価格上昇が続く日本の不動産市場ですが、2019年10月に控える消費税率の引き上げが市場にどう影響するのかが注目されています。その中で変わらず強い経済状況を見せるアメリカの不動産投資を考えている投資家の方もいらっしゃるでしょう。
アメリカ不動産投資では学区を含めた立地選びが重要になることやリアルター(不動産業者)選び、登記調査など独特の注意すべきポイントがあります。そこで今回は、アメリカ不動産投資で失敗しないためのポイントを解説していきます。
目次
- 予算・収益性・将来性のバランスを考える
1-1.投資するエリアの選定方法
1-2.州ごとの税制に注意 - 物件購入をサポートする「リアルター」の探し方
2-1.アメリカ不動産特有のリアルターとは
2-2.リアルターの探し方 - 投資するエリアは「学区」で選ぶ
- 物件選びはロケーションも重視する
- アメリカでの確定申告の注意点
5-1.非居住者の確定申告には「個人用納税者番号」が必要
5-2.日本とアメリカの「減価償却」の違い - 「ホームインスペクション」と「タイトルカンパニー」
- 管理会社は日本の不動産会社を間に立てる
- まとめ
1 予算・収益性・将来性のバランスを考える
不動産投資で大切な要素は、購入予算に関わる「物件価格」、収益に関わる「将来性」、そして「賃貸利回り」です。ロサンゼルスやニューヨーク、シアトルといった人気エリアは不動産価格の上昇率も高いのが魅力ですが、物件価格はかなり高騰しています。
日本最大級の海外不動産を取り扱うサイト『セカイプロパティ』の調査によると、2018年5月の時点でもそれぞれの平均販売価格は795,000米ドル・850,000米ドル・729,950米ドルとなります。
1-1 エリアの選定方法
アメリカでの不動産投資を考える際には、エリアの選定をどのように行うかが重要です。予算にもよりますが価格がそれほど高くなく、将来性の期待できる場所を選ぶのが良いでしょう。
売り出し物件の価格に関しては、zillowなどの不動産情報サイトを参考にチェックできます。エリアごとの価格を知りたい場合、マーケット情報をチェックすれば地域ごとの住宅価格指数が表示されます。
将来性については人口動態が参考になります。人が多ければそれだけ不動産需要も多く、物件の在庫数と照らし合わせれば、需給バランスの傾向もチェックできます。もちろん人口あたりの供給数が少ないほうが、不動産価格は高くなります。
1-2 州ごとの税制に注意
アメリカ不動産投資では、州によって税制が異なることにも留意する必要があります。不動産所得に関する税金には「連邦税」と「州税」の2種類がありますが、連邦税はどの州であっても課税されます。一方、州税は課されないところもあります。最高税率も州によって異なり、例えばカリフォルニア州は最も高い税率として知られています。
また海外不動産を購入する場合、日本のように簡単にローンが組めるわけではありません。融資を受けることができたとしても、物件に対する融資限度額はそれほど高くないのが実情です。そのため不動産価格の上昇が見込めるのと同時に、物件価格もそれほど高くないエリアを探す必要があります。
例えばフロリダ州オーランドは観光地として有名ですが、Zillow社のサイトによると物件価格はそれほど高くなく、賃貸利回りがある程度確保できる可能性があります。セントラル・フロリダ大学の学生や企業に勤めている方も多く、十分な賃貸需要も見込めるでしょう。
あるいはノースカロライナ州ローリーなども狙い目です。研究施設が多く、学生も多く住んでいます。賃貸需要が期待でき、物件価格もそれほど高くないため無理せずに購入できます。
このように不動産価格の上昇率と賃貸利回り、物件価格に加えて人口増加率などもチェックしてエリアを選定することが重要です。
2 物件購入をサポートするリアルターの探し方
日本で投資用の不動産を購入する場合、不動産会社の担当営業スタッフと相談して物件を決めるのが一般的です。アメリカの場合、リアルター(realtor)と呼ばれる担当者を決めて物件探しから購入のための交渉、契約完了までをフォローしてもらうことになります。
2-1 アメリカ不動産特有のリアルターとは
