ブロックチェーン活用で環境問題解決を図る、国内外の注目企業とその取り組み

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持続可能な開発目標(SDGs)の注目度が高まる一方で、その実現にブロックチェーンを活用する企業や自治体が増加傾向にあります。ブロックチェーンの利用により、企業のシステム改善や業務効率化を通じて無駄な作業を減らし、結果的にエネルギー消費の抑制を図る取り組みが広がっています。

さらに、一部の企業では、ブロックチェーンを駆使した環境保全に直接関わるサービスを展開しています。しかしながら、これらの活動を行っている国内外の企業については、まだ十分に認知されていないのが現状であります。ここでは、再生可能エネルギーやリサイクルといった環境負荷軽減の事業を推進する企業を紹介しましょう。

目次

  1. 国内のブロックチェーンを活用して環境保全に取り組む企業例
    1-1. ソーシャルアクションカンパニー:愛と勇気とお金の等価交換を追求
    1-2. 東レとソラミツ、ブロックチェーンによるトレーサビリティシステムで循環型社会実現を目指す
    1-3. ダイキン工業が日本IBMと「冷媒循環プラットフォーム」の実証実験開始
  2. 海外のブロックチェーンを活用して環境保全を行っている企業例
    2-1. 世界170カ国以上でビジネスを展開しているグローバルITカンパニー「IBM」
    2-2. 安全で効率の良いカーボンマーケットを展開する「Climatetrade(クライメートトレード)」
    2-3. バッテリーのサプライチェーンにブロックチェーンを用いている鉱業会社BHP
  3. まとめ

①国内のブロックチェーンを活用して環境保全に取り組む企業例

1-1.ソーシャルアクションカンパニー:愛と勇気とお金の等価交換を追求

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ソーシャルアクションカンパニー株式会社は、個々の社会貢献活動を可視化する新たな取り組みに着手しています。それまで証明が難しかった一人ひとりの社会貢献活動を、ブロックチェーンの技術を用いて明確に示し、その量を計測する試みです。2019年には、この考えを具現化した社会貢献アプリ「actcoin(アクトコイン)」のサービスを開始した。このような新しい取り組みにより、同社は個々のソーシャルアクションをより正確に評価し、報酬化する道を切り開いています。

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社会課題について学ぶセミナーの受講、ボランティア活動への参加、社会課題解決に向けた団体への寄付、日常生活における社会や環境への配慮を行う等、これらの「ソーシャルアクション」をactcoinサービス上で報告することで、ユーザーはアクトコインを獲得できます。

actcoinのスマートフォンアプリには4つの機能があります: 参加機能、習慣機能、寄付機能、発信機能。これらはユーザー自身のライフスタイルに合わせて利用することが可能で、さらに、アプリを通じて、SDGsの17の目標それぞれに沿った形での社会貢献活動を行うことができます。

NPO、企業、自治体など300以上のパートナー団体と連携し、”ソーシャルアクションを新しい価値に変える”というミッションの下、2022年9月時点で約15,000人のユーザーと300以上の登録団体(NPO・企業・学生団体・自治体など)をつなげる社会貢献プラットフォームとして機能しています。

貯まったアクトコインは、法定通貨に直接換金することはできません。しかし、NPOへの寄付やエシカル商品との交換、社会貢献活動を行う他のユーザーへの支援などに利用することが可能です。

ユーザーがactcoinを通じて社会貢献活動に参加した結果は、アプリ上で可視化されます。これにより、ユーザーは自身の興味関心や活動実績のPR、同じ興味関心を持った仲間との新たなコミュニケーションなどにも活用することができます。

1-2.東レとソラミツ、ブロックチェーンによるトレーサビリティシステムで循環型社会実現を目指す

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東レ株式会社は、ブロックチェーン技術に精通したソラミツ株式会社と共同で、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティ(製品の流通経路追跡)システムの開発に取り組んでいます。2022年度にこの取り組みの一環として実証実験が開始されています。東レは2050年を視野に入れた「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を掲げ、革新技術と先端材料を通じた4つの主要な取り組みを進めています。
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「資源が持続可能な形で管理される世界」―これは東レが2050年に向けて目指しているビジョンの一部である。これを実現するため、東レはリサイクル技術やバイオマス技術といった循環型社会への貢献に寄与する技術や製品のサプライチェーンに、ソラミツのブロックチェーン技術を組み入れています。

