投資型クラウドファンディングにかかる税金は?確定申告の手順・注意点も

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投資型クラウドファンディングを個人でおこなっている場合、確定申告手続きはどのようにすればよいのでしょうか。投資型クラウドファンディングは、その種類によって性質が異なり、所得税法上の取扱いも異なるので注意が必要です。

本記事では、投資型クラウドファンディングにかかる税金について、その種類ごとの所得税の取扱いや確定申告の手順について詳しく解説していきます。

※記事内の税制内容は2021年9月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 投資型クラウドファンディングにかかる税金
    1-1.投資型クラウドファンディングの種類と性質
    1-2.投資した側でかかる税金
    1-3.確定申告の必要性
  2. 確定申告の手順
    2-1.必要書類・環境を整える
    2-2.雑所得などの所得計算をおこなう
    2-3.所得税の確定申告書を作成・提出する
    2-4.所得税・住民税を納税する
  3. 確定申告の注意点
    3-1.税理士に確定申告を依頼する場合の注意点
  4. まとめ

1.投資型クラウドファンディングにかかる税金

投資型クラウドファンディングには、貸付型、株式型、ファンド型があります。これらの違いについて、以下で詳しくみていきましょう。

1-1.投資型クラウドファンディングの種類と性質

貸付型、株式型、ファンド型のクラウドファンディングの種類の違いは、貸付けの方法によるのか、株式発行の方法によるのか、あるいは、ファンド持分を購入させる方法によるのか、という資金調達の方法の違いになります。

  • 貸付型:特定の企業への貸付け(ソーシャルレンディング)
  • 株式型:未上場の企業の株式発行
  • ファンド型:ファンドを組成(不動産投資型など)

いずれも、投資側には投資した資金に対する金銭的リターンが約されており、リターンが発生した場合は、個人であれば、所得税・住民税が課せられます。

1-2.投資した側でかかる税金

個人が株式発行の方法による株式型クラウドファンディングによって得たリターンは、非上場株式に対する配当という扱いになり、上場株式等以外の配当所得として所得税の総合課税の対象となります。

また、株式型クラウドファンディングによって取得した株式は、基本的には流通取引を前提としておらず、売却することは難しいといえますが、売却によって譲渡益が発生した場合は、一般株式等に係る譲渡所得として、所得税の申告分離課税の対象となります。譲渡益に対してかかる税金は、所得税15.315%、住民税5%の一律税率となります。

一方、貸付型、ファンド型のクラウドファンディングで得られるリターンは匿名組合から組合員への分配という形式を採っています。そのため、個人の場合、雑所得として総合課税の対象となります。

1-3.確定申告の必要性

投資型クラウドファンディングによって得た利益がある場合、原則として確定申告が必要となります。ただし、給与収入が2,000万円以下で、投資型クラウドファンディングを含めた給与以外の所得(収入から経費を差し引いた金額)の合計額が20万円以下の場合は、例外的に確定申告は不要です。

なお、配当所得の場合、支払いを受けた時に20.42%の源泉所得税等が源泉徴収されていますが、確定申告では、他の所得を合計したすべての所得に応じた累進税率によって税額が再計算され、精算されます。

2.確定申告の手順

確定申告は次のような手順でおこないます。

  • 必要書類・環境を整える
  • 雑所得などの所得計算をおこなう
  • 所得税の確定申告書を作成・提出する
  • 所得税・住民税を納付する

以下で詳しくみていきましょう。

2-1.必要書類・環境を整える

まず、確定申告に必要な書類を整えます。

給与所得以外の所得が、投資型クラウドファンディングで得た利益のみである場合、基本的には確定申告書(A様式)を提出することになります。

投資型クラウドファンディングで得た利益の中に株式の売却益がある場合や、給与所得以外に事業所得や不動産所得などの所得がある場合、確定申告書(B様式)を提出することになります。自分で申告をおこなう場合は、税務署でこれら所定の様式を揃えておくとよいでしょう。

環境については、確定申告の手続きの一部を自分でおこなう場合にパソコン、ネット環境の準備が必須となります。

投資型クラウドファンディングにかかる収入や必要経費に関する書類の収集

投資型クラウドファンディングで得た収益については、投資型クラウドファンディング事業者が支払調書(投資家に支払った一年間の分配金をまとめた書類)を発行している場合はその支払調書を利用します。

支払調書がない場合は、年間取引報告書を用意しましょう。支払総額と支払日、支払内容の他、源泉徴収税額が分かる資料が必要になります。投資型クラウドファンディングに係る必要経費がある場合、その領収書なども準備しておきましょう。

他の所得や所得税の控除に関する書類の収集

所得税の確定申告書を作成するために、給与所得の源泉徴収票などのクラウドファンディングで得た収益以外の収入明細が必要です。また、所得控除に関する書類として、医療費の領収書や寄付金の領収書などが必要になります。

