「社会を変えることの本質は、お金の流れを変えること」鵜尾 雅隆氏【インタビュー】

コロナ禍をきっかけに、寄付や支援について考え始めた方も多いのではないでしょうか。

コロナ禍に伴う様々な社会変化の中で、新たな社会課題が生じたり、事業環境が激変したりする中で、いまこの瞬間に支援を必要とされている方や団体も少なくありません。

ただ一方で、「寄付をしてみたいけど方法が分からない」「どこに寄付したら良いか選べない」「寄付したあとどのように使われているんだろう」といった疑問や悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、民間非営利組織のファンドレイジング(資金集め)の推進や社会貢献教育などの活動を行っているNPO法人 日本ファンドレイシング協会の代表理事である鵜尾 雅隆さんに、寄付の変化・寄付先を選ぶポイントなどを中心に編集部がお話を伺ってきました。

話し手:日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾 雅隆 氏

JICA(独立行政法人国際協力機構)、外務省、NPOなどを経て、2008年に、NPO向け戦略コンサルティング企業株式会社ファンドレックスを創業。2009年には課題解決先進国を目指し、社会のお金の流れを変えたいという思いから日本ファンドレイジング協会を創設。寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。

目次

  1. コロナ禍での寄付の特徴は?
  2. 寄付の成功体験を得るために、団体側がすべきこと
  3. オンラインで初めて寄付をする場合の情報収集の仕方
  4. 鵜尾さんが注目している活動やNPOは?
  5. 教育プログラム「Learning by Giving」
  6. 寄付した後のコミュニケーションの取り方・繋がり方
  7. 単発での寄付と継続寄付の使い分け
  8. 日本の寄付額を10兆円へ
  9. お金の流れが社会を変える肝
  10. 寄付初心者へのアドバイス
  11. 編集後記

コロナをきっかけに、10代、20代の方が寄付に関心を持ち始めています。鵜尾さんがコロナ禍の中で寄付に関して感じていることを教えてください

たしかに、コロナを契機に寄付をされた方が多くいらっしゃいます。2011年の東日本大震災の時も寄付額が伸び、「寄付元年」と呼ばれていますが、今回の寄付が2011年の寄付と違う点は「選択する寄付元年」だったということだと思っています。東日本大震災の時は義援金というわかりやすい受け皿があり、現金を寄付金で入れておけば、誰かが分配してくれて、被災者に均等割で配られるような形式でした。今回は社会問題が多元的に生じており、居酒屋・アーティスト・貧困者・医療従事者など、色々な寄付の軸があるため、自分で寄付先を選ぶ必要があります。しかも、今回は若い人の寄付が多かったというのも大きな違いです。

この状況下で、次に大事となってくるのが、寄付先を選んだ結果です。寄付者が「寄付をして良かった」と思えるかどうかが重要です。選んだ結果が「がっかりした」となると、「やっぱりやらないほうが良かった」となってしまいます。今後は、寄付を受けている側が、いかにして寄付した方にとって成功体験にできるかという点が重要になってきます。寄付は、お金を払って物を買うこととは違い、ものが手に入るわけではありません。しかし、寄付をして幸せな気持ちになるとか、嬉しいと思うとか、達成感を感じるとか、目に見えない価値が腑に落ちるということがないと、寄付は広がっていかないと思っています。

寄付者が寄付の成功体験を得るために、団体側はどのような形で寄付に向き合っていけば良いのでしょうか?

団体側としては、右脳の情報と左脳の情報を両方提供する必要があります。右脳の情報は、直感系です。喜んでいる子供のメッセージ・写真などが右脳の話です。左脳の話は、寄付金の内訳・使途が明らかで、ファクトが共有されるという側面。この両面のコミュニケーションをNPO側がどのくらいやれるかが、大事なポイントだと思います。

特に、今はオンラインでコミュニケーションを取ることができるので、コミュニケーションコストは下がってきていると思います。ウェブサイトやメールマガジンのほか、YouTubeを使って発信している団体もありますし、多元的なチャンネルを使って伝えていくことが大切だと思います。

オンラインで初めて寄付をする方やあまり寄付に慣れていない方が、情報収集をする際には、どういった点に注目していけばいいのでしょうか?

