが、地主大家の目的は、おもに「相続税対策のための資産運用」です。この場合、依頼するのはハウスメーカーです。よくメーカーによるアパート経営のテレビCMを見ますが、おもに地主大家に向けたものです。そのため、土地を持っていないサラリーマンがハウスメーカーにアパート経営をしたいと相談に行っても、門前払いされることもあります。
1-2.「人口減少」「空室増」「家賃下落」……不動産投資のリスクとは
アパート経営は、長期的な安定収入が見込める投資事業です。もちろん、リスクがないわけではありません。一昨年、神奈川県など首都圏で空室率が30%を超えて過去最悪となるなど、「賃貸住宅市場そのものが崩壊しているのでは」と懸念されました。
さまざまな空室率
しかし空室率の計算方法には、現在募集している物件を母数として算出するなどカラクリがあります。つまり、満室の物件は除いてはじき出されるので、数値が高くなるのは当然との見方もできます。また空室率には「瞬間空室率」「戸数ベース空室率」「賃料ベース空室率」などさまざまあるので、メディアの情報に惑わされないようにすることも大切です。
アパート経営は個別性の高い事業です。立地、仕様、一つとして同じものはないため、平均的な市場指標はあくまで参考レベルと捉えるといいでしょう。アパート経営では、人口よりも世帯数がポイントになってきます。地方人口は、周知のとおり減少しています。しかし、物件の近くに大学が移転してきた、大きな工場が建設されたといった環境変化があれば、人口は逆に集中します。つまり、「物件周辺の市場環境がどうか」が重要な要素となります。
「家賃下落」で気をつけたいこと
家賃の下落に関しては、新築時よりも年数がたてば当然下落していくことを念頭に置かなければなりません。ただし、他の金融商品と比べると比較的安定しています。事故でもないかぎり、家賃が暴落することは一般的にありません。また、設備投資などで家賃を維持することも可能です。このあたりは、しっかりとした採算シミュレーションが必要になります。
1-3.サラリーマン大家に潜むリスク 〜シェアハウス投資の例〜
最近、家賃保証の契約があるにもかかわらず家賃の不払いをいきなり宣告されたという「シェアハウス投資」が大きな問題になっています。問題の経緯を簡単にまとめると、銀行融資を受けるさいに提出書類の改ざんが発覚しました。オーナーの預貯金、頭金等の初期費用が水増しされていたのです。改ざんは「実際の預貯金は数十万円なのに3000万円ある」「頭金ゼロなのに2000万円を入れた」といった内容で、銀行からの融資を受けやすくしたものと見られています。被害にあったのはサラリーマン大家を夢見た人たちです。なかには1億円以上の融資を受けた方もいました。
誰がどのように改ざんを行ったのかは明らかにされていません。このような問題に巻き込まれないために、オーナーには物件自体の良し悪しを見極める目を養うことが必要です。「今の入居者ニーズはなんなのか」「どんな物件なら長期に入居してくれるのか」など常に気にかけることが大切です。
1-4.不動産投資は若いうちに始めたほうがいい理由
アパート経営は長期にわたる事業です。また、ほとんどのケースは融資を受けて始めます。不動産投資を老後破綻の回避策とするなら、融資は「定年までに返済を終えること」「または退職金で融資返済を完了させる計画を立てること」が必要です。なぜなら、仕事による収入がなく年金だけの状況で融資返済があるようでは、老後破綻を早める結果につながりかねないからです。
そのためにも、会社員として現役のうちは、「月々の家賃収入のほとんどを融資の繰り上げ返済にする」といいでしょう。家賃収入があるからといって給与収入以上の生活水準にすると、失敗の要因にもなるので注意が必要です。あくまで、老後破産を回避するための不動産投資だということを忘れないようにしましょう。
以上を考慮すると不動産投資は、「若いうちに始めるのが有利」ということがわかります。そうしたほうが早い段階で融資が返済できるからです。結婚したばかりの方や既に家族がいる方は、家庭の経済状況をよく検討したうえで、不動産投資を考えてみてください。
2.不動産投資のいろいろ 「ワンルーム投資」と「アパート一棟投資」
実際の収益物件には、「投資用のワンルーム」と「アパート一棟経営」があり、それぞれ特徴があります。
2-1.投資用ワンルームマンション
ワンルームマンション購入のメリットに、アパート一棟に比べれば「購入価格が安い」という点が挙げられます。ただし、新築の場合、広告費用などが差し引かれるため買った瞬間に2~3割価格が下がることもあります。これを「新築プレミアム」といいますが、投資効率を悪くする要因ともいわれます。投資効率を重視するなら築浅の中古物件を狙う方法もあります。また、都心などの投資用マンションは部屋が狭めです。一般的には「人気エリアの徒歩5分圏内」の物件が無難といえます。
また、ワンルームマンションの場合は、家賃収入が「ある」もしくは「ない」のどちらかになります。つまり入居者がいるかいないかで家賃収入の有無が左右されます。リスク分散の観点から考えると、できれば複数戸所有するなどの対策をするといいでしょう。
営業電話には要注意!
