不動産投資に興味があっても「本当に節税になるのか」「実際どのくらい税金が安くなるのか」について疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。特に会社からの給与が収入のメインとなるサラリーマンの場合、節税効果について気にする方が多いようです。
そこで今回はサラリーマンの方が不動産投資を行った場合の節税をテーマに取り上げ、不動産取得にかかる税金の種類や節税できるケース、具体的な節税効果、注意点などを解説していきます。不動産投資に興味がある会社員の方はもちろん、すでに不動産投資を始めている方もぜひご参考ください。
目次
- 不動産投資にかかる税金の種類
1-1.サラリーマンの所得の決まり方
1-2.不動産所得と税金
1-3.給与所得と不動産所得との損益通算 - 年収500万円のサラリーマンが不動産投資をした場合の節税効果
2-1.不動産投資をしなかった場合
2-2.不動産投資をした場合 - 不動産投資による赤字と減価償却による節税
3-1.「会計上の赤字」と「現金収支の赤字」の違い
3-2.減価償却費計上による節税効果
3-3.築年数と減価償却期間
3-4.売却と減価償却費 - まとめ
1 不動産投資にかかる税金の種類
サラリーマンの所得、税金の種類や不動産投資を行った場合の税金について見ていきます。
1-1 サラリーマンの所得の決まり方
サラリーマンの収入は、会社から得る給与所得のみという場合が多いと思いますが、ほかにも以下のような所得の種類があります。
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 事業所得
- 山林所得
- 退職所得
- 利子所得
- 配当所得
- 一時所得
- 雑所得
個人の所得は計10種類あり、給与所得しかない方に発生する税金は「所得税」と「住民税」となります。サラリーマンの方であれば税金の計算や支払いは会社が代わって行ってくれるため、自身で確定申告をする必要がありません。
一方、フリーランスなど自営業者の方の場合、年間の収入金額を自ら計算し、所得と納税額を確定させなければなりません。なお、サラリーマンの所得税額の求め方は次のとおりです。
所得税額=(給与収入-給与所得控除-所得控除)×税率-税額控除
しかし、サラリーマンの方であっても給与所得以外の所得(例:不動産所得)がある場合には、原則として確定申告が必要です。不動産所得の課税方法については総合課税制度が採用されているため、個人の各種の所得をまとめ合計した金額が課税対象となります。
合計された総所得金額から所得控除額(基礎控除、配偶者控除、医療控除など14種類)が差し引かれ、課税総所得金額が計算され、それに税率が適用されることで所得税額が算出されるという仕組みです。
不動産投資を行うと不動産所得が発生することになるため確定申告の必要がありますが、後述する通り、損益通算などにより課税所得を引き下げるといった節税効果が期待できます。
1-2 不動産所得と税金
サラリーマンの方が不動産投資を行う場合、給与所得と不動産所得が発生するため、所得税と住民税は給与所得と不動産所得を合計した金額に課税されることになります。
不動産所得の内容
不動産所得とは以下の内容に関する所得のことを指します。
- 土地や建物などの不動産の貸付
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付
- 船舶や航空機の貸付
投資用の不動産を取得して賃貸に出し、家賃収入を得るという一般的な不動産投資は「土地や建物などの不動産の貸付」に該当します。
不動産所得の求め方
不動産所得の金額は、年間収入から必要経費を差し引いて求めます。
不動産所得の金額=総収入金額-必要経費
総収入金額は、賃貸に出した場合の家賃収入以外にも「名義書換料」「承諾料」「更新料又は頭金」「敷金や証金などのうち返還不要なもの」「電気代」「水道代」「掃除代等の共益費」などを含みます。
必要経費は、家事上の経費と区分される不動産収入を得るために直接かかった費用を指し、たとえば貸付資産にかかる「固定資産税」「損害保険料」「減価償却費」「修繕費」などになります。
1-3 給与所得と不動産所得との損益通算
不動産投資では空室の長期化や突発的な自然災害による修繕費の計上で、年間収支が赤字になることがあります。ただ不動産所得が損失となった場合、他の所得の金額と差引計算(=損益通算)をすることが認められています。ただし、不動産所得の金額の損失のうち、次のものは損益通算の対象外となります。
- 「別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの」
