ポイントサービスが広く普及する中で、購買時のポイント利用や商品交換だけでなく、投資や寄付などにもポイントを利用できるようになってきています。日々の暮らしの中で貯まったポイントを、応援したい活動やNPO、災害支援などに活用できれば、無理なく気軽に社会参加をすることができます。
今回は、大手ポイントサービスの一つ「Ponta」を提供する株式会社ロイヤリティ マーケティングの新規事業開発部 部長 佐藤智仁さんに、SDGsに取り組む企業とPonta会員をつなぐ「Green Ponta Project」やスマートフォンアプリ「Green Ponta Action」について詳しくお伺いしました。
話し手:株式会社ロイヤリティ マーケティング 新規事業開発部 部長 佐藤智仁さん
- 2018年、ロイヤリティ マーケティング入社。Ponta(ポンタ)の魅力を生かし、生活者に向けた新たな体験価値の提供を目指して新規サービスの開発に取り組む。
※2023年2月取材時点の情報をもとに執筆しています。
※本記事は投資家・寄付者への情報提供を目的としており、特定企業・事業への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
記事目次
- SDGsプロジェクト「Green Ponta」が生まれたきっかけや理念について
- Pontaポイントを使って出来るアクション
- アプリ「Green Ponta Action」が立ち上がった経緯
- アプリ「Green Ponta Action」で出来るアクション
- アプリ「Green Ponta Action」の使い方や長く続けてもらうために
- 利用しているユーザーの方からの声や要望
- これまでの主なSDGsプロジェクト
- 今後「Green Ponta」で始まるプロジェクトや手がけたいプロジェクト
- 「Green Ponta」を通じて、実現したい社会や世界
- 編集後記
Q.SDGsプロジェクト「Green Ponta」が生まれたきっかけや理念について教えてください。
Green Ponta Projectは2019年12月に立ち上げたプロジェクトです。ロイヤリティ マーケティングは2008年の創業以来、「無駄のない消費社会の構築に貢献する」を企業理念としています。SDGsやサステナビリティの考え方と共通する部分が非常に多く、理念の実現がそのまま、持続可能な社会をつくることだと捉えています。そこで「ムダのないシアワセに包まれた社会へ」というプロジェクトのビジョンを掲げ、無駄な消費をなくすことで様々な社会課題を解決することを目指しています。
当初は、一部の提携会社と組んで、サステナブルな商品やサービスを利用するとPontaポイントがもらえるというサービスをユーザーに提供するなど、少しずつ取り組みを始めていきました。
Q.実際にPontaポイントを使ってどのようなアクションが出来るのでしょうか。
貯まったPontaポイントを環境配慮商品と交換できます。Ponta特典交換サイトに、認証ラベルが付いた商品などを取り扱ったコーナーを設けています。また、同じ特典交換サイトでは、ポイント寄付のページを常設しており、国内外を問わず、社会課題に対して対応している団体へ50Pontaポイント単位で寄付ができます。
Q.アプリ「Green Ponta Action」が立ち上がった経緯や、コンセプトについて教えてください。
一年くらい経って、会社としてもう一歩SDGsにアクセルを踏もうという話になりました。考えた結果、ロイヤリティ マーケティングは1億以上の会員基盤を持つ会社なので、一人ひとりのユーザーの力をどうすれば社会を良くする方向に繋げていけるか、という結論になりました。そこが社会にインパクトを与える我々なりのやり方だろうということで、Green Ponta Actionが立ち上がりました。
Green Ponta Actionは、「今日することで、未来を変えてゆく」をコンセプトに、日常生活の中で気軽に取り組めるアクションを積み重ねることで、持続可能な未来に向けた活動を応援できるスマートフォンアプリです。「知る」「宣言する」「振り返る」「あるく」「すいみん」など、日常生活の中にあるアクションを通じてスコアをためると、ステージが上がります。ステージに応じて、Pontaポイントがたまる特典があります。
Q.アプリで出来るアクションはどのようなものがあるのでしょうか。
アプリ内のアクションについて、ご紹介します(※2023年2月取材時点)。「知る」では、サステナビリティに関する取り組みや、課題について1日1記事配信しています。世の中にある課題や、それに対して取り組んでいる人や企業を知ってもらうところから、サステナビリティについて気付くきっかけになればと思っています。
