不動産クラウドファンディングの市場規模は?件数・出資額や成功事例も

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多額の資金を必要としない新しい不動産投資の形として、不動産クラウドファンディングサービスを提供する事業者は増加傾向にあります。

このような傾向は日本だけでなく世界でも同様の動きがみられています。また、事業への応援や共感、対象不動産の収益性という観点から資金調達が検討できるため、社会貢献性の高い不動産への資金供給という観点からも注目されているのです。

今回は、不動産クラウドファンディングの実際の市場規模について解説します。ファンドの組成件数や収支総額に加え、不動産クラウドファンディング活用の成功事例も紹介します。

目次

  1. 不動産クラウドファンディングの市場規模
    1-1.国内の不動産クラウドファンディングの市場規模
    1-2.世界の不動産クラウドファンディングの市場規模
  2. 不動産クラウドファンディングの成功事例
    2-1.資金調達難に対応した事例
    2-2.まちづくりに対する当事者意識の醸成・関係人口増加につながった事例
    2-3.行政費用抑制につながった事例
  3. まとめ

1.不動産クラウドファンディングの市場規模

不動産クラウドファンディングの市場規模は年々拡大しており、新規参入する事業者はもちろん、募集件数や出資額は増加傾向にあります。

ここでは、不動産クラウドファンディング市場の市場規模について解説します。

1-1.国内の不動産クラウドファンディングの市場規模

国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック(令和6年7月)」には、不動産特定共同事業のクラウドファンディングの件数・出資額のデータが掲載されています。

令和5年度(2023年度)における不動産特定共同事業のクラウドファンディングの件数は530件、出資総額は1007.8億円、前年度比で件数は約1.26倍(令和4年度の件数419件)、出資総額は約1.66倍(令和4年度の出資総額は604.3億円)と、件数の増加、1案件あたりの大型化が傾向にあることが分かります。

なお、平成30年度(2018年度)のデータでは件数が26件、出資総額は12.7億円であることから、5年間で件数は約20倍、出資総額は約79倍に拡大しています。

1-2.世界の不動産クラウドファンディングの市場規模

市場調査会社「Research Nester Inc.」では、世界の不動産クラウドファンディング市場に関する調査を行い、2036年までの市場規模について予測しています。

同社の「不動産クラウドファンディング市場調査、規模、傾向のハイライト(予測2024-2036年)」によると、2023年時点での世界の不動産クラウドファンディング市場の市場規模は約210億米ドルとなっている一方、2036年までに市場規模は約2兆7,247億米ドルになると見込まれています。

2024年から2036年までのCAGR(年平均成長率)は50.1%に達すると予測されています。成長要因としては、ブロックチェーン技術の普及や建設活動の増加、投資家にとって有利になる投資機会の多様化とアクセスのしやすさが挙げられています。

ただし、不動産クラウドファンディングの投資収益には不確実性があることや、景気循環的で金利状況・経済状況などの変動要因の影響を受けやすいこと、流動性に欠けることなどが課題として指摘されています。

2.不動産クラウドファンディングの成功事例

不動産開発において、さまざまな資金調達法があります。また、事情や目的から考慮して不動産クラウファンディングを活用した資金調達が選択された結果、事業に成功した例も少なくありません。

ここでは、不動産クラウドファンディングの成功事例を以下の3つの視点から紹介します。

  • 資金調達難に対応した事例
  • まちづくりに対する当事者意識の醸成・関係人口増加につながった事例
  • 行政費用抑制につながった事例

出典:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック(令和5年7月)

2-1.資金調達難に対応した事例

不動産開発や改修に掛かる資金調達が難しい場合に、不動産クラウドファンディングを活用するケースがあります。

資金調達が難しい理由として、次の状況が挙げられます。

  • 金融機関の通常の融資対象になりづらい
  • 対象不動産の担保価値が低い
  • 不動産の改修費用を賄える多額の融資を受けられる見込みがない

不動産クラウドファンディングを活用すれば、事業への応援や共感、対象不動産の収益性という観点から資金調達が検討可能になります。

SOLA沖縄学園事業

SOLA沖縄学園(運営者:学校法人SOLA学園、沖縄県宜野湾市)は医療系・美容系の専門学校を展開する学校法人です。

今後の発展を見据えた新規学科新設の計画が持ち上がり、同学園が保有していた1号館校舎の売却と、売却後の校舎を賃借するセールアンドリースバック取引を利用する方針が決定されます。売却先の検討中にクリアル株式会社への相談へ至り、不動産特定共同事業として実施されることが決まりました。

同学園は投資対象としての認知度が低く、1号館校舎の売却が困難でしたが、不動産クラウドファンディング「CREAL」の活用により校舎売却を実現しました。学校の運営者である学校法人SOLA学園は約億円の有利子負債の削減と借入余力の増強に成功し、新規学科の新設計画を推進できました。

事業法人や機関投資家は10億円以下の小規模投資には消極的となる傾向があります。同学園は不動産クラウドファンディングの活用により、1口1万円からの資金を数千人分集めて10億円規模の資産購入を実現しました。

CREAL(クリアル)

ESG不動産投資クラウドファンディング「CREAL」
サービス名 累計募集額実績 利回り水準 主な特徴
CREAL 405億円超 4~5% 上場企業が運営、保育所ファンドや地方創生・ヘルスケアなどESG不動産投資ができる

CREAL(クリアル)は、クリアル株式会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングで、ホテルやマンション、学校、保育園など、さまざまな種類の不動産に投資できるのが特徴のサービスです。