アメリカの不動産は中古市場が充実しており、投資用不動産も新築よりも中古のほうが収益性の高い物件を探しやすい傾向にあります。中古物件を購入する場合、売主と価格の交渉をする必要がありますが、ここで役に立つのが「リアルター」です。
リアルターとは不動産販売のライセンスを持っている販売員のことですが、エージェントやブローカーとも呼びます。ブローカーは事務所を構える不動産取引の資格を持つ専門家ですが、エージェントはブローカーと契約し、フリーで営業することで成功報酬を得ている職業です。
2-2 リアルターの探し方
優秀なリアルターは物件情報を豊富に持っていますが、不動産販売のライセンスは州ごとに取得が必要となります。そこでまずは購入先の州を決めてからライセンスを持つリアルターを探さなければなりません。優秀なリアルターは人づてに探すこともできますが、人脈がなく、海外不動産投資が初めての方などは不動産情報サイトから見つけるのがおすすめです。
アメリカの不動産サイトは日本よりもはるかに充実しており、例えば代表的な仲介サイトのひとつであるRedfinでは、「希望する地域+agents」で検索するとリアルターの候補が一覧表示されます。リアルターによって扱う物件のエリアや価格帯が違うため、自分の条件に合う方を選ぶようにしましょう。
3 エリアは「学区」で選ぶ
アメリカで物件のエリアを検討する際、注意したいのが「学区」選びです。学力・知名度の高い学校や大学付近は、不動産価格が上がる傾向にあります。そのため、アメリカの不動産情報検索サイトでは学校のランクも随時チェックすることができ、子どもがいる家庭が家を購入したり賃貸物件を選んだりする時には、学区が重要な判断材料になっています。
投資用物件も学区の良いエリアの方が収益性は高くなり、賃貸需要も高く、売却時には好条件で買い手を見つけることができます。子どもが大きくなれば物件を高値で売却できるといったメリットもあります。
学区の評判を調べることができるサイトはいくつかありますが、例えば、「Greatschools.org」ではアメリカの郵便番号(Zip code)を入力すれば、近隣学校の評価が10点満点で表示されます。実際の利用者の口コミもあるため、詳しい実情も把握できます。ほかに「Department of Education」や「Schooldigger」といったサイトなどいろいろあるため、気になる方は試しに調べてみてください。
(Greatschools.org カリフォルニアの学区の例)
4 物件選びはロケーションも重視する
アメリカで投資用不動産を選ぶ時に、学区とともに重要なのが「ロケーション選び」です。ロケーションとは、例えば高層マンションから見える眺望のようなものではなく、物件の周辺環境全般を指します。
例えば「近隣の住宅がきれいに整備されているか」「路上駐車は少ないか」「電車が付近を通る・飛行機が上空を飛行するなどの騒音はないか」などの住みやすさにつながる住環境全般を意味します。
そのようなローカル情報エリアもアメリカの不動産検索サイトで調べることができます。例えば住宅・賃貸物件の情報サイト「Trulia」では、物件から通勤地までの移動時間や物件価格の手頃さといった情報も表示させることができます。またエリアごとの犯罪に関する情報が色分けされ、密度という形で確認することができます。
(Trulia ニューヨークの犯罪データ情報)
またロケーション以外にも、自分で手直しできる場合、格安で購入できる物件や売主の都合で値下げ余地の大きい物件といったものも調べることが可能です。リアルターに頼めば詳しく調べてくれるため、自分なりに需要の多いエリア条件を調べて調査すると良いでしょう。
5 アメリカでの確定申告の注意点
アメリカで不動産所得を得た場合、外国人である非居住者は賃貸収入などの課税所得に対して30%の税金を源泉徴収されます。ただしアメリカで確定申告を行い、経費計上することで課税所得を引き下げれば、源泉徴収された税金の一部を還付してもらうことができます。
5-1 非居住者の確定申告には「個人用納税者番号」が必要
非居住者の場合、永住権保持者や就労ビザを取得している方が取得する社会保険番号(SSN:確定申告をするために必要な番号)を取得することができません。社会保険番号を取得していない方が確定申告をする場合には、個人用納税者番号(ITIN)の発行を申請する必要があります。
