政府は11月28日、旧統一教会の被害者救済に向けた政府の新たな法案の条文案をまとめた。法人が寄付を勧誘する際、「霊感の知見」などを使って不安をあおり、寄付が必要不可欠だと告げる行為を禁止するほか、「個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難にならないよう配慮義務を課す」としている。不当な寄付要求などを規制する新法(寄付規制法案)は、安倍晋三元総理大臣の銃撃事件を発端に規制化の議論が進められてきた。
一方で、NPO(特定非営利活動法人)は宗教とは無関係にもかかわらず、こうした規制の影響が懸念される。特定非営利活動法人日本NPOセンターは「寄付について一律に新たな規制を課される議論が当事者不在で進んでいる」として、慎重な議論を求めている。今月22日、寄付規制新法における寄付一律規制に慎重な議論を求めるオンライン集会を開催。特定非営利活動法人の国際協力NGOセンター(JANIC)、新公益連盟、セイエン、日本ファンドレイジング協会の5団体の代表が参加した。
集会に先立つ10月17日、消費者庁が「霊感商法等の悪質商法への対策検討会報告書」を公開。この中で「公益認定法の規定を参考に、寄附の要求などに関する一般的な禁止規範を検討するべき」という趣旨の提案がなされ、「今回の新法でも寄付の規制が行われる可能性がある」と関係者は危惧する。「霊感商法などによる被害者救済は重要な課題だが、寄附を一律で規制することは広く非営利セクターに大きな影響を及ぼすもので、慎重な議論が必要」主張している。集会では、検討状況を共有し、市民活動にどのような影響が考えられるのか、市民活動にかかわるものとしてどのように捉えるべきか意見交換を行った。
日本NPOセンターは「政府は『寄付一般』を対象に、悪質な勧誘行為に基づく寄付が、取り消しや損害賠償の対象になる可能性を示した。問題となっている宗教法人だけではなく、公益社団・財団法人、社会福祉法人、学校法人、市民活動団体などNPOの寄付に、一律に新たな規制が課される方向で議論が進んでいる」と指摘する。
集会では、一律の規制が「寄付募集(ファンドレイジング)や寄付文化を委縮させ、寄付全体に対する社会のイメージを悪化させ、社会貢献活動への寄付を減少させかねない」という意見、さらに「被害者をはじめ生活困窮者やひとり親、DV被害者など、コロナ禍で困難な状況にある人々への救済・支援を縮小させる」「NPOの活動を阻害しかねない」などと危惧する声が続いた。
「寄付は市民の社会参加の大切な手段であり、多様な価値観に基づいて行われるため、法律で一律に規制することには馴染まない」と、関係者の意見は一致している。政府・与党に対し、一律の規制の中止と、慎重な議論を要求していく。新公益連盟を事務局に、署名サイト「Change.org」で署名を募っている。
【関連サイト】Change.org「#寄付一律規制に反対 社会課題解決を衰退させる「寄付一律規制」に反対! 法案の慎重な議論を求めます!」
HEDGE GUIDE 編集部 寄付チーム
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