2023年はDAOの政治化に注目 要となるデリゲートとは?

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2022年、DAO(自律分散型組織)という言葉が話題となった。中央の組織に依存せずにコミュニティの参加者が自発的に今後の方針について議論して投票を経て意思決定をする仕組みは、従来の株式会社というガバナンス形態の代替として注目されている。

2016年に世界初のDAOが誕生して以来、DAOは紆余曲折を経て大きく発展した。投票率の低さや投票権をたくさん持つ「クジラ」の影響が強すぎることなど課題山積ではあるものの、DAOの運営方法に関する知識は着実に積み上がってきている。

そして、2023年、我々はDAOの政治化が進むとみている。現実の政治と同じように派閥やグループ同士の駆け引きが投票の結果を大きく左右する時代が来るだろう。実際、DAO運営の老舗であるメーカーでは、派閥が勃興してきたという分析も出ている。

本稿では、DAOの仕組みとDAO運営の要となるデリゲート、そしてメーカーにおける派閥分析を解説する。

目次

  1. DAOとは?
  2. Delegate(デリゲート)の仕組み
  3. DAOで派閥が出現?
  4. まとめ

1. DAOとは?

DAOとは、Decentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)の略称であり、ブロックチェーンを基盤に参加者が協力して組織の運営を行う仕組みを指す。

現在、完全分散化を目指しDAOを構築する取引所のdYdXを例に挙げて、主なDAOの流れとプロセスを見てみよう。

まず、dYdXのDAO参加者は、「ガバナンストークンDYDXの所有者(トークンホルダー)」と「コミュニティメンバー」に分けられる。コミュニティメンバーとは、ユーザーやトークン所有者を含むdYdXのステークホルダー全体を指す。コミュニティメンバーは誰でも、dYdXのサービスやプラットフォーム改善を目的として、ガバナンスフォーラムと呼ばれる専用ページに改善案を提出することが可能だ。

ガバナンスフォーラムにスレッドを立てる形で提出された改善案は、DAO参加者によって議論される。議論をもとに必要に応じて修正が加えられた後、10,000DYDX以上のトークン所有者によって改善案への投票が開始される。67%以上の賛成票により可決されると、エンジニアを抱えるdYdXトレーディング社によって改善案が実装される流れだ。このように、DAOでは、誰でも改善案を提出することが可能である。さらに参加者による投票で可否が問われ、分散型を維持しながら運営される構造となっている。

一般的な企業や組織においては、ユーザーが意見を提出することは可能で実際に検討されているのか知ることは困難だ。さらに、決定権は社長や経営陣が持つため、​​ユーザーの提案が議論され実装に至る可能性は非常に低い。DAOはこのような常識を変える。ユーザー自身が、プロジェクトやプラットフォームをどう改善できるか考え、一員として作り上げることができる。

2. Delegate(デリゲート)の仕組み

誰でも参加できることが強みであるDAOだが、一般的に投票権はガバナンストークン所有者に割り当てられている。ここで問題となるのは、時間や能力的な制約から、全てのトークン所有者が提案の議論や投票に参加できるとは限らないということである。

そのような場合には、「Delegate(デリゲート・委任)」が重要になる。デリゲートとは、英語で「委任」を意味し、DAOにおいては投票に参加できないトークン所有者が他者に投票権を委任することを指す。投票権を委任された人がデリゲートとなり、トークン所有者の代わりに投票を行う。

DAOが活発化すれば、提案の数や投票の機会が増えることから、各トークン所有者が全ての提案に投票することが困難となるだろう。さらに、投票にあたり提案内容を正しく把握する必要があることから、時間を要する。デリゲートは、投票を公平かつ円滑に執り行う上で必要なシステムだ。

また審査すべき議題が、専門知識を必要とする場合にもデリゲートは活用される。専門家に自分の票を託すことで、正しい知識をもとに審議し投票することが可能となる。

DAOにより運営を行うDEXのUniswapでは、ガバナンストークンUNIのデリゲート額が過去2年間で大幅に増えている。

参照:Dune

現在、dYdXのDAOには世界の大学のWeb3組織にデリゲートとして参加している。例えばUCLAやミシガン大学の学生組織が、dYdXのデリゲートとして名乗りをあげている。

3. DAOで派閥が出現?

投票権の委任を意味するDAOのデリゲートは、政治的な要素を生み出す要因の一つになるかもしれない。より多くの票を集めたデリゲーターが必然的に多く投票することが可能となるからだ。これにより何らかの形で票集めを行ったり、取引を提案して裏工作を図る可能性がある。

DeFiプロジェクトとしてステーブルコインDAIを発行し、DAOの発展を率いるMakerでは、すでに派閥が誕生しているという分析が出た。Makerビジネスデベロップメント担当Greg Di Prisco氏によると、大きく分けて3つの派閥が存在する。

一つ目の派閥は、「フューチャリスト(未来派)」と呼ばれるMaker共同創業者Runeが率いる派閥だ。未来の予測から逆算して現在すべきことを決めるタイプである。

二つ目の派閥は「セントラリスト(中道派)」と呼ばれる、ビジョンや計画よりも実行し、成し遂げることに重きを置くグループ。多少の分散型への妥協もいとわないと考えている。

三つ目の派閥は、「ディセントラリスト(分散派)」。MakerDAOの初期グループであり、中央集権の完全排除を強く目指すグループだ。

Makerでは、派閥間での権力闘争によりバランスが保たれていると考えられる。例えば、「LOVE Vote」の件を見てみよう。

「LOVE Vote」とは、貸付の監査・アドバイスを行う現実世界の金融における監査組織の立ち上げを目的とした投票だった。この提案は、これまで交わることのなかったフューチャリストとディセントラリストが同盟を組む形で、反対票を投じたことで、廃案に至った。

仮に派閥として一定数の票を確保している場合でも、他の派閥からの合意を得られなければ、自らの声を貫くことが不可能であることが証明された形だ。そしてある提案で同盟を組んだ派閥も、他の提案ではライバルになる可能性がある。メーカーでは、既にDAOの政治化が見え始めていると言えるかもしれない。

4. まとめ

DAOでは、異なる考えを持つコミュニティメンバーが意見を出し合い、投票することで分散化を維持しながら組織運営を行う。肝となる投票では、デリゲートを採用することで、トークン所有者の負担を軽減。より幅広い立場の意見や専門家の考えを票として反映することができる。

派閥の誕生や票集めは、現実世界の政治そのもの。裏で取引を行ったり、悪意を働く人が出てくる可能性も考えられる。しかし、DAO参加者の目的はただ一つ。プロジェクトやサービスを維持し、より良いものに改善することだ。解決または整備すべき課題も多いが、今後の暗号資産の未来を左右する発展途上のDAOに注目が集まっている。

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