ITINの申請はアメリカ合衆国内歳入庁(IRS)に対して行いますが、申請から発行まで7週間ほどかかるため、間に合わないことがないように注意してください。
5-2 日本とアメリカの「減価償却」の違い
また日本での不動産投資における減価償却と、アメリカでの減価償却には違いがある点にも注意です。日本では中古物件を購入して減価償却を計算する場合、築年数に応じて償却期間が短くなります。その分、減価償却費が大きくなることでその年の経費を多く計上できます。
一方、アメリカでは中古物件を購入すると築年数にかかわらず、居住用住宅の減価償却期間は27.5年と定められています(商業用は39年)。ただし建物の評価割合は大きいため、日本での減価償却費を多く計上できるというメリットもあります。
アメリカで納税した税金は、外国税額控除によって日本での確定申告時に所得税額から差し引くことができます(控除には限度額あり)。なお控除限度額は次のように算出します。
所得税の控除限度額=当該年の所得税額×当該年の国外所得総額÷当該年の所得総額
東証プライム上場のオープンハウスは、こうしたアメリカ不動産を活用した税効果メリットを無料セミナーなどでも解説していますので、気になる方はアクセスされてみると良いでしょう。
6 「ホームインスペクション」と「タイトルカンパニー」
アメリカで中古物件を購入する場合、契約後に問題が生じることがないように自分で物件のチェックをする必要があります。「ホームインスペクション(住宅審査)」と呼ばれ、シロアリや排水管の水漏れなど建物の状態を詳細に調べることで、売主との契約交渉の際に役立てます。
修繕が必要な箇所が見つかれば、売主負担で行ってもらうのか、あるいは修繕費用を考慮して物件の金額を安くしてもらうのかといった交渉ができます。
また「登記調査」も重要です。タイトルカンパニー(登記調査会社)に依頼して、購入する物件の権利書について調べてもらいます。具体的には、「未払いの税金がないか」「抵当権がついていないか」などをチェックします。もしそれらがクリアになっていなければ、購入後に自分がその支払いの責任を受け継ぐことになります。
日本では不動産を売買する場合、売主はローンをすべて完済し抵当権を抹消しなければなりません。しかしアメリカの場合、売買代金で抹消できない抵当権は、買主が引き受けるか、あるいはそのまま売主が継続して引継ぎローン返済をするのかを契約によって定めることができます。買主が引き受ける場合には、設定された抵当権に関する融資を受けることになります(米国法務の情報提供サイト「US Legal」より)。
7 管理会社は日本の不動産会社を間に立てる
賃貸経営の運営を任せる管理会社選びは、アメリカ不動産投資の成否を左右する重要なミッションともいえます。管理会社は投資家自身で直接探すこともできますが、日本の不動産会社を間に立てることをおすすめします。日本とアメリカの時差を考えた場合、何か問題が発生したときにスムーズに対処できるからです。
例えば賃借人から設備の不具合の連絡を受けた場合、現地の管理会社はオーナーと連絡を取って、具体的にどのような対処をするのか指示を待ちます。管理会社と何度もやり取りとするとなれば、時差の関係で数日に渡ることもあります。
しかし、日本の不動産会社が間に入れば、夜中でもリアルタイムで現地の管理会社とやりとりしてくれます。自身で対処すると数日かかる問題でも、一両日で対処できる場合もあります。日本の不動産会社に間に入ってもらうには、投資家と日本の不動産会社が管理委託契約を結び、さらに日本の不動産会社と現地管理会社が再委託契約を結ぶことになります。
まとめ
アメリカと日本の不動産投資では様々な面で異なるために、事前の情報収集が重要です。しかし労力を費やす必要があるぶん、節税効果など得られる利益もあるのがアメリカ不動産投資の魅力です。
チェックするべきポイントさえ押さえれば、失敗のリスクは大きく軽減することができます。この記事を参考にしてぜひアメリカ不動産投資を成功に導きましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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