今の家に住み続ける?住み替える?住み替えの費用やローン控除などを解説

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転職、子供の独立、親の介護や相続など様々な事情から住み替えの決断を迫られることがあります。そのような時、決断を左右する要因の一つが「お金」ではないでしょうか。住み替えを検討する際には、いくら費用がかかるのか、ローンは組めるのか、今住んでいる家を売った資金でローンを返せない場合はどうするか、といった心配事が尽きません。

そこで今回は、住み替えに伴い必要になる資金や、利用できるローン、支払う税金などを詳しく解説します。住み替えのお金に関する悩みごとや困りごとがある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 住み替え費用の一覧表
  2. 住み替えローンの利用方法
    2-1.住み替えローンとは
    2-2.住み替えローン利用の手順
    2-3.住み替えローン利用上の注意点
    2-3-1.現住居売却と新居購入、融資手続きのタイミングを合わせる
    2-3-2.住み替えローンは審査が厳しい
    2-3-3.無理な返済計画になっていないかチェックする
    2-3-4.住み替え特約も検討する
  3. 住み替えで利用できる特例制度
    3-1.各種の特例一覧
    3-2.住宅ローン控除
    3-3.住宅ローン減税の拡大
    3-4.すまい給付金
  4. まとめ

1 住み替え費用の一覧表

住み替えで発生する費用は、主に「現住居の売却にかかる費用」「新住居の購入にかかる費用」「その他の費用」に分けることができます。その内容と金額の目安は次のとおりです。

区分 費用の種類 参考(費用の目安)
現住居の売却にかかる費用 建物解体・不用品処分費用 現住居の解体や不用品を廃棄処分する場合、木造住宅で3~5万円/坪
修繕・リフォーム費用 ・フルリフォームは200~300万円程度
・簡易リフォーム・クリーニングは数万~数十万円
仲介手数料 仲介手数料の上限額
・【売買価格が400万円を超える場合(税込み)】→売買価格×3%+6万円+消費税
・【売買価格が200万円超400万円以下(税込み)】→売買価格×4%+2万円+消費税
・【売買価格が200万円以下(税込み)】→売買価格×5%+消費税
譲渡所得税 ・譲渡所得税={譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額}×税率
・取得費は「物件の購入費用」+「購入にかかった経費」-「減価償却費」で求める
・特別控除額では、マイホーム売却で3000万円が控除される特例などが利用できる
住宅ローン完済費用 住宅ローンの残債に充当するための費用(通常は、現住居の売却代金を充当)
登録免許税・司法書士報酬 司法書士報酬相場:住宅ローンの抵当権抹消手続き1〜2万円
新住居の購入にかかる費用 住宅ローン頭金 不動産購入費用の1~2割程度(例:購入費用4,000万円×1.5割=600万円)
仲介手数料 売却時仲介手数料に同じ
登録免許税・司法書士報酬 司法書士報酬相場
・所有権移転4万円
・住宅ローンの抵当権設定3万円
火災保険料 建物構造・規模により異なるが1~3万円/年
その他の費用 引っ越し費用 通常10~20万円
仮住まい家賃 現住居の引渡し時までに新居の購入が間に合わない場合

住み替えを行うのに必要な費用は、必ずしも上記表に掲載した費用だけではない点に注意してください。なお住み替え費用は、個別の事情や売買方針などによっても大きく異なってきます。特に不動産会社に支払う仲介手数料は住宅の価格で大きく変わるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。

2 住み替えローンの利用方法

現在の自宅を売却して新しい家に住み替える場合、現住居の住宅ローンを完済するための融資制度を利用するのがおすすめです。

2-1 住み替えローンとは

住み替えローンは、現在の自宅を売却してローンの残債に充当しても、なお未済分が残る場合に、その未済分と新居の購入資金をまとめて貸してくれる融資サービスです。

自宅を売却してローンの残債に充当しても、完済することができない場合にのみ利用可となるため、自宅を売却して完済できる場合には、新居の購入は通常の住宅ローンを利用することになります。

2-2 住み替えローン利用の手順

住み替えローンは、残債を完済するのが難しい利用者にとって頼りになるサービスですが、利用する際は「現住居の売却」および「新居の購入」の決済するタイミングを同一日に合わせる必要があるなど、手続きが複雑になる点に注意が必要です。

