今回は、販売所のスプレッドについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
仮想通貨(暗号資産)市場が急拡大する中、国内取引所の口座開設数は急激に増加しているようです。
しかし、投資初心者が仮想通貨市場の基本を理解しないまま、取引を行うと痛い目に遭う可能性があります。仮想通貨は値動きの幅が大きく、リスク管理の面ではとても難しいものです。また、気づかないうちに手数料に多くのコストがかかっている可能性もあります。
ここでは初心者が気付きにくい「スプレッド」について解説していきたいと思います。
①販売所と取引所の違い
スプレッドの説明を行う前に、仮想通貨取引所における「販売所」と「取引所」の違いについて説明します。
- 販売所は、ユーザーと仮想通貨取引所間で資産を売買する場所です。多くの交換業者は販売所の手数料を「無料」としています。
- 取引所は、ユーザー間で取引をする場所です。仮想通貨取引所はユーザーの注文を表示する板を管理するため、0.1%前後の仲介手数料を徴収します。
しかし、実質的な手数料を考慮すると、販売所は取引所より格段に割高になる傾向があります。なぜなら販売所には「スプレッド」が存在するからです。それではスプレッドについて詳しく説明をしていきたいと思います。
②スプレッドとは
スプレッドとは仮想通貨を「買いのレート」と「売りのレート」の「差」を意味します。このレートは仮想通貨取引所の実質的な手数料となっています。
仮想通貨取引所はリスクをカバーするため、そして収益を得るために市場価格に対してプレミアムを載せています。そのため市場価格よりも、割高の買値、割安な売値となっているのです。それではビットフライヤーの販売所を例に、実際のレートをチェックしましょう。
まず、こちらは市場価格です。
次に下記がユーザーがビットコインを購入する場合のレートです。
そして以下は、ユーザーがビットコインを売る場合のレートです。
これらは同じ時間のレートなのですが、それぞれ価格が異なることがわかるでしょう。ビットコインの買値と売値の差が35万円(約6%)ほどあり、これがスプレッドです。
③スプレッドが存在する理由
ビットフライヤーを始めとする仮想通貨取引所は、なぜスプレッドを設定しているのでしょうか?以下では仮想通貨取引所の事業構造について説明します。
日本円と交換にビットコインを顧客に渡すと、事業継続のためにビットフライヤーはグローバルマーケットから1BTCを補充する必要があります。先ほどの例では市場価格が5,770,701円でした。これはビットフライヤーにとって5,770,701円前後のコストで市場でビットコインを調達できることを意味します。
ビットコイン価格は突如乱高下することもあるため、赤字を避け、確実に利益を確保できるようスプレッドを設定する必要があります。そのため、市場が荒れて、ボラティリティが高いタイミングではスプレッドがさらに拡大することがあるのです。
④販売所を利用するときの注意点
仮想通貨投資に慣れている人はスプレッドがかかる販売所ではなく、取引所を使う傾向があります。しかし、販売所は使いやすく、まとまった数量をすぐに取得できるというメリットがあります。そのため、しっかりと市況や取引所のスプレッドをチェックしながら、販売所を活用していくと良いでしょう。
特にコインチェックやビットフライヤーの場合、「買いのレート」と「売りのレート」は同時に表示されないため、各ページを閲覧してレートを控え、スプレッドを割り出すことが肝心です。ディーカレットやDMM Bitcoin、SBI VCトレードなど比較的後発の企業は、この点をクリアしている傾向があります。
また、販売所のスプレッドは仮想通貨交換業者によって大きく異なります。そのため、複数のサービスで口座を開設しておき、その都度最もスプレッドが安い販売所を利用することも戦略の一つです。
⑤まとめ
仮想通貨取引所にとって5~6%の実質的な手数料を確保できる販売所のスプレッドは重要な収益源となっています。反面、取引所の手数料は0.1%程度と小さいため、運営コストをカバーするには膨大な出来高が必要になります。
仮想通貨初心者はこうした構造を理解したうえで、上手にサービスを利用しましょう。取引所を使えると資産運用を続けていく上で有利です。特に、ビットフライヤーのビットコイン取引所の出来高は国内No.1です。最初は難しく感じるかもしれませんが、販売所と取引所の違いを理解して頂き、徐々に使用してみると良いでしょう。
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中島 翔
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