マンション売却後の手取りはいくら?シミュレーションして解説

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マンションの売買契約が成立すると、売主は買主から売買代金を受け取ります。しかし、マンションを売却するのに必要なお金がいくつかあるため、この売買代金がそのまま売主の手元に残るわけではありません。

そこで今回のコラムでは、マンションの売却時に必要なお金を紹介し、売却後に手元に残るお金をシミュレーションして求めます。

目次

  1. マンションの売却にかかる費用
    1-1.仲介手数料
    1-2.登記費用
    1-3.印紙税
    1-4.譲渡所得税
    1-5.住宅ローンの残高
  2. マンション売却後に戻ってくるお金
    2-1.固定資産税および都市計画税
    2-2.火災保険料・地震保険料
    2-3.住宅ローン保証料
  3. マンション売却後の手取りをシミュレーション
  4. まとめ

1 マンションの売却にかかる費用

マンションを売却した後に残る手取り金額を知るには、マンション売却時にどのような費用がかかるのかを確認する必要があります。代表的なのは次の5つです。

1-1 仲介手数料

マンションを売買する際は、不動産会社に仲介を依頼して買主を探してもらう方法が代表的です。売買契約が成立すると不動産会社に成功報酬を支払いますが、それが仲介手数料です。

仲介手数料の金額は法律によって上限が定められています。計算が複雑になるため、通常は下記の速算法を用いています。

仲介手数料=売買価格×3.3%+6.6万円(税込)

この上限額よりも低く設定している不動産会社もあり、場合によっては減額交渉することも可能です。ただし、不動産会社は売却活動にあたって広告費や人件費、契約書作成のための物件調査費など、様々な経費が発生します。特別な理由がない限り、上限額で請求されるのが通常となります。

【関連記事】不動産売却の仲介手数料は値引き交渉できる?成功事例や注意点を解説

1-2 登記費用

マンションを売買した際は所有権が移転するため、登記簿に所有権移転登記をすることになります。その際に必要なのが登記費用です。登記費用は分けて計算することもありますが、主に下記の2つで構成されています。

  • 登録免許税
  • 司法書士への報酬

売主・買主のどちらが負担しても良いですが、取引慣例上、売却によって所有権移転登記を行う場合、その費用は買主側が負担するケースが多くなっています。

売主が登記費用を支払うのは、マンションの売買代金でローンを完済し、設定されている抵当権を抹消する必要があるケースです。その際に負担する登録免許税は、不動産1物件につき1,000円となっています。マンションを売却する前にローンの返済が完了しており、抵当権も抹消していれば必要ありません。

なお、司法書士に代行してもらった場合は、報酬が発生します。金額は事務所によって異なりますが、相場は10,000円~20,000円、平均では15,000前後は目安です。

1-3 印紙税

不動産売買契約書は課税文書と呼ばれ、税金を納めることで法的にも正式な文書となります。その際、契約代金に合わせた収入印紙を貼付することで税金を納めることになります。

課税文書は全部で20種類あり、不動産売買契約書は第1号文書にあたります。第1号文書に貼付する収入印紙の額は下記の通りになっています。

文書に記載された金額 貼付する収入印紙の金額
100万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1000万円を超え5000万円以下 2万円
5000万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円

※引用:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

契約書は、売主用と買主用の2通を作成しますので、売主と買主で印紙代を折半することが通例になっています。

なお、2022年3月31日までに作成される契約書には軽減税率が適用されています。国税庁「 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

【関連記事】不動産売買の契約書、印紙税を減額する方法は?消費税の区分記載を解説

1-4 譲渡所得税

マンションを売却した際に売却益があった場合、税金が課せられます。それが譲渡所得税です。譲渡所得は、マンションの売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて求めます。下記が計算式になります。

課税譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)

取得費とは、マンションを購入したときにかかった費用で、購入時にかかった税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税など)や仲介手数料なども含まれます。

また注意点として、譲渡所得税は不動産を持っている期間によって税率が変わることを覚えておきましょう。所有していた期間が5年以下であれば短期譲渡所得、5年以上であれば長期譲渡所得となり、税率は下記のようになります。

  • 短期譲渡所得税=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)
  • 長期譲渡所得税=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)

※参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

2037年までは、各年分の基準所得税額の2.1%を復興特別所得税として、所得税と併せて申告および納付することになっています。

【関連記事】不動産売却で取得費が分からない時の税金はいくらになる?確定申告の手順も

1-5 住宅ローンの残高

住宅ローンの残高がある場合は、マンションの売買代金で精算することになります。各金融機関では繰り上げ返済に関して決まりを設けており、事務手数料が発生することになります。例としてりそな銀行の全額繰上返済手数料を見てみましょう。

  • 変動金利型(全期間 固定金利型含む)11,000円(消費税等込)
  • 固定金利選択型期間中33,000円(消費税等込)

※参照:りそな銀行「住宅ローンの手数料・諸費用

各金融機関によって異なりますので、ホームページなどで確認しておきましょう。

2 マンション売却後に戻ってくるお金

前の項目では、マンションを売却する際に必要なお金について解説しましたが、この項目では反対に戻ってくるお金について解説します。

2-1 固定資産税および都市計画税

固定資産税と都市計画税は、不動産の所有者に対してかかる税金です。毎年1月1日を基準として、4~6月ごろに届いた納付書で所有者が納税をします。

マンションを売却すると所有権は移転しますので、引き渡し日以降は買主が負担することになります。ただし通常は、売主が一年分を納税し、引き渡し日以降の税金を買主が売主に支払う形をとります。

