一棟買いしたアパートに自分で住む方法は?ローンの組み方や売却の注意点も

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一棟買いしたアパートに自分も住む方法は存在します。うまく資金管理ができれば、投資をしながら自分の住居費の圧縮にもなるなどのメリットがある一方で、ローンの組み方や売却時に注意すべき点があります。

また、床面積で見て居住部分が50%を超えるかどうかで論点が変わってくるので、自分も住むアパートを検討する際にはこの点にも着目して物件を探しましょう。

今回は一棟買いしたアパートに自分も住む場合の物件の選択肢やメリット・注意点などを紹介します。投資アパートに自分も住もうと考えている方は是非参考にしてください。

目次

  1. 一棟買いしたアパートに住む方法とは?
    1-1.居住部分が床面積の50%以上の場合
    1-2.居住部分が床面積の50%以下の場合
  2. 一棟買いアパートに自分で住む場合のローンの組み方
    2-1.居住部分が50%を超えるなら住宅ローンを利用できる
    2-2.居住部分が50%以下の場合は不動産投資ローンを活用
    2-3.ローン審査通過の難易度は上がる
    2-4.すでに保有している物件に住む場合は金融機関と事前に相談を
  3. 一棟買いしたアパートに住む際の税制上のメリットや注意点
    3-1.住宅ローンを組んでいれば住宅ローン減税の対象
    3-2.投資部分は相続評価額が低くなる
    3-3.減価償却費の計上は投資部分に限られる
  4. 賃貸併用住宅の売却時の注意点について
    4-1.オーナーの居住部分が大きい物件は買い手がつきにくい
    4-2.売却時期に合わせて自分の転居への対応も必要に
  5. 一棟買いしたアパートに自分で住むときのその他の注意点
  6. まとめ

1 一棟買いしたアパートに住む方法とは?

一棟買いしたアパートに自分で住むことは可能で、なかには賃貸併用住宅としてオーナーが居住することを想定した物件も中古市場に出てくことがあります。

一棟買いしたアパートに自分も住む場合、住居用途の部分が床面積の50%以上か、以下かでメリットも注意点も変わってきます。まずは、二つのパターンについてみていきましょう。

1-1 居住部分が床面積の50%以上の場合

賃貸併用住宅のうち、オーナーの居住部分が50%をこえる物件では、住宅ローンや住宅ローン減税など、住宅購入の場合に利用する仕組みが一部活用できます。また、居住部分を多めにとっていれば、アパートの一室よりも高い居住環境を維持できるでしょう。

一方で、居住部分が多いということは、裏を返せば賃貸に出せる部分は少ないため、必然的に賃貸区画数や期待できる家賃収入は物件規模に比して小さくなる点には注意が必要です。

なお「賃貸併用住宅」として売り出されている中古物件の中には、居住部分が50%を超える物件、超えない物件が併存しているため、住宅ローンの活用や住宅ローン減税をうまく活用したい人は、床面積の割合に注意して物件を探しましょう。

1-2 居住部分が床面積の50%以下の場合

居住部分が床面積の50%以下の賃貸併用住宅もあります。床面積の50%を居住部部分が占めていなくとも、オーナーが住むことを想定して面積の大きい区画が含まれる物件は、賃貸併用住宅として売り出されています。

通常の投資アパートの一区画に住むことも制度上は問題ありませんが、一区画をオーナーが占めることにより実質的に収益性が低下するため、ローンを借りる金融機関とは事前に相談しておいた方がよいでしょう。

居住部分が50%以下となると、住宅ローンや住宅ローン減税は活用できません。また、物件によっては一区画が狭く、一軒家や分譲マンションと比較して居住環境が悪くなるリスクがあります。特に家族がいる場合などはアパートの間取り構成などもみたうえで、家族構成にマッチした区画を居住空間に充てるようにしましょう。

一方で、賃貸部分が多くを占めた方が多くの賃料収入を得られると期待できます。その他、敷地全体が自宅となっている場合と比較して賃貸部分については相続税評価額が減額される点もメリットとなります。

2 一棟買いアパートに自分で住む場合のローンの組み方

ローンは床面積ベースで、居住部分が50%を超えるときは住宅ローンが活用できる可能性が高く、そうでないときは全て不動産投資ローンとなりますが、いずれにしてもローンの審査通過において注意すべき点があります。ここからは投資アパートに自分で住む場合のローンの組み方や注意点を紹介します。

2-1 居住部分が50%を超えるなら住宅ローンを利用できる

居住部分が50%を超える物件は、物件の主たる用途が居住目的となることで、居住部分については住宅ローンが利用できるケースが多くなります。ただし、金融機関によって対応は異なる可能性があるので賃貸部分があっても住宅ローンを活用可能かは必ず事前に確認しておきましょう。

