不動産投資における物件の売却は、投資の利益を確定させる重要なポイントです。物件を売却するのであれば、できる限り高く売って利益を大きくしたいと考える方は少なくありません。
投資用マンションの売却と居住用マンションの売却とでは、査定の方法にも違いがあります。査定前にこれらの違いについて確認しておくことで、高値売却に繋がるケースもあります。
そこで本記事では、投資用マンションの査定について手順や査定価格の決まり方を詳しく解説します。投資用マンションを高く売却したいと考えている方はご参考ください。
目次
- 投資用マンションを査定する手順や流れ
1-1.居住目的で売却する場合とは考え方が異なる
1-2.投資用マンションの査定に必要な情報
1-3.投資用マンションの査定手順 - 投資用マンションの売却における注意点
2-1.物件価格の決まり方を理解する
2-2.顧客ターゲットによって適正な利回りは異なる
2-3.空室はない方が売れやすい
2-4.築年数が20年を超えない段階で売り出す - まとめ
1.投資用マンションを査定する手順や流れ
投資用マンションを査定する手順には、居住用のマンションを査定する場合と大きな違いはありません。しかし、考え方や必要な情報などが居住用のマンションとは違う点を理解することが重要となってきます。
1-1.居住目的で売却する場合とは考え方が異なる
購入者が自ら居住する前提でマンションを売り出す場合と、投資用マンションを売り出す場合とでは、購入者の目線が違うことを最初に理解することが重要です。
居住目的でマンションを購入する場合は、例えば東西南北といった物件の向きや収納の多さなど、目視で確認できる具体的な希望が多くなります。
しかし、投資用マンションの場合は、居住に関する具体的な希望よりも、物件の運用によっていくらの利益を出せるかという数字が重視されがちです。
端的に言えば、利回りが高い物件であるほど買手の目に留まりやすくなります。投資用物件の周辺相場より価格が高すぎても買手の目に留まりにくくなるため、売出価格と想定利回りとのバランスが重要になります。
1-2.投資用マンションの査定に必要な情報
投資用マンションの査定に必要な情報としては、物件購入時の売買契約書や重要事項説明書など居住目的の売却で必要な書類に加えて、レントロール(家賃表)などが挙げられます。
レントロールとは、直近1年間の入居状況や家賃収入および必要経費の金額などをまとめたものです。投資用マンションの売却においては、想定利回りなどを算出する必要があるため、入居者の状況や家賃収入の金額などは重要な情報になります。
レントロールは賃貸管理を委託している不動産会社が情報をまとめます。投資用マンションを査定する前に、賃貸管理会社へ連絡して情報をもらっておくことが必要です。
そのほか、入居者が入っている状態で物件を売り出す場合は、レントロールのほかにも入居者との間で締結している賃貸借契約書などが必要になります。
1-3.投資用マンションの査定手順
投資用マンションを査定に出すためには、必要な情報を揃えて不動産会社へ査定を依頼します。査定を依頼する不動産会社については、不動産一括査定サイトなどを活用するなどして、複数社の査定価格を比較することが大切です。
不動産一括査定サイトでは、必要な情報を入力すれば複数の不動産会社から簡易査定を受けられます。不動産会社を絞り込むためには、査定額に加えて査定申込に対する返信内容や、投資用マンション売却の取扱実績なども参考とすることが可能です。
下記は主な不動産一括査定サイトの一覧です。ここでは、悪徳業者の排除を積極的に行い、投資用マンションの売却査定に対応しているサイトを取り上げています。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
複数社の査定結果を比較して不動産会社を絞り込んだら、具体的な情報を提示して訪問査定に移ります。訪問査定の段階では、不動産会社とコミュニケーションを綿密にすることが重要です。
不動産一括査定サイトを利用するほかにも、賃貸管理を委託している管理会社から不動産会社を紹介してもらうのも有効です。または、賃貸管理会社が売却も取り扱っている場合は、管理会社の査定を経て売却活動を始められます。
ただし、管理会社が売却を取扱っている場合でも、他の不動産会社から査定を受けて査定額の妥当性を検証しておきましょう。査定する不動産会社が1社だけだと、査定額の高低を判断することが難しくなってしまうためです。
【関連記事】不動産一括査定サイトで不動産を高く売却する手順は?おすすめのサイトも
2.投資用マンションの売却における注意点
投資用マンションを売却する場合には、居住用のマンションを売却する場合とは違った考え方で査定されます。また、できる限り高く売るためには空室期間を避けるなどの工夫が重要になってきます。それぞれの注意点を詳しく見て行きましょう。
2-1.物件価格の決まり方を理解する
投資用マンションの査定では、居住目的のマンションを売却する場合とは違い、利回りから逆算した査定方法が重視される傾向にあります。このような想定利回りから逆算して売却額を査定する方法を、収益還元法と言います。