契約時の取り決めになりますので、不動産会社を介して買主と調整するのが通例です。

2-2 火災保険料・地震保険料

マンションに火災保険や地震保険をかけている場合、マンションを売却すると保険を解約することになります。その際、複数年一括払い型などタイプにもよりますが、支払い済みの保険料が戻ってくることになります。

通常は、日割り計算をしますが、1年間補償の掛け捨て型などは保険料が戻ってこないこともあります。契約書などを確認しておくか、保険会社に電話などをして確認しておきましょう。

2-3 住宅ローン保証料

住宅ローンを組む際に、連帯保証人を立てる代わりに住宅ローンの返済を保証するという意味で支払うのが住宅ローン保証料です。申し込み時に借り入れ期間分の保証料をすべて支払う一括方式と、毎月返済するローン返済額に上乗せして保証料を支払う外枠方式があります。

マンションを売却した際に住宅ローン保証料が戻ってくるのは、一括方式で支払っているケースです。マンションを売却すると、住宅ローンが残っている場合は完済することになります。そのため、住宅ローンを保証する必要はなくなり、一括で払っていた保証料が戻ってくるのです。

ただし、保証料の返戻手続きを行う場合は手数料が必要になります。各金融機関によって異なるので確認しておいてください。前述したりそな銀行では、11,000円となっています。

3 マンション売却後の手取りをシミュレーション

マンションを売却した際にかかる費用、戻ってくる費用の概要が分かったところで、簡単な例を用いてシミュレーションをしてみましょう。一例として下記のマンションを想定して行います。

  • 所在地:東京都内
  • 専有面積:70平方メートル
  • 間取り:3LDK
  • 築年月:2005年3月
  • 購入価格:6,500万円
  • 売却価格:4,000万円
  • ローン残高:2,000万円

これを元に売却の際の諸費用を算出すると下記のようになります。

  • 仲介手数料:(4,000万円×3%+6万円)×0.1(消費税)=126万円
  • 印紙税:10,000円
  • 抵当権抹消に関する登録免許税:1,000円
  • 司法書士報酬:20,000円
  • ローンの一括繰り上げ返済手数料:11,000円
  • ローンの繰り上げ返済による保証料の返戻手数料:11,000円

※減価償却費・譲渡所得税額等は計算が煩雑となり正確性を担保できないため考慮していません

マンションの売却に関わる諸費用は1,313,000円となり、手元に残るお金は下記のように計算できます。

売却価格4,000万円−(残債2,000万円+諸費用131.3万円)=18,687,000円

ただし、これは確定している金額だけで算出したものです。このほかに戻ってくる可能性があるのが下記になります。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料・地震保険料
  • 住宅ローン保証料

これらは日割り計算となるため、引き渡し日によって金額が異なります。引き渡し日が決まった時点で、戻ってくる金額が想定できるようになります。

3-1 マンションの売却相場を調べる方法

売却が決まる前に手元に残る資金を知りたい場合は、相場価格を調べることである程度は推測できます。マンションの相場価格を知るには、不動産ポータルサイトの検索や不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」を活用するといいでしょう。

レインズマーケットインフォメーションで相場を調べるには下記のような手順になります。

  1. トップページの「マンション」の項目で、「都道府県」「地域」を選択する
  2. ご自身の物件に近い「沿線」「最寄り駅」「専有面積」「築年数」などを選択する
  3. 検索ボタンを押す
  4. 個別の取引情報が閲覧できるので、類似物件の取引事例を抽出する

もう少し詳細に物件価格を調査したい時には、不動産会社へ無料査定を依頼すると良いでしょう。不動産会社によって、査定方法や想定する購入希望者の属性が異なるため複数社に査定を依頼し、それぞれの査定価格や査定の根拠をヒアリングすることで売却価格を予想することができます。

例えば、大手不動産会社6社に絞って不動産査定が依頼できる「すまいValue」や、最大10社に不動産の査定を依頼することが可能な「リガイド」などの不動産一括査定サイトを活用すると、1社ずつ問い合わせる手間が省けて便利です。下記、主な不動産一括査定サイトの一覧です。

主な不動産一括査定サイト

サイト名 運営会社 特徴
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

上記のような方法でおおよその相場価格を把握したら、仲介手数料を含む売却に関する諸費用を計算してシミュレーションをします。特に注意したいポイントが、売却によって利益が出るかどうかという点です。売却益が出る場合は譲渡所得税が発生しますので、シミュレーションを適切に行いましょう。

なお、自宅の売却の場合には譲渡所得税を控除できる税制上の特例があります。適用条件に当てはまっているか下記の記事も参考に確認してみましょう。

【関連記事】自宅の売却で適用したい5つの特例とは?それぞれ適用の流れと条件を解説

まとめ

不動産の取引は、購入の際も売却の際もさまざまな費用がかかります。マンションを売却する際も、売買代金がそのまま手元に残るわけではありません。

シミュレーションをして、あらかじめ把握しておくと全体のお金の流れもわかりやすくなりますので、できるだけ確認をしておきましょう。ただしあくまでもシミュレーションですので、実際の金額とは異なる可能性がある点にも留意しておくことが大切です。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。