小規模農家への小規模融資を可能にするクラウドレンディングプロトコル「EthicHub」とは?

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目次

  1. EthicHubが解決する課題
  2. EthicHubが解決する課題
  3. EthicHubの展望は?

EthicHubとは?

「EthicHub」は、発展途上国の農業従事者への小規模融資を可能にするブロックチェーンを活用したクラウドレンディングプロトコルです。このプロトコルを通じて、個人や企業は発展途上国の農業従事者へ資金を融資することができます。

引用:EthicHub

「EthicHub」は2018年6月にリリースされ、現在までに5カ国の600世帯以上に300万ドルを超えるマイクロローンを実現してきました。また、一般的な金融システムのデフォルト率は3%未満であることが良いとされていますが、EthicHubのデフォルト率は1%前後であり、貸し手の100%が投資資金と利息を受け取っています。

それでは、その仕組みを見ていきます。ステークホルダーは5者存在します。

  • Farmers:小規模農家(借り手)
  • Lenders:貸し手
  • Stakers:ステーカー(ステーキングする人)
  • Auditors:監査役
  • Loan Originators:ローンオリジネーター

EthicHubは誰でも貸し手になることはできますが、借り手になるには審査が必要です。そのため、小規模事業者の借り手として承認を出す人がローンオリジネーターと呼ばれる人々です。ローカルなネットワークを持ち、小規模事象者がローンを借りれるように手助けをします。そして、そのローンオリジネーターの認定及び監査をする期間がAuditorsと呼ばれる監査役です。ローンオリジネーターは紹介した小規模農家のローン成立や返済によって収益を得ることが可能であり、監査役も紹介したローンオリジネーターの働きによって収益を得ることが可能となります。つまり、お互いが監視しあうことで分散型の与信管理を実現します。

また、EthicHubには独自の補償システムが存在しており、デフォルトが起こった場合も貸し手の元本と利息を100%補償しています。この仕組みを助ける存在が「Stakers」です。EthicHubはERC20上に発行されたネイティブトークン「$ETHIX トークン」が存在しています。Stakersはその$ETHIXをステーキングすることでステーキング報酬を獲得します。そして、そのステーキングされている資金、融資の返済によってEthicHubが獲得する利息などがプールされている場所から、デフォルト時には補償が行われます。

また、生産予定のコーヒーを生産前に予約購入することも可能であり、いずれも小規模農家が適切な報酬や事業を行うことをサポートします。

EthicHubが解決する課題

続いてEthicHubの設立背景、解決する課題について解説します。

ここには世界経済の課題が隠れています。現在、世界人口の4分の1とも言われる20億人もの人々が金融システムにアクセスできずにいます。これらの人々は自分たちのコミュニティ内で借りられる小規模ローンにしかアクセスできず、その多くは100%を超える金利を支払っています。世界の食料の3分の1を生産しているにも関わらず、貧困から抜け出すことができない状況にいます。また、バーバラ・エーレンランクという世界的なコラムニストはその著書の中で「貧困に陥っているのはその人の習慣ではなく、単に現時点でお金がないからだ」と主張しています。これはグラミン銀行などの小規模ローンを提供する事業者も主張している事実で、貧困に苦しむ人々は小規模な資金さえあれば生活が劇的に改善される事例が数多く証明されています。

しかし、既存の伝統的な金融システムではこの問題解決はできません。なぜなら小規模な農家は資金を借りるだけの信用がないからです。また、信用がない事業者が借りるには高額な金利を支払う必要があり、その状態では結局現在の状況から抜け出すことができません。EthicHubはこれらの問題を解決するために設立されました。経済的に恵まれない人々のための再生金融 (ReFi) ソリューションであり、ブロックチェーンを活用することで世界中の人々が小規模農家へ資金融資を行うことを可能にしました。

EthicHubの展望は?

EthicHubはリリース以降、着実に成長を続けてきました。イーサリアム上に構築されているプロトコルですが、2023年にはCeloチェーン上から融資やステーキングなど、EthicHubのサービスを利用できるようになったことを発表しました。

Celoも世界中にユーザーを持つReFiプラットフォームの1つであり、そこからシームレスにEthicHubへアクセスできるようになったことは非常に大きな意味を持ちます。今後プロトコルへ流入してくる資金が増加していくことが予想されます。

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また、EthicHubは透明性とアクセシビリティを備えた新たな金融システムの可能性を示しています。特に、銀行口座を持たない人々や、信用履歴を形成する機会が限られた人々が金融サービスにアクセスできるようになることは、20億人を超える規模の市場規模が存在し、その社会的インパクトの大きさを示しています。そして、小規模農家が金融システムにアクセスし、事業の拡大と適切な報酬を獲得できるようになれば、自身が貧困から脱出できることはもちろん、そこで得た資金が近隣のコミュニティへ還元されるようになり、地域全体が貧困から脱出できる機会にもなり得ます。

「貧困に陥っているのはその人の習慣ではなく、単に現時点でお金がないからだ」という主張は筆者自身もその通りだと感じており、少額の資金提供だけで地域全体がそのループから抜け出すチャンスを得られるという公平性は社会にとって非常に大切な仕組みです。そして、ブロックチェーンを活用することで低金利、そして特定のステークホルダーが犠牲になることなく、それぞれが利益を手にする形でその仕組みを実現できます。まさに新しい金融システムになると同時に、ブロックチェーンが持つ技術を社会的意義に当て嵌めた良い事例であると感じます。

総じてEthicHubは、社会的な存在意義はもちろん、事業としての可能性も示しており、今後の成長が非常に楽しみなプロジェクトの1つと言えます。