2024年6月17日時点で111件、累計525億円を超える募集を行っており、その中には10億円を超える大型案件もありました。投資機会に恵まれているので投資を始めやすく、また、1万円から投資ができるので、初心者の方でも少ない資金から不動産投資型クラウドファンディングを始められます。

※CREALでは、下記ページ経由で新規に投資家登録やファンドへの投資を行うと最大50,000円のAmazonギフト券がプレゼントされるキャンペーンを開催中です。詳しくはCREALのキャンペーンページでご確認下さい。

2-2.まちづくりに対する当事者意識の醸成・関係人口増加につながった事例

各地域でのまちづくり事業の一環として、事業に対して当事者意識を持ってもらったり、関係人口増加を目指したりする場合に、不動産クラウドファンディングが活用される場合があります。

例えば、以下のようなニーズがあるケースです。

  • 町のシンボルとなる不動産開発であり、市民に積極的に関与してほしい
  • 地域に関連する関係人口を増加させたい
  • 対象不動産の稼働率を高く維持する仕組みを作りたい

上記のようなニーズがある場合に不動産クラウドファンディングを活用することで、地域住民や地域に関心を持つ個人が投資家となります。

投資家となった住民は対象不動産の運営状況を継続的に確認するため、まちづくり事業に対する当事者意識が芽生え、関係人口の増加につながります。

山の手複合施設開発事業

札幌市や北海道各地で高齢者住宅を運営する株式会社輝(北海島札幌市)では、サービス付き高齢者向け住宅の新規開設を計画していましたが、不動産専門業者ではなく、開発リスクや不動産関連リスクの負担が難しいことから、開発資金の調達・施設開設が困難となっていました。

そこで以前より付き合いのあった不動産特定共同事業者のフィンテックアセットマネジメント株式会社と連携し、同社主導で施設開設の事業計画の策定や経済条件などの調整が実施され、開発資金14億円の調達が実現しました。

このケースではサービス付き高齢者向け住宅などから構成されるこの物件を「地域社会に欠かせないインフラ施設」と位置付け、地域に必要な施設を地域資金で整備するというコンセプトを掲げることで、市民から2億6,000万円の地域資金を募りました。

一般市民ファンドの利回りの確定、フィンテックグローバル株式会社や証券会社のセイムボート出資(投資家と事業者がリスクを共有し、損失が発生した場合に事業者も負担する投資手法)によるリスク対策により、資金調達を実現しています。

2-3.行政費用抑制につながった事例

行政費用の抑制に不動産クラウドファンディングが活用された事例もあります。ニーズの一例として次のようなケースがあります。

  • 自治体所有の歴史的価値のある建築物を保存・活用がしたいものの、継続的に運用費用を捻出するのは避けたい
  • 自治体保有の土地を活用し地域に必要な施設を開発したいが、財政状況からできるだけ行政費用を抑えたい

不動産クラウドファンディングは小規模な物件での事業の対象となり、公的不動産に対してもスムーズな資金供給が可能なスキームです。民間資金を円滑に供給できることから、行政費用を抑えたい場合に効果的な手段といえます。

旧村上邸再生利活用ファンド事業

神奈川県鎌倉市は、市に寄贈された旧村上邸の保存活用事業に関して、サウンディング調査(民間事業者と市などが直接意見交換を行う市場調査)を実施しました。

そこに調査段階から参加していたのが、不動産クラウドファンディングサービス「ハロー!RENOVATION」を展開する株式会社エンジョイワークスです。

サウンディング調査では、行政・民間事業者に市民も含めた3者が共創できる仕組みの1つとして、投資型クラウドファンディングの活用による市民の出資・事業参加を提案し、事業実施主体として採用されます。

また、投資家に事業に共感して出資意欲を高めてもらうための工夫として、次のような取り組みが実施されました。

  • 利用アイデア出しイベント、市長登壇イベント、DIYイベントなど投資家が参加可能なイベントを全12回開催
  • 施設利用特典や企画会議参加権など投資口数に応じて金銭リターン以外の投資か特典を付加

不動産クラウドファンディングによる資金調達で活用事業を開始できたほか、鎌倉市は耐震工事費用のみを負担し、かつ賃料収入を得られる形を実現して、行政費用の抑制に成功しています。

まとめ

不動産クラウドファンディング市場の規模は拡大傾向にあり、将来的にはさらに大きな市場となることが見込まれています。

また、不動産クラウドファンディングは利回り目的のファンドだけではなく、開発者・事業者の資金調達難への対応、まちづくり事業に対する当事者意識の醸成、関係人口増加、行政費用の抑制など、さまざまなニーズに応えられる仕組みとなっています。

一方で不動産クラウドファンディングを活用した投資方法は新しく、金融トラブルのリスクがあります。過去には融資型クラウドファンディングで企業の財産と出資者の資金の区別がつかないケースが発生し、行政処分を受けたケースもあるのです。

不動産クラウドファンディングを活用した投資を検討する際は、事業者の実績や信頼性をチェックしたうえで、案件ごとのリスクを検証する必要があります。少額で投資できるというメリットを活かし、一つの案件に資金を集中させず、分散投資を心がけておくと良いでしょう。

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山本 将弘

フリーランスWebライター。主に株式投資や投資信託の記事を執筆。それぞれのテーマに対して、できるだけわかりやすく解説することをモットーとしている。将来に備えとリスクヘッジのために、株式・不動産など「投資」に関する知識や情報の収集、実践に奮闘中。