現住居の売却と新住居の購入を同時に進めながら、住み替えローンを利用して住宅を住み替える場合の流れとタイミングの一例は次のとおりです。

現住居を売却する手順 新住居を購入する手順
・売却査定を受ける
査定額とローン残債を照らし合わせ、ローンを完済できそうもない場合は、住み替えローンの利用を検討する。
・不動産業者に仲介を依頼
住み替えローン利用の場合は、住み替え仲介の実績が豊富な業者を選定する。
・売却活動開始
売出し価格を決定し、募集・宣伝を開始する。
・新居購入の資金計画策定
現住居の売出し価格や買い手の反応をみながら、ローン未済分を推計し、新居の購入の資金計画を策定する。
・売却契約の締結 ・購入活動開始
物件の現地確認・下見などを行う。
・住み替えローンの事前相談
住み替えローンの正式申込み前に金融機関に出向き、融資を受けることができるか相談・審査してもらう。
・購入の申込み
・住み替えローンの正式申込み
新居の購入契約締結後に正式に申し込む
・購入契約の締結
【住み替えローンの融資実行】
住み替えローンの融資は、現住居売却・新居購入の決済日に実行される。
【現住居売却の決済・ローン残債の返済・抵当権の抹消】
現住居の買主から売却代金を受け取り、物件を引き渡す。
受け取った売却代金と住み替えローンの融資資金を使い、ローン残債を完済する。
金融機関に振り込みを行ったら、金融機関から抵当権抹消書類の交付を受ける。
司法書士に依頼し抵当権抹消の登記をしてもらう。
【新居購入の決済・抵当権の設定】
住み替えローンの融資資金から売主に購入代金を支払って引き渡しを受ける。同時に新居の所有権移転・住み替えローンの抵当権設定が行われる。

2-3 住み替えローン利用上の注意点

住み替えローンを利用する際は次の4つのポイントに注意します。

  • 現住居売却と新居購入、融資手続きのタイミングを合わせる
  • 住み替えローンは審査が厳しい
  • 無理な返済計画になっていないかチェックする
  • 住み替え特約も検討する

2-3-1 現住居売却と新居購入、融資手続きのタイミングを合わせる

住み替えローンの利用では、現住居の売却、新居の購入、融資申込み・審査などの手続きを同時に進行し、最終的に双方の決済日と融資実行日のタイミングを合わせなければなりません。そのため、住み替え仲介の実績が豊富で信頼できる不動産業者に、現住居売却と新居購入両方の仲介を任せ、プロの目から全体の進行管理を行ってもらうことが必要です。

信頼できる仲介業者の知恵や情報網を頼ることが、複雑な手続きをスムーズに進めるポイントとなります。

2-3-2 住み替えローンは審査が厳しい

住み替えローンでは、新居の購入資金に加えて現住居のローン未済分も合算し融資を受けることになります。そのため金融機関の立場からすると、新居の担保価値を超えた融資を行うことになるため、一般の住宅ローンに比べて審査が厳しくなります。

そこで住み替えローンを受ける際は金融機関担当者に対して、返済計画が滞りなく進められることを説明し、納得してもらう必要があります。

2-3-3 無理な返済計画になっていないかチェックする

住み替えローンは、一般の住宅ローンと比較すると融資額が大きくなるため、毎月の返済負担も増えます。そのため途中で返済できなくなるようなことがないか、丁寧に精査することが大切です。

2-3-4 住み替え特約も検討する

住み替えでは、現住居の売却が途中で頓挫すると、新居の購入も資金的に難しくなります。しかし、現住居の売却活動と新居の購入活動は並行して進める必要があるため、タイミングによっては「現住居の売却契約」より「新居の購入契約」が先行する場合もあり得ます。

つまり、新居は購入したものの現住居が売却できないという事態も想定しておかなければなりません。現住居が売れずに新居の購入契約を撤回すれば、違約金を請求される可能性もあります。

このような状況を防ぐため、現住居の売却が予定どおりにいかない場合、新居の購入を白紙撤回できる「住み替え特約」を新居の購入契約に付帯させる方法があります。住み替え特約があれば、新居の購入契約を撤回しても違約金を取られずに済むことがあります。

ただ住み替え特約は新居の売主にとってデメリットがある契約となるため、同意を得るのは簡単ではありませんが、相談してみると良いでしょう。

3 住み替えで利用できる特例制度

住み替えをする際は、譲渡所得から一定額を控除するなどの特例を受けられる場合があります。住み替えを検討している方は利用できる特例制度があるか、一度確認してみると良いでしょう。