ローンの借入額の上限は、物件購入価格を床面積で按分した部分で計算されます。残りの部分は自己資金か不動産投資ローンでまかなうことになります。住宅ローンは不動産投資ローンより金利が低いケースがほとんどなため、アパートまるごとを不動産投資ローンで購入するよりも金利を低く抑えられる可能性は高いと考えられます。

2-2 居住部分が50%以下の場合は不動産投資ローンを活用

過半数が投資目的となる場合は、不動産投資ローンを全額にわたって活用することになりますが、ここで注意したいのが、物件の利用目的です。

不動産投資ローンは投資目的で購入する物件に対する借入であるため、一部に居住してしまうと、その部分は「投資目的」とは言えなくなります。例えば、不動産投資ローンでアパートを購入したのちに無断で自分が住んでしまうと契約違反となる恐れがあります。

最も確実なのは、自分が住む部分相当額を自己資金で賄って、残りの部分をローンで賄うようにすることです。それが難しく、居住部分も不動産投資ローンで賄う必要があるときは、契約違反でトラブルとならないよう、借入前に不動産会社や金融機関と相談しながら手続きを進めましょう。

2-3 ローン審査通過の難易度は上がる

居住部分が50%以上でも以下でも、それぞれの事情からローン審査の通過難易度は上がる恐れがあります。

まず、居住部分が50%以上の場合は、アパートの収益性の低下により返済比率が悪化してしまう可能性があります。居住部分については通常の住宅ローンと同じく、不動産収益以外の収入によって補う必要がある点に注意しましょう。

他方、居住部分が50%以下の場合は、物件全体を不動産投資ローンに活用することになりますが、一部に居住することが契約上問題ないかは慎重に審査されるでしょう。また、本来得るべき収益の一部が実質的に得られなくなるため、不動産経営の収益性に懸念をもたれる恐れもあります。

2-4 すでに保有している物件に住む場合は金融機関と事前に相談を

すでに投資用アパートを所有していて、その一区画に住みたいと考えるケースも考えられますが、不動産投資ローンを借り入れている金融機関に事前に相談の上、意思決定をしてください。

不動産投資ローンはあくまで投資用の不動産物件に対するローンを提供するもので、自分の居住費を借り入れるものではありません。そのため、無断で住んでしまうとローンの契約違反と取られる可能性があり、最悪のケースでは一括返済などを求められるリスクもあります。

最終的な判断は金融機関に委ねられるところなので、まずは受け入れられてもらえるか交渉することが大切です。

3 一棟買いしたアパートに住む際の税制上のメリットや注意点

税制についても、特に住居部分が50%を超える場合で、住宅ローンを活用できれば住宅ローン減税も適用されます。その他にも一棟アパートに自分が住むことの税制上のメリットや注意点がいくつかあるので、みていきましょう。

3-1 住宅ローンを組んでいれば住宅ローン減税の対象

居住部分が床面積の50%を超えるケースで、住宅ローンを組んで物件を購入した場合は住宅ローン減税も適用されます。

ルールは通常の住宅ローン減税とかわらず、中古の場合は2022年時点ではローン残債のうち0.7%もしくは1年あたり14~21万円(条件により控除上限が変化)が10年間にわたり、10年で合計すると最大100万円以上の控除額となります。

※参照:国土交通省「住宅ローン減税

3-2 投資部分は相続評価額が低くなる

投資用不動産では、次の計算式で相続税の評価額を計算します。

相続税評価額の計算式=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

2022年11月時点、全国の借地権割合は30%に設定されています。賃貸割合は土地によって異なりますが30~90%程度となります。具体的な評価額は場所によって変わってきますが、おおよそ固定資産税評価額の60~70%になります。(※参照:国税庁「貸家建付地の評価」)

賃貸と自分の住居が併存している物件でも、床面積を基にした比率に応じて、賃貸部分にはこの計算式が適用されます。

3-3 減価償却費の計上は投資部分に限られる

不動産投資の経費計上で大事な役割を果たすのが減価償却費ですが、自分が投資物件に住むと、減価償却費の計上余地が減ってしまう点には注意が必要です。

減価償却費とは事業用の資産のうち使用したり時間が経つにつれ劣化したりするものを、徐々に資産価値を下げていく役割を持つものです。不動産の場合は建物部分については経年劣化していくものとみなされ、減価償却費を計上できます。

投資物件に自分も住んでいる場合は、自分の居住部分に当たる床面積分は減価償却ができません。そのため物件全体の価格に対して計上できる減価償却費が小さくなってしまいます。