- 「不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額」
2 年収500万円のサラリーマンが不動産投資をした場合の節税効果
賃貸運営により不動産所得が赤字になった場合、給与所得との損益通算を通じて給与所得等での支払った税金が還付されるなどの節税効果が期待できます。サラリーマンが不動産投資を行うことで具体的にいくらの節税ができるかを、「不動産投資しなかった場合」と「した場合」に分けて確認してみます。
2-1 不動産投資をしなかった場合
たとえば、サラリーマンの属性を「独身」「30歳男性」「東京在住」「給与年収500万円」「社会保険料控除71万円」としたケースです。
給与収入 | 500万円 |
給与所得控除額 | 154万円(500万円×20%+54万円) |
給与所得 | 346万円(500万円−154万円) |
不動産所得 | 0円 |
総所得金額 | 346万円 |
課税所得 | 237万円(給与所得346万円−基礎控除38万円−社会保険料控除71万円) |
所得税 | 13.95万円(課税所得額237万円×10%−9.75万円) |
住民税 | 24.45万円(均等割額0.5万円+所得割額24.2万円−調整控除額0.25万円) |
所得税+住民税 | 38.4万円 |
※均等割額:0.5万円
※所得割額:24.2万円(課税所得242万円×所得割率10%)
所得税と異なり住民税の基礎控除は33万円で、社会保険料71万円
上記の計算内容のとおり、不動産投資をしていないサラリーマン方の場合、所得税は約14万円、住民税が24.45万円で合計38.4万円の納税額となります。なお、所得税および住民税の求め方は次のとおりです。
所得税 | 課税所得×税率−税額控除額 |
住民税 | 均等割額+所得割額−調整控除額 |
※住民税は、一定額を一律に課す均等割と、所得に応じて課す所得割の合計で算出されます。
2-2 不動産投資をしていた場合
次に上記例のサラリーマンが不動産投資を行っていた場合です。家賃収入100万円、経費150万円、マイナス50万円の赤字と仮定すると、給与所得と不動産所得は損益通算できるため、総所得金額は346万円-50万円=296万円と課税所得額が下がり、所得税および住民税の税額は、所得税8.95万円、住民税19.45万円で合計28.4万円と少なくなります。
給与収入 | 500万円 |
給与所得控除額 | 154万円(500万円×20%+54万円) |
給与所得 | 346万円(500万円−154万円) |
不動産所得 | ▲50万円 |
総所得金額 | 296万円(給与所得346万円−不動産所得50万円) |
課税所得 | 187万円(所得増額296万円−基礎控除38万円−社会保険料控除71万円) |
所得税 | 8.95万円(課税所得額187万円×10%−9.75万円) |
住民税 | 19.95万円(均等割額0.5万円+所得割額19.2万円−調整控除額0.25万円) |
所得税+住民税 | 28.45万円 |
このように、不動産投資をして上記のような赤字が生じた場合、不動産投資をしていない場合と比べて約10万円の節税効果が得られることになります。特に投資初年度では物件購入に係る諸経費が物件価格の7~10%程度かかるため、不動産所得は赤字となりやすく、給与所得との損益通算による節税効果が期待できます。
また、株式やFXなどの金融商品への投資では損益通算が認められていないため、節税効果が得られませんが、不動産投資では上記のような節税効果が期待できるのも魅力といえます。
3 不動産投資による赤字と減価償却による節税
最後に不動産投資での赤字に伴う節税効果の注意点と、減価償却費による節税方法を解説します。
3-1 「会計上の赤字」と「現金収支の赤字」の違い
不動産投資の結果が会計上赤字となった場合、節税効果が得られる場合もありますが、投資初年度を除き現金収支が赤字にならないように注意する必要があります。
不動産投資の会計上の利益は「総収入-総経費」で求められますが、経費の中には現金支出のない減価償却費が含まれるケースが多くなります。
たとえば、「年間家賃収入100万円」「総経費150万円のうち減価償却費が83万円」だった場合、会計上の利益はマイナス50万円ですが、現金収支は100万円-150万円+83万円=33万円となります。つまり、会計上は赤字でも手元にはお金が残り、初年度は損益通算できればさらに多く残る可能性もあります。
不動産投資初心者の方にとって投資結果が赤字となるのは不安かと思われますが、このように現金収支がプラスであれば投資資金を回収し、目標のリターンを達成することができるため、上記のような会計上の赤字はあまり問題になりません。