例えば毎月の家賃が10万円のマンションで、表面利回り5%を想定する場合の査定額計算方法は以下の通りです。
10万円×12ヶ月÷5%=2,400万円
しかし、2,400万円という査定額が過去の取引事例と照合して高すぎる場合は、2,400万円を参考にしつつ、周辺相場に合わせた金額を提示されることになります。このような過去の事例と比較した査定方法を取引事例比較法と言います。
また、もう1点「積算価格」というものも計算します。積算価格とは、売却する物件を担保に入れる場合の価値を計る価格のことです。
投資用マンションの買手にはローンの利用者が多いため、想定される金融機関の担保評価についても査定の段階で確認します。積算価格の査定では、査定の時点で同等の建物を建てる時に必要な金額を想定して計算します。この査定方法を原価法と言います。
ただし、㎡単価の目安については不動産会社や提携の金融機関によって異なるため、積算価格の算出方法に絶対的なルールはありません。また、収益還元法によって算出した価格と積算価格とのどちらを重視するかという点も、不動産会社や金融機関次第となります。
2-2.顧客ターゲットによって適正な利回りは異なる
収益還元法による査定では、想定する利回りによって算出される価格が変わりますが、想定利回りは顧客のターゲットや売却時点の不動産市況によって異なります。2021年9月時点、東京の投資用マンションの市況感の事例を見ていきましょう。
例えば、東京23区内の投資用マンションを売却する場合、日本人投資家をターゲットにするのであれば4%~5%程度が想定されます。
しかし、東京23区内でも港区や中央区など都心の中心部に立地する物件を売却する場合は、外国人投資家も売却先のターゲットになり得ます。外国人投資家から見ると、利回りが2%~3%でも購入に至る場合があります。
東京都内の投資用マンションを購入する外国人投資家は、香港やシンガポールなどの中華系外国人が中心です。香港やシンガポールなどには東京以上に高価格で低利回りの物件も多く、海外市場と比較すると東京の物件は割安と考えている外国人投資家もいます。
外国人向けに営業すれば、日本人投資家向けに営業するより高く売れる場合があります。しかし、外国人のマーケットを開拓できている不動産会社はあまり多くなく、物件のグレードによっては査定の対象とならないこともあります。
2-3.空室はない方が売れやすい
投資用マンションを高く売るためのコツとして重要なポイントは、可能な限り入居者が入っているときに売り出すことです。入居中の物件は、買手から見ると買ってからすぐに家賃収入が入ってくる物件となるためです。
反対に空室中の場合は、物件を購入した後に買手が改めて入居者を募集する必要があります。入居者が入るまでは家賃収入が入ってこないうえに、想定した家賃収入を得られるかどうか不明であるため、敬遠される傾向にあります。
空室物件は買手から見ると空室リスクを持っているため、値下げ交渉につながりやすいことも事実です。入居中に売り出すことで、指値交渉などのリスクを下げられます。
ただし、実需(居住)目的で売却するのであれば空室で売却を進めるほうがスムーズに売却に至ることがあります。ファミリー向けで実需での需要が見込める物件などであれば、状況に合わせて柔軟に売却戦略を練ることも大切なポイントです。
2-4.築年数が20年を超えない段階で売り出す
投資用マンションも、居住用のマンションと同様に築年数が20年を超えたあたりから売却価格が下がります。投資用マンションをできる限り高く売るためには、築年数が20年を経過する前に売り出すことも重要です。
そのほか、マンションの管理組合が実施する大規模修繕工事にも要注意です。RC造のマンションの場合は、築12年~15年の間に大規模修繕工事を施工することが多くなります。
マンションによっては、大規模修繕工事の費用を捻出するために各オーナーから一時金を徴収する場合があります。一時金の徴収は買手から見ると支出が増加するリスクとなります。
また、大規模修繕工事の施工によってマンションの資産価値が維持される側面もあるため、投資用マンションを売却するのであれば、可能な限り大規模修繕工事の時期を避けることも検討してみましょう。
まとめ
投資用マンションを査定する手順は、売手から見ると住むために買ったマンションを売却する場合と大きな違いがありません。ただし、投資用マンションの売却では収益性が特に重視されるため、査定にあたって収益性を確認するための情報が必要になります。
また、マンションを査定に出す場合は、できる限り3社以上の不動産会社に依頼することを考えてみましょう。複数の不動産会社から査定を受けることで、査定額の妥当性を判断しやすくなるためです。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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