高校生・大学生の半数近くがコロナ禍で無気力状態を経験も、保護者8割は「子どもから相談ない」

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認可法人の日本赤十字社は1月6日、「新型コロナ禍と若者の将来不安に関する調査」の結果を発表した。新型コロナウイルスの初の感染者が日本国内で確認されてから2年が経過するタイミングで、生活や学習の環境変化が、近い将来社会に巣立つ若者にどのような影響を与えうるか、「ウィズコロナ」時代を前に中期的な観点での検証を図った。対象は全国の男女600名、内訳は高校生、大学生・大学院生、高校生の保護者、大学生・大学院生の保護者、高校教員、大学教員各100人。12月10日から12日までインターネットで実施した。

2020年4月の緊急事態宣言から21年9月の宣言解除までの期間におきた若者の心の変化として顕著なのは「何もしたくなくなる、無気力」が高校生43%、大学生49%、「孤独を感じ1人でいるのが不安」が高校生28%、大学生35%だった。また「自分に価値を感じない、他者から必要とされない」は高校生27%、大学生20%。「生きていることに意味を感じない、死を考える」が高校生18%、大学生11%と、精神的に追い込まれた若者像が浮かぶ。

一方で、保護者は、悩みを相談された経験は少なく「相談されたことに当てはまるものはない」が高校生の保護者は79%、大学生の保護者は84%)」と、家庭内の距離を印象付けた。

2年の間、当初は休校となり、非常事態宣言解除後もオンライン授業といった措置をとる学校もあった。近い将来の進学や就職に不安はあるだろうか。質問に対し、高校生は「受験や就職活動で苦労するのでは」が42%、大学生は「進学先や就職先で評価されないのでは」が31%という結果だった。

若者が抱く「将来の社会生活」に対する不安を訊く質問では、「新しい人間関係を築くのが困難」という回答が高校生30%、大学生33%と最も多く、次いで「対人コミュニケーションスキルが身につかない」が高校生30%、大学生27%となり、集団生活で得られる経験が不十分と考えていることがうかがえる。

不安への対処としては「保護者と話し合った」が高校生15.8%、大学生23.5%、「学校の先生と話し合った」は高校生15.8%、大学生11.8%と、いずれも3割にも満たない。

では、現状を乗り越えるため、何かできることはあるだろうか。「『何とかなる』とできるだけ楽観的に考えるようにした」は高校生24.6%、大学生30.9%で、「『これも貴重な体験の1つ』と学びの機会として考えるようにした」は高校生10.5%、大学生22.1%。気持ちを切り替えられる若者は決して多数ではないが、年齢が高まるにつれ、少しでも前向きにとらえようとする傾向が見られた。

日本赤十字社は、調査の結果について「これから進学や就職などライフイベントを迎える若者が自身の将来に対して、コロナ禍の生活が既に影響している、また影響するだろうと感じていることが明らかになった。また一部の若者はとても深刻な状況に陥っている可能性が示唆された」と懸念する。そのうえで「自粛生活やリモート中心の学生生活により、通常であれば身につけられたであろう社会性や対人スキル、それによる人格形成への影響など、将来ある若者だからこそ必要な経験が得にくい環境であったことを周囲の人々が考慮し、寄り添いながら見守っていくことが大切」と、社会全体によるサポートを示唆した。

具体例として、日本赤十字社医療センター 臨床心理士のアドバイスを紹介。自殺事例のメディア報道が、その後さらなる自殺関連行動を引き起こしてしまう「ウェルテル効果」と、自殺念慮への対処方法を扱ったり、具体的な相談窓口を情報提供したりすることで、自殺関連行動の予防・減少につながる「パパゲーノ効果」という対照的な現象を挙げ、適切な情報提供やコミュニケーションの大切さを強調。そのうえで、学生や周りの大人へ発信したいメッセージを、学生、保護者、教職員へそれぞれ助言している。

【関連サイト】日本赤十字社『若者の半数が「何もしたくなくなる、無気力」な気持ちに変化 3人に1人が「関係構築」「対人スキル」への影響を不安視』