今回のコロナ禍で、特にオンラインの寄付に限って考えると、クラウドファンディングみたいなものを応援される方って結構多いと思うんですよね。目標もはっきりしてるし、参加もしやすいし、メッセージも残せるし、誰が応援しているのかもわかる。クラウドファンディングみたいな仕組みで言うと、結局のところ、本人がいいと思えた寄付先はどれも正解です。

しかし、寄付をする前には、「変なところに寄付したくない」ということと、「寄付するのであれば、達成感を感じたい」という二点をお考えになる方も多いのではないかと思います。この二つはネガティブな軸とポジティブな軸になります。ネガティブな軸の解決策として、一つは受け手のNPOの法人格みたいなもの、例えば公益財団のような公益認定を政府から受けている、あるいは認定NPO法人のようにきちんと認定されているかどうかが判断材料の一つになります。より多くの人が支援をしているということは、ある意味で、より多くの人に投票されている、信任されているということです。そのため、団体の信頼度合いを測る上で重要なのは支援者の数であり、寄付額ではないんです。1人が1000万円を出すのと、1000人が1万円ずつ出すプロジェクトは、寄付額はどちらも同じですが、1000人が支援しているプロジェクトの方が失敗する確率は低くなります。

失敗を避けるもう一つの判断材料は、活動している人、プロジェクトをやっている人たちの顔が、しっかり見えるということ。これも、非常に重要な要因だと思います。

一方で、ポジティブな軸に関して、自分がワクワクするものをどうやって見つけるのかというのは、少し難しくなります。これは人によって違うため、正解がありません。ただ、社会起業家とかNPOの代表は、色々な所でセミナーや講演をやっていたり、メディアで紹介されたりすることもありますので、その中で自分が「この人いいな」と感じた方を覚えておくと良いのではないでしょうか。パッションをもって、多くの人を巻き込んで、変化を起こしている人でないとメディアに紹介されませんし、YouTubeのフォロワー数も増えません。多くの人が共感して応援しているかどうかは、SNSのフォロワー数などでも知ることができます。そのような、情報発信を一生懸命やっているNPOから寄付先を考えていくことは、後々何をしているかという情報も入手しやすいので、寄付後のポジティブな成功体験に繋がりやすいと思います。

鵜尾さんが注目している活動やNPOについてもお教え下さい。

社会起業家は魅力的な人がとても多いと思います。新しいチャレンジをしている若い人たちも増えていて、新生の団体の中にも、いい組織っていうのがたくさんあると思います。歴史のある組織だと、あしなが育英会があります。交通事故・病気などで親を亡くした子供達のために、無償の奨学金、返さなくていい奨学金の事業をやっておられます。歴史はもちろんですが、徹底してしっかりとしたサポートをしているので、そういう意味ではすごい良い組織だなと思います。

同時に、今社会起業家って言われて、例えば途上国向けに支援など色々な活動されているところだと、児童兵士の問題に取り組んでいるテラ・ルネッサンス、国内ではフローレンスさんのように病児保育をやってる団体などがあります。タイプは違いますが、今までなかった解決策、行政だけに任せられない解決策をどう提供するかという点で、頑張っている人達がたくさんいます。

今、10代・20代の多くの方が社会課題に関心を持たれていて、仕事を通じて社会課題に取り組みたいという方が増えているというイメージもあるんですけど、社会起業家のほうではいかがでしょうか?