製品の回収や再利用を通じて素材の循環を可能にし、それを可視化・透明化することにより、サプライチェーンを構成する全てのステークホルダーと共に、循環型社会のさらなる進展への貢献を目指しています。

2019年に東レは、「&+」という名のリサイクルポリエステル繊維事業を立ち上げました。これは回収したペットボトルを原料として再利用するという、革新的なプロジェクトです。今回の実証実験は、この「&+」を主題に、リサイクル資源の流れを透明にし、その証明を誰でもいつでも確認できるようにするためのものです。そのためにはサプライチェーン上の各企業との緊密な協力が必要となり、システムを構築するための課題を共に整理しています。

そして東レは、消費者がリサイクル活動に積極的に参加できるようにするために、サプライチェーン情報の見える化にも取り組んでいます。例えば、回収した原材料が再び製品として消費者の手元に届くまでの流れを明らかにすることです。東レ製品の顧客がこのシステムを使って自社のトレーサビリティ管理に役立てることができるよう、使いやすさにも配慮しています。

さらに、リサイクル工程で必要とされるエネルギー量や、消費者が東レ製品を使用することで実現できる環境負荷の低減についても情報を見える化します。これらの情報を基に東レは課題を整理し、基本システムを構築します。

将来的には、全ての主要ポリマー、つまりは樹脂やフィルムなども対象にこのシステムを適用する予定です。それにより、製造から最終製品の流通、そして回収、再利用までの完全な循環トレーサビリティを提供します。

1-3.ダイキン工業が日本IBMと「冷媒循環プラットフォーム」の実証実験開始

ダイキン工業と日本IBMが、ブロックチェーンを活用した「冷媒循環プラットフォーム」の実証実験に取り組んでいることをご存知でしょうか。ダイキン工業は空調機と化学製品の製造で知られ、日本IBMはテクノロジーソリューションの提供で一世を風靡しています。

まず、冷媒とは何かから説明しましょう。冷媒は、冷蔵庫やエアコンなどの機器で、熱を温度の低い場所から高い場所へと移動させる役割を担う流体のことです。主に水素、フッ素、炭素の化合物であるHFC(ハイドロフルオロカーボン類)が用いられますが、これが大気に排出されると地球温暖化の一因となります。

この問題を解決するため、ダイキン工業と日本IBMはブロックチェーンを活用した「冷媒循環プラットフォーム」の実証実験に取り組んでいます。このプラットフォームを活用すれば、再生冷媒のリサイクル証明やリサイクルチェーンの可視化により、履歴の透明性を確保することが可能になります。さらに、冷媒充填・回収業者向けソフトとのシステム連携により、フロン排出抑制法への対応や冷媒の漏洩防止、冷媒回収率の向上など、社会全体での回収と再利用を実現し、循環社会の実現に一歩近づけます。

なお、日本IBMは2021年8月に三井化学と野村総合研究所(NRI)と共に、ブロックチェーン技術を活用した資源循環プラットフォームを構築するためのコンソーシアムを設立しています。

②海外のブロックチェーンを活用して環境保全を行っている企業例

2-1.世界170カ国以上でビジネスを展開しているグローバルITカンパニー「IBM」

IBMはビジネスコンサルティングから、ITシステム導入・運用管理、アウトソーシングにわたるあらゆる局面で、世界中で蓄積した業界の専門知識や実践的な洞察、最先端のテクノロジーを活用し、企業変革を実現する支援を行っている企業です。またIBMはブロックチェーンを活用することで、より安全でスマートな、収益性の高いプロセスやサプライチェーンなど、IBMはビジネスの世界をコラボレーションとイノベーションの新時代へと導きます。

IBMが提供する業界プラットフォーム「IBM Food Trust」は、食の信頼性を強化することを目指しています。このサービスは、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるWalmart社と共同で開発され、2018年から商用サービスとして稼働しています。また、Carrefour社やDole社、Nestle社といった大手小売業者にも利用が広がっています。