3-1 各種の特例一覧

特例 概要
特別控除の特例 自宅を売却する際、一定の要件を満たせば所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円までが控除される
(注)売却時に居住していなかった住宅や土地等は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが条件
軽減税率の特例 所有期間10年超の自宅売却で、一定の要件を満たせば、3,000万円特別控除の特例適用後の譲渡所得に対し、長期譲渡所得の税率より低い軽減税率が適用される
特定居住用財産住み替えの特例 自宅を売却して他に住み替える場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べすることができる
居住用財産住み替え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除 住み替えのため自宅を売却して譲渡損失(売却損)が生じた場合、一定の要件を満たせば、給与所得や事業所得など他の所得と損益を通算できる。また、譲渡の年に損失を控除しきれない場合は、翌年以降最長3年間にわたり損失を繰り越すことができる
(注)平成31年12月31日までに売却すること、また、売却時に居住していなかった住宅や土地等は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが条件
居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除 住宅ローンが残っている自宅を住宅ローン残高を下回る価格で売却して譲渡損失(売却損)が生じた場合、一定の要件を満たせば、給与所得や事業所得など他の所得と損益を通算できる。また、譲渡の年に損失を控除しきれない場合は、翌年以降最長3年間にわたり損失を繰り越すことができる
(注)住宅の住み替え(新居取得)は要件ではないが、譲渡損失が生じた自宅に住宅ローン残高があることが必要

参照:国税庁 No.3302No.3305No.3355No.3370No.3390

3-2 住宅ローン控除

住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼び、マイホーム購入の際に住宅ローンを利用した場合、ローンの年末残高の一定割合に相当する金額を、一定の期間、毎年かかる所得税・住民税から控除してもらえる制度です。

区分 一般住宅
居住の用に供した年 平成26年4月1日~平成33年12月31日
控除期間 10年
控除率 1%
住宅ローン年末残高限度額 4,000万円
各年の控除限度額 40万円
合計最高控除額 400万円

なお、住宅ローン控除の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 新築または取得の日から6か月以内に居住の用に供している
  • 適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる
  • 特別控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下である
  • 新築または取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上である
  • 床面積の2分の1以上の部分が自己の居住の用に供するものである
  • 返済期間が10年以上の住宅ローンを借りている
  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていない

3-3 住宅ローン減税の拡大

2019年度の税制改正大綱では、2019年10月の消費税増税に伴い、住宅ローン減税の拡充策が盛り込まれています。それによると、消費税の新税率が適用され2020年12月末までに入居する物件については、住宅ローン減税の期間が現行の10年間から13年間に延長されます。

この場合、10年目までは現在と同じく、年末時点でのローン残高の1%が所得税などから控除されますが、11~13年目は、「ローン残高の1%」と「建物価格の2%分を3等分した額」の少ないほうが控除されることになります。

3-4 すまい給付金

すまい給付金は、平成26年4月の消費税8%増税を機に、住宅ローン減税の補完措置として導入された制度です。住宅取得の際一定の要件を満たせば、給付金の交付を受けることができます。

年収 給付額
年収425万円以下 30万円
年収425万円超475万円以下 20万円
年収475万円超510万円以下 10万円

参照:国土交通省「すまい給付金

すまい給付金の適用を受けるには、以下の要件を満たすことが必要です。

  • 年収510万円以下
  • 償還期間5年以上の住宅ローンを利用する※
  • 自分が居住する
  • 住宅の床面積が50平方メートル以上である
  • 住宅に消費税が課税されている
  • 第3者機関の検査を受けた住宅である

※ただし、50歳以上は住宅ローンの利用がなくても可

税制改正大綱では消費税増税に伴い、2021年12月末までに入居すれば、現行の年収目安「510万円以下」が「775万円以下」に、給付限度額「30万円」が「50万円」まで拡充される予定です。

4 まとめ

住み替えでかかる費用は、計画的に準備しておくことが大切です。また、その際は現在住んでいる家のローンも完済する「住み替えローン」を検討したり、住み替えに伴う税金を安くしてもらえる特例制度が受けられたりするかを確認してみましょう。

経験豊富で信頼できる不動産業者選びも重要です。適切な住み替えスケジュールに基づき、業者と上手く連携を図ることができれば、住み替えを上手に進めることができるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」