不動産相続で取得税はかかる?相続時に支払う税金と税控除を解説

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不動産の相続では、相続しても必ずしもすぐに手元に現金が入って来るとは限らず、相続時に支払う税金の種類と金額について概算し、予め納税資金を準備しておきたいものです。

本記事では、不動産の相続で不動産取得税がかかる場合とかからない場合について説明し、相続時に支払う税金と、相続税を軽減することができる制度についてもみていきます。

※記事内の税金・税率などは2022年5月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 不動産相続で不動産取得税はかかるのか
    1-1.不動産取得税とは
    1-2.不動産相続では原則として不動産取得税はかからない
    1-3.不動産相続で例外的に不動産取得税がかかる場合
  2. 相続時に支払う税金
    2-1.相続税
    2-2.登録免許税
  3. 相続税の軽減税制
  4. まとめ

1.不動産相続で不動産取得税はかかるのか

不動産を相続した場合、不動産取得税はかかるのか、まず不動産取得税とはどのような税金なのかをみていきましょう。そして、不動産相続における、不動産取得税の原則的な取り扱いと、例外的な取り扱いについて説明していきます。

1-1.不動産取得税とは

不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得した人に対して、その取得の際に課される都道府県税です。購入のみならず、贈与や交換によって取得した場合、建物の建築によって取得した場合も、課税対象となります。

元々、固定資産税の税率を引き下げ、その不動産にかかる将来の税負担を引き下げるという趣旨で創設された経緯があります。そのため、税金のかかる課税標準額は固定資産税評価額であり、不動産の取得価格ではありません。

税率は原則4%ですが、住宅と宅地については、令和6年3月31日まで3%となっています。住宅や宅地等については一定の要件の下、課税標準額を軽減する特例制度が設けられています。

※出典:総務省「不動産取得税

1-2.不動産相続では原則として不動産取得税はかからない

不動産の相続では、不動産取得税はかかりません。理由は、相続による取得は、形式的な所有権の移転であると考えられており、課税対象から除外されているためです。たとえば、共有物を分割して取得した場合も、形式的な移転と解され不動産取得税はかかりません。

1-3.不動産相続で例外的に不動産取得税がかかる場合

不動産の相続であっても例外的に不動産取得税がかかる場合があるので注意が必要です。実際の相続で発生することがあるのが、以下の3つの場合です。

  • 相続時精算課税制度により生前贈与された場合
  • 死因贈与によって取得した場合
  • 相続人以外が特定遺贈を受けた場合

以下で詳しくみてみましょう。

相続時精算課税制度により生前贈与された場合

相続時精算課税は、60歳以上の祖父母または父母から20歳以上の子・孫への財産の移転につき、生前贈与と相続を通算して課税する制度です。(※参照:国税庁「相続時精算課税の選択」)

相続時精算課税を選択した贈与者が亡くなったときは、その贈与された財産を相続財産に加算して相続税額を計算し、既に納めた贈与税がある場合は精算されます。

不動産取得税の制度上、贈与による取得は課税対象となりますので、相続時精算課税制度を利用した場合、生前贈与を受けた時に不動産取得税が課されることになります。(※参照:東京都主税局「不動産取得税」」)

死因贈与によって取得した場合

生前のうちに、贈与者と受贈者との間で、贈与者が死亡した時に受贈者に財産を贈与するという契約を締結することがあります。このような贈与契約に基づき、贈与者が死亡したことで受贈者に財産が贈与されることを死因贈与といいます。

死因贈与は、実質的には遺贈と同様の機能を持ちますが、法形式上はあくまでも契約に基づく贈与であるため、不動産取得税がかかることになります。(民法554条)

相続人以外が特定遺贈を受けた場合

相続では、被相続人が遺言によって特定の財産を指定して、特定の人に対して残すことがあります。このような遺贈方法を特定遺贈といいます。特定遺贈のうち、相続人以外の人が遺言により不動産を遺贈された場合、不動産取得税がかかります。

ただし、相続人以外の人が不動産を遺贈によって取得した場合であっても、遺産の全部又は一定割合についての遺贈(包括遺贈)する形式によって取得したときは、不動産取得税はかかりません。(※参照:東京都主税局「不動産取得税」)

