シングルマザー居住支援事業を手掛ける株式会社LivEQuality大家さん(リブクオリティおおやさん)は6月2日、総額3.2億円の資金調達を完了し、「アフォーダブルハウジング」に活用するための住宅を、同社が本社を置く名古屋市で30戸取得したと発表した。アフォーダブルハウジングとは、就業機会を得やすいアクセスや清潔さや利便性について一定の品質が保たれており、かつ住居費を負担しても十分に食費などの生活費を負担できる水準に家賃を設定した住宅。今回の資金調達では、複数のインパクト投資家を引受人とするインパクトボンド(私募社債)を発行し、銀行からの融資、エクイティ(普通株式)の発行などを実施。住宅に入居するシングルマザーなどの世帯には、一定の家賃の割引等の生活再建期の経済的サポートを行い、また、同社と連携するNPOなどによる包括的な伴走型支援が提供される。
同社はアフォーダブルハウジングに活用する住宅の取得、運用を通じて社会課題を解決する「ソーシャル大家事業」を展開している。就業機会を得やすい、アクセスのよい物件、そして一定の品質の物件を取得し、シングルマザー世帯に市場相場より安価な賃料で物件を提供するもので、市場相場水準の居住者と市場相場水準以下の居住者がバランスを保ち居住することで、収益性を確保するだけでなく、「低所得者向け住宅」のような偏見・スティグマが地域に生まれることを防ぐ。
LivEQualityは同社とNPO法人LivEQuality HUB、千年建設株式会社の3社を軸とした支援事業。不動産運用会社、NPO、建設会社がそれぞれの強みを合わせ、シングルマザーに安価で良質な住まいと地域とのつながりを提供。自立に向けて長期的/継続的に伴走する。2021年3月にスタート、これまでに12世帯27人の母子を受け入れ、社会的資源に繋ぎ、自立に向けた伴走的支援を行っている。
今回調達した資金の内訳はインパクトボンドの発行6000万円、銀行からの融資1億9000万円、エクイティの発行7000万円。インパクトボンドはシングルマザー世帯に生活再建期の経済的なサポートとして家賃の低減などを行うため、一般的な事業運営のために発行する社債と比べて流動性、金利などのファイナンシャルリターンが限定される一方、投資を通じて実現される入居者の生活再建などの社会的インパクト(ソーシャルリターン)の最大化を図るように設計されている。
今回の取得により、LivEQualityで保有する住戸数は97戸で、LivEQuality大家さんが87戸を保有する。また、これからは「インパクト投資家」と呼ばれる財務的リターンと並行してポジティブな社会的インパクトを同時に生み出すことを目指す投資家と共に、本事業モデルの全国拡大を目指す。
LivEQuality大家さんの代表取締役社長岡本拓也氏は「高まるニーズに比べ、まだまだ物件数が圧倒的に不足している。インパクト投資家の力をお借りしながら物件を新たに取得、100戸も目前となった。今回の資金調達は1社の資金調達に留まらず、インパクト投資の活用によるアフォーダブルハウジングの普及に向けた大きな一歩であると同時に、日本におけるインパクト投資の新たな地平を拓くものと信じている」と事業の広がりに意欲と期待を示した。
【関連サイト】千年建設株式会社
【関連サイト】LivEQuality(リブクオリティ)
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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