そうですね。海外では10代で社会起業家という方もよく出てるんですけど、日本はまだケースは少ないと思います。しかし、社会貢献に関心を持っている人というのは、中学生・高校生でも非常に多いな、と思います。

我々は「Learning by Giving」という教育プログラムをやっています。これは寄付者のお金をお預かりして、寄付先を子供たちに決めてもらうというもので、子供達に大きな変化が生まれるということで評価をいただいています。そうした、単に教室で社会問題を勉強しているだけではなくて、自分たちが実際に何か社会の解決に関わりたいという関心はすごくあるんだなと感じます。

実際に「Learning by Giving」のプログラムを実施した教室の子供たちの声をまとめた3分~4分のビデオが3月に出来上がったんですが、それを見て、すごい嬉しくて、泣きそうになりました。将来、日本中の学校で「一度は経験したらいいんじゃないかな」と思うぐらいです。もちろん、NPOの勉強をしましょう、と課外学習でやってもいいんですけど、それだとリアルな感じじゃない。でも、たとえば寄付者からお預かりした30万円を、どこのNPOに寄付するか決めましょうと言った瞬間に、子供たちはすごく真剣に考える。NPOの人たちも、単に活動を説明するのではなくて、子供たちに選ばれるように説明しようとし始めます。共感してもらおうと思うし、よそ行きの説明じゃなくなる。そうするとやっぱり相手に伝わるし、NPOの人も成長する。寄付先に選ばれなくても、「なんで自分は選ばれなかったんだろう」と考えますからね。

この話って、正解がないじゃないですか。だから、さきほどの話で、寄付で失敗しないようにしたいとか、より達成感を感じたいといっても、達成感の軸も人それぞれですから、寄付先を議論し合って決めるのは本当に難しいなと思うんですよね。そのなかで何が違うんだろう、何が社会問題なんだろうと考えること自体が、本当に意味があることだなと思います。

社会貢献というのは、先生も答えを持ってない。だから、「Learning by Giving」のプログラムを学校でやるときに先生によく言うことは、「先生、社会貢献や寄付には正解がないから、『こうしたらいい』っていうふうに先生が言っちゃダメですよ」ということなんです。ファシリテーターとして子供たちを導くというのはあったとしても、子供たちそれぞれに、自分の正解というものがある。そこが社会貢献というものの面白いところですね。

寄付後に、寄付先とどう関わっていけば良いか、コミュニケーションの取り方・繋がり方をしていくことができるかについてもお教え下さい。

それは、すごく大事なポイントです。寄付は、「寄」り添って、「付」き添うという字を書きます。今までの日本の寄付は、喜捨的でした。喜捨は、喜んで捨てるという意味で、仏教用語になりますが、チャリンと寄付をするけど、その先はどうなっているか分からない。それを、お金を受け取って終わりにするのではなく、寄り添って付き添うきっかけにしていく、ということが、私たちNPO側の課題です。

例えば、「神様が見ているから寄付してます」という人はあまりいない。我々の文化として、実体験で「いいな」と思うことが必要だと思っています。寄付することをきっかけとしてその団体との接点を増やして、自分が肌感覚で感じられるきっかけを作れるということは、豊かで幸せな人生にも繋がっていく感じがします。

だからこそ、寄付先の団体にもよるところがあって、団体自体が、寄付者に色んな体験をしてもらう機会を提供しようと思っているか、そうでないか、それによって大きな差があります。例えば、我々は「Learning by Giving」のプログラムで、学校で最終発表会の時に、寄付者の方にオンラインでオブザーブ(視聴)できる機会を作ってみました。そうすれば、寄付者の皆さんが「すごい、こんな風になっているんだ」とライブで見れるわけじゃないですか。その場で突然、予定にはなかったんですけど、子供が「寄付者の方は、どうしてこれを私たちに託そうと思ったんですか」「どういう思いなんですか?」と聞くんですよ。それって、別に寄付者のオブザーブを入れないで、「Learning by Giving」のプログラムをやることは可能なんですね。我々が勝手にやっているだけなので。でも、あえて寄付者にも参加の機会を作ることで、子供達にとってもプラスになる。なぜなら、子供達も、寄付者の思いが受け取れるわけです。寄付者にとっても、学ぶ機会、参加する機会になるだろうし、大きな付加価値があります。