なお、社会保険料や生命保険料、地震保険料も控除対象になりますが、サラリーマンであれば年末調整で調整済であるため、源泉徴収票を用意すれば充分となります。

2-2.雑所得などの所得計算をおこなう

貸付型、ファンド型のクラウドファンディングで得た利益がある場合、資料を下に雑所得の計算をおこないましょう。雑所得の金額は、次の算式によって算出できます。

雑所得=総収入金額-必要経費

必要経費として控除できるのは、クラウドファンディングに直接要した費用であり、クラウドファンディング事業者の手数料などが挙げられます。

令和4年分以降の所得税確定申告では、投資型クラウドファンディングに係る収益が、営利を目的とした継続的なものである場合、前前年分の収入金額が300万円を超えるときは、帳簿を保存する必要があります。(※参照:国税庁「雑所得」)

また、事業所得や不動産所得など、決算をおこなう必要がある場合、雑所得の計算とともに、事前に決算を済ませておきましょう。

2-3.所得税の確定申告書を作成・提出する

雑所得やその他の所得がある場合、それらの計算が終了したら、所得税の確定申告書を作成します。

確定申告書は、雑所得の金額や給与所得の金額を集計し、社会保険料控除、医療費控除などの各種控除の金額を控除して、所得税のかかる所得を算定し、実際の所得税額の計算をおこなう書類です。

一般株式等に係る譲渡所得がある場合の申告では、株式等に係る譲渡所得の金額の計算明細書の作成も必要になります。

これらの申告書類は、通常は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや市販の税務ソフトに情報を入力して作成することがほとんどです。作成の際には所得税の知識が必要になります。

すべての書類を作成したら、管轄の税務署に提出します。提出方法は、直接持参するか、郵送、あるいは電子申告であればインターネットで送信することによって提出します。所得税の確定申告書等の提出期限は、翌年の3月15日となります。

2-4.所得税・住民税を納税する

書類の提出と納税は別々におこないます。所得税は、納税の期限が3月15日になっており、確定申告書等の提出期限と同じです。

現金で支払う場合は、納付書を用いて金融機関等で納めます。口座振替の手続きをすれば、口座振替も可能です。そのほか、クレジットカード納付やコンビニ納付などもできます。

住民税は、確定申告の情報を下にそれぞれの市区町村が税額を計算し、6月以降に納付書を送ってきます。

サラリーマンであれば、12回に分割して給与所得から天引きして企業に納めてもらう「特別徴収」となるケースがほとんどですが、住所に納付書を送ってもらい、自分で納める「普通徴収」を選択することも可能です。普通徴収であれば、通常は4回の分割払いになります。

3.投資型クラウドファンディングの確定申告の注意点

投資型クラウドファンディングの確定申告で注意したい点は、まず、原則として確定申告が必要であるということです。給与所得者であっても、分配金などの投資型クラウドファンディング収入があれば、確定申告が必要であることを念頭に置いておきましょう。

また、株式型の場合、リターンは配当所得に該当することになりますが、配当所得から控除できる必要経費は原則として認められていないため、注意しましょう。(※参照:国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」)

実際の支払額は源泉徴収税額が差し引かれた後の金額になっているため、確定申告の際には差引前の総額を把握するようにしましょう。

3-1.税理士に確定申告を依頼する場合の注意点

税理士に税務の相談を検討するのであれば、報酬だけでなく、自身の状況にあった税理士を探すことが大切です。それは、業界によって計上できる経費の考え方や適用できる税制上の特例などが多岐にわたり、年々改正される税法にも対応していかなければならないことに加え、依頼する税理士・税理士事務所によって専門とする業界は大きく異なってくるためです。

クラウドファンディング投資は比較的新しい投資手法であり、税法の整備が整っていないことや、申告上の解釈の事例も多くなく、適切な申告を行う難易度の高い分野と言えます。発生する報酬の費用面だけでなくどのような実績があり、どのようなサポートが受けられるのか、という視点でも比較してみるとよいでしょう。

複数の税理士事務所を比較するのであれば、税理士紹介サイトを利用して税理士を紹介してもらうという方法もあります。税理士紹介サイトでは、コーディネーターが、相談者のニーズに合った税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。税理士との依頼内容の調整や、料金交渉などもコーディネーターに任せることが可能です。

税理士ドットコム

税理士ドットコム税理士ドットコムは、全国5,900名の税理士の中から無料で希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。

報酬引き下げの実績も豊富なため、すでに税理士と契約している方でも利用が可能です。コーディネーターが複数の税理士に相見積りをとり、費用についての交渉までサポートしてくれます。

利用時の主な注意点としては、提携している税理士の紹介しか受けられない点です。提携外の税理士も比較していきたい方は、自身で探してみたり、知人から紹介を受けてみるなどと並行して、利用を検討すると良いでしょう。

まとめ

投資型クラウドファンディングで個人がリターンを得た場合、原則として所得税・住民税がかかり、確定申告が必要となります。

株式型の場合、リターンは基本的に配当所得に該当して必要経費が控除できないため、注意しましょう。実際の支払額は、源泉徴収税額が控除された後の金額であり、確定申告では、支払総額と源泉徴収税額を把握する必要があることもおさえておきましょう。

クラウドファンディングの制度は、まだ税法の整備が追い付いていない側面もあります。確定申告をする際は、国税庁のホームページを確認したり、専門家に依頼したりすることも検討してみましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。