NISA(少額投資非課税制度)は投資で発生する利益が一定期間非課税になる制度です。メリットに目が行きがちですが、デメリットや注意点についても理解しておくことが大切です。
今回は、NISAのデメリットと注意点に加え、非課税期間が終了した後の扱いやNISAで失敗しないための対策について紹介しますので、参考にしてください。
※この記事は2021年3月5日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- NISAの概要とメリット
1-1.利益が非課税になるのが大きなメリット
1-2.NISA口座では取引手数料が無料になる場合も - NISAのデメリットや注意点
2-1.損益通算ができない
2-2.年間投資額の上限を超えて取引できない
2-3.手続きが複雑
2-4.非課税期間は絶対に5年とは限らない - NISAでの非課税期間が終了したあとの扱い
3-1.非課税期間が終了するまでに売却する場合
3-2.翌年の非課税投資枠に移管する場合
3-3.課税口座に移管する場合
3-4.損失が発生しているのに税金を支払う必要があるケース - NISAで失敗しないために
- まとめ
1.NISAの概要とメリット
NISA(少額投資非課税制度)とは、年間120万円までの投資に対して、発生する利益が非課税となる制度のことをいいます。つみたてNISAと区別して「一般NISA」と呼ばれることもあります。
NISAで購入できるのは以下の金融商品です。
- 株式投資信託
- 国内上場株式
- 海外上場株式
- 国内ETF(上場投資信託)
- 海外ETF
- ETN(上場投資証券)
- 国内REIT(不動産投資信託)
- 海外REIT
- 新株予約権付社債(ワラント債)
これらの金融商品をNISA口座で保有した場合、最長5年間は売却益・配当益・普通分配金などにかかる税金が非課税となります。
1-1.利益が非課税になるのが大きなメリット
通常の投資では、利益に対して所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)の合計20.315%の税金がかかります。NISAでは、これらが非課税となるというのが大きな特徴でありメリットとなります。
NISAの年間投資額は120万円ですので、1ヶ月で10万円以下の少額投資しかしないという方にとっては特に利用しやすい制度といえます。
1-2.NISA口座では取引手数料が無料になる場合も
NISAを利用するもう1つのメリットが、取引手数料が無料になる場合があるということです。
2021年2月末現在、下記の証券会社ではNISA口座での株式売買手数料が無料となります。
また、GMOクリック証券とDMM株を除いた証券会社では、投資信託の販売手数料も原則無料となっています。(※GMOクリック証券は110本以上が無料、DMM株は投資信託の取扱なし)
取引手数料を気にすることなく取引できるのは、投資家にとってうれしいポイントといえます。
2.NISAのデメリットや注意点
NISAにはメリットだけではなく、デメリットもありますが、「非課税」「取引手数料無料」といったメリットが目立ちやすいため、デメリットについて認識しにくい一面があります。
具体的には以下のデメリットがあります。
- 損益通算ができない
- 年間投資額の上限を超えて取引できない
- 手続きが複雑
- 非課税期間は絶対に5年間とは限らない
それぞれ詳しくみていきましょう。
2-1.損益通算ができない
NISAでは損益通算ができないというのはデメリットです。NISAでは損失が発生した場合に、税計算をするうえで「ないもの」として扱われるためです。
損益通算とは、一定期間の利益と損失を相殺することをいいます。株式などの取引を行って損失が出た場合は、利益から差し引くことができ、その分だけ税金を減らすことができます。
例えば、一般的な課税口座(特定口座や一般口座)で取引を行い、A銘柄で30万円の利益、B銘柄で30万円の損失が発生したとします。
このとき、損益通算することで税金がかからないようにできます。またA銘柄の30万円の利益に対して税金が源泉徴収されている場合でも、確定申告をすることで税金を還付してもらうことができます。
ですが、上記のB銘柄をNISA口座で取引している場合、30万円の損失は損益通算に利用できません。そのため、A銘柄の30万円の利益に対する税金を納める必要があります。
このように、損益通算ができないことで税負担が増えるケースがあるということを理解しておきましょう。
2-2.年間投資額の上限を超えて取引できない
NISAを利用して投資できるのは、年間120万円が上限と決まっており、金額によっては投資したい金融商品を購入できないケースがあります。
例えば、投資単位が50万円(例:株価5,000円を100単元など)の株式を3銘柄購入したい場合、2銘柄までは購入できますが、3つ目の銘柄は非課税枠が残っていたとしても購入できません。
同じように、投資単位が120万円を超えるような場合も、NISA口座を使って投資することはできません。そのため、一般口座とNISA口座それぞれに分け、NISA口座の非課税枠を超えない範囲で投資しなければならないのです。
2-3.手続きが複雑
NISAを利用するための手続き自体が少々複雑であることもデメリットです。
NISA口座は1人に対して1つの金融機関に1つだけしか開設できません。金融機関は税務署を通じて、二重口座の開設にならないかをチェックします。この税務署側の確認に最大で2週間程度の日数がかかるため、必要書類をすべて揃えてもすぐにNISAを利用することはできません。
また、NISAで利用する金融機関を変更したい場合は、以下の手続きを踏む必要があります。
- これまで利用した金融機関(A証券)に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出する
- A証券から「勘定廃止通知書」を発行してもらう
- これから利用する金融機関(B証券)に「非課税口座開設届出書」とA証券から発行された「勘定廃止通知書」を提出する