どこからか携帯電話の番号を入手したのでしょう。投資用ワンルームマンションの営業電話がかかることがあります。「生命保険の代わりになる」「年金代わりになる」などの謳い文句で勧誘してきますが、やはり、冷静な判断が必要です。
紹介された物件をよく調べてみると「相場より高い」「融資の金利が高い」といったケースが少なくありません。「金利が高い」ということは、銀行が事業計画に難色を示している可能性もあります。採算シミュレーションもずさんな可能性が高く、儲かるはずが毎年赤字ということもあります。特にうまい話の営業電話には、飛び乗らないよう注意しましょう。
2-2.アパート一棟経営
多くのサラリーマン大家が夢見るのがアパート一棟経営です。「土地がなくてもOK」「自己資金が少なくてもOK」というテレビコマーシャルもよく見かけます。
しかし、東京都心で土地なしの状態からアパート経営を始めるのは、資産家でもないかぎり、初心者にはかなりハードルが高いと言えます。比較的無難なのがターミナル駅から電車で30分以内の都市圏内に位置する物件です。東京や大阪はもちろん、札幌、仙台、名古屋、福岡でも優良物件が出る場合もあります。また、戸建て賃貸というのもあります。地方の戸建てなら数百万の物件もあり、投資効率が良いのが特徴です。
優良物件を探す方法
優良物件を探す王道の方法は、不動産会社に何度も通うなど時間をかけることです。そのうち、不動産会社と仲良くなれば、業界の第三者的な視点で、いろいろとアドバイスをもらえるようになります。
アパート一棟経営では、物件の良し悪しを見極める能力が必要になります。初心者向けに全てをパッケージで提供する会社は、その分の手数料が高額になるため、投資効率は悪くなるというデメリットがあります。表面利回りや家賃だけでなく、経費や実質利回りをしっかりとチェックすることが大切です。
3.不動産投資の実践とポイント
では、どうやって不動産投資を始めればよいのでしょうか?その手順と物件選びのステップとポイントは次のとおりです。
- 情報収集、物件探し
- 不動産会社に相談
- 周辺環境等を現地調査
- 契約交渉、融資交渉
- アパート経営スタート
3-1.情報を集め、物件を探す
まずは、ネットで投資用物件を一つ一つ細かく見ていき、物件ごとの情報を吟味します。そして、その情報の適性を探ります。物件価格や想定家賃は、周辺の類似の物件を比較すればよいでしょう。全国にはさまざまな物件があります。
例えば1,000件の情報から、300件に絞り、100件は現地に行って実物を見る。そして10件に絞ったら、不動産会社に相談に行く、といった手順がおすすめです。
3-2.不動産会社に行って相談
次に、多くの不動産会社に足を運ぶことも大切です。始めのうちは冷たく対応されるかもしれません。それでも、何度か通ううちに本気度が通ればさまざまな情報がもらえることもあります。
本当のお買い得物件は、市場には出回らないと考えたほうが良いでしょう。不動産屋も、いい物件が入手できたら得意客にいち早く打診するからです。
3-3.さらに現地調査を繰り返す
足を使った物件探しと不動産訪問で相当程度の不動産知識が身につくはずです。そこで、さらに現地での調査を繰り返すことが必要です。その街のイメージや物件周辺の雰囲気などは、ネットやテレビで得た情報と違っていたりします。また、役所にいって都市計画もチェックしたいところです。将来的に街がどのように発展するかで、入居者ニーズは大きく変わります。
3-4.契約の交渉、融資の交渉
物件が決まれば契約の準備です。そして、初心者にとって最もハードルが高いのが「融資審査」です。実績があれば別ですが、たいてい初心者には厳しく、特に大手銀行などからの融資はさらに難しいでしょう。通常は地方銀行の高い金利での融資となるケースが多くなります。
3-5.アパート経営開始
不動産投資は、買って終わりではありません。買った瞬間から事業主としてアパート経営を始めることになります。ただし、サラリーマンをしながら、アパートの管理を行うのはなかなか難しいでしょう。
アパート管理は24時間365日の仕事です。入居者から「鍵が開かない」「設備が壊れた」「隣の声がうるさい」など、さまざまなトラブルにも対応しなければなりません。そこは、不動産会社と賃貸管理契約を結んで行うのがよいでしょう。
3-6.採算シミュレーションをどう見極めるかで成否が決まる
繰り返しますが不動産投資は20〜30年の長期事業です。そこで大切なのが収支計画です。採算シミュレーションを綿密に行う必要があります。
よくある失敗例は、不動産投資の営業マンが出してくる採算シミュレーションを鵜呑みにしてしまうことです。ずさんなシミュレーション例として「家賃が30年間下がらない前提で計算する」「費用が手数料以外にかからない設定で計算する」などが挙げられます。
家賃は長期的にみれば下がります。ですから、例えば10年後に10%、20年後に20%下がる前提にしたり、周辺の同様の平米数の築10〜20年の家賃を調べてそれを当てはめてみるのがよいでしょう。また、シミュレーションは1つのパターンだけでなく、「2%下落した場合」「5%下落した場合」「10%下落した場合」など複数作って比較検討するのがいいでしょう。
修繕費用にも要注意
見落としがちなのが修繕費用です。入居者が入れ替わった場合は、クロスの全面張り替えや設備の修繕・取り換えなどに家賃以上の費用がかかります。これを無視した採算計画などは注意が必要です。
また、アパートの場合、約20年の周期で外壁の塗り替えなど大規模修繕が発生します。これに備えるため、家賃の5%などを積み立てて準備しておくことが必要です。
そのほかにも、「固定資産税」「事業税」「保険」などの費用が発生します。もちろん、収入が増えますので、その分を確定申告して所得税を納税することになります。
採算シミュレーションは厳しい目で慎重に行い、数年ごとに見直すことが不動産投資を成功させる大きなポイントになります。1棟が軌道に乗れば、2棟、3棟と増やしていくこともできるのが不動産投資の魅力です。また、そういう状況になれば、老後破産の心配は必要なくなるでしょう。
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