不動産投資の書籍や雑誌を見ていると、ちらほらと目につくのが「ヤドカリ投資法」と言われる不動産投資手法です。ヤドカリ投資法は、購入した不動産を自宅として利用しながら、不動産価値が上がったタイミングや貯蓄ができた頃合いを見計らって新しい住居に住み替えをしていくという投資方法です。次々と住む家を替えていきながら売却益を狙っていくことから、「ヤドカリ投資法」と名付けられています。
この記事では、ヤドカリ投資法のメリット・デメリット、ローンなどについて詳しく見ていきたいと思います。
ヤドカリ投資法の4つのメリット
ヤドカリ投資法には、注目するべきいくつかのメリットがあります。以下で一つ一つ見ていきましょう。
賃貸の家賃を節約できる
ヤドカリ投資法は、現在は賃貸住居に住んでいる方でこれから不動産投資を始めてみたい、という方に人気のある投資手法で、掛け捨てになっている毎月の家賃(賃貸費用)を住居のローン支払いに充てることで自分の資産を構築できるというメリットがあります。また、不動産投資と比べると、不動産投資では空室リスクを気にしなければいけませんが、ヤドカリ投資法では住居として自分が住むので、空室リスクを気にしなくて良いという点を魅力的と感じる方もいます。
購入時に住宅ローンを利用できる
ヤドカリ投資法のメリットの2点目は、購入した不動産を自宅として利用するので、金利が高い不動産投資ローンではなく、金利が低い住宅ローンを活用できる、という点です。不動産投資ローンの金利は低い場合でも1%~2%となりますが、住宅ローンの金利は0.5%~1%となり、不動産投資と比べて毎月のローンの支払いの負担が少なくなります。
税制優遇を受けられるケースがある
床面積が50m2以上、耐震性能があるなどの一定条件を満たせば、住宅ローンの残高×1%の金額分(ローン上限4000万円)を所得税・住民税から控除できる「住宅ローン減税」の適用を10年間受けることが可能です。たとえば、住宅ローンで3000万円を借りた場合、1年間の控除額は約30万円弱、10年間で200万円~300万円弱の税控除が受けられる計算となり、税負担が大きく軽減されます。
インカムゲインやキャピタルゲインが狙える
ヤドカリ投資法は、ライフスタイルの変化に合わせて、不動産の運用方法を変更することができます。たとえば転勤などになり、住居として使うことが難しくなった場合に、自宅を売却するか、貸し出すかを選択する事が可能です。売却をすればキャピタルゲイン(売却益)、貸し出せばインカムゲイン(家賃収入)を得ることができるようになります。
ヤドカリ投資法の4つのデメリット
数多くのメリットがある一方で、ヤドカリ投資法には気をつけなければいけないデメリットも存在します。以下で詳しく見ていきましょう。
一定以上の広さがないと税制優遇が受けられない
メリットの裏返しとなりますが、ワンルームマンションなどの床面積が50m2未満の物件を購入しても、住宅ローン減税が受けられないため、ヤドカリ投資法の魅力が少なくなってしまいます。ヤドカリ投資法が有効なのは、おもにファミリータイプの物件となりますので、不動産投資で人気のあるワンルーム物件を想定している場合には、イメージの修正が必要となります。
賃貸事業には該当しないので経費が計上できない
住宅ローンで自宅として購入した場合、不動産投資のような「賃貸事業」ではなくなるため、購入時の初期費用や修繕費などは費用として計上できない計算となります。購入時の費用をすべて合算すると購入価格の10%程度(数百万円分)程度になりますので、それらが所得から控除できないという点に注意が必要です。
賃貸需要の無い物件を購入してしまうと、賃貸が難しくなる
住宅ローンの融資枠や購入予算などとの兼ね合いで利便性の悪い郊外(都心から電車で30分以上、駅徒歩10分以上など)に物件を購入してしまうと、入居需要が低くなってしまうため、転勤などが生じた時に物件を貸し出すという選択肢が難しくなってしまいます。
売却により損失が出ることもある
前述の賃貸需要とも連動しますが、物件のエリアが良くない、売却の際に買い手がつかず、低い価格で手放さなければならないというケースもあります。また、ファミリータイプの物件についても、購入者が限られると想定しておいたほうが良いでしょう。
結局、ヤドカリ投資法の効率は良いのか?
以上のメリット・デメリットを踏まえると、通常の不動産投資とヤドカリ投資法は、どちらのほうが投資効率は良いのでしょうか? ヤドカリ投資法の投資上のメリットは、住宅ローンの低い金利で不動産を購入できる点と、住宅ローン減税が受けられる可能性があるという点です。一方、デメリットは購入費用などを経費計上ができない点と、ワンルームマンションなどでは住宅ローン減税が受けられないという点があります。
不動産投資を主眼に置いてワンルームマンションを選ぶと、ヤドカリ投資法の大きなメリットである住宅ローン減税が受けられないという問題が発生します。一方、ファミリータイプでエリアの良い物件を選ぼうとすると、今度は購入価格が高くなるため融資審査が通るかどうかという資金面の問題や、貸し出す場合にもファミリータイプは平米あたりの賃料や利回りが低くなってしまうという投資効率の面で問題が出てきます。
玄人の方の中には、住みながらリフォームをして売却時や賃貸時のバリューアップを狙うという方もいますが、不動産投資やリフォーム初心者の方には、そもそもどのようなリフォームを行えばバリューアップにつながるのか、といった判断が難しいかと思います。
このように、ヤドカリ投資法と通常の不動産投資を見比べてみると、あまり投資効率が良い方法とは言えないことが分かります。ヤドカリ投資法は、あくまで自宅の延長線上として不動産の活用を考えるもので、不動産投資については別で検討するということが良いでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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