さらに、上記手続きには期限が設定されています。例えば、2021年はA証券、2022年からはB証券でNISAを利用したい場合、2021年10月1日から2022年9月30日までに手続きを完了させなければなりません。
このように、複雑な手続きが必要になるということを把握しておきましょう。
2-4.非課税期間は絶対に5年とは限らない
NISAの非課税期間はあくまでも「最長5年」です。株式などを購入してから絶対に5年間が非課税になるわけではありません。
例えば、2017年の年初に購入した株式などは、2021年の年末に非課税期間が終了することになり、おおよそ5年が非課税となります。
しかし、2017年の年末に購入した株式なども、同じく2021年の年末に非課税期間が終了するため、おおよそ4年しか非課税になりません。金融商品を購入するタイミング次第で、非課税期間が短くなることがあるため、注意が必要です。
3.NISAでの非課税期間が終了したあとの扱い
NISAには、もう1つ大きなデメリットがあります。それは「損失が発生しているのに税金を支払う必要があるケース」が発生することです。これは、既出の損益通算とは別で、NISA口座単体で起こりうることです。
このデメリットについて理解するためには、NISAでの非課税期間が終了したあとの扱いについて把握する必要があります。最長5年の非課税期間が終了する場合、投資家は以下の3つの選択肢からどれかを選ぶことになります。
- 非課税期間が終了するまでに売却する
- 翌年の非課税投資枠に移管する
- 課税口座に移管する
3-1.非課税期間が終了するまでに売却する場合
NISAを利用して購入した金融商品は、非課税期間内にいつでも売却できます。売却価格が購入価格よりも高ければ、利益が発生し非課税メリットを受けられます。
一方、売却価格が購入価格よりも低ければ、損失が発生するので税金はかからず、NISAのメリットは受けられません。また、先述したようにNISAを利用しての損失は損益通算に利用できないので、減税メリットも享受できないことになります。
3-2.翌年の非課税投資枠に移管する場合
NISAでの非課税期間が終了した場合、保有している株式などを翌年の非課税投資枠に移管することができます。これをロールオーバーといいます。
例えば2017年に購入した株式などの非課税期間は2021年の年末に終了します。もし、同じ金融機関で2022年もNISAを利用したい場合、2022年の非課税投資枠に2017年に購入した株式などをロールオーバーできるのです。
この場合のロールオーバーした株式などは「2022年に新たに購入したもの」として扱われることになります。そのため、実質的に非課税期間を5年延長できるのです。
なお、株式などの評価額が120万円を超えている場合でも、ロールオーバーは可能です。
ロールオーバーする場合の注意点
ロールオーバーは一見有益な仕組みですが、注意点もあります。
- 他の金融機関にはロールオーバーできない
- 評価額が120万円以上の場合は新規投資ができない
- 2024年以降は非課税投資枠が存在しない
ロールオーバーは同じ金融機関内でのみ可能です。A証券からB証券にロールオーバーすることはできません。
また、ロールオーバーする株式などの評価額の分だけ、翌年の非課税投資枠を使うことになり、新規投資できる金額が少なくなります。評価額が120万円を超えている場合は、翌年の非課税投資枠を使い切ることなるので、新規投資はできません。
さらに、NISAは永久に利用できる制度ではありません。現状では2023年まで非課税投資枠を設定可能となっているため、それ以降に再度ロールオーバーすることはできません。
3-3.課税口座に移管する場合
NISA口座で非課税期間が終了した株式などは、課税口座に移管することもできます。この場合、非課税期間が終了した時点での価格で課税口座に移管され、その後の利益については「非課税期間終了時点の価格で購入したもの」として扱われます。
例えば、NISAを利用して100万円で購入した株式が非課税期間終了時に150万円になっていたとします。課税口座に移管後、180万円まで値上がりして売却した場合は150万円との差額の30万円に課税されることになります。
この例では、購入価格が100万円、売却金額が180万円ですので、実際の利益は80万円となりますが、30万円分にしか課税されないことになります。
3-4.損失が発生しているのに税金を支払う必要があるケース
一方で、非課税期間終了後に課税口座に移管して、損失が発生することもあります。この場合に、「損失が発生しているのに税金を支払う必要があるケース」が起こりうるのです。
NISAを利用して100万円で購入した株式が移管時に60万円に値下がりしたとします。その後、少し持ち直して80万円で売却した場合、60万円との差額の利益20万円に対して課税されます。
ですが、購入価格が100万円、売却金額が80万円ですので、実際には20万円の損失が発生していることになります。つまり、20万円の損失が発生しているにも関わらず、約4万円の税金を納めなければならなくなるのです。
これは実際に起こる可能性があるケースで、NISAを利用する場合の大きなデメリットといえます。
4.NISAで失敗しないために
NISAのデメリットのうち、損益通算ができないことや、課税口座への移管時の価格で購入したとされることは、投資家に大きく影響する可能性があります。NISAで失敗しないためには、これらのデメリットをしっかりと理解したうえで、利用するかどうか、どのような方針で運用するのかを判断する必要があります。
すでにNISAを利用しているという場合は、非課税期間が終わった際の対応方法をあらかじめ想定しておくことが重要です。投資の目的の1つは資産を増やすことですので、どうするのが最も有益なのか、じっくりと検討してください。
まとめ
今回はNISAのデメリットや注意点、非課税期間後の扱いなどについて紹介しました。
少額投資を行う方にとってメリットが大きいNISAですが、デメリットや非課税期間終了後の扱いについて理解しておかないと損をすることもあります。本記事も参考に、NISAをうまく活用していきましょう。
山本 将弘
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