コスモスに「隠れビットコイン信者」が多い理由

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過去の寄稿では、コスモスの構造やイーサリアムとの違いについて解説した。コスモスは、プロジェクトやアプリ側にとって、カスタマイズが可能で独立したまま他のブロックチェーンと繋がれることがメリットだ。中央のコスモスは良い意味で主張せず、個々のブロックチェーンがSovereignty(主権)を持っている。暗号資産業界の成長やプロジェクトの多様化とともに、コスモスの人気が高まっている。

今後コスモスが覇権を握るのか?イーサリアムに対抗する新たな勢力とその背景

実はコスモスの開発を進める関係者には、「隠れビットコイン信者」が多い。「コスモス信者」と「ビットコイン信者」の共通点とはなんだろうか?背景にあるのは、Sovereignty(主権)を重要視する哲学だ。本稿は、プロジェクト関係者の意見をもとに、コスモスがビットコイナーから注目を集める理由を解説する。

目次

  1. コスモスと隠れビットコイン信者の存在
  2. コスモスの「Sovereignty(主権)」とは?デメリット
  3. 忘れられることがコスモスの強みとなる
  4. まとめ

1. コスモスと隠れビットコイン信者の存在

コスモスの開発者に「隠れビットコイン信者」が多いことをご存知だろうか?「ビットコイン信者」は、英語でBitcoin Maximalist(マキシマリスト)と呼ばれており、将来的にビットコインが暗号資産市場で一人勝ちするであろうと信じる人を意味する。

反対に、Bitcoin Minimalist(ミニマリスト)とは、ビットコインは数ある暗号資産の一種に過ぎないと考える人だ。現状でのビットコインはアプリの開発基盤として使いにくいことなどが背景にある。

コスモスチェーンは、異なるブロックチェーン同士をつなぐ「The Internet of Blockchains.(ブロックチェーンのインターネット)」だ。このコスモスチェーンを基盤とした有名なDEX(分散型取引所)に、「Osmosis(オズモシス)」と「Juno Network(ジュノネットワーク)」が存在する。

Osmosisは、コスモスチェーンを基盤にしたスワップや報酬獲得ができる分散型取引所である。一方のJuno Networkは、コスモスチェーン開発ツールCosmos SDKを使って作られたレイヤー1のブロックチェーンだ。

数あるコスモスチェーン系プロジェクトの中でも代表的なプロジェクトと言って良いOsmosisとJuno Networkだが、共同創設者が隠れビットコイン信者であると公言している。

分散型取引所「Osmosis(オズモシス)」の共同創業者Sunny Aggarwal氏は、自身のツイッタープロフィールにUndercover #Bitcoin Maxi(隠れビットコイン信者)と記載している。さらに過去のインタビューでは、「私がコスモスに取り組む理由の一つは、ビットコインのアプリケーションレイヤーを作るためだ。」と答えている。

参照URL:@sunnya97

さらにビットコインは明確な目的を持つ通貨であるとした上で、「(ビットコインの)周囲にエコノミーを作る必要はある。それには、BTCをブロックチェーンから取り出して準備資金としなければならない。この大きな暗号資産業界で、ビットコインに変わるものは存在しない。」と語った。

また、コスモスチェーンを基盤とするDEX「JunoNetwork」の共同創設者も自身のツイートで「私は隠れビットコイン信者である。なぜビットコインに集中せず、JunoNetworkにこんなにも時間を費やすのかと聞かれることがある。」と述べた。

自身がビットコイン信者でありながらもコスモスを基盤とするJunoNetworkに尽力する理由の一つは、「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)ネットワーク(特にJuno)が本格的な分散型となり、金融政策への耐性を持たせることが可能となるだろう。今まさにその時が来るのを目にしており、行動に移す必要がある。」と語る。

ビットコインは、発行枚数をコントロールするという非常にシンプルな構造を持つ。機能や構造ではコスモスチェーンとは異なるが、両者とも「本格的な分散型」を追求している点は共通している。この「本格的な分散型」こそがコスモスのエコシステム構築に尽力する開発者にビットコイン信者が多い一因だろう。

2. コスモスの「Sovereignty(主権)」とは?デメリット

コスモスチェーンの一番の利点と言われるのは、カスタマイズが可能であることだ。ゲームやトレード、NFTなどそれぞれのアプリの異なる要望に応えられるブロックチェーンであることからコスモス上のブロックチェーンは「Appchain(アップチェーン)」とも呼ばれる。イーサリアムなどの場合のように、既存のブロックチェーンの土台にソリューションを追加または適合するのではなく、オリジナルの土台を作るのだ。