寄付の付加価値を考えてくれるNPOを選ぶことで、実際に活動に参加する機会が増えます。どのように選べば良いか分からない方も多いと思いますが、団体のホームページやFacebookを見ていると、どのような活動をしているか、どのような支援者がいるか分かります。ボランティアであれば、みんなでやっているか、どんなことが出来たかが掲載されています。それらを見て、様々な人が関わっているということは自分にも関わるチャンスがあるということになります。

せっかくの寄付なので、一粒で二度美味しいというか、寄付して情報が入ってくることでプラスアルファの部分を感じることが出来て、楽しさが増すと思います。私もいろんな団体に寄付をしていますが、応援のしがいがあったり、達成感を感じたりするものがありました。それが「自分に合っている」ということだと考えています。

例えて言うのであれば「恋愛」みたいなものだなと思います。自分が相手を気に入る、相手が自分を気に入るかどうかって、付き合ってみないと分からないところだと思うんですけど、寄付もそれに近い。寄付をして繋がりができて、関わっていく中で、「この組織のここがすごく良いな」と思うことや、寄付先の想いを月々1000円でも「サポートしている」と思うことで、自己肯定感が上がるような気持ちになる。普段は忘れていても、ふと思い出して幸せになるような出会いが、寄付をする幸せだと思います。

寄付の仕方について、単発での寄付と継続寄付の二つをどう使い分ければいいでしょうか?

寄付する方の状況にもよります。継続寄付の仕組みは近年整っており、月々1000円の寄付で継続してサポートできる仕組みなどがあります。これは受け手の団体にとってはとてもありがたいことで、伴走して支えてくれている仲間という認識に近いと思います。マンスリーサポーターと言いますが、このような支援者が、どれだけたくさんいるかということを、各NPOが指標として追いかけています。

ファンがいるという安心感から、経営の安定にもつながります。マンスリーサポート100人の組織、1000人の組織、1万人の組織を比較すると、人数が多い方が物事を動かす力はあると思います。しかし、人にはそれぞれの価値観があって、いきなりマンスリーサポートにすると、クレジットカード支払いを止めようと思った時に手続きが必要です。まず1回寄付をして、お試しに近いコミュニケーションを取って、考えるという方法もあります。

今は相続のご寄付、あるいは誕生日のバースデードネーション、結婚式の引き出物代わりに寄付など、メモリアルな場面で寄付をされる方もいらっしゃいます。また、今回のコロナ禍のように、それぞれの価値観があり、継続的にサポートするという方や、ワンショットで寄付する方、どちらも良いと思っています。

今後、寄付額が伸びるにあたってどのような制度や社会変化が必要になるのでしょうか?

これまでは、日本で寄付が進む社会になるための仕組みがありませんでした。寄付を受ける側、ファンドレイザーについて学ぶこと、情報交換をする場所も存在せず、寄付教育を学校で導入できるモデルは十分ではありませんでした。寄付税制は、2011年に改正されましたが、それ以前はとても足りるものではありませんでした。そのインフラが、徐々に完成してきています。今後は、それをスケールさせるタイミングだと感じています。寄付は急速に成長していますが、コロナ禍で起こった現象として、富裕層や経営者など、いわゆる資産家が社会貢献を本気で考え始めていることが挙げられます。この流れを、どうやって本物にしていくかというところが大事だと思います。

これにあたり、2021年4月20日に日本初となるフィランソロピック・プラットフォームを立ち上げました。複数の団体で協力体制をとり、富裕層や経営者の社会貢献をワンストップでサポートするプラットフォームで、ジャパン・フィランソロピック・アドバイザリーという組織が相談窓口となって、財団・基金設立やNPO支援・インパクト投資まで相談ができ、社会貢献のアドバイスを得ることができます。

