不動産売却後に税務署からお尋ね書が来たらどう対応する?確定申告の必要・不要も解説

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不動産を売却すると、税務当局から「お尋ね書」が届く場合があります。税務当局からこのような書類を受け取ることは初めてで戸惑う方も多いでしょう。

しかし、「お尋ね書」は、納税者に任意で情報の提供を求める性質のものであり、納税者としては適切に対処をすれば全く問題はありません。「お尋ね書」が届いたとしても、確定申告が不要なケースであれば確定申告をする必要はありません。

この記事では、不動産売却でお尋ね書が届いた場合の対処法、譲渡所得税の確定申告の必要・不要について解説します。

※記事内の税金・税率などは2023年2月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 不動産売却でお尋ね書が届いたらどう対応するべきか
    1-1.お尋ね書は納税者に任意で情報提供を求める枠組みの一つ
    1-2.不動産売却で譲渡所得が発生しない場合、お尋ね書の返信で完了
    1-3.不動産売却で譲渡所得が発生する場合、確定申告が必要
  2. 不動産売却の譲渡所得が発生しない場合でも、確定申告が必要になるケース
    2-1.譲渡所得に関して特別控除の適用を受けるケース
    2-2.譲渡損失を他の譲渡所得と損益通算するケース
    2-3.譲渡損失に関する特例の適用を受けるケース
  3. まとめ

1.不動産売却でお尋ね書が届いたらどう対応するべきか

不動産売却でお尋ね書が届いたらどのように対応するべきなのでしょうか。正しい対処法を知るために、まずは、税制の枠組みにおけるお尋ね書の位置付けを確認し、不動産売却で利益が出ている場合と出ていない場合に分けて、対処法をみていきましょう。

1-1.お尋ね書は納税者に任意で情報提供を求める枠組みの一つ

日本の税制では、税務当局が納税者の収入や資産等にかかる情報を収集できるように、納税者自身に自己の収入や資産等の情報提供を求める枠組みを設けています。

いわゆる確定申告制度がその枠組みの代表例であり、納税者に納付すべき税額を申告する義務を課し、その申告に基づいて課税する制度です。

この他、情報提供を求める枠組みには、税務当局自らが納税者にかかる情報の提供を納税者に求め、納税者自身から収集する枠組みもあります。いわゆる税務調査がこれに該当します。税務調査には、納税者等に対し強制的に情報提供を求めるものと、任意に情報提供を求めるものがあり、「お尋ね書」は後者に該当するものです。

したがって、税務当局が納税者に対し、任意で不動産売却の状況について情報提供を求める文書ですから、提出しなかったとしても罰金等のペナルティがあるわけではありません。

1-2.不動産売却で譲渡所得が発生しない場合、お尋ね書の返信で完了

不動産の売却では、譲渡所得が発生した場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をおこない、その譲渡所得につき譲渡所得税および住民税を納める必要があります。

譲渡所得が生じるのは、いわゆる利益が生じた場合であり、正確には、次の算式によって計算する譲渡所得がプラスになる場合、ということになります。

譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)-特別控除

譲渡価格は不動産を売却した価格、取得費は不動産を入手するのにかかった費用、売却費用は売却するときにかかった費用、のうち法令で定められているものとなります。

ただし、課税される所得がない場合には確定申告をしなくてもよいことになっているため、譲渡所得が発生しない場合には、確定申告は不要であるといえます。

お尋ね書には、不動産売却で譲渡所得が発生しない場合、その旨を連絡する返信票が付属しています。これに譲渡所得が発生しない旨とその他必要事項を記載して、税務当局に返信するようにしましょう。

【関連記事】不動産売却益の計算方法は?適用したい税控除と特例も7つ紹介

1-3.不動産売却で譲渡所得が発生する場合、確定申告が必要

不動産売却で譲渡所得が発生する場合、確定申告をして譲渡所得税を納付する必要があります。

お尋ね書は特に返信する必要はありませんので、売却した翌年の譲渡所得税の確定申告と税金納付を忘れずにおこなうようしましょう。

2.不動産売却の譲渡所得が発生しない場合でも、確定申告が必要になるケース

不動産売却によって譲渡所得が発生しない場合は、確定申告をしなくてもよいことになっています。しかし、譲渡所得が発生しない場合でも、次のような場合には確定申告が必要になります。

  • 譲渡所得に関して特別控除の適用を受けるケース
  • 譲渡損失を他の譲渡所得と損益通算するケース
  • 譲渡損失に関する特例の適用を受けるケース

以下で、詳細をみていきましょう。

2-1.譲渡所得に関して特別控除の適用を受けるケース

譲渡所得は、通常、売却収入が取得費や売却費用の合計を上回ったいわゆる売却益になります。

しかし、所得税法では、一定の場合に、売却益からさらに控除することができる特別控除額の特例を設けています。このような特例の特別控除の適用には、確定申告をすることが条件となっているため、譲渡所得が発生しない場合であっても、確定申告が必要といえます。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例

2-2.譲渡損失を他の譲渡所得と損益通算するケース

不動産の譲渡所得は申告分離課税と呼ばれ、給与所得や不動産所得、事業所得などの総合課税の所得と損益通算することはできません。

しかし、複数の不動産を所有していた場合などで、不動産の譲渡所得の枠組みの中で損益通算することは可能です。このような損益通算をしたい時には、特定の不動産につき譲渡所得が発生しない場合であっても、確定申告が必要になります。

※参照:国税庁「分離譲渡所得と他の所得との損益通算

2-3.譲渡損失に関する特例の適用を受けるケース

前述したように、不動産の譲渡所得については給与など他の所得との損益通算ができません。しかし、一定のマイホーム売却によって生じた損失については、損益通算と繰越控除が認められる「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」があります。このような特例の適用を受けるには、確定申告をおこなう必要があります。

まとめ

不動産売却で届くお尋ね書は、税務当局が納税者に任意で売却に関する情報の提供を求めるものです。不動産売却で譲渡所得が発生しない場合、お尋ね書にその旨を記載して返信することで手続きは完了します。

しかし、不動産売却で譲渡所得が発生する場合は、譲渡所得税の申告・納付が必要になります。

また、譲渡所得が発生しない場合であっても、特別控除の適用を受けるケースや他の譲渡所得と損益通算するケース、譲渡損失に関する特例の適用を受けるケースでは、確定申告をおこなう必要があるので注意しましょう。

本記事を参考に、不動産売却後は譲渡所得税の確定申告・納付を適切におこなうようにしましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。