さらにコスモスの注目すべき特徴は「Sovereignty(主権)」である。コスモスを採用するプロジェクトは、独自のカスタマイズと分散化された仕組みの構築で主権を得ることを意味する。

WBTC(ラップドBTC)をご存知だろうか?イーサリアムブロックチェーン上でビットコインを保管することは不可能だ。しかし、イーサリアムの​​ERC-20トークンであるWBTCに変換することで、イーサリアムチェーンにビットコインを送付することが可能となる。

しかし、これはイーサリアムの管理下になることを意味しており「主権」を握るのはイーサリアムである。つまり、イーサリアムは他のブロックチェーンと連動する代わりに、多数のソリューションを提供して成り立っている。

コスモスは、異なるブロックチェーン間に橋をかける。これにより、各チェーンやプロジェクトが主権を握る構造となる。この「主権」という概念こそがビットコイナーの心を打つのだ。

Web3プロジェクトが多様化されたことで、基盤となるチェーンにも柔軟性が求められるようになった。プロジェクトが多様化すると、異なるブロックチェーン同士でお互いのコミュニティと連携する必要がある。まさにCosmosは、ブロックチェーンをつなぎカスタマイズ可能な基盤として機能するのだ。

このように、カスタマイズ可能で主権を重視するコスモスだが、課題も残されている。例えば、参入障壁だ。長きにわたりイーサリアムのレイヤー1やレイヤー2を採用してきた暗号資産業界において、コスモスを採用することは容易ではない。

コスモスはカスタマイズ可能な点が利点であると述べたが、開発への負担は既存のチェーンを使うより増えるため、デメリットともなり得る。イーサリアムの場合、大きなマンションに例えられる。建物の管理やセキュリティは提供されており、個人が自由に変更することはできない。自分の部屋の中は、範囲内で自由にアレンジすることが可能だ。

マンションの設備を自由に変更できないことを窮屈だと感じるなら、コスモスのように自分で一から設計した家を立てる方が良いだろう。ただし、その代償として労力と時間を確保する必要があるのだ。

3. 忘れられることがコスモスの強みとなる

コスモスで初めて開発されたブロックチェーンかつコスモスネットワークの中心に位置する「Cosmos Hub」 のBilly Rennekamp氏は以下のように述べている。「将来的に、Cosmos(コスモス)という言葉は忘れられるかもしれない。人々が”World Wide Web”という言葉を忘れたのと同じだ。コスモスという言葉が「インターチェーン」に置き換えられれば、それはまさに全てがコスモスになることを意味する。」

コスモスが本当に成功した場合、コスモスという用語は不要となり忘れられる。毎日インターネットを使う私たちも、その基盤が何なのか疑問に思ったり思い出すことがないのと同じである。しかし、それこそがコスモスにとって本望なのだ。

今後どのようにコスモスが世界のプロジェクトから採用され成長するのか、あくまで推測でしかない。しかし、まだ小規模で派手なアピールをしないコスモスが、すでに知見のある開発者を中心に大きな注目を集めていることは評価されるべきだろう。

Osmosis共同創設者のSunny氏によると「コスモスが全てのブロックチェーンを食い尽くし、インターチェーンを作ると思わない人は、コスモスを過小評価している。」と指摘している。

今後コスモスに残された多くの課題を解決して、コスモスが「忘れられる」ためには、より多くの開発者がコスモスに参入し、流動性を増やすことが必要となる。2022年7月、 世界最大級の分散型取引所であるdYdXがイーサリアムからコスモスに移行することを発表した。今後、力を持つプロジェクトがdYdXの流れに続くのか。「イーサリアムVSコスモス、そしてその裏で躍動するビットコイナーたち」という構図は、2023年の注目テーマとなるだろう。

まとめ

コスモスとビットコイン信者には、「本物の分散型を達成したい」という共通の理念がある。

コスモスでは、カスタマイズが可能であるためプロジェクトにとってベストな独自のチェーンを一から作ることが可能だ。これは、コスモスのユーザーが「Sovereignty(主権)」を握ることを意味する。ビットコイン信者との合言葉は、「主権」だ。

先述の通りdYdXは、2023年に完全分散型(V4)を達成するために、コスモス移行を発表した。今後も、dYdXのように分散型を意識した取引所や、カスタマイズによりサービス向上を目指すDeFiプロジェクトが増えれば、コスモスの需要は高まるだろう。意識せずとも当たり前にコスモスが基盤として採用され、最終的には「コスモス」が忘れられる日に期待が集まる。

【参照記事】“Undercover Bitcoin Maxi”: A Talk With Osmosis Co-Founder Sunny Aggarwal

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