例えば会社の経営者など40代・50代の方で、株式資産で数百億円という額を保有していらっしゃる方々は、その資産をどうするべきか真剣に考えていらっしゃいます。

ベンチャーやテクノロジー、技術系やIT系の方々の多くは、家業として子供に継ぐのは無理だと感じていますが、子供にそれらの株式を残したとしても「子どもの人生が壊れる」と認識しています。例えば一部を子どもに残すとしても、残りを後継社長に全部あげるというのも、良い選択肢とは感じていない。

海外では、財団を作る、財団に株式を移すなど様々なことができます。日本の超富裕層と呼ばれる方の中には、資産運用の観点も含めて財団を作られている方が多くいらっしゃいます。すでにこの動きは見えてないところで起こっていて、今はこの動きが大きな超富裕層以外の人達にも来ている、ということだと思います。

超富裕層に限らず、数億円から10億円を超えるぐらいの資産を持っているサラリーマン社長は多くいらっしゃって、その中で「これをどうするんだろうな」と考え始めている方は増えています。金融機関と相談しても、いざ社会貢献したいという時に、金融機関ではサポートしきれず、手間ばかりかかってしまうという課題がありました。そこを、誰か引き受けてくれないかという話から連携し、このプラットフォームを立ち上げるに至りました。

いろんなパートナーと連携して社会貢献のプラットフォームを作ることで、本業で活躍しているけれども、社会貢献の仕方が分からないという方に、その方のための社会貢献プログラムを設計することで支援していきたいと思っています。

10代・20代の方が社会貢献に高い関心を持っているということ、富裕層や経営者を始めとする方が、自分の役割を考え始めていること。現在、この2つの大きな流れがありますが、後者はまだ明確化できていません。しかし、相談はすでに何件も来ているので、本格的に色々な動きが出始めています。今はその変わり目で、2020年代は変革が起きると思っています。

アメリカのNPOマネジメント専門の大学に行った時に感じたことは、自分のやりたい世界観を持っている財団・オーナーが山のようにいるということです。多様な価値観と興味で、自分のお金で財団を作る富裕層がたくさんいるのです。そのため、NPOや社会起業家が面白い企画を考え付いたとして、いろんな助成財団に何回申請しても断られ続けても、そのうちどこかの財団経営者が必ず「面白い」と思ってくれて支援を得ることができます。どこかの街で成功した後、たまたま支援してくれる人が現れて「資金を出すから全米に広げよう」となるので、さらに活動が拡大される。

自分でイニシアチブをとった支援者が、資金を援助して、アイデアを出して、ネットワークを引っ張っていって、自らの名前を公表する。このような、何ができるかを考えて行動することを、「フィランソロピー・イニシアチブ」と言いますが、この流れが日本でも起こってきています。

フィランソロピック・プラットフォームでは、このイニシアチブをサポートしていきたいと考えています。イニシアチブをとる方は、自分たちで社会に変化を起こせるんじゃないかと考え始めて行動をしています。アダムスミスの「神の見えざる手」のような、市場から見えていない、「市場の見えざる心」を駆動させる、「市場の見えざる心」が機能する社会だと思います。

企業が本気で社会に良い影響を与えようと思って頑張っていて、投資家が投資先として選択する。ESG投資はすでに伸びてきていて、我々は社会的インパクトとして提唱していますが、ポジティブな影響を与えようと思っている企業にお金が流れていくことで、企業も成長していくということ。経済や投資の利益だけではなく、社会を意識した投資をする人が増えていく流れなんじゃないかなと思っています。

ありがとうございます。寄付のお金の流れについて、鵜尾さんがご自身の活動で感じていることをお教え下さい。

私は、GSG(The Global Steering Group for Impact Investment)のグローバルの理事をしているので、投資で社会問題を解決するというのをどうやっていくのかということを、エコシステム形成からずっとやってきているんですが、「お金の流れ」って、社会の中で「血の流れ」みたいなものだと感じているんです。だから、血の流れが変わることで体質が変わるみたいなことで、社会を変えることの本質は、お金の流れを変えることなんじゃないかと私自身は思っています。