また、比較的気軽に使えるものですと、「宣言する」「振り返る」のアクションがあります。具体的には「食べ物は必要な分だけ買う」「買い物にはマイバッグを持参する」「マイボトルを持ち歩く」などといった項目があり、「振り返る」と対になっています。一週間ごとに何がどれくらいできたか可視化できるようになっているので、少しずつできることを増やしてもらえたらいいなと思っています。
「天気」は、住んでいる地域の天気予報が見られることに加えて、30年前の気温と比べることができます。カレンダーで30年前より気温が低い日は青、高い日は赤の表示をしているので、ぜひ見てもらいたいです。温暖化と言われていますが、実際に違いを見ることで実感してもらえれば良いなと思っています。
「あるく」も気軽に使っていただきたい項目です。自分自身の健康が保たれていることがその人自身のサステナビリティに繋がる、重要な点だと思っています。また、例えばタクシーの1メーター分(初乗り運賃)を乗る代わりに歩いた場合、その分CO2削減につながりますので、少しでも歩いてみようというアクションを期待しています。歩くだけでスコアが貯まるので、使っていただいているユーザーは多くなっています。「すいみん」は、2022年9月にリリースした機能で、「あるく」がフィジカルだとすると「すいみん」はメンタルも含めたヘルスケアというところで搭載しています。日本人は睡眠時間が短いと言われているので、しっかり睡眠を取ってもらいたいという思いがあります。アプリでは、睡眠の補助として自然の音を流すことができます。特に都会に住んでいると自然と関わることが少ないと思うので、自然の音、例えば森の音を使っていただいて、生活の中で自然を感じてもらえれば良いなと思っています。
最後は「広げる」という、友達紹介の機能です。ユーザーが友達にアプリを紹介して、その友達が実際にダウンロードすると双方がスコアをもらえる仕組みになっています。最近の情報発信は、企業発信よりもユーザー同士の交流やSNSから発信された情報の方が影響の大きい文化になってきていると感じています。ユーザーと一緒にSDGsアクションを広げていきたいと思い、この機能を入れています。
他にできるアクションは、「イイコト応援プロジェクト」という、いわゆる寄付のコンテンツです。NPO、NGOなど、日々課題と向き合っている方々の活動を応援することが、社会課題の解決への実行力があると思っています。ただ、寄付に馴染みがあまりない方もいると思うので、私たちロイヤリティ マーケティングが寄付金を出す代わりに、ユーザーに寄付先を選んでもらう形にしています。ユーザーが寄付先を選ぶこと、「こういうところを応援したい」と思うことが、社会課題を知るきっかけになりますし、それが社会貢献の一つのあり方だと思っています。どの団体に寄付をするか、団体がどのような活動をしているかという点については、その道に詳しい運営パートナーと話し合いをして、寄付先を選択したり、定期的に入れ替えをしたりしています。寄付という形の中でユーザーの皆さまとともに社会貢献していくというアプローチを取りたいと思っています。
先日、トルコ・シリア地震が起こったときも、数日後からPonta特典交換サイトで寄付の受付を開始しました。トルコ・シリア地震のポイント寄付受付について、Green Ponta Actionアプリ内にご案内の記事を出したところ、ユーザーの方からの「いいね」数が多く付き、関心があったり、共感が生まれていることを感じました。この熱量を寄付に繋げることができればと考えています。
Q.アプリ「Green Ponta Action」をユーザーの方にどのように使っていただきたいか、また長く続けていただくために工夫していることがあれば教えてください。
モデルケースとしては、朝起きて宣言して天気をチェックして、通勤途中で記事を読んで、寝るときにすいみん機能を使って、起きたら前日の振り返りをするような流れになります。しかし、ライフスタイルはユーザーによって違うので、ご自身が生活に合うものを使っていただければと思っています。
ユーザーの皆様に長く続けていただくためには、インセンティブのポイントの加算タイミングが重要だと思っています。SDGsアクションに取り組んでいただくユーザーへの特典としてポイントをプレゼントしていますが、アプリを利用しはじめの頃はステージが上がりやすく、ポイントをもらいやすい設計にする工夫をしています。早い段階でステージがアップする成功体験や特典を提供することで、社会に良いことをやってみたいという意欲がある方々が行動に移す後押しにつながると考えています。
アプリの企画段階では、アクションをしていただいたら褒めるということも効果的なんじゃないかという意見も出ていました。ユーザーと情緒的なコミュニケーションをとって、社会課題の解決に向けて皆さまと取り組んでいけると良いなと思っています。
Q.実際に利用しているユーザーの方からは、どのような声や要望が上がっていますか?
