REIT(不動産投資信託)とは、不動産を証券化して証券市場で売買する投資手法です。一方、実物不動産投資とは、実際に不動産を購入して自分で管理および運営を行う投資手法です。
いずれも不動産を運営して利益を得る投資手法ですが、それぞれの投資手法には、メリットとデメリットがあります。
それぞれのメリットとデメリットを見て、どちらの投資に向いているか確認してみましょう。
目次
- 実物の不動産投資とリート(REIT)の違い
1-1.リートでは自分で不動産を取得しない
1-2.リートでは自分で不動産を運用しない
1-3.所得の種類が違う
1-4.リートの想定利回りは2~6%が目安
1-5.リートでは、個人では取得が難しい不動産にも投資できる - 実物の不動産投資のメリットとデメリット
2-1.メリット:収益をある程度コントロールできる
2-2.デメリット:取得や運用の手間がかかる - REIT投資のメリットとデメリット
3-1.メリット:証券の保有による配当金を得ることができる
3-2.デメリット:資産流動性が高く、相場の暴落があり得る - まとめ
1.実物の不動産投資とリート(REIT)の違い
最初にそれぞれの投資のメリットとデメリットを知る前に、実物の不動産投資とREIT投資は具体的にどのような違いがあるのか、見ていきます。
1-1.リートでは自分で不動産を取得しない
- リート(REIT):不動産の所有権が無い
- 実物不動産投資:不動産の所有権がある
実物の不動産投資では不動産を購入して所有権を得ます。不動産の所有には法的な手続きが必要となり、土地と建物の所有者の名義を変更するための登録免許税や不動産取得のための不動産取得税などの納税義務が発生します。
不動産の所有権を得るには手間がかかりますが、所得税の控除を受けられたり、不動産を担保に金融機関の融資を受けられるなどのメリットがあります。
一方で、リートでは不動産を直接的に所有することはなく、不動産を所有している会社の証券を購入することで間接的に不動産運用の利益を受け取ることになります。
1-2.リートでは自分で不動産を運用しない
- リート(REIT):不動産を運用する手間が無い(運営方針を決められない)
- 実物不動産投資:不動産を運用する手間がある(運営方針を決められる)
不動産物件を所有するだけでは、収入は入りません。人に貸し出して賃貸契約を結ぶことで、家賃収入を得ることが可能となります。
そのためには管理会社への委託や、老朽化に伴う修繕、募集時の家賃見直しなどを不動産オーナー自身が運営に携わり、運用を行うことになります。
リートの場合、証券の購入後はこのような作業は発生しません。所有しているだけで年1~2回の配当金が入ってきますし、価格が上昇すれば売買することで利益を得られます。
1-3.所得の種類が違う
- リート(REIT):「譲渡所得(申告分離課税)」と配当金の「配当所得」
- 実物不動産投資:不動産所得。給与との損益通算が可能
不動産投資を通じて得られる所得は、不動産所得に該当します。税率は所得税と住民税を合わせて最大で55%です。損失が発生した場合、給与所得と損益通算して税の還付を受けることも可能です。(国税庁「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」)
一方、リートでは売却時の「譲渡所得(申告分離課税)」と、配当金の「配当所得」に分かれます。
リートは上場株式となるため、売却時に損失が出た場合には、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額と配当所得の金額とで損益通算が可能です。(国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」)
他の所得税の種類が異なるため、損益通算の対象にできる所得にも違いがある点に注意しましょう。
1-4.リートの想定利回りは2~6%が目安
- リート(REIT):想定利回りは2~6%
- 実物不動産投資:表面利回りは5~15%以上(※表面利回りのため経費を算入していない
リートの利回りは、銘柄ごとに異なります。想定利回りの相場は低いものでは2%程度、高いものでは6%程度です。
不動産投資の利回りは、運用する物件によって異なります。例えば、古い物件であったり、立地条件の厳しい物件であれば表面利回り15%以上で運用するケースや、築年数やエリアにこだわり、表面利回り5%ほどで運用するケースなど、物件によって収益性は異なります。
不動産投資の利回りは、アイデアや物件、購入価格次第で大きく変わりますが、不動産投資信託であるリートの利回りは一定の範囲内に収まっていると言えるでしょう。
1-5.リートでは、個人では取得が難しい不動産にも投資できる
- リート(REIT):大規模不動産など様々な物件へ少額投資が可能
- 実物不動産投資:マンションやアパートなどの小~中規模の物件に限られる
リートが投資の対象とする不動産は、ホテル、物流倉庫、テナント物件、オフィスビル、マンション、ヘルスケア施設など、多様な不動産に及びます。
一方、不動産投資で個人投資家が投資できるのは、主にはマンションやアパート、戸建などの居住用物件となります。居住用住宅と比較してホテルや物流施設は高額であるうえ、ニーズ予測や資金調達が個人では難しいためです。
リートでは複数の人間の資金や、プロの目利きによって不動産を取得するため、個人では難しい不動産にも投資が出来る点は大きな特徴と言えるでしょう。
2.実物の不動産投資のメリットとデメリット
