NFTマーケットプレイスBlurと大手VC Paradigmによる共同開発!NFT無期限レンディングプロトコル「Blend」

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. NFTレンディングとは
  2. Blendの概要
  3. Blendの考察
  4. まとめ

本記事では2023年の5月に、NFTマーケットプレイスであるBlurが大手VCのParadigmとともに開発をしたNFT無期限レンディングプロトコル、Blendについて扱います。昨今、NFT市場の成長とともにNFTレンディングやNFT先物など、高度なNFT金融サービスが登場することとなりました。しかし、NFTレンディングにおいては、NFTの流動性が低いことから、NFT価格の算定が困難であり、その十分な普及を阻害しています。

今回解説を加えるBlendは、レンディングプロトコルでありながらオラクルに依存しない仕組みで、サービスを構築するなど注目すべきポイントがいくつもあります。本記事では、これまでのNFTレンディングの概要を理解しながら、その課題、そしてBlendが提案する新しい仕組みについてその理解を深めます。

NFTレンディングとは

まず、Blendの解説を進める前に、従来のNFTレンディングプロトコルについて具体的なプロジェクトを例に概観していきたいと思います。

まず、1つ目はNFTfiやArcade_xyzなどのPeer to Peer型のNFTレンディングプロトコルです。これは、初めに貸し手が貸出額や金利、期間などを設定します。そしてそれに対して借り手がオファー受け入れれば、担保を預け入れ、利息を支払うこととなります。このモデルの主な利点は、上記で言及したカスタマイズ可能な条件とLTV(Loan to value)です。LTV とは元本/NFTの価値で測ることが可能で、LTVが高いほど、つまりリスクが高いほど、利回りが高くなります。ただPeer to Peer型レンディングはその名の通り、貸し手と借り手を直接結びつける仕組みとなっているので、ブルーチップNFTと呼ばれるようなある程度、条件精査が容易なNFT以外は、マッチングが円滑に進まない可能性があります。

2つ目は、この問題に1つの解決策を示したPeer to Pool型のNFTレンディングプロトコルです。例えばBendDAOというPeer to Pool型のNFTレンディングではNFTをプールにデポジットすることで即時にフロア価格の40%から50%の資産を借り入れることが出来ます。Peer to Peer型レンディングとの大きな違いは貸し手と借り手が直接に取引を行うのではなく、プールに対してNFTを預け入れることで、即時の借入を可能としているのです。ユーザー側が注意しなければならないのは、借り手はいつでも返済することができる代わりに、清算はフロアプライスに基づいて執行されるため、借り手の気付かぬうちに大事なNFTの担保が清算されているかもしれません。

Blendの概要

続いて本記事のメインテーマであるBlendについてその理解を深めていきます。

Blendの特長は、独自のオフチェーンオファーマッチングの仕組みを構築し、オラクルに依存することなく、借り手と貸し手をマッチングさせます。またParadigmが研究を進めてきた競下げ式のダッチオークションを活用することで、連続的な借入を可能とし、NFT無期限ローンを実現しているのです。基本的には、Peer to Peerの柔軟性とPeer to Poolの流動性を組み合わせた仕組みとも表現できるでしょう。

さて簡単な概要を理解したところで、具体例を考えてみましょう。ここではブルーチップNFTのAzukiを担保にETHを借り入れたいAさんを例とします。まずはPeer Peer型NFTレンディングに近いですが、NFT貸借条件を設定した上で、オファーを提示します。ここでは貸し手であるBさんがAzukiを担保可能とするローンをオファーしていたと仮定します。Aさんは、Bさんのオファーを承諾し、Azukiを担保にAPR10%で、5ETHを借り入れます。1ヶ月が経過した後に貸し手であるBさんは、ローンを終了したいと考えます。

Peer to Peerのレンディングプロトコルであれば、基本的にローンの期限満期まで待つ必要があります。一方のBlendでは、貸し手がNFT担保の借り換えオークションを執行することで、当該ローンを解消することができます。このプロセスは満期日に、借り手がローンを返済しなかった場合にも発生します。具体的な仕組みとして、借り換えオークションは貸出金利をオークションすることで、他の貸し手にローンを引き継ぐ仕組みとなっています。貸出金利は0%から1000%までの範囲でイングリッシュオークション方式で行われます。当然、貸出金利が上昇していけば、貸し手にとっても魅力的な条件となっていくでしょう。

新たな貸し手であるCさんが登場し、オークションが成立することで晴れて当初の貸出人であるBさんはローンを解消することが出来ます。またAさんはBさんにローンを解消されたにも関わらず引き続きAzuki NFTを担保にETHを借入続けることが可能となるのです。このプロセスを繰り返すことで事実上の無期限NFTレンディングの仕組みを構築しているのです。反対に新しい貸し手が見つからず、当初想定の30時間のオークションが終わるまでに借り手が元本を返済しない場合には、元の貸し手は担保を要求することができます。つまりこの場合には清算が発生するということです。

補足ですが、仕組み上は、あらゆるNFTを担保として受け入れることが可能であるBlendですが、本記事執筆時点で担保が可能となっているNFTはAzuki、Mutant Ape Yacht Club、Bored Ape Yacht Club、MakerWrapped、Cryptopunks、DeGodsの6種類です。

Blendの考察

ここまではBlendの概要や具体的な仕組みついて解説してきましたが、懸念される事項に関しても触れておきます。

Blendは、競り上げ式の金利オークションによって、ローンを借り換えしてきます。これは貸し手にとってリスクを高めることになると考えられます。というのは、オークションの性質上、競争に勝つために貸し手は有利な条件を出すことが想定されます。それにより相対的にリスクの高い状況で、ローンが締結される恐れがあるのです。

また反対に、価格算定が難しいNFTが担保となれば、借入をすることが出来たものの、借り換えオークションが、成立せずに清算となる恐れもあります。よって借り入れた資産を元に流動性が低い取引やロックが必要となるサービスを利用することは避けた方が良いという考え方もあります。

まとめ

本記事ではNFTマーケットプレイスのBlurと大手VCのParadigmが共同で開発を進めたNFT無期限レンディングプロトコルであるBlendについて解説をしました。Blendは、上段でも説明したようにPeer to Peer型とPerr to Pool型NFTレンディングの良いとこ取りをした新しい仕組みのNFTレンディングプロトコルです。現在利用可能なNFT担保は限られているほか、ローンチしたばかりのプロジェクトとあって不確実さも伴いますが、目新しいプロジェクトであることに変わりないでしょう。特にオラクル依存しないプロトコルというのはNFTの領域に限らず、提案、開発が進められいてBlendとは少し異なる方法でオラクルレスレンディングを提供するものもあります。今後の当領域の進展に目が離せません。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。