IBM Food Trustは、主に3つの機能を提供します。それらは、食品のトレースを行う「トレース管理モジュール」、証明書を管理する「証明書管理モジュール」、そして鮮度を管理する「フレッシュインサイトモジュール」です。
IBM Food Trust
トレース管理機能を用いると、消費者は商品に添付されたQRコードやバーコードをスキャンすることで、商品の生産情報を把握することが可能となります。これにより、どの地域でどのような気候や土壌の下で、どのような肥料を使用して育てられ、いつ収穫され、どのようなルートを経て売り場に達したのかといった情報が分かるようになります。

万が一、商品に問題(異物混入や雑菌など)が発生した場合でも、全商品を廃棄することなく、問題のあったロットだけを特定し処分することができます。つまり、このシステムは生産者と消費者を直接つなぎ、情報の透明性を提供します。

ブロックチェーン技術の導入により、フードロスの削減、在庫の最適化、物流コストの削減、品質の確保(ブランドイメージの向上)、そして需要の予測などの可能性が広がります。これにより、消費者は安心して食品を購入することができ、製造者は品質を保証し、効率的な運営を実現することが可能となります。

2-2.安全で効率の良いカーボンマーケットを展開する「Climatetrade(クライメートトレード)」

「Climatetrade(クライメートトレード)」は、2017年に設立されたスペインを拠点にした気候変動マーケットプレイスのスタートアップ企業です。Climatetradeは「気候ソリューションのパイオニア」と称し、持続可能なイノベーションを通じて大規模な脱炭素化を推進することを目指しています。この企業は、気候変動対策に真剣に取り組む個人や企業に対して、革新的な解決策を提供しています。
Climatetrade
具体的には、Climatetradeはトークン化されたカーボンクレジットの取引を可能にするマーケットプレイスを運営しています。各自治体などが立ち上げた森林プロジェクトなどから直接的に、炭素オフセットやプラスチックオフセット、再生可能エネルギー使用証明書を購入することができるブロックチェーンベースのマーケットを展開しています。

Climatetradeは、2023年2月までの段階でシリーズAラウンドの資金調達を実施し、約900万ユーロ(日本円で約13億円弱)の資金を調達しています。これはスタートアップとしては大規模な調達額となります。さらに、2022年7月には事業範囲の拡大に伴い、本社をフロリダ州マイアミに移転しました。現在はアメリカ、スペイン、イギリス、韓国にて、グローバルな事業展開を進めています。

2-3.バッテリーのサプライチェーンにブロックチェーンを用いている鉱業会社BHP

オーストラリアの鉱業会社BHPは、2021年に自動車大手テスラとニッケル供給契約を結んだだけでなく、ブロックチェーンの導入も果たしました。その目的は、エンドツーエンドの原料トレーサビリティや、バッテリー原料生産のための技術交換など、バッテリーのサプライチェーンをより持続可能にすることです。

BHP
また、BHPは自社のニッケル生産地であるオーストラリアのニッケル・ウェストを、「世界で最も持続可能で、炭素排出量の少ないニッケル生産地の一つ」と説明しています。さらに、テスラの上海工場に供給するニッケルが純度の高いものであることを証明するため、またチリからアメリカのジョージア州に銅を輸送する際の炭素排出量を追跡するためにも、ブロックチェーンベースのトレーサビリティシステムを活用しています。

BHPは2020年に、中国へのオーストラリア産鉄鉱石輸出における初の「ペーパーレス」出荷を開始しました。全ての書類や成分分析、排出データはブロックチェーンベースのプラットフォーム、マインハブ(MineHub)で記録されています。

③まとめ

環境問題や社会課題の解決にブロックチェーンを活用する取り組みは、「ReFi」または日本語で「再生金融」と呼ばれています。国内外でこれらの取り組みを行う企業が増えています。

今回紹介した企業の中には、ブロックチェーンの導入により業務の効率化やエネルギー節約を達成したり、エコ活動の貢献度を視覚化するアプリを提供するなど、ReFiに取り組む様々な形が見られます。

しかし、全てのReFi活動がビジネスとして成功するわけではありません。収益化が困難な場合でも、環境への貢献に対するインセンティブを提供できれば、それが環境問題への関心を高めるきっかけにもなります。インセンティブ設定はブロックチェーンを活用することで、理想の取り組みができるのはないかと注目されています。今後のReFi市場を追っていく価値はあると言えるでしょう。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。