それでは、リートと比較した実物の不動産投資のメリットとデメリットを確認してみましょう。
2-1.メリット:収益をある程度コントロールできる
実物の不動産投資では自分で不動産を運用しなければいけない代わりに、運用の方法次第では、ある程度収益をコントロールすることが出来ます。
例えば空室率が下がってしまった際、設備投資をするのか、家賃を下げるのか、将来の収益予測を立てながら自分自身で決断し、運用していくことが可能です。
また、入居率の実績がある不動産投資会社を選ぶこともリスクヘッジとなります。例えば、東京・横浜エリアの新築・中古ワンルームマンションの販売を手がける「湘建」という不動産投資会社は、駅徒歩8分以内という好立地のワンルームマンションにこだわることで入居率99.7%(2020年11月末実績)を実現しており、物件価格は2,000万円~2,500万円が多く他社と比べて購入しやすい価格帯となっています。
大手としては、プライム上場グループ企業のプロパティエージェントも、東京23区・横浜エリアに集中したマンション開発・販売により入居率99.59%(2024年1月末時点)の実績があります。賃貸管理では入居者審査も厳しく行っているため滞納率は1.0%を下回っており、入居後のトラブルもおさえることができています。
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2-2.デメリット:取得や運用の手間がかかる
実物の不動産投資の大きなデメリットに、取得や運用に手間やコストがかかることが挙げられます。
不動産の取得にあたっては、登録免許税と不動産取得税を納税しならないうえ、所有すれば固定資産税を毎年納税することになります。また不動産の取得時には、法務局での取得手続きや、仲介業者による重要事項説明も受けなくてはいけません。
購入後も不動産会社と相談してどのように利益を出していくかを決め、入居者の退去時には客付け対策やリフォームなどを行わなければいけません。
このように、オーナーが自由に運用できる一方で、不動産運用の手間やコストがかかってしまう点はデメリットと言えるでしょう。
不動産運用の手間やコストをおさえて投資をしたい場合は、不動産投資型クラウドファンディングというサービスを利用するという選択肢もあります。不動産投資型クラウドファンディングは、匿名組合という仕組みを活用することで、実物不動産に1万円程度の金額から投資可能で、投資後は運用の手間・コストなどは発生しないメリットがあります。
また、不動産投資型クラウドファンディングではほとんどのサービスで、「優先劣後出資」という仕組みが導入されています。これは、投資家が出資する分を優先出資分、運営不動産会社が出資する分を劣後出資分として、ファンド運用終了後に不動産売却をする際に不動産の価格が購入時より値下がりをしている場合、劣後出資分からその損失を計上するという仕組みで、元本損失リスクを抑えた運用が可能となっています。
3.リート投資のメリットとデメリット
次に、リート投資のメリットとデメリットを確認します。
3-1.メリット:証券の保有による配当金を得ることができる
リートのメリットの一つに、証券を保有するだけで配当所得が入ることが挙げられます。一般株式の配当と同様に、リートでも決算期ごとに配当金が入ってきます。
実物の不動産投資と比べ、売買のタイミング以外では自分で作業する必要がなく、利益の獲得に大きな労力を必要としない点はメリットと言えるでしょう。
3-2.デメリット:資産流動性が高く、相場の暴落があり得る
リートは証券化されて単日で取引できるため、相場が大きく下がる可能性があります。資産流動性が高い点はメリットでもある反面、短期間で大きく値下がりする可能性があります。
リートの相場状況を把握し、定期的にマーケットに注目しておかなければならない点はデメリットと言えるでしょう。
定期的にリートの基準価額の変動を確認し、スムーズな売買をするにはネット証券で口座開設を行っておくと便利です。取引手数料や普段利用している銀行口座との連携を考慮しつつ、選んでみると良いでしょう。
三井住友銀行と連携できる「SMBC日興証券」や、住信SBIネット銀行と連携できる「SBI証券」などのネット証券であれば、PCやスマホから簡単に取引を行うことができるうえ、取引手数料も割安になっています。下記の記事でネット銀行と連携できるネット証券会社5社をまとめていますので、まだ口座を開設されていない方は併せてご参考下さい。
【関連記事】ネット証券とネット銀行を連携するメリットは?ネット証券会社5社を比較
まとめ
不動産投資とリート投資、それぞれのメリットとデメリットを見てきました。それぞれに一長一短があり、どちらが良いとは一概には言えないため、自分のスタンスにあった投資手法を選ぶと良いでしょう。
選択の傾向としては、自分で運営を行い、金融機関の融資を利用したい方は実物の不動産投資を検討してみましょう。一方、本業と両立させながら、手間をかけずに配当金を入ってくるのを待ちたい人はリートを検討してみるのも良いでしょう。
また、どちらも不動産のマーケットの影響を受ける投資商品のため、市場全体の傾向について学んでおくことも大切です。本記事を参考に、実物不動産とリートのどちらに投資をするのか、じっくり検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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