しかし、不動産投資では、会計上の費用にあたらない借入金の返済額といった支出額を含めて現金収支を計算することも重要です。
たとえば「借入金1,500万円」「金利2%」「30年間の元金均等返済」の場合、年間の元金返済額は約50万円となります。仮に借入返済額以外の現金収支が33万円、元金返済額が50万円であれば、トータルの現金収支はマイナス17万円になります。
このように、不動産投資で会計上の赤字になっていても、現金収支で一定額以上のプラスになっていれば問題はないでしょう。ただし借入金の返済額などで収支がマイナスになったり、少なくなりすぎたりしないように計画することがポイントです。
3-2 減価償却費計上による節税効果
不動産の価値は経年劣化により年々減少するため、その価値減少分を経費計上することができます。これを減価償却と呼びます。資産の購入にかかった金額を法定耐用年数(減価償却できる期間)に分けて経費計上していきます。
減価償却費は会計上の処理となるため、費用計上の際には現金が出て行きません。つまり経費計上できる減価償却費が大きい建物ほど、数年にわたって不動産所得を圧縮できるため節税効果が高いということになります。
なお減価償却期間は、対象資産の条件により大きく異なってくるため、建物の種類や耐用年数による償却率の違いに注意を払わなければなりません。法定耐用年数は、建物の構造により「木造(住宅用)22年」「鉄骨造(鉄骨の肉厚により)19年~34年」「鉄筋コンクリート造(住宅用)47年」となります。
3-3 築年数と減価償却期間
中古物件に投資する場合、築年数によって法的耐用年数が変わり減価償却費に影響することになるため、物件価格だけでなく築年数も考慮して検討することが重要です。
築古物件は減価償却期間が短くなるため、その期間に集中した節税効果を狙う場合には有効となります。他方、新築や築残物件では減価償却期間が長くなるため、長期に渡って節税効果を狙うのに適しています。
3-4 売却と減価償却費
毎年の減価償却費の計上は物件売却時にかかる譲渡所得税にも影響します。投資資産を売却した場合の譲渡所得(=売却額)は、「譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」で求めますが、取得費は、物件の購入価格等-減価償却費(建物の取得後から売却するまでの毎年の減価償却費の合計額)となることから、減価償却期間が長くなるほど取得費が大きくなり、譲渡価格によっては譲渡所得が大きくなり税額も大きくなります。
つまり、減価償却費は毎年の収益で節税効果が期待されるものの、売却時点での譲渡税の増加に繋がることになります。このように減価償却費の計上が税金支払いの先送りとなる性質があることにも留意しておきましょう。
まとめ
不動産投資における節税効果について解説を行いました。不動産は建物の購入に使った費用を減価償却という形で費用を計上できるため、現金収支をプラスにしながら会計上赤字にすることで、源泉徴収の還付額を増やしつつ賃料収入を得ることが可能です。
ただし、不動産購入時の借入金返済や修繕費の支出、空室期間の発生などによってキャッシュフローがマイナスになると、たとえ節税効果があっても家計は圧迫されてしまいます。また、もちろん収支が黒字になれば、支払うべき税金は多くなります(=税金の還付額が減ります)。
なお、高所得者の方の中には毎年の確定申告の際に「累進課税を抑えたい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。そのような方には、日本での不動産投資よりもアメリカでの不動産投資のほうが適しているケースがあります。
アメリカでは、①土地の価格よりも建物価格の比率が高いため減価償却費が大きく取れる(2019年2月時点)ことや、②築年数が経った木造建築も中古市場での流動性が高いこと(=売却しやすく価格が落ちにくい)、③アメリカ自体の経済成長率が日本よりも高く推移している(=インフレや為替差益が期待できる)などがその理由です。
アメリカ不動産を活用した税効果が気になるという方は、アメリカ不動産の分野で国内トップクラスの実績がある「オープンハウス」などの企業に一度相談をされてみると良いでしょう。税効果や購入後の収支を試算してもらうことができるため、判断に役立つ情報が無料で得られます。
節税を目指して不動産投資をスタートする際は、この記事を参考に、節税ができる理由とリスクをきちんと把握したうえで適切な投資かどうかを判断するようにしましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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