4  賃貸併用住宅の売却時の注意点について

一棟アパートに自分で住む場合には、売却時のハードルが上がる可能性がある点にも留意が必要です。自宅部分の面積が広いタイプの物件は想定される買い手が限られるため、売却に苦労する恐れがあります。また仮に買い手がつくとしても、自分の転居先も同時に探していかなければならないという点も注意しましょう。

4-1 オーナーの居住部分が大きい物件は買い手がつきにくい

オーナーが住むことを想定した区画が用意されたアパートについては、買い手がつきにくい恐れがあります。このタイプの物件は一義的には今の所有者と同様に「投資をしながら自分も住みたい」という人に買い手が限られるので、単なる投資家よりも購入余地のある人が限られてしまうからです。

オーナーの居住区画があるがゆえに、物件規模に対して期待収益が小さくなるケースが多いため、100%投資目的で物件を購入したい人のニーズには適さない可能性が高いと言えるでしょう。

オーナーが住むことを想定した区画を含めて賃貸に出すことも可能です。しかし、オーナーが住むことを想定した区画は、賃貸経営で好まれる一人暮らし用のワンルーム・1LDKより広い区画になっているケースが多く、立地によっては入居者を募る難易度が高いと判断されて、敬遠される恐れがあります。

いずれのケースを想定しても、オーナーの居住部分が明確に確保されている物件は売却時の買い手探しに苦労する可能性があるのです。

なお、特にオーナーの居住空間が設定されているのではなく、間取りや広さが居住している区画とほかの区画で変わらないのであれば、買い手を見つける難易度は通常の投資アパートとあまり変わらないと考えられます。

出口戦略まで視野に入れれば、通常の投資用アパートに自分も住むという方法も選択肢の一つと言えます。ただし、この場合は「居住部分が床面積の50%」という条件を満たせないため、住宅ローンを活用することが出来ないという点に注意しましょう。

4-2 売却時期に合わせて自分の転居への対応も必要に

自分が住んでいるアパートを売却するときは、単に投資用物件を売却するよりも手続きや準備が煩雑化する恐れがあります。なぜなら、売却の引き渡しに合わせて、自分の転居準備をしていかなければならないからです。

投資アパートの買い手がつくときにタイミングよくよい転居先が見つかればよいですが、見つからない場合でも売却の契約は進めざるを得ないので、一時的に仮住まいを借りるなどの対応が必要になる可能性もあるでしょう。その場合には自分の転居や入居に伴うコストがかかることも、投資の収益性全体を考える上で注意しておきたいポイントです。

5  一棟買いしたアパートに自分で住むときのその他の注意点

投資アパートに住む上では、ここまで紹介した論点以外でも次のようなポイントに注意が必要です。

  • 住居費の削減になる一方で収益性が低下する
  • 空室リスクが高くなる
  • オーナーと同じ物件に住むのを敬遠される可能性がある
  • トラブル対応に巻き込まれるリスクがある

オーナーがアパートに住むと、その区画は収益を産まないので、物件の規模に比して収益性が低下します。一方で、その分他の場所に住まいを構えるより自身の住居費を削減できる可能性はあるため、メリット・デメリット双方を比較して検討しましょう。

また、事実上一つの区画が投資に使用できなくなるため、例えば6区画ある物件ならば5区画で賃貸経営をすることになります。区画数が減ることで1区画の空室のインパクトが大きくなるため、空室リスクが高くなります。

さらに、オーナーと同じ建物内に居住すると、騒音やゴミ捨てなどのマナーを厳しく監視される印象を持ち、敬遠されてしまうケースも考えられるでしょう。ほかの条件や品質が同程度の物件よりも、借り手がつきにくくなる可能性があります。

逆にオーナーが身近にいるが故に、遠くにいれば管理会社が対処するであろうトラブルを近くにいるオーナーに相談するケースも考えられます。管理会社に任せていれば、最終的な対処までは不要ではあるものの、賃料を徴収している手前、借り手を無下にはしにくいことから、連絡の取次など、結果的に離れて暮らす時と比較して対応頻度が多くなる可能性があります。

6 まとめ

投資アパートに自分も住むと住居費の圧縮や住宅ローンの利用、住宅ローン控除の適用などのメリットがある一方で、注意すべきポイントも多数あり、慎重に検討した方が良いでしょう。

また、オーナーの区画が広い賃貸併用住宅に住むのか、通常のアパートを間借りするだけなのかによってもメリット・デメリットが大きく変わってくる点にも留意が必要です。自分の住処と投資に対する考え方を整理した上で、自分にとって最適な手法や物件を選択しましょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。