2.相続時に支払う税金

相続時に支払う税金には、主に相続税があります。相続財産のうちに不動産がある場合は、不動産の所有権移転登記をする際、登録免許税がかかります。

2-1.相続税

相続税は、相続税の申告をする必要がある場合に、相続の開始から10カ月以内に、相続人が申告・納付しなければならない税金です。

課税対象となる遺産総額から債務などを差し引いた正味遺産総額が、基礎控除額を超える場合、相続税の申告・納付をする必要があることになります。基礎控除額は以下の算式によって求められます。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税の金額は、被相続人の正味財産額から控除額を差し引き、相続人どうしが法定相続をしたとした場合の仮の税額を算出します。その後、実際の各相続人取得分に合わせて、それぞれに適用される税額控除を考慮し納付税額を計算していきます。

相続税の税率の早算表は、下表のようになっています。

※引用:国税庁「相続税の税率

2-2.登録免許税

相続にあたり、不動産の所有権の移転登記をする際には、登録免許税の金額がかかります。この登録免許税の税率は、所有権移転登記の原因によって決まっており、相続では4%が原則となります。

また、相続による所有権移転登記については、相続による土地を取得した個人が登記をせずに死亡した場合、その死亡した個人の登録免許税は免税とする措置や、10万円以下の土地についても免税とする措置があります。

3.相続税の軽減税制

相続税で適用できる軽減税制には、被相続人の配偶者に対して大きな税額軽減制度があります。また、被相続人に直近に支払った相続税がある場合や生前贈与について支払った贈与税がある場合に、二重課税分を控除する制度があります。

相続人が未成年者や障害者である場合にも、税額控除制度が設けられています。相続財産が不動産である場合は、税額計算の対象となる財産評価額について、小規模宅地等の特例があることも特徴的といえるでしょう。

配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者については、遺贈された正味財産額が1億6千万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない税額軽減制度があります。1億6千万円を超えても、配偶者の法定相続分までは相続税がかからないことになります。

ただし、この軽減制度は実際に取得した財産を下に計算されるため、分割されていない財産は対象になりません。

※出典:国税庁「配偶者の税額の軽減

各種税額控除

相続人が未成年者や障害者であるときは、相続税額から一定の金額を控除できる税額控除制度があります。

例えば、相続人が85歳未満の障害者であるときに相続税額から控除できる障害者控除額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円とされています。(※参照:国税庁「障害者の税額控除

その他、相続人が未成年であるときに相続税額から控除できる未成年者控除額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円とされています。(※参照:国税庁「未成年者の税額控除」)

このような各種控除制度を調べ、該当する制度の適用を検討されてみると良いでしょう。

二重課税の負担を軽減する税額控除

相続税には二重課税の負担を軽減する税額控除制度があります。贈与税額控除では、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産について支払った贈与税額を控除することができます。ただし、その贈与財産は相続税の課税財産に加算されます。

相次相続控除では、相続開始前10年以内に被相続人が相続によって財産を取得して相続税を課されていたとき、その相続税額のうち、一定の算式により計算した金額を控除することができます。(※参照:国税庁「相次相続控除」)

小規模宅地等の特例

一定の条件を満たす小規模宅地等を特定の相続人が相続する場合、相続税の財産評価額を減額する特例の適用を受けられることがあります。

居住用または事業用・貸付用に供されていた小規模の宅地等のうち、特定の親族が相続した分について、相続税の財産評価額が最大80%減額されます。評価額が減額される土地の面積や減額割合は、土地の用途によって区分され決められています。

※出典:国税庁「小規模宅地等の特例

まとめ

不動産相続では、原則として、不動産取得税はかかりません。しかし、贈与には不動産取得税がかかるため、生前贈与や死因贈与のように、贈与の性質が強い場合には不動産取得税はかかることがあるなど、例外もあります。

相続時に支払う税金で代表的なものは相続税です。相続税は、納付額が発生する場合には、相続開始から10カ月以内に相続人が申告納付しなければならないものになります。ただし、3,000万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた基礎控除額を超えなければ、申告納付の必要はありません。

また、相続税には配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの大きな税額軽減制度があります。これらの税制度を適切に適用するには専門知識を必要とする場面もあるため、自身での対応が難しい場合には専門家への相談も考慮しつつ検討されてみると良いでしょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。