昔、JICA(独立行政法人国際協力機構)という組織で、50ヶ国ほどで仕事をしたんですけど、どの国も、企業と行政とNPO、この3本の足と呼ばれるセクターのバランスが違う。そのなかで日本はあまりにも第三セクターであるソーシャルセクターが弱いと感じて、そこを変えていこうと思ったんです。どう変えるか散々考えて行き着いた答えは、お金の流れを変えなきゃ駄目だということです。

ミンツバーグさんという有名な経営学者が、NPOのことを「三本の脚」だと表現していて、行政などのパブリック(public)セクター、企業などのプライベート(private)セクター、そしてソーシャル領域のプルーラル(plural)セクター、この3本の脚がバランス化する社会というのが強いとしています。そのなかで彼はその3本の脚、特にプルーラルセクターというのをNPOセクターだと定義付けずに、私たちのセクターだとしています。行政にいる人も企業にいる人も、地域に帰れば住民なわけで、本籍地はプルーラルセクターとなります。全員のホームベースとしてのプルーラルセクターを強くしないといけない。それはNPOだろうが、企業体でソーシャルビジネスだろうが関係がないんだということを言っているんですね。

私は実は3本の脚の真ん中に4歩目の脚が必要だと思っていて、それがお金の流れなんですよ。3本の脚の関係性を司っているのは、実は見えないところにある、お金の流れの4本目の脚なんです。これが細いと3本の脚の力関係が変わらないんですよ。背骨になる4本目の脚、つまりお金の流れがソーシャルグッドのほうに太いと、思い切ってバランスの転換ができる。だからそこが、日本の本質的な変え方ではないかと、私はずっとこの13年間ずっと思っていますね。お金の流れというのは、社会の変えていく上での肝(きも)であり、魂だと思っています。

最後に寄付を検討している方や、寄付をしたいと思っている方にアドバイスをお願いします。

寄付には正解がありませんが、自分の心が動いた団体や活動に寄付をすることが最も大切だと思います。寄付は誰かのためにすることですが、長い目で見ると、間違いなく寄付者のためになっています。人間が幸せになる要素は、やりたいことがあること、そして繋がりをもつこと・感謝をすることだという発表があります。寄付は、後者の繋がりと感謝に関連していて、寄付をすることで生まれる繋がりや、感謝をされるということが、最終的に自分の幸福感を高めたり孤立感をなくしたりしていくという効果があると、20年間の活動を通して確信しました。

寄付って「お金が出ていって、物が入ってこない」と思う方もいると思いますが、寄付は今の日本にとって大切なことだと思っています。「幸福感や達成感を感じるお金の使い方を見つけることが難しい」と多くの方がおっしゃっています。寄付の場合、行き先が見えない・使途が分からないということを心配される方もいらっしゃいますが、しっかりとした活動をしている団体がたくさんあるので、そういった団体に出会いたいという気持ちと、自ら選ぶことで、見えてくるものがあると思うので、是非寄付先を選んで実際に体験してほしいです。

編集後記

鵜尾さんのお話で印象的だったことは、「社会を変えるには、お金の流れを変える必要がある」ということです。お金の流れは、社会にとっての血の流れのようなものであり、このお金の流れが変わることで社会がより良い方向へ進んでいく、その一つとして寄付という方法があるのだと感じました。

また、「寄付には正解がない」というお話も、寄付を考える上で大切にしたいポイントです。正解がないからこそ、自分自身で納得するまで考え、行動し、自分に合った寄付先を探していくことが重要になります。

加えて、鵜尾さんは「寄付先を自ら選ぶことで見えてくるものがあり、寄付をしていくことが最終的には自分自身の幸せにもつながる」というお話もされていました。寄付を検討されている方やこれから寄付をしてみたいという方は、今回の記事を参考に、自分にあった寄付の仕方について考えてみてはいかがでしょうか。

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HEDGE GUIDE 編集部 寄付チーム

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