「知る」については記事を読むことで環境問題への関心が高まった、学びになったというお声をよくいただきます。他には、「あるく」ことが楽しくなった、「すいみん」については寝ているだけでポイントがもらえて嬉しいというものもあります。
また、毎日「宣言する」ことによって行動が心掛けられるようになったというお声をいただいていています。アンケート結果でも、アプリを利用することでSDGsに対する意識が「自分には遠い存在」から「自分に身近な存在」へと変化するということが分かっており、SDGsに親しんでいただけて嬉しく思います。
ご要望では、「記事を増やしてほしい」「クイズが難しい」という意見や、「すいみんの自然の音をもっと増やしてほしい」といったコンテンツ拡充について求めてくださる方のお声があります。Green Pontaアプリに思い入れがあるからこそいただいているポジティブな意見だと思いますので、丁寧に対応を進めていきたいと思っています。
Q.会社として行った主なSDGsプロジェクトなどについてご教示ください。
会社としては「Pontaの森」という植樹活動を行っています。北海道美幌町で手入れされていない森を再整備して再生させようというプロジェクトで、年間約2,000本の植樹を行っています。私自身も植樹に参加したのですが、急斜面での作業があり、植樹に大変な手間がかかっていることや、森づくりにかかる年数の長さを感じました。以前には、月替わりで各地の森が作り出しているカーボンクレジットを購入することで、林業組合などの活動を支援させていただいていました。
また、横浜のみなとみらい本町小学校の5年生と一緒に、SDGsを広めるためのアイデアを出してもらって、Green Pontaすごろくを作ったりしました。
Q.「Green Ponta」でこれから始まる予定のプロジェクトや手がけたいとお考えのプロジェクトがあればご教示ください。
相模原市と一緒に行ったアプリ内イベントで、チェックイン機能を取り入れ、市内のSDGsスポットにチェックインするとスコアがたまるというものがありました。ユーザーご自身の地元や近所に、SDGsに取り組んでいる会社や、社会に貢献できるスポットがあるということを知っていただけたのではないかと思います。今後、色々な自治体で、その地域がどのようなサステナブルな活動をしているのか、自分にはどんなことが出来るのか、ということを考えてもらえるきっかけになるようなプロジェクトを行いたいと思っています。
また、企業のサステナビリティの取り組みは、企業や商品に共感を持っていただけるきっかけになる、重要なものだと思っています。我々のアプリの中で、たとえば「知る」で記事配信をするなど、ユーザーに知っていただくお手伝いをしていけたら良いなと思っています。
加えて、寄付は私たちにできる実行力のある支援だと思っているので、寄付文化を広げていくことについて力を入れていきたいです。現在はポイントでの寄付や「イイコト応援プロジェクト」を設けていますが、今後は色々な寄付の形を作っていきたいと思っています。海外にはビル&メリンダ・ゲイツ財団のような団体がありますが、そこまでの規模でなくても、我々の取り組みでは、寄付したいという思いがある人が貢献できる仕組みを提供出来たら良いなと思います。
自分のお金で寄付をするという行動までの垣根と言いますか、寄付に対する心理的ハードルを下げて、「寄付って意外と身近だな」と思ってもらえるような形を、Green Ponta Actionで実現したいと思っています。
Q.最後に、「Green Ponta」を通じて、どのような社会や世界を実現されたいとお考えでしょうか?
Green Ponta Actionを立ち上げた一つの目的に、SDGs活動に取り組んでいる企業とユーザーを繋ぐということがあります。環境に良いものを作っても、使わなければ意味がなくなってしまいます。ユーザーに実際に使ってもらって、企業がそれによって収益を得て、次にまた環境に良いものを作っていく。Green Ponta Actionで、世の中にそういった機会を作っていきたいと思っています。
私たちロイヤリティ マーケティングは「無駄のない消費社会構築に貢献する」を企業理念とし、消費社会の無駄をなくすために、消費構造や消費者ニーズを捕捉するアプローチとして、ポイント事業を始めたという経緯があります。企業理念を具現化するために、もっとSDGsに関するアクション機会をつくり、直接的な社会課題との関わり方を、我々なりのアプローチの仕方で具体化していく必要があると思っています。ポイント事業もGreen Ponta Projectも、無駄な消費を省いて、無駄なゴミやCO2のない持続可能な社会を作って子どもたちに残していくべく、取り組んでいきたいです。
編集後記
国内最大級のポイントサービスを提供する企業だからこそ、多くのユーザーに対して発信することや、ユーザーの潜在的な力を引き出していくことへの意欲を感じました。環境問題を含む課題解決の力になることや、企業とユーザーにとって良い社会になることを見据えて作られた「Green Ponta Action」が、社会問題とユーザーの架け橋となり、個人単位でアクションを起こすきっかけになってほしいと思います。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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